普通人の映画体験―虚心な出会い -45ページ目

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2016年11月22日(火)TOHOシネマズスカラ座(東京都千代田区有楽町1-1-3東京宝塚ビル地下2階、JR有楽町駅・日比谷口徒歩5分)で、16:25~ 鑑賞。

作品データ :
原題 THE GIRL ON THE TRAIN
製作年 2016年
製作国 アメリカ
配給 東宝東和
上映時間 105分


「ガール・オン・ザ・トレイン」

NYタイムズベストセラーにて21週No.1&77週ランクインなど、45ヵ国で空前のベストセラーとなったポーラ・ホーキンズ(Paula Hawkins、1972~)の同名ミステリー小説を基に映画化。離婚の悲しみから立ち直れずにいるアルコール依存症のヒロインが、通勤電車から眺めていた“理想の夫婦”(the perfect marriage)を襲った衝撃の事件に次第に巻き込まれていく様をミステリアスに描く。『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『ボーダーライン』のエミリー・ブラントが、別れた元夫を忘れられずにつきまとう主人公レイチェル役を怪しげな存在感~酒焼けした不健康な老け顔メイク~で熱演している。監督は『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』『ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男~』のテイト・テイラー。

ストーリー :
ダウン 離婚の傷が癒えず、無職で酒浸りの日々を送るレイチェル(エミリー・ブラント)。そんな彼女が毎朝決まった時間に電車に乗り、別れた夫トム(ジャスティン・セロー)が再婚相手のアナ(レベッカ・ファーガソン)と暮らす家の裏庭を車窓から見つめる。さらに、その近所のスコット(ルーク・エバンス)とメガン(ヘイリー・ベネット)を「理想の夫婦」と美化し、取りつかれたように二人をのぞき見る。傷心に溺れ込む彼女にとって、その窓外の、幸せそうな二人だけが唯一の慰めだった。
ある朝、レイチェルは「理想の妻」メガンが自宅のバルコニーで別の男と抱擁しているのを目撃し、裏切りに接したような憤りを感じる。その夜、酔いに任せて、夫婦の様子が気になった彼女は、確認するため駅を降りる。しかし、彼らの家へ向かったところから記憶がなくなり、翌朝、気がつくと彼女は自分の部屋で大けがをして倒れていた。昨日のことを思い出そうとするが、酩酊していたため、記憶がブラックアウトしてしまい、どうしても思い出せない。そして間もなく、メガンは死体で発見される。
なぜか周囲から疑惑の目を向けられるレイチェル。どうやら、あの日の“空白の時間”に原因があるらしい。レイチェルが記憶を取り戻そうとすると、関わる人々の思いがけない秘密が明かされていく…。

アップ ★主要登場人物とキャスト―3人の女と3人の男の愛憎相関図
・レイチェル(Rachel)[Emily Blunt(1983~)]
夫のトムと別れ、アルコール中毒で荒んだ生活をしている。酒癖の悪さで解雇されてからも、居候先の友人にはそれを隠して「通勤」するふりをして、ただ電車に乗り続け、ニューヨークの街を酔いのまにまに彷徨(さまよ)っている。変わらない日課は、そのニューヨークに通う電車の窓から、“2軒”の家を眺めつつ夢想に浸ること。1軒は、トムが不倫の末に再婚したアナと住む、かつての自分の家。そして、その家の2軒隣で“理想の(仲睦まじい)夫婦” スコット&メガンが暮らす、もう一軒。ある日、 “理想の”自分だと思いなすメガンが夫以外の誰かと抱擁(キス?)しているのを見かけて激高する。彼女を問い詰めに行くが、だらしなく酔っていたので記憶がない。
その後、メガンが失踪し、遺体で発見されるにいたり、現場にいたレイチェルに疑いの目が向けられる。もしかしたら自分がやった可能性もあると犯人捜しをするが、基本的に妄想で発言することが多く、的外れな発言で犯人探しを攪乱してしまう有様。本人は至ってマジメなつもりだが、アルコール依存というイメージが先だって、なかなか周りの信用を得られない。しかし、レイチェルがアルコールをやめ、次第に記憶がよみがえるとともに、恐ろしい事実が浮かび上がっていく。
・アナ(Anna)[Rebecca Ferguson(1983~)]
レイチェルの元夫トムの現在の妻。トムとの間にイービーという娘が生まれている。レイチェルとトムが住んでいた、電車から見える一軒家にそのまま住んでいる。たびたびトムに嫌がらせまがいに、些細な用事で連絡してくる元妻のレイチェルに恐怖心を抱いており、彼女が視界に入るだけで不安感を募らせる(不倫略奪婚ゆえの自業自得!)。一度は、うたた寝をしている時に勝手に家の中に入り込んできて、危うく子供を連れ去られるところだった。子育てに追われ、メガンにベビーシッターとして働いてもらっている。
・メガン(Megan)[Haley Bennett(1988~)]
レイチェルがいつも電車から覗いている家に住むブロンドの美女。レイチェルの以前の自宅の近所で夫のスコットと一緒に住んでいる。アナ&トムの赤ん坊イービーのベビーシッターをしている。精神科医のカマル(エドガー・ラミレス)によるカウンセリングを受けている。「理想の妻」とレイチェルが夢想する姿とは異なり、彼女には複雑な事情がからむ過去があった。かつて娼婦だったり、お風呂で寝入って我が子を溺死させたり、本当は男にだらしないなど…。円満そうに見えたスコットとの夫婦関係だが、実はスコットは嫉妬深く、常にメガンを監視し、束縛するモラハラ男だった。結局、彼女はあえなくも殺害に遭い、遺体となって発見された。しかも、体内に子を宿して。その子の父親は誰?

・トム(Tom)[Justin Theroux(1971~)]
レイチェルの元夫で、今はアナの夫。アナと同じく、元妻のレイチェルを遠ざけようとしている。レイチェルと結婚した時に購入した自宅にそのまま住み続けている。
・スコット(Scott)[Luke Evans(1979~)]
メガンの夫。支配的で、女性を縛り付けたがる性格。レイチェルは彼にメガンの「不倫」を知らせようとする。
・カマル(Kamal)[Edgar Ramirez(1977~)]
精神科医で、精神的に不安定なメガンのカウンセリングをしている。メガンは男女の仲になりたがるが果たして…?

主人公のレイチェル、彼女から夫を奪った女・アナ、レイチェルが憧れる若妻・メガンという“ワケあり”女性3人。そして、レイチェルの元夫のトム、メガンの夫のスコット、精神科医のカマルという、どことなく“胡散臭げな”男性3人。
本作では、この男女6人が織りなす、真実と虚構、狂気と欲望、秘密と策略が壊れた万華鏡のようにいびつな光を放つ…。

◎レイチェルはメガンが失踪した当日の記憶を失っていた。
翌朝、目が醒めたレイチェルは、泥まみれで、頭から血を流し、シャツも血が付いている姿に愕然とするばかり。彼女はアルコール依存症で酒を飲むと意識を失い記憶がなくなってしまい、暴言を吐く、暴力を振るうなど、自分では想像もできない行動をとっているらしいのだ…。
やがて死体となったメガンが森の中で発見される。
警察はレイチェルを疑う。「いつもは18時に帰宅するのに、当日に限って23時まで帰宅しなかったのはなぜなのか?」レイチェルは「犯人は自分なのか?」と自問し、必死に記憶をたどるも、いちいち思い出せない。
そんな折、レイチェルは電車でトムの元上司の妻マーサ(リサ・クドロー)を見かけ、以前ホームパーティ会場で酔っぱらってとんだ粗相をしたことを謝罪する。マーサは「あなたは、そのようなことはしていないわ」と彼女を慰める。その言葉が彼女の長年の疑惑を解く鍵になる。
レイチェルはトムから聞かされていた(否、洗脳されていた)。彼女がマーサの前で醜態をさらしてトムがとばっちりで解雇された、と。しかし、マーサは言う。「あなたは、気持ち悪くて部屋で寝ていただけなので謝罪するまでもないわ。トムが会社をクビになったのは、職場の女性に片っ端から手を出していたからよ…」
レイチェルが意識を失っていたときの常軌を逸した言動は、すべてトムの作り話だった!彼は彼女の記憶が飛んでいたことをいいことに、自分に都合よく間違った情報を操作していた。ある時、酔ったレイチェルがゴルフクラブで暴れて鏡を割ったと、トムはレイチェルを責める。しかし、実際はレイチェルが酔った時、トムが怒りに任せてゴルフクラブで鏡を割ったものだった…。要は、トムがレイチェルを悪者に仕立て上げ、離婚し、別の女に走ったのだ。レイチェルに記憶の断面が見えてくる。
彼女はメガンが殺された日の記憶を思い起こす。
メガン(車窓から見える幸せそうなメガンのことをレイチェルは勝手に「ジェス」と名付けていた)の「不倫」現場を目撃し、彼女を詰問しようと、電車から(アーズリー駅で)降りてメガン宅に向かう途中のことだった。トンネルの先でメガンがトムの車に乗り込むところに際会したレイチェルは、思わず「あばずれ(hole)!」と叫ぶ。と、それに気づいたトムが石のような鈍器(?)でレイチェルの頭部を殴りつける。気絶した彼女をその場に放置したまま、トムはメガンと一緒に車で立ち去るのだった。

