普通人の映画体験―虚心な出会い -29ページ目

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2018年6月1日(金)新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3-15-15、JR新宿駅東口より徒歩5分)で、19:00~鑑賞。

「家族はつらいよⅢ」

作品データ :
製作年 2018年
製作国 日本
配給 松竹
上映時間 123分


『男はつらいよ』シリーズや『たそがれ清兵衛』などで知られる山田洋次監督によるホームコメディのシリーズ第3弾。熟年離婚、無縁社会に続く今回のテーマは主婦への讃歌。長男の妻・史枝が積年の不満を爆発させて家出してしまい、主婦不在となった平田家が混乱の極に達するさまをコミカルに描く。橋爪功、吉行和子、西村まさ彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優らシリーズおなじみのメンバーが顔を揃える。

ストーリー :
三世代が賑やかに同居する平田家。史枝(夏川結衣)は、育ち盛りの息子二人と夫・幸之助(西村まさ彦)、その両親と暮らす主婦。毎朝、弁当を作り、朝食の準備をし、夫と二人の息子を送り出したら、次は義父母の周造(幸之助の父/橋爪功)と富子(幸之助の母/吉行和子)の食事の面倒、そして掃除やら洗濯やら―。夫から月々の生活費を預かり、家計のやりくりをしている史枝は、近頃“私も外に働きに出てみたい” “フラメンコ教室に通ってみたい”と、つい思いを募らせるのだった…。
ある秋の日の穏やかな昼下がり、家事の合間にウトウトまどろんでいた史枝は、家に泥棒が入り、コツコツ貯めて冷蔵庫に隠しておいたヘソクリを盗まれてしまう。「俺が一生懸命働いてる時に昼寝なんかして!いい身分だな」「俺の稼いだ金でヘソクリなんてしやがって!ただのピンハネじゃないか」と心ない言葉を浴びせる幸之助。ついに史枝は溜まりに溜まった不満に火がつき、家を飛び出して田舎の実家へ帰ってしまう。一家の主婦がいなくなった平田家は、たちまち大混乱に陥る。体調の優れない富子に代わり、周造が掃除や洗濯、食事の準備と不慣れな家事に挑戦するが、四苦八苦するばかりで長くは続かない。主婦の家事労働がいかに大変なことか、しみじみ悟る周造であった―。
家族揃って史枝の存在のありがたみをつくづく実感するも、史枝が戻ってくる兆しは一向になく、平田家崩壊の危機に、このままではいけないと、緊急の家族会議が招集されるが…。

▼予告編

2018年5月29日(火)吉祥寺オデヲン(東京都武蔵野市吉祥寺南町2-3-16、JR吉祥寺駅東口徒歩1分)で、16:35~鑑賞。

darkesthour

作品データ :
原題 DARKEST HOUR
製作年 2017年
製作国 イギリス
配給 ビターズ・エンド/パルコ
上映時間 125分


DARKEST HOUR

名優ゲイリー・オールドマンが第二次世界大戦時に英国首相に就任し、ヒトラーの脅威に敢然と立ち向かったウィンストン・チェーチルを演じて第90回アカデミー賞主演男優賞に輝いた感動の歴史ドラマ。アカデミー賞では主演男優賞のほか、オールドマンの特殊メイクを担当した日本人メイクアップアーティストの辻一弘らがメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞(日本人としてこの部門での受賞は初!)。チャーチル没後に公開された戦時内閣の閣議記録によって明らかとなった実話を基に、チャーチルの首相就任からダンケルクの戦い~ダイナモ作戦(ダンケルク大撤退)~までの知られざる27日間が描かれる。チャーチルの妻を『イングリッシュ・ペイシェント』のクリスティン・スコット・トーマスが演じるほか、リリー・ジェームズ、ベン・メンデルソーンらが共演。監督は『プライドと偏見』『つぐない』のジョー・ライト。

ストーリー :
1940年5月、第二次世界大戦初期。ヒトラー率いるナチス・ドイツの勢力が拡大し、フランスは陥落寸前、イギリスにも侵略の脅威が迫っていた。 内閣不信任決議が出されたチェンバレン首相(ロナルド・ピックアップ)の後任として、外相のハリファックス(スティーヴン・ディレイン)が最適任者だという声が上がるが、本人はこれを固辞。そこで、国民からの人気は高いが、度重なる失策から政党内の “嫌われ者”だったウィンストン・チャーチル(ゲイリー・オールドマン)に白羽の矢が立つ。 朝から酒を嗜む変わり者の夫を叱咤激励する妻クレメンティーン(クリスティン・スコット・トーマス)や、気難しくもウィットとユーモアに富んだチャーチルの言葉をタイピングする秘書エリザベス(リリー・ジェームズ)のサポートを受けながら、国難に陥ったイギリスの新首相に就任したチャーチルは、ドイツとの和平交渉を勧めるチェンバレンとハリファックスらに陰口を叩かれながらも、「決して屈しない」と徹底抗戦を誓う。
そんな中、ドイツ軍に追い込まれた英国軍は、フランス北部のダンケルクの海岸まで撤退し孤立状態となっていた。30万人もの兵士が包囲され、救出する術(すべ)がない。ならば、彼ら兵士を救うべく船をダンケルクへ向かわせるのだ、大型船はもちろん、ボートや小型船など民間の船もすべて召集して。こうしてダイナモ作戦(Operation Dynamo)が実行される―。
日に日にナチス・ドイツの勢いは増す一方で、英国にも上陸の危機が迫る。ヒトラーに屈するのか、それとも戦うのか。ヨーロッパのみならず世界の運命がチャーチルの手に委ねられた。日々悩み、葛藤するチャーチル。そんな彼の姿に、就任当初はチャーチルに対して懐疑的だった英国王ジョージ6世(ベン・メンデルソーン)も心を開き、二人は絆を育む。そして、ついにチャーチルは歴史的決断を下す―。

▼予告編



▼ゲイリー・オールドマン(Gary Oldman、1958~)インタビュー映像 :



▼ Makeup Featurette :



▼オスカー像を手に“凱旋”帰国の辻一弘(1969~) :



合格 特殊メイク :
オールドマンvsチャーチル⑴オールドマンvsチャーチル⑵
<Actor Gary Oldman (left) portrays Winston Churchill in The Darkest Hour movie. The real Winston Churchill is on the right.>

辻一弘の特殊メイク
【肌の毛穴、首のシワ一つにも徹底したこだわりを貫く辻一弘の特殊メイクは、どの角度から見ても本物にしか見えない驚異の芸術的表現方法である。素顔ではチャーチルに似ても似つかないゲイリーを、丸顔でふくよかな体型のチャーチルに見事変身させた。】

