作品データ :
原題 THE GIRL ON THE TRAIN
製作年 2016年
製作国 アメリカ
配給 東宝東和
上映時間 105分

NYタイムズベストセラーにて21週No.1&77週ランクインなど、45ヵ国で空前のベストセラーとなったポーラ・ホーキンズ(Paula Hawkins、1972~)の同名ミステリー小説を基に映画化。離婚の悲しみから立ち直れずにいるアルコール依存症のヒロインが、通勤電車から眺めていた“理想の夫婦”(the perfect marriage)を襲った衝撃の事件に次第に巻き込まれていく様をミステリアスに描く。『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『ボーダーライン』のエミリー・ブラントが、別れた元夫を忘れられずにつきまとう主人公レイチェル役を怪しげな存在感~酒焼けした不健康な老け顔メイク~で熱演している。監督は『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』『ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男~』のテイト・テイラー。
ストーリー :
離婚の傷が癒えず、無職で酒浸りの日々を送るレイチェル(エミリー・ブラント)。そんな彼女が毎朝決まった時間に電車に乗り、別れた夫トム(ジャスティン・セロー)が再婚相手のアナ(レベッカ・ファーガソン)と暮らす家の裏庭を車窓から見つめる。さらに、その近所のスコット(ルーク・エバンス)とメガン(ヘイリー・ベネット)を「理想の夫婦」と美化し、取りつかれたように二人をのぞき見る。傷心に溺れ込む彼女にとって、その窓外の、幸せそうな二人だけが唯一の慰めだった。 ある朝、レイチェルは「理想の妻」メガンが自宅のバルコニーで別の男と抱擁しているのを目撃し、裏切りに接したような憤りを感じる。その夜、酔いに任せて、夫婦の様子が気になった彼女は、確認するため駅を降りる。しかし、彼らの家へ向かったところから記憶がなくなり、翌朝、気がつくと彼女は自分の部屋で大けがをして倒れていた。昨日のことを思い出そうとするが、酩酊していたため、記憶がブラックアウトしてしまい、どうしても思い出せない。そして間もなく、メガンは死体で発見される。
なぜか周囲から疑惑の目を向けられるレイチェル。どうやら、あの日の“空白の時間”に原因があるらしい。レイチェルが記憶を取り戻そうとすると、関わる人々の思いがけない秘密が明かされていく…。
★主要登場人物とキャスト―3人の女と3人の男の愛憎相関図・レイチェル(Rachel)[Emily Blunt(1983~)]
夫のトムと別れ、アルコール中毒で荒んだ生活をしている。酒癖の悪さで解雇されてからも、居候先の友人にはそれを隠して「通勤」するふりをして、ただ電車に乗り続け、ニューヨークの街を酔いのまにまに彷徨(さまよ)っている。変わらない日課は、そのニューヨークに通う電車の窓から、“2軒”の家を眺めつつ夢想に浸ること。1軒は、トムが不倫の末に再婚したアナと住む、かつての自分の家。そして、その家の2軒隣で“理想の(仲睦まじい)夫婦” スコット&メガンが暮らす、もう一軒。ある日、 “理想の”自分だと思いなすメガンが夫以外の誰かと抱擁(キス?)しているのを見かけて激高する。彼女を問い詰めに行くが、だらしなく酔っていたので記憶がない。
その後、メガンが失踪し、遺体で発見されるにいたり、現場にいたレイチェルに疑いの目が向けられる。もしかしたら自分がやった可能性もあると犯人捜しをするが、基本的に妄想で発言することが多く、的外れな発言で犯人探しを攪乱してしまう有様。本人は至ってマジメなつもりだが、アルコール依存というイメージが先だって、なかなか周りの信用を得られない。しかし、レイチェルがアルコールをやめ、次第に記憶がよみがえるとともに、恐ろしい事実が浮かび上がっていく。
・アナ(Anna)[Rebecca Ferguson(1983~)]