トムとメガンは車を降り、森の中を歩き、まったく人気がなくなった場所でセックス行為に及ぼうとする。二人は不倫関係にあったのだ。
その時、メガンが「私、妊娠したの」と告げると、トムは一瞬ためらいながら「おめでとう」と言う。 が、須臾(しゅゆ)にして、彼は「中絶してくれ」と頼む。しかし、彼女はそれを断固拒否。キレた彼は彼女を殴り倒し、顔面に2発、蹴りを入れて気絶させる。 そして、岩陰に連れて行き、大きな石を彼女めがけて何度も叩きつけるのだった(鬼畜の所業!)。

レイチェルはメガンがその日に失踪し、その死体が見つかったことから、トムがメガンを殺したことに気づく。すぐに彼女は、トムの元に向かうが、家にはアナしかいなかった。アナにこれまでに思い出したことを告げるレイチェル。しかし、それはアナにとって、やはり信用できる言い分ではなかった。
とはいえ、アナ自身も家でボイスレコーダーを見つけ、その中でトムとメガンが会おうと会話しているのを知っていた。しかし、それでもアナはトムを愛していたので、ボイスレコーダーを投げ捨て聞かなかったことにする。
トムが帰宅し、レイチェルが詰め寄るとトムが態度を豹変させ、彼女をグラスで殴打し失神させる…。
意識が戻ったレイチェルに再び襲いかかるトム。何とか隙(すき)をついて、家の外へ逃げるも、トムに追いつかれて組み敷かれるレイチェル。
彼は彼女の首を絞めて殺そうとする。瞬間、彼女はワインオープナーで彼の首を刺して反撃する。もだえ苦しみ、虫の息となった彼。そこへ、アナがやってきて、彼の首に突き刺さったワインオープナーをさらにねじ込み、完全に止めを刺す。夫の正体~次々に不倫を重ねて悪びれず、いつもその相手の女性に責任をなすりつける最低男のクズっぷり【離婚したのはレイチェルのせい、浮気したのはアナのせい、メガン殺したのもレイチェルのせい(「あの日、あの場所にお前がいたからメガンは死んだ。ある意味、お前が殺したんだ」)!! 】~を知ったアナは、何の躊躇もなく、氷のように冷ややかな無表情で、夫を完全に見限り、「死ぬことを望んだ」のだった。

警察で事情を話したレイチェルは、「他に選択肢がなかった。あれは正当防衛です」と話す。アナも「レイチェルが言ったことは、すべて正しかった」と証言する。そして、事件解決。

【エンディング】時が流れ、レイチェルは電車に乗った際、反対側のハドソン川が見える側の席に座り、他人の家を盗み見ることもなくなった。ようやく過去の呪縛から解き放たれて、彼女は人生を再びやり直すのだった―。

【註】そもそもレイチェルが車窓越しに見た「不倫」現場での、メガンの不倫相手~夫スコットとは別の男~は、いったい誰だったか?メガンの失踪を知ったレイチェルがスコットに会いに行った際、スコットから見せられた写真で、問題の人物がメガンのカウンセリングを行なう精神科医のカマルだったことが判明。しかし、レイチェルが目撃した、メガンとカマルの「抱擁(embracing)」→「キス(kissing)」の光景は、カウンセリング上の微妙な関係を示唆するもので、厳密な意味での“不倫”とは言いがたく、レイチェル独特の相手(⇔自分)の理想化ゆえの勝手な邪推ないし早とちりに起因する心象風景にほかならなかった。

[厳密な意味での“不倫”とは、近代的な結婚制度(一夫一婦制)から逸脱した男女関係、すなわち配偶者のいる男や女が配偶者以外の異性と恋愛・性交を行なうこと(配偶者のいない男や女が、配偶者のいる異性と恋愛・性交を行なう場合も含む)。]

Cf.(1) 【IMDb “Storyline”】
The Girl on the Train is the story of Rachel Watson's life post-divorce. Every day, she takes the train in to work in New York, and every day the train passes by her old house. The house she lived in with her husband, who still lives there, with his new wife and child. As she attempts to not focus on her pain, she starts watching a couple who live a few houses down -- Megan and Scott Hipwell. She creates a wonderful dream life for them in her head, about how they are a perfect happy family. And then one day, as the train passes, she sees something shocking, filling her with rage. The next day, she wakes up with a horrible hangover, various wounds and bruises, and no memory of the night before. She has only a feeling: something bad happened. Then come the TV reports: Megan Hipwell is missing. Rachel becomes invested in the case and trying to find out what happened to Megan, where she is, and what exactly she herself was up to that same night Megan went missing.

Cf.(2) 【IMDb “Plot Synopsis”抜粋】
The next time Rachel rides the train, she sees Megan embracing another man on her balcony. She rushes further down the train to catch another glimpse, seeing them kissing. Rachel gets upset, saying it was a perfect marriage and this woman is destroying it.

▼予告編



▼ Trailer & Clips



▼ The Press Conference :
The cast of The GIrl on the Train Emily Blunt, Luke Evans & Hayley Bennett attend the press conference for the movie alongside Director Tate Taylor and original author of the book Paula Hawkins in London.



■私感 :
この映画は女優エミリー・ブラントがすべてである。
私の鑑賞したエミリーの出演作としては、今作が11作目に当たる(cf.本ブログ〈August 29, 2016〉記事)。
彼女は着々とキャリアを積み、演技に磨きをかけているが、今回もまた新境地を開き、その芸域を広げ、かつ深めている。

ヒロインのレイチェルは、
暗い過去の影を引きずったまま前に進むことができない女、常に泥酔して何かと記憶が飛んで切れ切れになってしまう女、別れた元夫とその妻にストーカーまがいのことを繰り返す女。
親身に世話してくれた友人にも愛想を尽かされ、誰にも必要とされず、信じてもらえず…。もしかして自分がメガンを殺したのではないかと自分自身を疑う切迫した不安にさいなまれながら、ますます精神的に追いつめられていく…。自らの疑いを晴らそうとメガンの夫スコットに近づくも、結果として一層それが状況を悪化させてしまう…。

エミリー・ブラントはこの、傷つき壊れ、憔悴し、人生のどん底にあえぎ、そしてそこから這い上がろうとするヒロインを、まさに好演・熱演・怪演!
私は今、どうやら彼女の大ファンになりそうな予感を覚えている―。
2016年11月21日(月)ポレポレ東中野(東京都中野区東中野4-4-1 ポレポレ坐ビル地下、JR東中野駅西口北側出口より徒歩1分)で、21:00~鑑賞。

作品データ :
製作年 2010年
製作国 日本
配給 東海テレビ放送
上映時間 98分


1970年代末から80年代初めに訓練生の死亡や行方不明事件を起こした戸塚ヨットスクールの軌跡と現在を追ったドキュメンタリー。傷害致死罪などで裁かれ服役した後も、問題を抱えた子供たちと向き合い続ける戸塚宏校長と同スクールの今に迫りながら、引きこもりやニート、教育現場の荒廃など現代社会が抱える闇を浮き彫りにする。
制作したのは、戸塚ヨットスクールを取材エリアに持つ東海テレビ放送。監督は光市母子殺害事件を弁護団の側から照射した『光と影~光市母子殺害事件 弁護団の300日~』などで高い評価を得ている東海テレビディレクターの齊藤潤一。2010年5月に東海地方3県(愛知・岐阜・三重)向けに『平成ジレンマ〜戸塚ヨットスクールと若者漂流〜』のタイトルで放送、その後も再放送や地方局での放送を望む声が相次いだことから、未公開シーンを加え、劇場用映画として製作された。