第90回アカデミー賞メイク&ヘア賞
(本作のメイクアップチーム~〈左から〉辻一弘、ルーシー・シビック(Lucy Sibbick)、デヴィッド・マリノウスキ(David Malinowski)~は、第90回アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞。)

Cf. ⑴ 「『ウィンストン・チャーチル』特殊メイクの裏側 ― 製作期間6ヶ月!チャーチルとゲイリー・オールドマン、その奇跡のバランスとは」(THE RIVER- 2018年3月31日)
⑵ 「アカデミー賞受賞の辻一弘が語る、“チャーチルヘアの秘密”と“ハリウッドを離れて変わった人生”。」(VOGUE JAPAN - MARCH 27, 2018)

下三角 私はゲイリー・オールドマンの出演作品を、これまでに何作観ただろうか。たしか初めて出会ったのは『JFK』(オリバー・ストーン監督、1991年)、続いて『ドラキュラ』(フランシス・フォード・コッポラ監督、1992年)→『トゥルー・ロマンス』(トニー・スコット監督、1993年)→『レオン』(リュック・ベッソン監督、1994年)の順で観、以後折に触れて二十数作は観たように思う。
オールドマンはエキセントリックな役を演じさせたら当代随一であると評価され、多くの有名な役を演じてきた。私の鑑賞分に照らせば、例として『JFK』でのオズワルド、『ドラキュラ』でのドラキュラ伯爵、『レオン』でのノーマン・スタンスフィールド、『ロスト・イン・スペース』(1998年)でのDr.ザカリー・スミス、『ハンニバル』(2001年)でのメイスン・ヴァージャー、『ハリー・ポッター』シリーズでのシリウス・ブラック等々が挙げられる。これら、私にとって思い出深いキャラクターのうち、際立って印象深いのが、オズワルドとノーマン・スタンスフィールドであった。

『JFK』は米国第35代大統領ジョン・F・ケネディ暗殺の謎の真相に迫る衝撃の問題作(長尺3時間9分)。リー・ハーヴェイ・オズワルド(Lee Harvey Oswald、1939/10/18~1963/11/24)は、それまでケネディ大統領暗殺の「実行犯」とされてきたが、実は「でっち上げられた」人物なのではないか…。【1963年11月22日、テキサス州ダラス市内で、現地時間12:30にケネディが銃撃され(同日13:00死亡)→70分後の13:40(※一説に13:50-オズワルド逮捕の時刻は資料によって食い違う)にオズワルドが逮捕され→2日後の11月24日11:21にオズワルドがダラス警察の地下駐車場で、郡刑務所へ移送される車に乗る直前にジャック・ルビー(Jack Ruby、1911/03/25~1967/01/03、演:ブライアン・ドイル=マーレイ)によって銃撃される(同日13:07死亡)】。私の関心をぐいぐいと引き付ける同作で、オズワルド=オールドマンは出番こそ少なかったものの、確かな存在感を示し、異彩を放っていた。

映画 cf. 『JFK』 - Theme & Drummer's Salute (John William's score) :

【『JFK』はクレイ・ショー裁判をモデルにした作品である。ケネディ暗殺事件が法廷上で検討された唯一の例がクレイ・ショー裁判であった。ニューオリンズのジム・ギャリソン検事(Jim Garrison、1921~92)は、1967年3月2日、ニューオリンズの実業家クレイ・ショー(Clay Shaw、1913~74)を大統領暗殺に関わる陰謀罪で逮捕。ギャリソンはクレイ・ショーがCIA経由でケネディ暗殺事件に関わっており、事件はCIA、軍部、国家の関与するクーデターであると主張した。裁判はギャリソンが敗北するが、後に、CIAが「ウォーレン委員会」※の批判者たちへ圧力をかけたこと、クレイ・ショーが実際にCIAのために働いていたことが公的に示された。同作では、ジム・ギャリソン役をケビン・コスナーが演じ、ジム・ギャリソン自身もアール・ウォーレン役で出演した。〔※ウォーレン委員会(Warren Commission)は、ケネディ大統領暗殺事件を検証するため、1963年11月29日にリンドン・ジョンソン第36代米大統領により設置された委員会。正式名称は「ケネディ大統領暗殺に関する大統領特命調査委員会」で、委員長を務めた連邦最高裁長官のアール・ウォーレン(Earl Warren、1891~1974)に由来する通称。翌1964年、元海兵隊員オズワルドによる単独犯行とする最終報告書を提出した。〕】

『レオン』はニューヨークを舞台に、孤独なプロの殺し屋と家族を殺された12歳の少女の切なくも凶暴な純愛を描いたスタイリッシュ・アクション。ノーマン・スタンスフィールドは麻薬取締局の刑事でありながら、麻薬密売組織を裏で牛耳る男。非常に残忍かつ冷酷非情な性格で、女・子供を含める無関係な人間を殺すことにも何ら戸惑いを見せない。オールドマンはこの狂気じみた悪役を凄まじいばかりの演技力で怪演している。

映画 cf. 『レオン』 :


(少女マチルダを演じるのは、オーディションで選ばれ、同作が映画初出演となったナタリー・ポートマン〈Natalie Portman、1981~〉。また、マチルダの隣の部屋に住む、寡黙な凄腕の殺し屋レオンをリュック・ベッソン監督作品おなじみのジャン・レノ〈Jean Reno、1948~〉が演じている。)
2018年5月27日(日)立川シネマシティ(シネマ・ワン:東京都立川市曙町2ー8ー5、アクセス:JR立川駅北口から徒歩5分)で、20:55~鑑賞。

「アイ、トーニャ」

作品データ :
原題 I, TONYA
製作年 2017年
製作国 アメリカ
配給 ショウゲート
上映時間 120分


『スーサイド・スクワッド』のハーレイ・クイン役で一躍世界的にブレイクしたマーゴット・ロビーが自ら製作・主演を務め、世界中に衝撃を与えた“ナンシー・ケリガン襲撃事件”の中心人物トーニャ・ハーディング(Tonya Harding、1970~)の壮絶な半生を映画化した伝記ドラマ。フィギュアスケート史上最大のスキャンダルの知られざる真相を、トーニャと母親の歪んだ愛憎関係を軸に、ユーモアを織り交ぜつつ赤裸々かつ軽妙なタッチで描き出す。共演はセバスチャン・スタン、ジュリアンヌ・ニコルソン。またアリソン・ジャネイがトーニャの強烈な母親を怪演して第90回アカデミー賞助演女優賞に輝いた。監督は『ラースと、その彼女』『ザ・ブリザード』のクレイグ・ギレスピー。

