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「天気雨」 13.夢を見たまま~TA・SU・KE・TE~ youtube動画

 

 

「天気雨」 13. 夢を見たまま ~TASUKETE~ 【その1

 

 

♪夢を見たまま~TA・SU・KE・TE~

 

たすけて・・・・
たすけて・・・・

 


心がすいこまれそうな あなたの匂い
思い出を 覆ってくれるはず・・・はず・・・

それなのに 濁って香るの
愛してくれなかった パパの・・・

ずっと 愛されない

わたしなら いらない

わたしには あなたしかいないのに・・・のに・・・
 

裏切らないあなたを夢に見たままで 瞳こらしてるの
あなたがここにいてくれること おびえているわたし

 

 

 

暗闇の中でも見える あなたの寝顔

もっと信じて寄り添いたくなる・・・なる・・・

お願いよ 帰らないでいて

わたしが死んでしまうまで・・・
 
ずっと 愛されない

わたしなら いらない

愛せないかもしれない 欲しいのに・・・のに・・・
 
やっぱりねと ため息をつくことに慣れてしまっていた
あたらしい季節が巡っても 脱ぎ捨てられないの
 
幸せだと不安になってしまう バラバラになりそうで
お願いよ わたしは 夢を 夢を見てみたい

○桃子の部屋 夜

 

桃子は歌いながら洗濯物を干していた。

いつもの「部屋の乾燥対策」である。

洗濯物も乾くし加湿にもなるので一石二鳥である。

 

CDに合わせて智も体を揺らしてアイスを食べていた。

智にとっては今日はちょっとした夜更かしである。

 

先週日曜にピクニックには出かけたものの

俊哉とはあれから5日間会っていない。

お互い「子どもとの時間」を取りたいということもあり、距離を取っていた。

 

とはいえ、あの日は「智への虐待疑惑」もあり気まずい感じであったので、

そのまま日をあけていることに、桃子も不安があった。

 

「今、電話してみようかな・・・・」

桃子は洗濯物を干し終えるとスマホを手に取った。

 

 

 

 

俊哉は今ではとても後悔していた。

 

元妻の沙和とは、あいこが3歳の時に別れた。

沙和は初めての育児で鬱を発症してしまっていた。

両親が近くにいなかったこともあり、孤独な育児をしていたためであった。

俊哉が仕事で忙しく、言葉も交わさなくなってから、

何度も自殺未遂を繰り返した。

 

そんなわけで、5年前、俊哉はあいこを引き取り、この土地へ引っ越してきたのだった。

 

 

だから、せめて桃子にはそんな思いをさせないようにと思っていた。

沙和への罪滅ぼしの意味もあったのだと、今になって思う。

 

 

「何も変わっていないじゃないか」

悔しそうに俊哉はつぶやいた。

 

この前だって、桃の様子に怖気づいた・・・・。

沙和と同じ目をしてた。

どこか違うところを見ている目だった。

誰かを恨んで憎んでいるような・・・・。

 

そんな目で俺を見ないでくれよ・・・・。

 

「俊哉はわたしの目を見ていない!!!!」

 

 

沙和の言葉が耳に残っている。

 

 

―おまえは誰を見ているのか―

 

 

「っ・・・」

気づくと俊哉は背中を丸め泣いていた。

 

目の前ではあいこが寝息を立てていた。

―ごめんな。あいこ、おまえのママのこと、見ていないわけじゃなかった・・・。-

 

その時、隣の部屋のスマホが振動で着信を知らせた。

 

 

 

つづく