ストーリー :
非行や不登校の子供たちを厳しい訓練と合宿生活で再教育する戸塚ヨットスクールは、1980年と82年に訓練生が死亡する事件が起き、戸塚宏校長と全スタッフが逮捕された。最高裁は彼らに実刑を下した。この事件をきっかけに、教育界から体罰が排除されるようになる。2002年3月、戸塚校長は傷害致死罪で6年の刑に服す。出所後、戸塚校長は年間70件に及ぶ講演を行ない、子育てに悩む親や教師に体罰の是非を訴えている。三河湾を臨む愛知県美浜町にある、戸塚ヨットスクールの現在の訓練生は10人。以前のような体罰は封印した。
夏、小学6年生・丘晃君が短期入校生としてやってくる。終了の日、ここにずっといるよう言われたらどうするか尋ねられた彼は、拒否すると答え、スクールを後にした。21歳の訓練生・恵介さんは就職のため、自動車学校に通っている。入校から約1年が過ぎ、就職が見つかればスクールを出る。最年長29歳の哲也さんは、2年前スクールを卒業して就職したが長続きせず、再入校させられた。秋、恵介さんは自動車免許の試験に合格する。哲也さんは、校長が知り合いに頼んで、沖縄の農家に就職する。そして丘晃君が正式に入校してきた。別の日、17歳の一恵さんが両親に連れられてやってきた。彼女は家に引きこもり、リストカットを繰り返していた。自傷癖のある生徒は受け入れていないが、校長が特別に許可したのだ。しかし3日後、彼女は屋上から飛び降り、この世を去る。恵介さんが脱走を繰り返すようになり、名古屋の弁護士から彼を保護したと連絡が入る。弁護士はスクールから逃げた訓練生たちを支援し、訴える準備をしているという。一方、沖縄の哲也さんは、2ヶ月で姿を消していた。春、新しい訓練生として、40歳の引きこもりがやってくる―。

★ 戸塚宏と「戸塚ヨットスクール事件」
戸塚宏は昭和15(1940)年生まれ。名古屋大学工学部に入学後、ヨット部に入部、主将を務める。卒業後、国際ヨットレースに参加。
昭和50('75)年、沖縄海洋博記念のサンフランシスコー沖縄間の一人乗りヨットレースで堀江謙一らを抑え、41日間という驚異的な記録で優勝。その名を世界に知らしめる。
翌年、オリンピックで通用するような一流のヨットマンを育てようと「戸塚ヨットスクール」を開校。週末になるとスクールには、ヨットを学びたい小中学生がやってきた。その中の一人に不登校の小学生がいて、短期間の訓練を終えた後、学校に通えるようになった。その評判はマスコミの報道で広がり、全国各地から非行や不登校などの情緒障害児が集まった。体罰をともなうスパルタ訓練。全盛期には100人を超える訓練生が在籍した。

開校して4年目、日本中を騒がせた「戸塚ヨットスクール事件」が起きた。
・昭和54('79)年2月、中学生の見学祐次(13歳)が訓練中に死亡(戸塚側は「低体温症によるもので体罰との因果関係は無い」と主張。病死として不起訴扱いにされた)。
・昭和55('80)年11月、大学浪人生だった吉川幸嗣(21歳)が訓練中に死亡(傷害致死罪)。
・昭和57('82)年8月、高校生の水谷真(15歳)と杉浦秀一(15歳)が奄美大島の夏季合宿から帰る途中、訓練から逃れるため、フェリー船から海に飛び込み、行方不明となった(監禁致死罪)。
・昭和57年12月、中学生の小川真人(13歳)が訓練中に死亡(傷害致死罪)。
警察は行き過ぎた体罰が原因だと、戸塚校長と12人のコーチ全員を傷害致死や監禁致死などの疑いで、昭和58('83)年5、6月に逮捕。「体罰は教育だ」と主張する戸塚校長を、マスコミは叩いた。

※ちなみに、1982年9月に子供の非行が家庭を崩壊させる様を描いた穂積隆信著『積み木くずし~親と子の二百日戦争~』(桐原書店)が出版され、ベストセラーとなり→同作が東宝により翌年2~3月にテレビドラマ化、同年11月に映画化(脚本:新藤 兼人、監督:斎藤光正)された。

裁判はヨットスクールの訓練は「教育」か、それとも「暴力」かが焦点となった。
一審の名古屋地裁。検察側は「スクールは暴力的方針による営利目的の企業体で、常軌を逸した過酷な体罰は教育、治療ではない」として戸塚被告に懲役10年、起訴されたコーチ9人に懲役6年から1年6ヶ月を求刑した。
これに対して、弁護側は「体罰などは、情緒障害児の教育・治療が目的で、親の懲戒権の委託に基づく正当な行為だ」と反論し、無罪を主張した。
判決は平成4('92)年7月27日、戸塚校長に懲役3年。コーチ9人に懲役2年6ヶ月~10ヶ月。いずれも執行猶予がついた。名古屋地裁は「体罰は違法だが、情緒障害児の治療という目的は評価できる」と判決理由を述べ、訓練の正当性は認めた。
しかし、二審の名古屋高裁は平成9('97)年3月12日、「訓練は人権を無視していて、教育でも治療でもない」と断罪。戸塚校長に懲役6年、コーチ3人に懲役3年6ヶ月~2年6ヶ月の実刑判決を言い渡した。そして、平成14('02)年2月25日、最高裁が被告側の上告を棄却し、刑が確定した。
この間、事件で死亡した4人の遺族との民事訴訟で、和解が成立。合わせて約1億円の賠償金が支払われた。
平成18('06)年4月29日、戸塚校長が出所。すぐに、ヨットスクールに復帰した。
現在、訓練生は10名前後。かつては、10代半ばから後半の「不良」が多かったが、今は「ひきこもり」や「ニート」が多く大半は20代と高年齢化している。
事件後、激しい体罰は封印され、そこにはかつての緊張感はない。


▼予告編

2016年11月21日(月)新宿武蔵野館(東京都新宿区新宿3-27-10 武蔵野ビル3F、JR新宿駅中央東口から徒歩2分)で、16:35~鑑賞。

作品データ :
原題 五個小孩的校長
英題 LITTLE BIG MASTER
製作年 2015年
製作国 香港 中国
配給 武蔵野エンタテインメント
上映時間 112分


「小さな園の大きな奇跡」

感動の実話を映画化し、香港で大ヒットした人間ドラマ。閉園の危機に陥った幼稚園を救うため、自ら園長を買って出た一人の女性と、残された5人の園児たちとの「奇跡」~強い愛と熱い想い!~の物語を情感豊かに綴る。主演は香港ポップスの大スターで女優としても大人気のミリアム・ヨン[Miriam Yeung、中国名:楊千嬅(杨千嬅)、1974~]、共演に『レクイエム 最後の銃弾』のルイス・クー。監督・脚本は、『6AM』のエイドリアン・クワン。

本作は新宿で映画館「新宿武蔵野館」「シネマカリテ」などを経営する武蔵野興業(株)(東証2部上場)の配給部門「武蔵野エンタテイメント(株)」の初の買い付け作品で、本年11月5日にリニューアル・オープンした新宿武蔵野館のオープニング・ロードショー作品。

ストーリー :
都会の有名幼稚園の園長ルイ・ウェホン(ミリアム・ヨン)は、エリート教育に疲れて退職することに。一方、博物館の展示デザイナーの夫ドン(ルイス・クー)も、博物館がリアルな模型よりバーチャルを重要視することに失望していた。結婚10周年を迎えたある夜、ルイが退職の決心を夫に伝えると、ドンは自分の仕事の契約が切れる半年後に2人で世界一周の旅に出ようと提案した。仕事を辞めたルイはテレビのニュースで、園児も資金も足りず、園長や教員が辞職したユンティエン(元田)幼稚園のことを知る。代理教員1名と経済的理由で転園できない園児5名が残され、月給4500香港ドルで園長兼教員を募集しているという。園を訪ねたルイが少女たちの笑顔を見たとき、彼女の心は決まる。ドンは2人の夢である世界旅行や腫瘍の手術をしたばかりのルイの体調を気遣う。ルイは子供たちが転園するまでの4ヵ月だけとドンを説得する。園長となったルイは、資金不足のため、5人いる園児のうち1人が今年で卒園した後、新学期に園児を5名確保できなければ閉園が決定していることを知る。
転園先を必ず見つけるか、新しい園児を獲得するか。さもなければ少女たちの行き場がなくなってしまう。
ルイは転園先を探しながら、5人の園児の家族たちと知り合い、彼らからの信頼を得ていく。しかし、転園先は見つからず、ルイは園児募集の一般開放日を企画する。そのための援助金を得ようと、昔の知り合いで今や教育界の風雲児としてマスコミにもてはやされるチン・ボウイ(サミー・リョン)に相談するが、彼の興味はルイを自分たちの広告塔にすることだった。誰の援助も受けられないと、ルイは必死で働き続ける。ドンは彼女が4ヵ月で辞める約束を破ろうとしていることや健康も顧みず命がけで働いていることに気づき、辞職を迫る。そんなとき、ドンが作っていた博物館のギロチン模型が倒壊する。幸いにして大事に至らず、展覧会のオープニングには間に合いそうだ。幼稚園の一般開放日も近づき、園児もその家族も一生懸命だった。果たしてルイは幼稚園を救えるのか? そしてルイとドンの夢は叶うのか?