ストーリー :
貧しい白人家庭に育った少女トーニャ・ハーディング(マーゴット・ロビー)。母親のラヴォナ(アリソン・ジャネイ)は、娘のスケートの才能に気づくと、彼女を一流の選手にして貧困から脱しようと本格的にフィギュアスケートを習わせる。しかし、娘に愛情を示すことはなく、トーニャは罵倒と暴力が日常の少女時代を過ごしていく。やがて天賦の才と日々の努力により、トーニャは1991年の全米フィギュアスケート選手権でアメリカ人の女子選手として史上初めてトリプルアクセルに成功。1992年のアルベールヴィル・オリンピック代表選手に選出された。1994年1月6日、リレハンメル・オリンピック選考会となる全米選手権を前に、トーニャのライバルである、練習を終えたナンシー・ケリガン(ケイトリン・カーヴァー)が何者かに襲撃される事件が発生。膝を殴打され負傷したナンシーは、全米選手権欠場を余儀なくされる。まもなくトーニャの元夫ジェフ・ギルーリー(セバスチャン・スタン)の指示による犯行が判明し、トーニャ自身にも疑惑の目が向けられた。一度は栄光を掴み、アメリカ中から大きな期待を寄せられた彼女のスケート人生は、この衝撃的な事件を境に一変し、転落していく…。

メラメラ ≪WHO IS TONYA HARDING?≫
・1970年11月12日、オレゴン州ポートランドに生まれる。母ラヴォナ(LaVona)と父アルバート(Albert)(=ラヴォナの5番目の夫)は、ホワイト・トラッシュ(White Trash)/レッドネック(Redneck)/プア・ホワイト(poor white)と呼ばれる、アメリカの白人貧困層の出。3歳のクリスマス・プレゼントに中古のスケート靴をもらい、スケートを始める。4歳でスケートの才能が開花、12歳でトリプルルッツに成功。
・1987年、両親(ラヴォナとアルバート)が離婚する。
・1989年-1990年シーズン(1989/07/01~1990/06/31)では、1989年10月のスケートアメリカ(Skate America)で初優勝(2位ジル・トレナリー/3位シモーネ・ラング)、1990年1月の全米選手権(US Figure Skating Championships)で7位となる(1位ジル・トレナリー/2位クリスティー・ヤマグチ/3位ホリー・クック/4位ナンシー・ケリガン)。
・1990年、19歳でジェフ・ギルーリー(Jeff Gillooly)と結婚する。

王冠1 1990年-1991年シーズン(1990/07/01~1991/06/31)では、1991年1月の全米選手権でトリプルアクセルを成功させ初優勝を果たし(2位クリスティー・ヤマグチ/3位ナンシー・ケリガン)、世界選手権への切符を手に入れる。当時女子選手でトリプルアクセルの成功者は、日本の伊藤みどり(1969~)に次ぎ史上2人目の快挙だった。
初出場となった1991年3月の世界選手権(World Figure Skating Championships)で、クリスティー・ヤマグチ(Kristi Yamaguchi、1971~)に次ぐ2位となり、3位にはナンシー・ケリガン(Nancy Kerrigan、1969~)が入りアメリカ女子が表彰台を独占した。
王冠2 1991年-1992年シーズン(1991/07/01~1992/06/31)では、1991年10月のスケートアメリカで、ショートプログラムとフリースケーティング双方のトリプルアクセルを成功させ優勝を果たす(2位クリスティー・ヤマグチ/3位スルヤ・ボナリー)。
1992年1月の全米選手権で、かかとの怪我もあったが3位となりアルベールヴィル・オリンピックの切符を手に入れた(1位クリスティー・ヤマグチ/2位ナンシー・ケリガン)。
1992年2月のアルベールヴィル・オリンピック(XVI Olympic Winter Games)で、前年まで成功していたトリプルアクセルが、オリジナルプログラム・フリー演技共に着氷に失敗。結局ミスが響いて総合4位入賞に留まり、オリンピックのメダル獲得はならなかった(1位クリスティー・ヤマグチ/2位伊藤みどり/3位ナンシー・ケリガン)。
1992年3月の世界選手権で6位(1位クリスティー・ヤマグチ/2位ナンシー・ケリガン/3位陳露)に終わる。

もやもや 1992年-1993年シーズン(1992/07/01~1993/06/31)では、不調に陥る。1993年1月の全米選手権で4位となり、世界選手権の切符を手に入れることができなかった(1位ナンシー・ケリガン〈初優勝〉/2位リサ・アーバイン/3位トニア・クワイトコウスキ)。
・1993年、ジェフと離婚する。
・1993年-1994年シーズン(1993/07/01~1994/06/31)では、1993年10月のスケートアメリカで3位となる(1位オクサナ・バイウル/2位スルヤ・ボナリー)。

叫び 1994年1月6日、1か月後のリレハンメル・オリンピックの代表選考を兼ねた全米選手権の会場で、練習を終えたナンシー・ケリガンが何者かに襲われる事件が発生した。俗に言う~「スポーツ界最大のスキャンダル」(ニューヨーク・タイムズ紙)~「ナンシー・ケリガン襲撃事件」である。(1992年アルベールヴィル・オリンピックで優勝したクリスティ・ヤマグチが1991-1992年シーズン終了後に引退し、次のリレハンメル・オリンピック代表を競う全米選手権での優勝候補の筆頭とされていたのは、ケリガンだった。)ケリガンは膝を殴打され怪我を負い全米選手権を欠場、ケリガンの有力なライバルだったトーニャがこの大会で優勝を果たした(2位ミシェル・クワン/3位ニコール・ボベック)。 

事件発生から2週間後、元夫であるジェフ・ギルーリーらが逮捕される。トーニャにも疑惑の目が向けられ始めた2月1日、元夫がトーニャに不利な証拠と共に司法取引を受け入れた。全米フィギュアスケート協会(USFSA)とアメリカオリンピック委員会(USOC)はトーニャをオリンピック代表チームから追放しようとしたが、彼女は法的措置をほのめかして強引に代表の座に留まった。(オリンピックへのアメリカ代表には、トーニャとともに、全米選手権2位のミシェル・クワンが一時選ばれたが、特例でケリガンにオリンピック出場が認められてクワンは補欠に回った。「悪役」トーニャVS「悲劇のヒロイン」ケリガン!)

