知恵袋の質問
「ドント式って、多数派がかなり有利で、やや少数派を切り捨てる点で不合理ではないか」
に対し、ドント式が良いと答える人の最終結論は
「獲得票の率と獲得議席率を重視するとニーマイヤー式に、絶対に1議席を獲得できる最低票数を基準にするとドント式になります。 そして、近似させるとほとんどの計算方式の基準(基数)は ニーマイヤー式からドント式の間に入ると思います。 つまり、ニーマイヤー式は少数政党に有利に ドント式は大政党に有利になる両極端にあると思います。 しかし、ニーマイヤー式は規模(サイズ, 定数)が小さな選挙区や、非常に弱小政党が多い場合に適用すると、私にとっては許せないほど少数政党に有利に働くので反対しているのです。極論すれば、単記移譲式を推奨する私にとっては、獲得票の率と獲得議席率の乖離は問題ではありません。 逆に、ドント式は獲得票の率と獲得議席率の差が大きいと質問者さんは主張しているのだと認識しています。」
となっています。そこで、どのくらいニーマイヤー式には少数党に有利に働くのか、選挙区の規模(定数)がどの程度影響するのか検証してみました。
比較のため、「ニーマイヤー式」と「ドント式」、その中間の「修正サンラグ式」で計算します。なお、それぞれの基準(基数)は、下記となります。
式では分かりにくいので【】投票総数を 10,000 とした時の定数6と60の値を示します。
・ニーマイヤー式 ヘアー基数は 投票総数 ÷ 定数 【1667 , 166.7】
・修正サンラグ式 2 × int(投票総数 ÷ (2 × 定数 + 1)) + 1 【1,539 165】
(すべての政党が2議席以上得るとして)
・ドント式 int( 投票総数 ÷ (定数 + 1))+1 【1,429 , 164】
※ int( )は括弧内の整数部分を示します。
選挙制度に詳しい方は定数6なら基数が 1,667～1,429 (倍率1.17) 定数60なら 166.7～164( 倍率1.02)となるので、定数(選挙区の規模)が大きくなれば方式による差が小さくなることが判ると思いますが、念のため検証してみました。
第1節 定数6名の選挙区で 弱小政党Z党が1議席獲得する最低の得票率
定数6名の選挙区で X党,Y党,Z党が争いX党が過半数を得るか否かの状態でZ党が1議席を獲得する最低の得票率を計算します。つまり、X党3議席、Y党2議席、Z党1議席となる得票率を計算します。
ここで注目したいのは、獲得した議席率と得票率の倍率【議席率/得票率】です。この値が1より大きいと得票率以上に議席を得ているので優遇されていると言えます。逆に1未満なら冷遇されていると言えます。
ニーマイヤー式におけるZ党はこの値が2.99倍と非常に大きくなっています。ドント式でもZ党はこの値が1.33倍と多少優遇されています。この例は非常に極端な場合ですが、ドント式は言われるほど大政党有利とは言えないと考えます。
第2節 定数60名の選挙区の場合の獲得議席数について
上記第1節は定数6名と選挙区の規模が非常に小さかったので、これを10倍した定数60名でどうなるか調べます。 各政党の投票率は第1節のニーマイヤー式でZ党が1議席を確保する最低得票率で計算します。
この結果、Z党はニーマイヤー式で4議席、 ドント式と修正サンラグ式では3議席となります。 Z党の【議席率/得票率】はニーマイヤー式で1.2、 ドント式と修正サンラグ式では0.9なので、ニーマイヤー式は小政党に有利といえます。しかし、その差はあまり大きくないです。
第3節 定数60名の選挙区で 超弱小政党Z党が1議席獲得する最低の得票率
選挙区の定数が大きい時、超弱小政党が1議席を獲得する最小の得票率を計算します。
前提としてX党が39議席、Y党が20議席、超弱小政党Z党が1議席を獲得するものとします。
ニーマイヤー式で【得票率】0.56% 【議席率/得票率】2.98
修正サンラグ式で【得票率】1.16% 【議席率/得票率】1.44
ド ン ト 式で【得票率】1.62% 【議席率/得票率】1.03
(参考)
サ ン ラ グ 式で【得票率】0.84% 【議席率/得票率】1.98
つまり、ドント式ではニーマイヤー式の約3倍の得票がないと超弱小政党は議席を獲得できません。しかし、ドント式で1議席を得る得票率1.62%だとニーマイヤー式でも1議席しか得られない(60×1.62%=0.972)。つまり、ニーマイヤー式は超弱小政党に非常に有利です。
しかし、定数の大きな選挙区に良く知られた比例代表制を導入するのであれば、私は得票率が5%未満の政党には議席を与えない阻止条項を導入すべきだと考えます。なぜなら、5%の議席を得られない政党は、成熟した政党と見なせないこと、できることが限られること、また、選挙を投資と考える政党を排除するためです。
ただ、私は、良く知られた比例代表制より単記移譲式の方が良い選挙制度だと考えます。