★ 5人の園児とルイ先生:
5人の園児とルイ先生(1)
左からフー・シュンイン(カカ役)、ホ・ユエンイン(シュシェ役)、ミリアム・ヨン(ルイ先生役)、ケイラ・ワン(チュチュ役)、カン・ナヤブ(ジェニー・ファティマ役)、ザハ・ファティマ(キティ・ファティマ役)。

5人の園児とルイ先生(2)ルイ先生は園児たち5人の家庭を訪問する。どこも裕福ではない。それぞれに家庭の事情がある。
・カカは年長さん。今年、卒園しなくてはいけない。お父さん(フィリップ・キョン)は仕事で怪我して義足になった。今は仕事もなくてお母さん(レイン・ラウ)とすぐ喧嘩。カカが幼稚園に行ったら、いない間に2人が大喧嘩して、いなくなっちゃうかもしれない。カカはそれが心配で、幼稚園に行きたがらない。
・シュシェはお父さん(リチャード・ン)のクズ鉄売りを手伝っている。お父さんの体の具合が悪いからだ。お母さんと弟は、遠くで暮らしていて戻って来ない。シュシェは空き缶のサンダルをはいて背を高くして台所に立ち、お父さんにお料理も作ってあげる。
・チュチュは雷の鳴った日に、両親を交通事故で失う。以来、「雷おばけが人間を食べるのが悲しい」と言う。お母さんのいとこのハンおばさん(アンナ・ン)と暮らしている。
・キティとジェニーのファティマ姉妹は、パキスタン系の香港市民。お父さん(ディロン・ハルジ・シン)もお母さん(アスナニ・メナ)も食堂で働いていて、2人ももやしを洗ったりの手伝いをする。

ルイ先生は園で子どもと接するだけではなく、その家族・家庭のことも気にかける。そして、何か問題があるならば、力を尽くして自分に出来ることを探す。
彼女は子ども→家族の気持ちを理解し、いつしか家族たちの信頼も得ていく。そして、この優れた“教育者”によって、子どもたち→親たちが成長していく―。

▼予告編


▼ Trailer (English subtitles)


■ cf. “夢が世界を変える 映画「小さな園の大きな奇跡」 エイドリアン・クワン監督”(東京新聞2016年11月3日付朝刊[放送芸能])
《昨年の香港映画で興行収入1位となった「小さな園(その)の大きな奇跡」が5日に公開される。香港映画お得意の派手なアクションや銃撃戦はないものの、閉園危機にある幼稚園の子どもたちのために奮闘する女性の実話を基にした“泣ける映画”だ。メガホンを取ったのは、香港の新鋭エイドリアン・クワン監督(49)。ニュースで園と女性のことを知り、どうしても自ら映画にしたかったという監督に聞いた。 (深井道雄)
 資金難で閉園の危機にあった元岡(ユンコン)幼稚園のニュースを、監督が知ったのは二〇〇九年春。日本同様、出生率が下がり続けている香港では、都会の名門幼稚園に入園希望が集中し、地方では幼稚園の廃園が相次いでいたという。
 クワン監督は、家庭の事情で転園できない五人の園児のために、破格の安い給料で園長を引き受けた女性のことを知り、興味を持った。しかも女性は都会の有名幼稚園の元園長。「なぜ、そんなに大変なことができるんだろうと、ずっと感心していた。でも、どこか理解できない感じがしていた」と振り返る。
 一三年七月、監督は映画会社の友人に誘われ、元岡幼稚園にルイ・ライホン園長を訪ねた。「園の再生のため、ルイ園長がしてきたことを聞いて、とても感動した。自分を犠牲にしてもやり遂げるという園長の情熱が強く伝わってきて、ぜひ映画にと思うようになった」とクワン監督は明かす。そのころ、映画製作の一方で貧困家庭や障害者を支援するチャリティー活動を続け、貧困層の生活を間近で見てきたことも、監督の理解を助けたという。
 監督の思いは周囲の映画関係者を動かし、香港を代表するトップシンガーのミリアム・ヨンや、香港で最も売れているアクション俳優ルイス・クーが出演を快諾。四百人の中からオーディションで選ばれた五人の子役のあどけない表情や自然な演技も観客をスクリーンに引きつける。
映画のヒットで、香港では設備の整った高級幼稚園より、職員の熱意や子どもを愛する気持ちが大切と気づいた人も多いという。ルイ園長は今も元岡幼稚園で働き、園児数は約七十人に増え、数十人が入園の空きを待っているという。クワン監督は言う。「夢を持ちましょう。その夢を通して世界は変わると思うのです」
 <あらすじ>都会の有名幼稚園の園長だったルイ(ヨン)はエリート教育に疲れ果て、退職する。夫のドン(クー)と世界旅行を計画していたある日、地方の幼稚園が資金難のため代理教員1人を残し、職員全員が辞職し、園長を募集していることをテレビニュースで知る。月給は4500香港ドル(約6万円)。普通の幼稚園の6分の1から8分の1の安さで、しかも園長といえ、清掃や雑用も1人でやらなければならない重労働だ。家庭の事情で5人の園児が転園できずにいたが、園長が決まらなければ閉園になるという。》


▼ cf. 香港きっての人気歌手ミリアム・ヨンの楽曲≪小城大事≫(MV) :


▼ cf. ミリアム・ヨン≪Ready or Not≫(MV) :


▼ cf. ミリアム・ヨン≪Ready or Not≫→≪小城大事≫ [浙江衛視(=中国浙江放送グループ衛星チャンネル)2015跨年晩会(年越しコンサート、2014年12月31日)] :
2016年11月20日(日)新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3-15-15、JR新宿駅東口より徒歩5分)で、18:40~鑑賞。

作品データ :
原題 A BIGGER SPLASH
製作年 2015年
製作国 イタリア フランス
配給 キノフィルムズ/木下グループ
上映時間 125分


シチリア出身で、『ミラノ、愛に生きる』のルカ・グァダニーノ監督が放つ人間ドラマ(サスペンス映画)。恋人とシチリアの孤島にバカンスやってきた人気歌手の前にかつての恋人が娘を連れて現われ、やがて愛憎渦巻く人間模様が思いも寄らぬ事件を引き起こすさま描く。1968年製作のアラン・ドロン主演、ジャック・ドレー監督によるフランス映画『太陽が知っている』をリメイクした。『フィクサー』などのティルダ・スウィントン、『シンドラーのリスト』などのレイフ・ファインズ、『君と歩く世界』などのマティアス・スーナールツ、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』などのダコタ・ジョンソンらが結集。

ストーリー :
世界的な人気を誇るロック歌手のマリアン(ティルダ・スウィントン)は、痛めた声帯と心を癒すため、恋人で無名の映画監督のポール(マティアス・スーナールツ)と南イタリアの孤島、シチリア・パンテッレリーア島で優雅な時間を過ごしていた。ところが、声帯の手術を受けたばかりのマリアンは、ほとんど声が出ない。そんな中、マリアンの元恋人でカリスマ音楽プロデューサーのハリー(レイフ・ファインズ)が、セクシーな娘ペン(ダコタ・ジョンソン)を連れて押しかけてくる。歌って踊り続けるエネルギーの塊のようなハリーは、実はマリアンとの復縁を狙っていた。一方、若さを持て余したペンは、ポールへの好奇心を募らせていくが、父親のはずのハリーとも妖しげな雰囲気を漂わせていた。やがてマリアンの嫉妬と困惑と迷いが最高潮に達した時、思いもよらない事件が起きる…。

▼予告編



[※2016/12/03追記:2016年12月2日(金)、本作を新宿ピカデリーで、19:20~再見]
2016年11月20日(日)新宿武蔵野館(東京都新宿区新宿3-27-10 武蔵野ビル3F、JR新宿駅中央東口から徒歩2分)で、16:40~鑑賞。

