「天気雨」 1.膝を抱えて座る男の子は何を見る?【その1】

「天気雨」 1.膝を抱えて座る男の子はなにを見る?【その2】

「天気雨」 2.心理カウンセリング

「天気雨」 3.おねしょ【その1】

「天気雨」 3.おねしょ【その2】

「天気雨」 4.パニック発作と男と女【その1】

「天気雨」 4.パニック発作と男と女【その2】

「天気雨」 5.ちてきしょうがい?【その1】

「天気雨」 5.ちてきしょうがい?【その2】

「天気雨」 5.ちてきしょうがい?【その3】
「天気雨 5.ちてきしょうがい?【その4】

「天気雨」 5.ちてきしょうがい?【その5】

「天気雨」 5.ちてきしょうがい?【その6】

「天気雨」 6.『ママ、わたしを見て』 【その1】

「天気雨」 6.『ママ、わたしを見て』 【その2】

「天気雨」 6.『ママ、わたしを見て』 【その3】

「天気雨」 7.見る人 【その1】

「天気雨」 7.見る人 【その2】

「天気雨」 8.なにも見えない 【その1】

 

 

「天気雨」 8.なにも見えない 【その2】

 

 

  

―桃子はカウンセリングで元夫の雄太と智のことを話した時を思い出していたー

 

【回想】

 

 

小野「別れたご主人は智ちゃんに対してどんな感じでしたか?暴力的でしたか?」

 

 

 桃子は一瞬右手のハンカチをぎゅっと握った。

 

 

桃子「いえいえ、それは全然!それどころか、本当にかわいがっていました。

しょっちゅう散歩に連れて行ってくれましたし、智の写真ばっかりと撮っていたし。

よく面倒を見てくれていました。」

 

 

 

―カウンセラー小野に話しているときの桃子の笑顔―

 

 

 

俊哉はもちろん驚いてはいたが・・・・何も言わずに聞き続けている。

 

桃子「わたし、今日わかったんだけど・・・。運動会の日のこと。

わたしがあんなに興奮して怒り心頭で号泣したのは・・・元ダンナのDVが原因ってことが。

 

悔しさとか悲しさとか惨めさとか・・・。そんなものが一気に蘇ってきて。

智のこともわたしのことも人間扱いじゃなかったってことだよね。

 

智なんて、自分の父親にそんな目に合わされるなんて・・・。

 

あの人は、わたしたちに愛してるっていつも言ってたんだよ。

妻にとって愛ってなに?智にとって父親の愛って?わたしたちにだってこころってものがあるのに。

そんなふうに殴られ続けていると、自分が取るに足らないちっぽけな存在なんだって思えてくる。

そういう扱いを受けても仕方のない存在なんだって。

 

・・・・そういうことが溜りに溜まってたんだなって・・わかった。」

 

桃子は俯きながらちょっと鼻をすすっていた。

「カウンセリングを受けてからわかったの。肝心のパニック発作の原因はまだわからないけど。

でも、とにかく今日、帰り道で色々気づきがあった。」

 

俊哉「運動会であった鈴音ちゃん。あの小さな女の子も、いつか大人になった時に、

桃子みたいなことを言うのだろうか」

 

俊哉も桃子もお互いになんとなく目を合わせずに話し続けた。

 

桃子「そうかも・・・。生きてさえくれていれば、まだ・・・立ち直れる方法あると思うから・・・・。

わたしみたいにカウンセリング受けてみるとか。」

 

 

「あ、そのことなんだけど」

俊哉は、意を決したように桃子のほうを向いて言った。

「言いにくいんだけどさ、カウンセリングって、効くの?」

 

「なんで?」

桃子は急な話題変更をむしろありがたく思った。

なんだか出会ってからパニック発作だの虐待の話だの・・・・

暗い話ばかりで俊哉に申し訳なく思ってしまっていたのだった。

「カウンセリング、受ける気になったなら早いほうがいいよ、本当にいいと思う。」

「えっ」

俊哉は慌てた。

「いや、ぼくは。あの、友達が・・・色々大変なことがあったみたいで、ちょっと、どうなのかなと思ってね。」

 

桃子「そうなんだ?俊哉の友達?」

 

俊哉「ああ。そうなんだよね、友達だよ。・・・・詳しいことは知らないけど。

カウンセリングってただ話聞くだけなんでしょ?そんなので治ったりするの?」

 

桃子「うん、正直まだ効果はどうなのかわからない。まだ3回目だし。

ただ、カウンセリング?療法っていっても種類ややり方がたくさんあるらしくて。

どれがいいのかすらわたしはわからないんだけど。

わたしの受けているのはともだちの紹介で、けっこう早い段階で心の問題が解決するっていうから。」

 

俊哉「そうか・・・。それならいいんだろうね・・・・。」

俊哉は少し考え込んでいた。

 

 

桃子は「よかったら紹介するよ」と言った。

 

 

 

つづく