1994年2月のリレハンメル・オリンピック(XVII Olympic Winter Games)本番でのトーニャは、テクニカルプログラムでのコンビネーションジャンプで、トリプルルッツが両足着氷となるミスを犯し10位と出遅れる。その2日後のフリーでは、演技直前の6分間練習の後に靴紐の問題が発生した。自身の出番になり名前をコールされてもリンクに現われず、バックステージで靴紐を調整している姿が放送される。失格寸前の1分50秒過ぎにようやく登場した(名前を呼ばれてから2分以内にリンクへ現われないと当時のルールでは失格となる)。
しかし、トーニャはフリー演技が始まってから最初のトリプルルッツが1回転となる失敗の直後、突然泣き出して演技を中断してしまう。ジャッジに対してリンクの縁に右足スケート靴を載せながら、靴紐の不具合を訴えた。ジャッジはトーニャのフリー演技のやり直しを認め、トーニャはリンクサイドでコーチや関係者と靴紐の調整を試みるがすぐに解決することはできずバックステージに戻っていった。次の出番であるカナダの選手ジョゼ・シュイナールは、予定外の事態にすぐリンクに登場して、演技を開始した(シュイナールは9位に終わる)。
トーニャはそのグループの最後で再びリンクに登場し、演技を最初から行なう。1回目に登場した時にミスしたトリプルルッツが成功し、合計5種類の3回転も成功させ演技終了時に笑みを見せたが、トリプルアクセルについてはシングルアクセル(1回転半)のジャンプに終わり、最終順位は8位入賞に留まった(1位オクサナ・バイウル/2位ナンシー・ケリガン/3位陳露)。

目 ケリガンが襲撃されて以降、事件への関与を強く否定し続けたトーニャだったが、リレハンメル・オリンピックが終了後の1994年3月16日、元夫らの襲撃事件を直後に知りながら通報しなかった捜査妨害の罪を認めることで、懲役刑を免れ3年間の執行猶予、500時間の社会奉仕活動、罰金16万ドルを受け入れた。
その後、トーニャは全米フィギュアスケート協会から永久除名処分を受ける。1994年全米選手権での優勝と公式大会出場権やコーチになるための権利が剥奪された。プロのイベントには制限を受けなかったが、彼女を起用しようとするプロモーターは現われなかった。

・1995年、2番目の夫となるマイケル・スミス(Michael Smith)と結婚→翌年に離婚。
・長野オリンピック開催直前の1998年、アメリカのテレビ番組で久々にケリガンと対面して直接謝罪、マスコミはこぞって「和解成立」と報じられた。
・1999年、プロスケート選手権に招待され2位の成績を残しプロスケーターとして再出発するかに思えたが、翌2000年にボーイフレンドへの暴行容疑で逮捕され、完全にプロスケーターとしての道が閉ざされた。
・2003年から、プロボクシングに挑戦するも6ファイトで引退、2008年には「Rumble in the Cage」という大会で総合格闘家としてもデビュー、しかし程なく持病の喘息を理由にリングを退く。
・2010年、39歳で3番目の夫となるジョセフ・プライス(Joseph Price)と結婚し、翌年に長男を出産→母親業が中心となって、現在に至る(彼女の名前は、トーニャ・ハーディングならぬトーニャ・プライス)。

▼予告編


▼ cf. scene comparisons :
(Comparisons between scenes from the movie I, TONYA and the real events from the life of Tonya Harding.)


▼ cf. Tonya Harding & Margot Robbie :


▼ cf. Tonya Harding - 1991 US Figure Skating Championships, Ladies' Free Skating :


▼ cf. Tonya Harding - 1991 Skate America, Ladies' Free Skating :


▼ cf. Raw footage from the Nancy Kerrigan attack - January 6, 1994 :


▼ cf. Tonya Harding - 1994 Lillehammer Olympic, Ladies' Free Skating, 1st Attempt :


▼ cf. Tonya Harding - 1994 Lillehammer, Ladies' Free Skating, 1st Attempt, 2nd Attempt :


▼ cf. Nancy Kerrigan - 1994 Lillehammer Olympic, Ladies' Free Skating :


■私感 :
波乱万丈な半生の物語!年歯わずかに23歳で世界のヒール役に転じた伝説の元フィギュアスケーター!
氷上のプリンセスから犯罪者へ、人生の頂点からどん底へと突き落とされたトーニャ・ハーディングの想像を絶する人生は、悲しくもどこか愉快で、実にワイルドでクレイジー!
ある映画ライターは喝破する。本作は「われわれバカどものための、バカ界のチャンピオンの生き様を描いた大傑作!」である、と。私が心情的に共感する、その映画評論の全文は、以下のごとし(村山章「われわれバカどものための、バカ界のチャンピオンの生き様を描いた大傑作!」)。

《あなたはバカですか?それとも賢いですか?気分を害するかも知れないが、大抵の人はバカの範疇に入るだろう。学歴とかどれだけ成功しているかはまったく関係がない。人間は取り返しのつかない愚かなことをしでかす生き物であり、だからこそ「偉い人の立派な話」が珍重されるのかも知れないが、ここでハッキリと言っておきたい。「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」は、われわれバカどものための、バカ界のチャンピオンの生き様を描いた大傑作だと!
バカ界のチャンピオンとは、実在の元フィギュアスケーター、トーニャ・ハーディング。スポーツ界のみならず世界でもトップレベルの“ロクでもない女”として悪名を馳せた嫌われ者だ。というのも、1994年にハーディングのライバルだったナンシー・ケリガン選手が何者かに襲撃され、事件の黒幕としてハーディングの名前が浮かび上がったのだ。それでもハーディングはリレハンメル五輪行きを勝ち取ったが、今度は演技中にジャンプに失敗。泣きながら靴紐のせいだと強弁して審査員にやり直しを認めさせたのである。
世界中が思った。ライバルの選手生命を断とうとしたこのビッチは、いけしゃあしゃあと五輪に出場して、試合中のぶざまな失敗をナシにしてもらおうとワガママを言っているのだと。本作はそんな恥ずべき事件の真相を当事者であるハーディングに語ってもらい、それをもとに作られた伝記映画だ。
「ラースと、その彼女」のクレイグ・ギレスピー監督と脚本のスティーヴン・ロジャースは冒頭ではっきりと宣言する。この映画はハーディング(と、他の関係者)の証言をもとに作りました、本当かウソかはともかく、彼らはこう言っているのです、と。つまりこの物語で描かれる真実はすべて主観であり、典型的な「羅生門」スタイルと言える。登場人物の数だけ真実がある―というアレだ。
ただし、それぞれの言い分がぶつかりあって、矛盾や真相が浮かび上がる心理ミステリーには決してならない。なぜなら(これまた劇中の台詞にあるのだが)本作には本当に「バカしか出てこない」。誰もがその場限りの杜撰なことしか考えておらず、どこにも深みのある真実なんて宿らないのだ。
しかし深みがないからこそ、バカな人々の限界や愚かさ、そしてそれでも生き抜かなくてはならない人生の切実さが浮かび上がってくるのだ。非常に優れたブラックコメディでありながら、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」や「レイジング・ブル」をも想起させる、泥水をすするがごときピカレスクロマンに心から感動した。》