作品データ :
原題 CRAZY ABOUT TIFFANY'S
製作年 2016年
製作国 アメリカ
配給 ファインフィルムズ
上映時間 87分


「ティファニー ニューヨーク五番街の秘密」

世界で最も有名なジュエリーブランド、ティファニー(Tiffany & Co.)。本作はさまざまな関係者やティファニーを愛する多くのセレブリティたちのインタビューを通して、ティファニーの歴史と魅力を、『ティファニーで朝食を』をはじめとする名作映画との関係や周到なブランド戦略、知られざる逸話の数々とともに明らかにしていくドキュメンタリー映画。監督を務めたのは、世界一のデパートと言われるニューヨーク五番街のデパートを題材にした『ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート』のマシュー・ミーレー。

ストーリー :
1837年の創設以来、時を越えて世界中の人々を魅了してきたジュエリーブランド、ティファニー。“キング・オブ・ダイヤモンド”と呼ばれたブランドの創業者、チャールズ・ルイス・ティファニーのエピソードから始まり、ブランドカラーである“ティファニーブルー”の誕生秘話、アカデミー賞でのジュエリー選びの裏側も紹介する。そして、ティファニーの顧客であったジャクリーン・ケネディや、歴代米国大統領のリンカーン、ルーズベルト、アイゼンハワー、オバマなどの逸話、野球チームのニューヨーク・ヤンキースやテニス、ゴルフ、バスケットなど米国を代表する様々なスポーツイベントとの関わりなど、知られざる歴史が次々と明らかになる。さらに、ティファニーがジュエリーを提供した映画の数々にもスポットを当てる。オードリー・ヘプバーン主演『ティファニーで朝食を』誕生のいきさつ、『オーシャンズ11』に出演したジュリア・ロバーツのジュエリー選びのエピソード…。また、リース・ウィザースプーン主演『メラニーは行く!』のティファニー店頭でのプロポーズシーンの逸話を、アンディ・テナント監督自ら語る。他にもアン・ハサウェイ出演『ブライダル・ウォーズ』、海外ドラマ『フレンズ』など人気作品とティファニーの関わりを紹介。レオナルド・ディカプリオ主演『華麗なるギャツビー』の監督バズ・ラーマン、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の監督サム・テイラー=ジョンソンらからのコメントも収録。また、2013年からティファニー社の初の女性デザインディレクターに就任したフランチェスカ・アムフィテアトロフも出演し、謎に包まれたティファニーの製作現場の裏側を垣間見ることができる。

▼予告編



■ cf. 創業時のティファニー :
1837年9月18日、チャールズ・ルイス・ティファニーとジョン・バーネット・ヤングがティファニーの前身であるティファニー・アンド・ヤングをニューヨークのブロードウェイ259番地に創業。
「創業時のティファニー」
■ cf. ティファニー本店 :
同店(旗艦店)は1940年10月21日、ニューヨークの五番街と57丁目の角に移転し、今日に至る。御影石とライムストーンからなるアールデコ様式の建物にステンレススティールのドア。ファサードには、時計を担ぐ巨神アトラスの全長9フィートに及ぶブロンズ像が掲げられている。
「ティファニー本店」


▼ cf. ティファニーのTVCM「Will You?」(2015年)

2016年11月20日(日)新宿武蔵野館(東京都新宿区新宿3-27-10 武蔵野ビル3F、JR新宿駅中央東口から徒歩2分)で、14:05~鑑賞。

※新宿武蔵野館は1920(大正9)年に開館以来、大正・昭和・平成と1世紀近くにわたり映画ファンに愛され、新宿の街に映画の灯をともし続けてきた。
同館は2016年1月30日から耐震性補強と改装のため、一時休館となり、同年11月5日、工事が終了しリニューアル・オープンとなった。


作品データ :
製作年 2016年
製作国 日本
配給 エイベックス・デジタル
上映時間 132分


『愛の渦』『何者』の三浦大輔が、自ら脚本、演出を手掛けた舞台劇を原作にした映像配信サービス「dTV」のオリジナルドラマを劇場用に再編集。出会い系サイトで繋がった専業主婦と、年下のフリーターに待ち受ける運命を見つめる。『愛の渦』などの池松壮亮と『キャタピラー』などの寺島しのぶが、濡れ場を交えて、現実から逃げ続ける二人の主人公を熱演する。

ストーリー :
菅原裕一(池松壮亮)は、同棲する彼女から小遣いを貰って怠惰な生活を送るフリーター。一方、専業主婦の橋本智子(寺島しのぶ)は、穏やかな夫と平穏に暮らしていた。何の不満もない毎日を送っていた二人は、ただ何となくアクセスした出会い系サイトで知り合い、はっきりとした目的もないまま、意味のない逢瀬を重ねるようになる。季節が変わり、その関係すらも惰性になりつつあったある日、ある出来事をきっかけに日常が揺らぎ始める。それでも“選択”することを避け、生ぬるい日常に浸かり、ただただ流れに身を任せる二人は、今日も中央線沿いの街の中をぐるぐるとあてどなく彷徨(さまよ)う…。

▼予告編

2016年11月19日(土)下高井戸シネマ(東京都世田谷区松原3-27-26、京王線・東急世田谷線下高井戸駅から徒歩2、3分)で、21:10~鑑賞。

作品データ :
原題 11 MINUT 11 MINUTES
製作年 2015年
製作国 ポーランド アイルランド
配給コピアポア・フィルム
上映時間 81分


『ザ・シャウト さまよえる幻響』『アンナと過ごした4日間』『エッセンシャル・キリング』などで知られ、カンヌ、ベルリン、ベネチアの世界3大映画祭で受賞歴のあるポーランドの鬼才イエジー・スコリモフスキ監督(1938~)が、午後5時から午後5時11分までの限られた時間に焦点を絞り、大都会に暮らす人々が繰り広げるありふれた日常の一コマ一コマが、やがて思いも寄らぬ結末へと収斂していくさまをモザイク状に描いた実験精神あふれる群像劇(リアルタイム・サスペンス)。

観客の誰もが想像し得ない、驚愕のラスト・シーン(クライマックスのカタストロフィー)!
起承転結のあるストーリー、詳細な心理描写、背景説明などを一切排し、使い古されたサスペンスという定番ジャンルの様式を、掟破りでラディカルなチャレンジ精神で突破!
監視カメラ、Web カメラ、カメラ付き携帯、CGといった様々なメディア技術を巧みに使い、ローアングル撮影、大胆な俯瞰シーン、スローモーション等、多種多様な質感と視点を駆使した魅惑の映像と、バイクの疾走音やジェット旅客機の爆音、救急車のサイレン等、都市空間ならではのシンフォニックなノイズが緻密な設計のもとに融合し、悲哀感ただよう人生の光と影を見事に表現!
人々のありふれた日常が11分後に突如変貌してしまうという奇妙な物語を、テロや天災に見舞われる不条理な現代社会の比喩として描いたこの映画は、個人の生や死がサイバー・スペースやクラウドといった環境に取り込まれていく未来をも予見している。

本作の主な撮影は、ワルシャワで行なわれた。事故が起こる場面の撮影地には、「古さと新しさ、秩序と混沌、美しさと醜さが、最も不調和な対照をなしている」という理由により、グジボフスキ広場が選ばれた。そのほか、ダブリンのスタジオで1週間、クラクフ近郊のアルヴェルニア・スタジオで1週間、撮影された。40日間で全ての撮影を終えた。