レイチェルの元夫トムの現在の妻。トムとの間にイービーという娘が生まれている。レイチェルとトムが住んでいた、電車から見える一軒家にそのまま住んでいる。たびたびトムに嫌がらせまがいに、些細な用事で連絡してくる元妻のレイチェルに恐怖心を抱いており、彼女が視界に入るだけで不安感を募らせる(不倫略奪婚ゆえの自業自得!)。一度は、うたた寝をしている時に勝手に家の中に入り込んできて、危うく子供を連れ去られるところだった。子育てに追われ、メガンにベビーシッターとして働いてもらっている。
・メガン(Megan)[Haley Bennett(1988~)]
レイチェルがいつも電車から覗いている家に住むブロンドの美女。レイチェルの以前の自宅の近所で夫のスコットと一緒に住んでいる。アナ&トムの赤ん坊イービーのベビーシッターをしている。精神科医のカマル(エドガー・ラミレス)によるカウンセリングを受けている。「理想の妻」とレイチェルが夢想する姿とは異なり、彼女には複雑な事情がからむ過去があった。かつて娼婦だったり、お風呂で寝入って我が子を溺死させたり、本当は男にだらしないなど…。円満そうに見えたスコットとの夫婦関係だが、実はスコットは嫉妬深く、常にメガンを監視し、束縛するモラハラ男だった。結局、彼女はあえなくも殺害に遭い、遺体となって発見された。しかも、体内に子を宿して。その子の父親は誰?
・トム(Tom)[Justin Theroux(1971~)]
レイチェルの元夫で、今はアナの夫。アナと同じく、元妻のレイチェルを遠ざけようとしている。レイチェルと結婚した時に購入した自宅にそのまま住み続けている。
・スコット(Scott)[Luke Evans(1979~)]
メガンの夫。支配的で、女性を縛り付けたがる性格。レイチェルは彼にメガンの「不倫」を知らせようとする。
・カマル(Kamal)[Edgar Ramirez(1977~)]
精神科医で、精神的に不安定なメガンのカウンセリングをしている。メガンは男女の仲になりたがるが果たして…?
主人公のレイチェル、彼女から夫を奪った女・アナ、レイチェルが憧れる若妻・メガンという“ワケあり”女性3人。そして、レイチェルの元夫のトム、メガンの夫のスコット、精神科医のカマルという、どことなく“胡散臭げな”男性3人。
本作では、この男女6人が織りなす、真実と虚構、狂気と欲望、秘密と策略が壊れた万華鏡のようにいびつな光を放つ…。
◎レイチェルはメガンが失踪した当日の記憶を失っていた。
翌朝、目が醒めたレイチェルは、泥まみれで、頭から血を流し、シャツも血が付いている姿に愕然とするばかり。彼女はアルコール依存症で酒を飲むと意識を失い記憶がなくなってしまい、暴言を吐く、暴力を振るうなど、自分では想像もできない行動をとっているらしいのだ…。
やがて死体となったメガンが森の中で発見される。
警察はレイチェルを疑う。「いつもは18時に帰宅するのに、当日に限って23時まで帰宅しなかったのはなぜなのか?」レイチェルは「犯人は自分なのか?」と自問し、必死に記憶をたどるも、いちいち思い出せない。
そんな折、レイチェルは電車でトムの元上司の妻マーサ(リサ・クドロー)を見かけ、以前ホームパーティ会場で酔っぱらってとんだ粗相をしたことを謝罪する。マーサは「あなたは、そのようなことはしていないわ」と彼女を慰める。その言葉が彼女の長年の疑惑を解く鍵になる。
レイチェルはトムから聞かされていた(否、洗脳されていた)。彼女がマーサの前で醜態をさらしてトムがとばっちりで解雇された、と。しかし、マーサは言う。「あなたは、気持ち悪くて部屋で寝ていただけなので謝罪するまでもないわ。トムが会社をクビになったのは、職場の女性に片っ端から手を出していたからよ…」
レイチェルが意識を失っていたときの常軌を逸した言動は、すべてトムの作り話だった!彼は彼女の記憶が飛んでいたことをいいことに、自分に都合よく間違った情報を操作していた。ある時、酔ったレイチェルがゴルフクラブで暴れて鏡を割ったと、トムはレイチェルを責める。しかし、実際はレイチェルが酔った時、トムが怒りに任せてゴルフクラブで鏡を割ったものだった…。要は、トムがレイチェルを悪者に仕立て上げ、離婚し、別の女に走ったのだ。レイチェルに記憶の断面が見えてくる。
彼女はメガンが殺された日の記憶を思い起こす。