トーニャはホワイト・トラッシュの家庭に生まれ育った。父親は職を転々とし、基本的に無職で、母親は安月給のウェートレス。彼女は親と一緒に道端の空き缶やペットボトルを拾い集めて食事代を稼いでいた。そして、モンスターマザーから精神的・肉体的な虐待を受け続け、やがて逃げるようにして結婚した夫からも暴力を振るわれ続ける。幼少から暴力の中で育った彼女は、旦那のDVはすべて自分のせいだと思いこみ、謝罪されるとすぐに縒(よ)りを戻すということを繰り返していた。
貧困と虐待の、恵まれない環境に翻弄される、そんなトーニャに課せられた至上命題こそ、ホワイト・トラッシュから脱出すべく、スケートに主体を賭けることだった。
トーニャはフィギュアスケーターとして超一級品だった。当時の「優雅にしゃなりしゃなりと踊っていればいい」女子シングルに※、スピード感のある切れのいい高難度ジャンプを持ち込んで新風を吹き込んだことは特筆大書すべき点である(彼女が跳ぶトリプルアクセルの高さと距離、力強さは格別!)。その凛々たる勇気と果敢なチャレンジ精神は賞賛に値する。

※フィギュアスケート(figure skating)は起源からいってヨーロッパのものであり、女子の場合、ブロンドの美女が気品に満ちた氷上の芸術を見せるもの、といった歴史的な考え方が根強い。

スケーターとしてのキャリアの絶頂期を迎えたのも束の間、バカ丸出しのトーニャは腐れ縁でつながる元夫(DV気質のあるダメ男)とそのやくざな仲間たちがやらかす「ナンシー・ケリガン襲撃事件」で、“世界一悪名高きスケーター”としてフィギュアスケート史に名を残すこととなってしまった。選手生命を絶たれた後も、“世紀の嫌われ者”のイメージが払拭されることはなく、姿を現わすその先々でブーイングを浴びるなどの冷遇を受け続けてきた。
しかし、彼女は決してめげず・へこたれず!一期(いちご)の浮沈にかかわる一大不祥事でどんなに心が折れようとも、その痛手から立ち上がるバイタリティーは強靭そのもの!

本作では、「バカしか出てこない」物語が見事に展開する。
その“バカ”のバカたるゆえんは、様々な形をとった、私たち凡俗の輩(やから)の分身(⇒ただの一人の人間)であること。だからこそ、このバカ物語~与えられた宿命の中でジタバタ生きる人間模様~の構成的な妙を、私は思う存分賞味できた。

それにしても、私がトーニャ・ハーディング(⇒マーゴット・ロビー)の不思議な魅力に幻惑されたことも事実。
人々~マスコミ関係者をはじめとする、お調子者の大衆/民衆/庶民~に一瞬愛され、そして嫌われ、最後は笑い者にされたトーニャ。それでも断じて人生を諦めず、自身が輝ける場所を求めて闘い続けたトーニャ。何という、不撓不屈のファイティング・スピリット!人生をサバイバルしていく雑草のようなたくましさ!
私は本作に見入りながら、トーニャの生の相を突きつめ、そこに自らの逃れがたい“苦悩”としての現実を一身に背負い続けることで駆動する“情熱”のダイナミズムを確認できたとき、トーニャという一個の存在者を根源から共感的に理解できたように思うのだった―。
2018年5月27日(日)立川シネマシティ(シネマ・ワン:東京都立川市曙町2ー8ー5、アクセス:JR立川駅北口から徒歩5分)で、18:50~鑑賞。

「四月の永い夢」

作品データ :
製作年 2017年
製作国 日本
配給 ギャガ・プラス
上映時間 93分


第39回モスクワ国際映画祭で2冠(国際映画批評家連盟賞およびロシア映画批評家連盟特別表彰)に輝いたヒューマン・ドラマ。恋人を亡くした一人の女性が喪失感や心の棘から解放されていく姿を、日常の輝きの中で描く。メガホンを取るのは、『走れ、絶望に追いつかれない速さで』(2015年)の新鋭・中川龍太郎。ヒロイン・初海役に、ジブリ映画『かぐや姫の物語』(高畑勲監督、2013年)で主人公の声を演じた朝倉あき。初海に恋する青年・志熊役を『世界は今日から君のもの』の三浦貴大が演じる。

※中川龍太郎監督(1990~)は、2017年6月の「第39回モスクワ国際映画祭」受賞の記者会見で、こう語っている。「今の日本は表では平和に見えるが、同時に生きている実感を持ちづらい社会。そんな中で、悲しみややりきれなさを抱えながらも、どのように次のステージへ向かっていけるのかということを静かなトーンで描きたかった」。

ストーリー :
27歳の滝本初海(朝倉あき)は、3年前の春に恋人を亡くして以来、時間が止まったまま。音楽教師を辞め、今は近所の蕎麦屋でバイトしながら単調で穏やかな日々を送っていた。そんな彼女のもとに、亡くなった恋人の母親から一通の便りが届く。中には、彼が初海に向けて書き遺した最後の手紙が同封されていた。この手紙をきっかけに、初海の凪いでいた日常が少しずつ動きはじめる。元教え子との再会、蕎麦屋の常連で染物工場で働く青年・志熊(三浦貴大)からの思いがけない告白。そして、心の奥にしまわれた小さな秘密…。喪失感から緩やかに解放されていく初海の日々が紡がれていく…。

▼予告編

2018年5月25日(金)新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3-15-15、JR新宿駅東口より徒歩5分)で、19:15~鑑賞。

作品データ :
製作年 2018年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 110分


「のみとり侍」

『後妻業の女』の鶴橋康夫監督が、『テルマエ・ロマエ』の阿部寛とタッグを組んだユニークな艶笑人情時代劇。鶴橋監督自身が脚本も兼任し、小松重男の短編小説集『蚤とり侍』(1987年、新潮社)の人気エピソードをもとに再構築した。藩主の逆鱗にふれ、“猫の蚤取り”という奇妙な仕事を命じられた生真面目なエリート侍がたどる数奇な運命をユーモラスに綴る。共演は豊川悦司、寺島しのぶ、斎藤工、風間杜夫、大竹しのぶ、前田敦子、松重豊、落語家の桂文枝ら。