ストーリー :
時計塔が午後5時の鐘を鳴らす。目を覚ました夫のヘルマン(ヴォイチェフ・メツファルドフスキ)は、妻である女優のアニャ(パウリナ・ハプコ)の姿が見当たらないことに気づく。ヘルマンは急いでホテルに向かう。同じ頃、ホテルに着いたアニャは、映画監督のリチャード(リチャード・ドーマー)が滞在する1111号室を訪れていた。リチャードは役を与える見返りに肉体関係を求めるような言動で、アニャを困惑させる。
ホットドッグ屋の主人(アンジェイ・ヒラ)が路上で5人の修道女にホットドッグを売っていると、彼のもとに歩み寄ってきた少女が「もう出所したの?」と言い、彼の顔に向かって唾を吐いて、その場をあとにする。犬を連れた女(イフィ・ウデ)が、公園で元ボーイフレンド(マテウシュ・コシチュキェヴィチ)と別れたのち、ホットドッグを買いに来る。ホットドッグ屋の主人は「明日、息子が結婚する」と話す。その日の最後のホットドッグを売った主人は、店じまいをして、屋台をホテル前に移動させる。
バイク便の男(ダヴィド・オグロドニク)は、配達先で人妻との逢瀬を楽しんだのち、次の配達先である高層ビルに向かう。ドラッグの摂取によって高層ビルのエレヴェーター内で錯乱状態に陥りながらも配達を終えた男は、父親であるホットドッグ屋の主人とホテル前で会う。ホットドッグの屋台をバイクの後部につなぎ、父親とバイクに乗った男は、エンジンをかけようとする。
登山家の女(アガタ・ブゼク)と登山家の男(ピョトル・グウォヴァツキ)は、ホテルの部屋でポルノ・ビデオを見ている。1羽の鳩が部屋に飛び込んできて、鏡にぶつかる。男は鳩をつかまえて、部屋の外へ逃がす。休憩時間が終わったという男は、窓の外のリフトに乗り移る。女は部屋を出て、バス停へ向かう。男はガス・バーナーに火をつけて、作業に取りかかる。
画家(ヤン・ノヴィツキ)が川原で風景画を描いている。映画の撮影で1人の男が橋から川に飛び込んだ瞬間、風景画の右上に黒い絵の具が滴り落ちる。画家は帰り支度をしてバスに乗る。少年(ウカシュ・シコラ)は質屋へ押し入るが、質屋の主人はトイレで首を吊っていた。少年は何も盗まずに質屋を立ち去り、画家と同じバスに乗る。バスはホテル近くのバス停に着き、登山家の女と5人の修道女を乗せる。
アパートメントを訪れた医者(アンナ・マリア・ブチェク)は、暴れて抵抗する男と家財道具が積まれた階段に難儀しつつ、ほかの救命隊員たちとともに部屋へ入る。医者たちは、産気づいた女(グラジナ・ブウェンツカ=コルスカ)と瀕死の男(ヤヌシュ・ハビョル)を部屋から運び出し、救急車に乗せる。
気分が悪くなったアニャは、1111号室のバルコニーで昏倒する。心配したリチャードは、アニャを介抱しようとする。ヘルマンは廊下に設置してあった消火器で1111号室の扉を壊し、部屋へ入る。リチャードに抱きかかえられたアニャの姿を見て怒ったヘルマンは、リチャードに向かって走り寄るが、床にぶちまけられた消火剤で足をすべらせて、リチャードとアニャに勢い良くぶつかってしまう。リチャードとアニャの体は、バルコニーの柵を突き破り、虚空に投げ出される。ヘルマンはかろうじてアニャの手をつかむ。
落下したリチャードは、リフトで作業していた登山家の男にぶつかる。リフトから落ちた作業道具が救急車のフロントガラスに当たり、救急車の前面を燃え上がらせる。コントロールを失った救急車はバスと接触し、バスを横転させる。ホットドッグの屋台を牽引していたバイクは、横転した救急車の下敷きとなる。その上にリチャードと登山家の男が落下してくる。屋台に積まれていたガスボンベに引火し、爆発が起きる。部屋に入ってきた2人の警備員がヘルマンを取り押さえる。ヘルマンの手からアニャの手が抜け落ちて、ヘルマンが絶叫する中、アニャが落下していく。
事故現場一帯が黒い煙に覆われる。その様子を捉えた監視カメラの映像は、無数にある監視カメラの映像を映すマルチ・スクリーンの一部として、画面の右上に黒い点を形づくるのだった。

▼予告編



■ 参照: 高橋諭治の映画評論「得体の知れない不穏な予兆と恍惚を呼び起こす11分間の崩壊劇」(映画.com内記事〈2016年8月9日更新〉)http://eiga.com/movie/84553/critic
〈言うまでもなく映画は“時間”の自由な操作が可能であり、過去と未来を行き来することはもちろん、1分間の出来事を90分に引き延ばしたり、その逆を表現することもできる。ポーランドの鬼才イエジー・スコリモフスキの5年ぶりの新作は、午後5時から5時11分までの11分間の出来事を映像化したユニークな快作。とある街で暮らす映画監督、女優とその夫、バイク便の青年、救命士の女性など、11人のキャラクターの人生をモザイク状に描きながら交錯させ、あっと驚く惨劇へと突き進む群像劇だ。
11分という限定された時間内の登場人物それぞれの行動を入念に設計したであろう本作は、緻密な脚本に基づくサスペンス映画であることは間違いない。キャラクターの視点が変わるごとに、同じ時間に起こった出来事がまったく別のものに見えてくる。それなのに意外性を狙ったプロットの“ひねり”が売り物の映画になっていない。そこが凄い。映画の序盤から観る者に「何か恐ろしいことが起こる」と予感させる不穏な気配が、登場人物の行動や意思を超越した不条理な曖昧さをまとい、じわじわと確実に膨張して迫ってくるのだ。
例えば、何度も反復される低空飛行の旅客機の轟音がそのひとつだろう。都会の雑踏のノイズが強烈な音響効果でデフォルメされ、“旅客機、墜落!”の嫌なイメージが脳裏をよぎる。実際には旅客機は墜落しないのだが、この映画は“空”がひとつのキーワードだ。複数の登場人物が空を見上げるシーンがある。まるでUFOを目撃したかのように呆気にとられる彼らは、いったい何を見たのか。“空”を“クラウド”に置き換えて現代的な解釈を試みることもできようが、筆者はそんなことに頭が回らず、空から災いが降ってくる予兆に何度も襲われ、得体の知れない戦慄を覚えるはめになった。
さらに本作はホテルの窓から室内に飛び込んでくるハトや、高所から転落する人間をヴィジュアル化した視覚効果の使い方も抜群に素晴らしいのだが、筆者が最も驚嘆したシーンは別にある。ホテルの1111室で映画監督と対面中の若く美しいブロンド女優がベランダにさまよい出て、突然の体調不良に襲われて気絶する。彼女の豊満な肉体が恍惚感を伴って“崩れ落ちる”瞬間は、まさにこの奇妙な崩壊劇を象徴しているかのようだ。〉
2016年11月19日(土)下高井戸シネマ(東京都世田谷区松原3-27-26、京王線・東急世田谷線下高井戸駅から徒歩2、3分)で、19:10~鑑賞。

作品データ :
原題 WHILE WE'RE YOUNG
製作年 2014年
製作国 アメリカ
配給 キノフィルムズ
上映時間 97分




『イカとクジラ』『フランシス・ハ』のノア・バームバック監督が、世代の違う2組のカップルの交流とギャップをカラフルに描くヒューマンドラマ。40代のカップルと、彼らをかき乱す20代のカップルとのモラルや価値観のズレ、成功への夢と野心のぶつかり合いにリアルかつユーモラスに迫る。『LIFE!/ライフ』などのベン・スティラー、『インポッシブル』などのナオミ・ワッツ、テレビドラマ「GIRLS/ガールズ」シリーズなどのアダム・ドライバー、『レ・ミゼラブル』などのアマンダ・サイフレッドらが共演。

ストーリー :
ニューヨークのブルックリンに暮らすドキュメンタリー映画監督のジョシュ(ベン・スティラー)と、映画プロデューサーのコーネリア(ナオミ・ワッツ)は、子どものいないミドルエイジの夫婦。ジョシュは新作をなかなか完成させられずアートスクールで講師を務め、コーネリアは著名な監督である父の作品ばかりを手がけており、行き詰まりを感じていた。ある日、ジョシュはアートスクールの聴講生である監督志望のジェイミー(アダム・ドライバー)とその妻ダービー(アマンダ・サイフレッド)に声をかけられる。ジェイミーの作品を見てほしいと招待され彼らの家に赴くと、LPレコードやVHSテープ、レトロな雑貨、手作りの家具に囲まれており、常識にとらわれずクリエイティブな生活をする二人に刺激を受ける。ユニークなセンスを持つ若いカップルと交流していくうちに、ジョシュとコーネリアはエネルギーを取り戻していく。しかし、野心を秘めたジェイミーの映画作りに巻き込まれていき、思いがけない人生の選択を迫られる…。 

▼予告編



▼エンディング曲―デヴィッド・ボウイ(David Bowie、1947~2016)の「Golden Years」Lyrics :