メガン(車窓から見える幸せそうなメガンのことをレイチェルは勝手に「ジェス」と名付けていた)の「不倫」現場を目撃し、彼女を詰問しようと、電車から(アーズリー駅で)降りてメガン宅に向かう途中のことだった。トンネルの先でメガンがトムの車に乗り込むところに際会したレイチェルは、思わず「あばずれ(hole)!」と叫ぶ。と、それに気づいたトムが石のような鈍器(?)でレイチェルの頭部を殴りつける。気絶した彼女をその場に放置したまま、トムはメガンと一緒に車で立ち去るのだった。
トムとメガンは車を降り、森の中を歩き、まったく人気がなくなった場所でセックス行為に及ぼうとする。二人は不倫関係にあったのだ。
その時、メガンが「私、妊娠したの」と告げると、トムは一瞬ためらいながら「おめでとう」と言う。 が、須臾(しゅゆ)にして、彼は「中絶してくれ」と頼む。しかし、彼女はそれを断固拒否。キレた彼は彼女を殴り倒し、顔面に2発、蹴りを入れて気絶させる。 そして、岩陰に連れて行き、大きな石を彼女めがけて何度も叩きつけるのだった(鬼畜の所業!)。
レイチェルはメガンがその日に失踪し、その死体が見つかったことから、トムがメガンを殺したことに気づく。すぐに彼女は、トムの元に向かうが、家にはアナしかいなかった。アナにこれまでに思い出したことを告げるレイチェル。しかし、それはアナにとって、やはり信用できる言い分ではなかった。
とはいえ、アナ自身も家でボイスレコーダーを見つけ、その中でトムとメガンが会おうと会話しているのを知っていた。しかし、それでもアナはトムを愛していたので、ボイスレコーダーを投げ捨て聞かなかったことにする。
トムが帰宅し、レイチェルが詰め寄るとトムが態度を豹変させ、彼女をグラスで殴打し失神させる…。
意識が戻ったレイチェルに再び襲いかかるトム。何とか隙(すき)をついて、家の外へ逃げるも、トムに追いつかれて組み敷かれるレイチェル。
彼は彼女の首を絞めて殺そうとする。瞬間、彼女はワインオープナーで彼の首を刺して反撃する。もだえ苦しみ、虫の息となった彼。そこへ、アナがやってきて、彼の首に突き刺さったワインオープナーをさらにねじ込み、完全に止めを刺す。夫の正体~次々に不倫を重ねて悪びれず、いつもその相手の女性に責任をなすりつける最低男のクズっぷり【離婚したのはレイチェルのせい、浮気したのはアナのせい、メガン殺したのもレイチェルのせい(「あの日、あの場所にお前がいたからメガンは死んだ。ある意味、お前が殺したんだ」)!! 】~を知ったアナは、何の躊躇もなく、氷のように冷ややかな無表情で、夫を完全に見限り、「死ぬことを望んだ」のだった。
警察で事情を話したレイチェルは、「他に選択肢がなかった。あれは正当防衛です」と話す。アナも「レイチェルが言ったことは、すべて正しかった」と証言する。そして、事件解決。
【エンディング】時が流れ、レイチェルは電車に乗った際、反対側のハドソン川が見える側の席に座り、他人の家を盗み見ることもなくなった。ようやく過去の呪縛から解き放たれて、彼女は人生を再びやり直すのだった―。
【註】そもそもレイチェルが車窓越しに見た「不倫」現場での、メガンの不倫相手~夫スコットとは別の男~は、いったい誰だったか?メガンの失踪を知ったレイチェルがスコットに会いに行った際、スコットから見せられた写真で、問題の人物がメガンのカウンセリングを行なう精神科医のカマルだったことが判明。しかし、レイチェルが目撃した、メガンとカマルの「抱擁(embracing)」→「キス(kissing)」の光景は、カウンセリング上の微妙な関係を示唆するもので、厳密な意味での“不倫”とは言いがたく、レイチェル独特の相手(⇔自分)の理想化ゆえの勝手な邪推ないし早とちりに起因する心象風景にほかならなかった。
[厳密な意味での“不倫”とは、近代的な結婚制度(一夫一婦制)から逸脱した男女関係、すなわち配偶者のいる男や女が配偶者以外の異性と恋愛・性交を行なうこと(配偶者のいない男や女が、配偶者のいる異性と恋愛・性交を行なう場合も含む)。]
Cf.(1) 【IMDb “Storyline”】