ストーリー :
十代将軍・徳川家治の治世。老中・田沼意次(桂文枝)の規制緩和によって賄賂も横行する一方、景気は上向き、人々は太平を謳歌していた。越後長岡藩の勘定方書き役として出世コースをひた走る小林寛之進(阿部寛)は、 “清廉潔白”、“質実剛健”などんぐり眼の男。しかし、歌会の場で藩主・牧野備前守忠精(松重豊)に大恥をかかせてしまったため、江戸の裏稼業“猫の蚤とり”をするよう命じられる。途方に暮れる寛之進は、「蚤とり」の親分・甚兵衛(風間杜夫)と女将のお鈴(大竹しのぶ)の元で働くことになる。猫の「蚤とり」とは、オモテの顔は、文字通り、お客の飼い猫の蚤を取って日銭を稼ぐ仕事だが、実際のウラの顔は、床で女性に愛をご奉仕する“添寝業”だった。寛之進は貧しい子供たちに読み書きを無償で教える佐伯友之介(斎藤工)をはじめ貧乏長屋で暮らす人々の助けを借りながら、何とか“蚤とり業”を始める。ほどなくして寛之進は、亡き妻・千鶴に瓜二つの女・おみね(寺島しのぶ)と運命的な出会いを果たす。おみねが初めての“蚤とり相手”となって胸高鳴る寛之進だったが、開始早々、おみねから「この、下手くそが!」と身も蓋(ふた)もない罵声を浴びてしまう。侍として、必死に積み上げてきた剣術や学問、プライドもここでは無意味。意気消沈する寛之進の前に、江戸でNo.1の伊達男にして、恐妻家の清兵衛(豊川悦司)が現われる。清兵衛は小間物問屋・近江屋の婿養子で、 妻・おちえ(前田敦子)の尻に敷かれながらも、その浮気癖は治らない。おちえはその浮気封じのために、清兵衛の一物に饂飩粉(うどんこ)をまぶしていた。そんな清兵衛に寛之進は「拙者に女の悦ばせ方を教えてはくれぬか!」と頼み込む。清兵衛先生の温かなご指導と寛之進の持ち前の勤勉さから、 寛之進の“蚤とり技術”はめきめきと上達し、一人前になっていく。しかし、老中・田沼意次が失脚すると、急遽“蚤とり禁止令”が布かれる。寛之進はじめ「蚤とり」たちは一転、犯罪者として窮地に立たされてしまう。果たして、寛之進は武士として、男として、その生きざまを江戸に示すことができるのか?そして、運命の相手・おみねとの恋を成就させることはできるのか?

▼予告編

2018年5月22日(火)「ココロヲ・動かす・映画館○」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-15、JR吉祥寺駅北口徒歩約5分)で、17:50~鑑賞。

「聖なる鹿殺し」⑴ 「聖なる鹿殺し」⑵

作品データ :
原題 THE KILLING OF A SACRED DEER
製作年 2017年
製作国 イギリス アイルランド
配給 ファインフィルムズ
上映時間 121分


『ロブスター』のギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモス監督、ランティモス及びエフティミス・フィリップ脚本による、不条理な復讐劇。第70回カンヌ国際映画祭脚本賞受賞作。心臓外科医の男が、亡くなった元患者の息子と親しくしていくうちに、自分の子どもたちに不可解な異変が起きるさまをミステリアスかつ不穏な筆致で描き出す。『ロブスター』に続きコリン・ファレルが再びランティモス監督と組んだほか、『LION/ライオン~25年目のただいま~』のニコール・キッドマン、『ダンケルク』のバリー・コーガンらが出演。

ストーリー :
郊外の豪邸に暮らす心臓外科医スティーブン(コリン・ファレル)は、美しい妻アナ(ニコール・キッドマン)と健康な二人の子供~14歳の長女キム(ラフィー・キャシディ)と10歳の長男ボブ(サニー・スリッチ)~に恵まれ、順風満帆な人生を歩んでいるように見えた。スティーブンには、家族に内緒で時どき会って、その成長を優しく見守る少年が一人いた。かつて彼が担当した手術で死なせてしまった患者の息子、16歳のマーティン(バリー・コーガン)だった。スティーブンはマーティンに腕時計をプレゼントしたりと何かと気にかけてやっていた。ところが、彼マーティンを家に招き入れ家族に紹介したときから、説明不能な異変が起こり始める。まずボブが、次にキムが突然歩行困難と拒食に陥り、二人は家の中を這い回るようになる。そして、妻のアナまでもが…。家族に一体何が起こっているのか?スティーブンの家族の未来に関する、マーティンの不気味な予言が現実になっていくにつれ、スティーブンはついに容赦ない究極の選択を迫られることになる…。

▼予告編


▼ヨルゴス・ランティモス監督(Yorgos Lanthimos、1973~) インタビュー :



▼ニコール・キッドマン(Nicole Kidman、1967~) インタビュー(2分28秒→予告編) :



▼コリン・ファレル(Colin Farrell、1976~)×バリー・コーガン(Barry Keoghan、1992~) インタビュー(2分28秒→予告編)

2018年5月15日(火)「ココロヲ・動かす・映画館○」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-15、JR吉祥寺駅北口徒歩約5分)で、18:00~鑑賞。

「彼の見つめる先に」

作品データ :
原題 Hoje Eu Quero Voltar Sozinho
英題 The Way He Looks
製作年 2014年
製作国 ブラジル
配給 デジタルSKIPステーション/アーク・フィルムズ
上映時間 96分


ブラジル・サンパウロを舞台に、思春期の若者たちの揺れ動く心情を優しく掬い取る青春ドラマ。本作の元になったのは、ダニエル・ヒベイロ監督が2010年に手がけた『今日はひとりで帰りたくない』(原題:Eu Não Quero Voltar Sozinho /英題:I Don't Want to Go Back Alone、2010年)。各国の映画祭に出品されたこの短編作品が人気を博したことで、監督自らの手で同じキャストを起用して長編映画化。第87回アカデミー賞外国語映画賞ブラジル代表作品。主演に抜擢されたのは、舞台やテレビシリーズなどに出演してきたジュレルメ・ロボ。ファビオ・アウディ、テス・アモリン、ルシア・ホマノらが共演している。

ストーリー :
目の見えない少年レオナルド(ジュレルメ・ロボ)は、ちょっと過保護な両親と、心優しい祖母、いつもそばで支えてくれる幼なじみのジョヴァンナ(テス・アモリン)に囲まれて、初めてのキスと留学を夢見る、ごく普通の高校生。でも、何かと心配ばかりしてくる両親が最近ちょっと鬱陶しい。ある日、クラスに転校生のガブリエル(ファビオ・アウディ)がやってきた。レオナルドとジョヴァンナは、目の見えないレオを自然に受け入れてくれたガブリエルとすぐに仲良くなる。ガブリエルと一緒に過ごすうちに映画館に行ったり自転車に乗ったり、今まで経験したことのない新しい世界を知っていくレオナルド。やがてレオナルドとガブリエル、そしてジョヴァンナ、それぞれの気持ちに変化が訪れる。いつしかガブリエルに対し、友情以上の感情が芽生えていくレオナルドだったが…。