■本作を丁寧に鑑賞するためには、次の映画評論―
山崎まどか「60代と40代と20代、3世代の物語であり、不況のニューヨークだからこそ生まれた映画」(映画.com内記事〈2016年7月19日更新〉)http://eiga.com/movie/81388/critic が、
大いに参考になる。
〈「ヤング・アダルト・ニューヨーク」でベン・スティラーとナオミ・ワッツ演じるジョシュとコーネリアの夫婦はジェネレーションXの世代に所属している。ベン・スティラーはその監督デビュー作の「リアリティ・バイツ」(94)でジェネレーションXを代表する存在だった。大学を出ても社会に所属せずモラトリアムを続ける若者たちを描いた群像という意味では、ノア・バームバックのデビュー作「彼女と僕のいた場所」(95)とも重なる。
30代に差しかかる頃、ジェネレーションXは永遠に若い文化に居座ることに決めた。彼らのアイデンティティであるサブカルチャーの部門においてさえ、自分たちがエスタブリッシュメントになり得ないと判断したためである。ベビーブーマーが音楽や映画のメインステージで権威の座から退かない限り、彼らの出番はない。コーネリアの父であるレスリーはジョシュと同じくドキュメンタリー作家で、ベビーブーマーだ。彼の時代には、志の高い物に資金を提供しようというスポンサーと観客がいた。その背景には恵まれた経済状況があったのは間違いない。レスリーが住むのはセントラル・パークの西側に位置するアッパー・ウェストという地域で、多くの文化施設や大学があり裕福な知識人たちが暮らすエリアとして知られている。彼と違って右上がりの経済を基盤としていないジョシュたちは00年代に再開発が進んだブルックリンに自分たちの居場所を見つけた。そして2008年、リーマン・ショックが発生。ブルックリンではマネー・ゲームに疲れた、あるいは失業した人々が独自の文化を築き、レトロな文化を愛する「ヒップスター」と呼ばれる種族を引きつける磁場となった。アダム・ドライバーとアマンダ・サイフレッドのジェイミーとダービーの世代だ。
40代と20代のジェネレーション・ギャップを扱っているように見える本作だが、実は60代と40代と20代、3世代の(しかも同種の職業人の)物語であり、不況時代のニューヨークだからこそ生まれた映画だ。ジョシュとコーネリアスが順調にキャリアを積んでいれば、20代のカップルと同じ地平で出会うことはない。40代であるジョシュと20代のジェイミーは、実は同じストレスを抱えている。ひとつ前のジェネレーションに自分たちがやりたかったことの基盤を食いつぶされたという恨みだ。ジェイミーたちの目には、オルタナティブであることを「選択」したジョシュの世代は、ジョシュの目線で見たレスリーたちベビーブーマーと同じくらい贅沢に映るに違いない。
ジェイミーのとある陰謀を知ったジョシュが、ローラーブレードという子供の乗り物で大人の証明となるスーツも着ないままレスリーのパーティへと急ぐシーンの滑稽さが、この映画のテーマを物語っている。彼が目指すリンカーン・センターは、アッパー・ウェストの文化の象徴のような場所なのだ。アッパー・ウェストを目指してニューヨークを北上するジョシュの姿は、遅ればせながら「大人になること」に目覚めたジェネレーションXの真実だ。それをその世代の象徴的な存在であるベン・スティラーがやることに大きな意味がある。〉


この評論中のキーワードであるジェネレーションX、ベビーブーマー、ヒップスターと、それらに関連するジェネレーションYおよびジェネレーションZに、【註】を書き加えると―

・ベビーブーマー(baby boomers)とは、米国において第二次世界大戦の終結直後に、復員兵の帰還に伴って出生率が上昇した時期に生まれた世代[おおむね1946年から1964年頃までに生まれた世代]。
少年時代から青年時代にかけてキューバ危機やベトナム戦争に遭遇した世代で、ベトナム戦争に反対するベビーブーマーはヒッピー運動を起こした。

・ジェネレーションX(Generation X 、X世代)とは、米国において1960年代から1970年代に生まれた世代[ケネディ政権(1961~63年)の時代からベトナム戦争終結(1975年)後までの時代に生まれた世代]。
生まれた時期はテレビの爆発的な普及が始まった時期であり、ベトナム戦争、キューバ危機やヒッピー運動の時期に1桁台を過ごした。そして、ヒッピー運動の衰退とベトナム戦争の終結による「しらけムード」の中で10代を過ごした。成人する1980年から1994年にかけては冷戦末期からソ連崩壊の時期であり、ジャック・ウェルチをはじめとする大資本家が「リストラ」「ダウンサイジング」と称した整理解雇ブームを惹き起こした時期である。このため、X世代は軒並み就職難に遭遇した。「ミー・ジェネレーション(me generation)」とも呼ばれ、個人主義と内向性が特徴的で、政治や社会に対して冷めている傾向が強い。

・ジェネレーションY(Y世代)とは、米国において1980年代から1990年代に生まれた世代[ベトナム戦争終結後からベルリンの壁崩壊(冷戦終結)を経てアメリカ同時多発テロ事件(2001年)前までの時代に生まれた世代]。X世代に続く世代[ベビーブーマーの子供世代(エコーブーマー〈echo boomers〉)]で、かつては1970年代半ばから1980年代に生まれた世代とされることが多かったが、現在ではミレニアル世代(Millennial Generation)[新千年紀が到来した2000年前後か、それ以降に社会に進出する世代]と同義に扱われることが多い。
1980年代前半に生まれた子供は、幼少期に冷戦の終結と社会主義の没落に遭遇し、思春期を迎えるティーンエイジャーの頃にインターネットの爆発的普及を経験した。このため、インターネットを駆使して活躍する者が多いといわれる。また、成人を迎える頃には「9・11テロ」に遭遇しており、政府の経済や社会政策への介入を肯定的に見る者が多い世代でもあり、バラク・オバマを大統領に当選させる原動力にもなった。一方、1990年代にはインターネットの普及と共に高校生や大学生といった若者の間で麻薬などのドラッグが広まった。それにより犯罪を犯し、刑務所から出所後も就職できずに再びドラッグの乱用や犯罪を繰り返す若者が急増し、彼らは「新たな失われた世代 (New Lost Generation)」とも呼ばれるようになった。

・ジェネレーションZ(Z世代)とは、米国においてY世代の次の世代[2000年代に生まれた世代]。Y世代よりもさらに周囲のIT環境が進展して、生まれた時からインターネットが当たり前のように存在するデジタルネイティブ(ネットネイティブ)世代。かつてはY世代が1970年代半ばから1980年代に生まれた世代とされていたため、Z世代もそれに続く1990年代以降に生まれた世代とされることが多かった。また、世代間の比較において、ミレニアル世代を1980年代から1990年代半ばに生まれた世代、Z世代を1990年代半ばから2000年代に生まれた世代と区切ることも多い。

・ヒップスター(Hipster)とは、米国においてデジタル世代であるY世代→Z世代を含むサブカルチャー用語として使われる。人と違う考え方やリベラルな思想、カウンター・カルチャー、アートやインディー文化を好み、創造性と知性に富むが、大衆的エンターテイメントや自分の趣味趣向にそぐわないものに対しては批判を行なう20代から30代にかけての男女を指す。主にニューヨークやシカゴ、サンフランシスコなどの大都市に近く、若者の文化が育っている地域に住んでいることが多い。


◎結局、本作の主要な登場人物の世代について言えば~各世代の定義については必ずしも一定しないものの~、
コーネリアの父であるレスリー・ブライトバートは、ベビーブーマー、
ジョシュとコーネリアはX世代、
ジェイミーとダービーはヒップスターとしてY世代ないしZ世代、である。
2016年11月18日(金)吉祥寺オデヲン(東京都武蔵野市吉祥寺南町2-3-16、JR吉祥寺駅東口徒歩1分)で、16:35~鑑賞。

作品データ :
製作年 2016年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 114分


樋口卓治による同名ベストセラー小説(2012年)を織田裕二主演で映画化したラブストーリー。余命宣告を受けた敏腕放送作家が、最愛の家族のために、妻の結婚相手を探す“人生最期の企画”に奔走する姿を描く。監督は『阪急電車 片道15分の奇跡』(2011年)で映画初メガホンを取った三宅喜重。