The Girl on the Train is the story of Rachel Watson's life post-divorce. Every day, she takes the train in to work in New York, and every day the train passes by her old house. The house she lived in with her husband, who still lives there, with his new wife and child. As she attempts to not focus on her pain, she starts watching a couple who live a few houses down -- Megan and Scott Hipwell. She creates a wonderful dream life for them in her head, about how they are a perfect happy family. And then one day, as the train passes, she sees something shocking, filling her with rage. The next day, she wakes up with a horrible hangover, various wounds and bruises, and no memory of the night before. She has only a feeling: something bad happened. Then come the TV reports: Megan Hipwell is missing. Rachel becomes invested in the case and trying to find out what happened to Megan, where she is, and what exactly she herself was up to that same night Megan went missing.
Cf.(2) 【IMDb “Plot Synopsis”抜粋】
The next time Rachel rides the train, she sees Megan embracing another man on her balcony. She rushes further down the train to catch another glimpse, seeing them kissing. Rachel gets upset, saying it was a perfect marriage and this woman is destroying it.
▼予告編
▼ Trailer & Clips
▼ The Press Conference :
The cast of The GIrl on the Train Emily Blunt, Luke Evans & Hayley Bennett attend the press conference for the movie alongside Director Tate Taylor and original author of the book Paula Hawkins in London.
■私感 :
この映画は女優エミリー・ブラントがすべてである。
私の鑑賞したエミリーの出演作としては、今作が11作目に当たる(cf.本ブログ〈August 29, 2016〉記事)。
彼女は着々とキャリアを積み、演技に磨きをかけているが、今回もまた新境地を開き、その芸域を広げ、かつ深めている。
ヒロインのレイチェルは、
暗い過去の影を引きずったまま前に進むことができない女、常に泥酔して何かと記憶が飛んで切れ切れになってしまう女、別れた元夫とその妻にストーカーまがいのことを繰り返す女。
親身に世話してくれた友人にも愛想を尽かされ、誰にも必要とされず、信じてもらえず…。もしかして自分がメガンを殺したのではないかと自分自身を疑う切迫した不安にさいなまれながら、ますます精神的に追いつめられていく…。自らの疑いを晴らそうとメガンの夫スコットに近づくも、結果として一層それが状況を悪化させてしまう…。
エミリー・ブラントはこの、傷つき壊れ、憔悴し、人生のどん底にあえぎ、そしてそこから這い上がろうとするヒロインを、まさに好演・熱演・怪演!
私は今、どうやら彼女の大ファンになりそうな予感を覚えている―。