▼予告編

2018年5月1日(火)吉祥寺オデヲン(東京都武蔵野市吉祥寺南町2-3-16、JR吉祥寺駅東口徒歩1分)で、19:15~鑑賞。

AVENGERS:INFINITY WAR ⑵AVENGERS:INFINITY WAR ⑴

作品データ :
原題 AVENGERS:INFINITY WAR
製作年 2018年
製作国 アメリカ
配給 ディズニー
上映時間 150分


「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」

アメリカン・コミックのマーベル・コミック『アベンジャーズ』の実写映画シリーズ第3作。また、様々な「マーベル・コミック」の実写映画を、同一の世界観のクロスオーバー作品として扱う「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」シリーズとしては19作目の映画。
アイマンマン、キャプテン・アメリカ、ソー、ハルクといったシリーズ当初からのヒーローたちに加え、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『ドクター・ストレンジ』『スパイダーマン:ホームカミング』『ブラックパンサー』からも主要ヒーローが参戦。
6つすべて揃うと全宇宙が危殆(きたい)に瀕してしまうエネルギー結晶体=“インフィニティ・ストーン”を狙い、地球に襲来した宇宙最強の敵サノスに対し、スーパーヒーロー・チーム“アベンジャーズ”が全滅の危機に陥るほどの壮絶な戦いを強いられる。
出演はロバート・ダウニー・Jr.、クリス・エヴァンス、クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ、スカーレット・ヨハンソン、ベネディクト・カンバーバッチ、トム・ホランド、チャドウィック・ボーズマン、クリス・プラットらに加え、サノス役でジョシュ・ブローリン。監督は『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』を手がけたアンソニー・ルッソ&ジョー・ルッソ兄弟。

ストーリー :
6つの“インフィニティ・ストーン”。宇宙誕生以前に存在した6つの特異点(重力が無限大にかかっている部分⇒凄まじいエネルギーがある部分)が、大爆発によって宇宙が生まれた時に残骸となり、6つのエネルギーの結晶石へと姿を変えた。ブルー、イエロー、レッド、グリーン、パープル、オレンジに輝く6つの結晶石は、それぞれが異なる恐るべきパワーを秘めており、すべてを集めれば、全能の力を得られ、指をパチンと鳴らすだけで宇宙の全人口の半分を消すことができると言われている。
この究極の力を秘めたインフィニティ・ストーンを狙って、宇宙最凶の“ラスボス”サノス(ジョシュ・ブローリン)が地球へ降臨する。この未曾有の危機にアイアンマン(ロバート・ダウニーJr.)、キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)、ハルク(マーク・ラファロ)、ソー(クリス・ヘムズワース)らスーパーヒーローたちが一人残らず結集。全宇宙の運命をかけた壮大な勝者生き残り戦に挑む。果たして、彼らヒーロー軍団“アベンジャーズ”は、宇宙を、そして人類を救えるのか?

▼予告編



▼メイキング映像 :



◆ cf. 10 years of MCU(Marvel Cinematic Universe). From Iron Man to Infinity War. :
(This is mainly focus on heroes more than villains.)

※ MCU作品は、世界で最も大きな興行的成功を収めている映画シリーズであり、2位の『スター・ウォーズ』シリーズに大差をつけ世界歴代1位の興行収入を記録している。2018年4月現在、19作品が公開されており、公開順で挙げると、以下の映画作品が該当する。なお、日本での公開順は、最初期の2作が入れ替わっている。
<フェイズ1>
・『アイアンマン』(2008年公開)
・『インクレディブル・ハルク』(2008年公開)
・『アイアンマン2』(2010年公開)
・『マイティ・ソー』(2011年公開)
・『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011年公開)
・『アベンジャーズ』(2012年公開)
<フェイズ2>
・『アイアンマン3』(2013年公開)
・『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(2013年公開)
・『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014年公開)
・『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年公開)
・『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015年公開)
・『アントマン』(2015年公開)
<フェイズ3>
・『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年公開)
・『ドクター・ストレンジ』(2016年公開)
・『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス』(2017年公開)
・『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年公開)
・『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年公開)
・『ブラックパンサー』(2018年公開)
・『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018年公開)
2018年4月27日(金)新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3-15-15、JR新宿駅東口より徒歩5分)で、17:20~鑑賞。

「となりの怪物くん」⑴「となりの怪物くん」⑵

作品データ :
製作年 2018年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 105分


漫画雑誌『デザート』(講談社)で連載された、ろびこの同名少女コミックを『あゝ、荒野』の菅田将暉と『PとJK』 の土屋太鳳主演で実写映画化。問題児で“怪物”の異名をもつ不登校男子・春(はる)と、ガリ勉で友達ゼロの冷血女子・雫(しずく)が出会い、次第に人のぬくもりを知り、友達も増えて、いつの間にか恋心を募らせていく様が描かれる。共演に『曇天に笑う』の古川雄輝、『亜人』の山田裕貴。監督は『黒崎くんの言いなりになんてならない』『君の膵臓をたべたい』の月川翔。

ストーリー :
イケメンで天才だが予測不能な行動をとる怪物・吉田春(菅田将暉)と、ガリ勉で淡白な「氷の女」水谷雫(土屋太鳳)。二人とも恋人はおろか友達もいなかったが、高校1年生の4月、雫が隣の席で不登校の春の家に嫌々プリントを届けに行ったことがきっかけで出会う。
それ以来、春は雫を勝手に“初めての友達”に認定し、さらに唐突に「シズクが好き」と告白。仕事で家にいない母親に認められるために、幼い頃から勉強だけを信じてきた雫にとって、友達や恋人などはただの邪魔な存在でしかなく、はじめは無関心だったが、やがて春の本当の人柄に触れ、次第に心惹かれていく。そして、二人の周りには、夏目(池田エライザ)、大島(浜辺美波)、ササヤン(佐野岳)ら、いつしか個性豊かな友達が増えていった。初めての友情、初めての恋愛。さらに春のライバル・ヤマケン(山田裕貴)の登場により、初めての三角関係も巻き起こり、二人の世界が変わっていく。それは春と雫にとって、初めて“みんな”で過ごす時間だった。
そんなある日、春の兄・吉田優山(古川雄輝)が春のもとに現われたことがきっかけで、春は絶縁状態だった父親・吉田泰造(佐野史郎)の元へ突如連れ戻されることになり、雫の前からも姿を消してしまう…。
(なぜ、春は“怪物”になったのか?そして、その真実が明らかになったとき、春と雫の恋の行方は―?)