ストーリー :
妻になんて言おう。最初によぎったのは、そんな想いだった。
三村修治(織田裕二)。職業、バラエティ番組の放送作家。
数多くのレギュラーを抱え、このところ忙し過ぎるとは思っていた。
感じた異変。検査を受けて下されたのは驚くべき診断だった。すい臓がん。しかも末期。余命6か月。
1日でも長く延命し家族と静かに過ごす。それこそが正しい最期の過ごし方。だが。どうも面白くない。
今までずっと世の中の色々なことを 好奇心で「楽しい」に変えてきた。
そんな想いから、あれこれ企画を練り始める。家族に残せる「最後の企画」。
現在、妻・彩子(吉田羊)は専業主婦。まだ小学生の息子、陽一郎(込江海翔)を抱え苦労するだろう。そして、気丈そうに見えてもろいところがある。何とかして笑顔にしてあげられないか?
見かけたのは、結婚相談所の看板。そうだ―修治は思いつく。
「妻の結婚相手を探そう!」
そんなひらめきを胸に修治は突っ走る。
まずは婚活市場を勉強。同僚の手を借りてお見合いパーティーに潜入。更に元・仕事仲間で現在・結婚相談所の社長、知多かおり(高島礼子)に何とか協力を取り付けて、妻にとって最高の結婚相手を探し出してもらう。
「婚活」を続けているとやがて現われる、奇跡のような相手、伊東正蔵(原田泰造)。
インテリア販売会社社長。真面目で誠実、加えて独身。
修治の、まさに命がけのプロジェクトが始まった…。

▼予告編



♦ ラストシーン : 結婚式予行
修治が元気なうちに、かおりと伊東と彩子と陽一郎の4人は相談して、結婚式を早めることにした。もちろん本当の式ではなく、予行演習である。参列客はいない。そして、式場はかおりが経営する結婚相談所にある教会を使うので誰の遠慮もいらない。伊東は陽一郎に言う。「練習とはいえ、緊張するな」 さすがに修治も車椅子ではない。スーツで決めた修治がウェディングドレスに着替えた彩子をエスコートして、バージンロードを歩く。通常は、途中で夫にバトンタッチするものの、修治は祭壇前の伊東まで連れて行く。そして、新婦の前で語る。「伊東さん、あなたは、パンチのある彩子の几帳面さに面食らうかもしれません。それだけ、彼女はきめ細やかに、様々なフォローをしてくれるでしょう。だから、あなたの結婚生活の幸せは約束されます。陽一郎の中学受験もあり、時には落ち込むかもしれません。そんな時は、支えてあげてください。彼女は最高の女性です。今まで僕の妻でいてくれて、ありがとう。これからは伊東さんと幸せな家庭を築いてください。誓えますか?」 彩子「誓います」 修治「伊東さん、ボクの妻と結婚してください」 伊東「謹んでお受けします」かおりが拍手する。陽一郎も続いて。全員で拍手して、式は解散となった―。
2016年11月15日(月)吉祥寺オデヲン(東京都武蔵野市吉祥寺南町2-3-16、JR吉祥寺駅東口徒歩1分)で、18:00~鑑賞。

作品データ :
原題 JACK REACHER:NEVER GO BACK
製作年 2016年
製作国 アメリカ
配給 東和ピクチャーズ
上映時間 118分


リー・チャイルドの小説「ジャック・リーチャー」シリーズを実写映画化したサスペンスアクション『アウトロー』(クリストファー・マッカリー監督、2012年)の続編。元米軍の秘密捜査官にして流れ者のジャック・リーチャーが元同僚にかけられたスパイの嫌疑を晴らすべく、巨大な陰謀に立ち向かう。前作に引き続いてトム・クルーズが主演を務め、『アベンジャーズ』シリーズのコビー・スマルダーズやテレビドラマ『プリズン・ブレイク』シリーズのロバート・ネッパーらが脇を固める。監督は『ラストサムライ』のエドワード・ズウィック。

★ ジャック・リーチャーの生き様!
①一匹狼の流れ者で、所在は不明
陸軍を辞めてからは職も家も持たず、たった一人で放浪生活を送っている。通信機器も一切持たず、誰も彼の場所を特定することはできない。
②悪は絶対許さない、どんな敵でも立ち向かう正義感
例え相手が国家でも、法で裁けない悪事でも、独自のルートで調査し暴いていく。手段を選ばずどんな悪も成敗し、解決後は颯爽と去っていく。
③信じるのは己のみ、マイルールで突き進む
法律や他人の情報には流されず、マイルールのみを信じて突き進んでいく。自分の信念を絶対に曲げない強い意志を持っている。
④武器は持たない、拳だけで敵を制す
銃などの武器を持たず、拳ひとつで敵を倒していくの彼の戦闘スタイル。敵の銃攻撃をかわし、自分の拳や身近にあるものを即座に使って次々と敵をなぎ倒していく。

ストーリー :
アメリカ軍秘密捜査官を引退し気ままに放浪生活をしていたジャック・リーチャー(トム・クルーズ)は、バーで暴力事件を起こしてしまう。リーチャーの元に保安官のウッド(ジェイソン・ダグラス)らが現われ彼を連行しようとした時、リーチャーは「90秒以内に2つのことが起きる」⇒「まず電話が鳴る」、「次にあんたが逮捕される」と予言する。ウッドがしでかした悪行を警察にリークしたというリーチャーを鼻で笑うウッドだったが、電話が鳴りだす。するとそこへ数台のパトカーが到着し、ウッドは連行されていくのだった。その後、リーチャーはウッド逮捕で彼を手助けした元同僚であるスーザン・ターナー少佐(コビー・スマルダーズ)と電話で会話を交わすと、二人は会う約束をする。約束通り軍司令部にターナーを訪れたリーチャーだったが、そこにいたのは彼女ではなくモーガン大佐(ホルト・マッキャラニー)であった。モーガン大佐はターナーがスパイ容疑で逮捕されたと説明をする。彼女とたった一週間前に話したのにと訴えるリーチャーは、何かがおかしいと感じ軍司令部を後にする。軍で起こっていることを探るため、リーチャーはモーアクロフト大佐(ロバート・カトリーニ)に助けを求める。彼はリーチャーに、ターナーが関係しているとされているシベリ(M・セラーノ)とミルコビッチ(ニコル・バー)というアフガニスタンで殺害された二人の兵士のファイルを渡す。そして更にリーチャー自身も知らなかった、彼にサマンサ(ダニカ・ヤロシュ)という娘がいるという軍の情報も教えるのだった。

モーアクロフト大佐がリーチャーと接触しているのを見ていたハンター(パトリック・ヒューシンガー)は、モーアクロフト大佐を殴り殺してしまう。その頃、リーチャーは自分の娘かもしれないサマンサを見つけだし彼女に声を掛けるが、サマンサは彼を冷たくあしらう。次の日、リーチャーの元にエスピン(オルディス・ホッジ)という警官が来て彼を軍司令部に連れていく。そこにはモーガン大佐がおり、リーチャーをモーアクロフト大佐殺害容疑で逮捕すると告げる。刑務所に連れてこられたリーチャーは、今まで自分を尾行していた二人の男も来ていることを知る。ターナーと自分の命が狙われていることを悟ったリーチャーは、おとなしく投獄されると見せかけてエスピンから警官の制服を盗み、それを着てターナーを助けだす。無事刑務所から逃げだすことに成功した二人は、命を狙われる理由を探り始めるが、それと同時にハンターが二人を追っていた。二人はモーガン大佐が関わっていることを知ると彼の自宅に押し入り、彼のパソコンから情報を盗みだす。そこにサマンサの写真も含まれていることを知ったリーチャーは、彼女の命も危ないと感じ彼女の家へと向かうが、そこには既にハンターに荒らされた形跡があった。キッチンで隠れていたサマンサを見つけると彼女を連れ出し、三人で逃亡する。

三人はプルドーム(オースティン・ヘバート)という人物がシベリとミルコビッチの殺害現場を見ていて何かを知っているという情報を手にし、彼がいるニューオーリンズへと飛ぶ。リーチャーとターナーは、サマンサを安全なホテルに残してプルドームを探しに行く。プルドームを見つけた二人は、アフガニスタンで殺されたシベリとミルコビッチはパラソースという民間軍事会社の仕業だったということを聞きだす。しかし、プルドームはハンターの手下によって殺されてしまう。証人を失ったリーチャーらだったが、パラソースを束ねるハークネス将軍(ロバート・ネッパー)との対峙で、大量の麻薬を見つけだし、ハークネス将軍の逮捕にいたる。その頃、ホテルに隠れているサマンサは、クレジットカードを使ってしまい、ハンターに居場所を知られてしまう。ハンターに襲撃されたサマンサは、リーチャーに助けを求める。リーチャーとターナーは、急いでサマンサの元へ行き、彼女を助けだす。そして、リーチャーはハンターと対決し彼を倒すのだった。その後、ターナーは疑いが晴れて軍に復帰する。サマンサはリーチャーが自分の父親じゃないと言うが、彼に抱きついて別れを惜しむ。そして、リーチャーはまた放浪生活を始めるのだった―。

▼予告編