▼予告編

2018年4月24日(火)シネマカリテ(東京都新宿区新宿3-37-12 新宿NOWAビルB1F、JR新宿駅東南口および中央東口より徒歩2分)で、20:45~鑑賞。

EYE ON JULIET

作品データ :
原題 EYE ON JULIET
製作年 2017年
製作国 カナダ
配給 彩プロ
上映時間 91分


遠く離れた地球の反対側から監視ロボットを通じて出会う男女の運命の恋を綴るラブストーリー。主演は『シークレット・アイズ』のジョー・コール、フランスの新星リナ・エル・アラビ。監督・脚本は、『魔女と呼ばれた少女』(2012年)で第85回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、世界にその名を知られることとなったカナダの気鋭キム・グエン(Kim Nguyen、1974~)。

DIRECTOR'S STATEMENT(本作オフィシャルサイト) :この映画は空想的な夢想であり、ルイ・アームストロング(Louis Armstrong、1901~71)の歌に登場するような空想とも似ているし、もっと言えば「この素晴らしき世界」(“What A Wonderful World”、作詞・作曲:George David Weiss、George Douglass、唄:Louis Armstrong)のようなものだ。我々を様々な方法で隔てる技術なり正統なものの壁を壊すことについて空想している。また、願わくば、いかに人間がこの一時はとても小さく、時にとても遠く思えるややこしいグローバル・ヴィレッジ(※世界のグローバル化によって、地球全体がひとつの村のように緊密な関係をもつようになったという主張のこと )の中で他人と触れ合い、お互いを理解しようとするかについての現代の物語であってほしい。

ストーリー :
北アフリカの砂漠地帯にある石油パイプライン。そこで石油泥棒を監視しているのは、6本足の小さなクモ型ロボット。それを遥か1万キロ離れたアメリカ・デトロイトから遠隔操作しているオペレーターの青年ゴードン(ジョー・コール)は最近、恋人ジャニーン(アレクシア・ファスト)と別れたばかり。“運命の人”と信じていた彼女との破局で深く傷ついた彼は、誰のことも信じられず、次の恋にも動き出せずにいた。そんな彼を見かねた上司のピーター(ブレント・スカグフォード)から、出会い系アプリを勧められるが、どうにもピンとくる出会いはない。ある日のこと、ゴードンは監視ロボットを介して若く美しい女性アユーシャ(リナ・エル・アラビ)と出会う。いつも暗い表情を浮かべている彼女が気になったゴードンは“Juliet3000”と名付けた監視ロボットを駆使し、アユーシャの身辺を探り始める。彼女には、カリム(フェイサル・ジグラット)という恋人がいるが、親からは別の相手との結婚を強要されていた。引き裂かれたくないアユーシャとカリムは、危険を冒してでも国を出る決意をしていたのだ。そんな状況を知ったゴードンは、彼女の哀しい運命を何とかしたいと考え、大胆なアクションを起こす…。

▼予告編



▼冒頭映像(5分40秒→予告編) :


[どこかの風景を暗視カメラで捉えたような映像で本作は始まる。そのあと映し出されるのは激しく言い争う男女の姿。男性は、ゴードン(ジョー・コール)。運命の人だと思っていた女性から裏切りに遭い、言い争っているのだ。クラブからは追い出され、いつも通り北アフリカの石油パイプラインをロボットでデトロイトから監視する仕事に向かう。別れを心配した同僚から、ゴードンの携帯に出会い系アプリを勝手に登録され「10人以上にメッセージを送れ」と言われるが、気が進まない。→風景は、遠く1万キロ離れた、北アフリカに変わる。広大な砂漠を古びたモペッドバイクで走るアユーシャ(リナ・エル・アラビ)。彼女もいつも通りの職場へ向かうが…。「遠隔ロボットを通して1万キロ先を監視」する、というデジタル世界に住む男性、「広大な砂漠と古びたバイク」というアナログな世界に住む女性という、相反する世界が同時に映し出されることで、この映像を通して、これから二人に巻き起こる「運命」を象徴するような、印象的な冒頭シーンとなっている。]

音譜 cf. ルイ・アームストロングの名曲「この素晴らしき世界」 :


[この曲はベトナム戦争を嘆き、平和な世界を夢見て、作詞・作曲され、1967年にレコーディングされた。同時代を生きた私は、このアイロニー(irony)に満ちた名曲を聴くたびに、泥沼化したベトナム戦争の悲惨な現実を思い描き、胸一杯に強い感情が溢れ返ったものだ。そして今、何十年ぶりだろうか、私は懐かしくも、そのサッチモ (Satchmo) ~20世紀を代表するジャズ・ミュージシャンの一人~の渋い声に痺れ、その豊かな感情表現に感じ入っている…。ちなみに、同曲は本作におけるグエン監督自身の「世界観的」立ち位置を示すものだが、劇中歌ではない。]

■私感 :
大して期待もせず、B級映画か…の思いで映画館へ。ところが、これは意外と、じっくり楽しめた作品だった。
デジタル機器やインターネットの普及によって、人との出会いやコミュニケーションの形も多種多様となり、人間関係のグローバル化が加速している現代。本作は今まさに私たちが直面するこの時代状況を背景とした、デジタルネイティブと呼ばれるミレニアル世代を意識した純愛ドラマである。そこでは、どんなにデジタル化が進もうと失われることはない人間の“恋愛”という普遍的なテーマのもと、コンパクトにまとめられた品格のある物語が展開されている。
私が思うに、本作を良作たらしめた最大の貢献者は、北アフリカの砂漠地帯で、自由な恋愛を許されずに悩むアユーシャを好演したリナ・エル・アラビ(Lina El Arabi、1995~)。生まれ育った土地の古い価値観や風習に縛られまいとする意志的な表情と、そこから抜け出せずにいる憂いに満ちた大きな瞳が印象的。少女のような初々しさと大人っぽい色気がない交ぜになり、絶妙な存在感を見せつけている。
対して、主人公ゴードンに扮したジョー・コール(Joe Cole、1988~)は、今イチの出来。“恋人”と破局し、覇気を失いつつも、“運命”を信じるロマンティックな一面や困った人を助けずにいられない優しさが見え隠れするキャラクターの魅力を体現するには一体に力不足だ。彼は人懐っこいルックスながら、その目が何か死んだ魚のように虚ろであることに、私は妙に気にかかるのだった…。