【考察】 Gaikai=PS4?ソニーのコンソール撤退説 (1)
以前のエントリ「次のE3で、あるメーカがハード撤退を表明する」で、今年のE3でMSがコンソールから撤退するのでは?という予想を書いた。E3前に、Xboxの脱ゲームハード化の推進という方針をMSが明確に発表した(エントリ「MSの終戦宣言:コンソールという幼年期の終わり」したことで、この予想はある程度は当たったものと考えている。
だがソニーによるGaikaiの買収の発表があったことから、コンソールから撤退する可能性はソニーも同様であって、むしろ予想の元となったGaikaiの発言が直接に指していたのはむしろソニーなのではないかと考えるようになった。この仮説の根拠を簡単に述べる。
仮説の根拠:
1) Gaikaiの発言
Nanea Reeves氏(Gaikai)は「現在のコンソールのメーカーが全て次世代のハードを出すわけではありません。これはE3での大ニュースになるでしょう。(Not all of the current console makers will have one more generation. That will be the big news at E3)と発言している。
範囲が"current console makers"と限定されていることから、撤退するのはMS、ソニー、任天堂のうちどれかだ。そしてソニー以外の二社がGaikaiと前向きに接触していた可能性は高いとは言えない。任天堂はこの手の話には後ろ向きで、MSはGaikaiを買う必要性自体に乏しい。"current console makers"に限定すれば、Gaikaiが接触していたのはソニー一社のみであった可能性が高い。だとすればGaikaiが言及したのはソニーであったことになる。
2)クラウドは何のために?
ソニーのGaikai買収の目的が、PS過去資産の活用とそれによるTV事業の梃子入れであることは明白だ。だが、それはクラウドの「裏面」に過ぎないのではないかと本ブログは考える。クラウドの「表面」とはおそらく、ハードの制約から解放された究極のゲームの提供なのではないだろうか。
コンソールはどこまで進化しようが、結局はコンソールとしての制約から逃れることはできない。だがクラウドであれば、サーバ側にはハード上の制約は何もない。どんなゲームでも、技術の頂点、究極のゲームを開発することだってできる(採算が合う限りで)。Cell B.E.とか、ノーティのTLoUとか、ソニーはある意味でその辺突き抜けてクレイジーな企業だ。MSでも任天堂でも真面目には考えないかもしれないが、ソニーならば、そんなクレイジーな野望を大真面目に追求してしまう可能性は否定できない気がする。
ちなみにGaikai自身が、これに近いコメントを漏らしていることは興味深い事実だ。(前エントリ「Samsungがゲーム市場に参入。Gaikaiと提携しクラウド技術を通じて」)彼らもやはり、チープなゲームをTVに配信したりすることを内心では軽視するような、ソニーと通じるようなクレイジーな連中だったりするのかもしれない。
またこう考えることで、買収の際のプレスリリースでHouse氏(SCE)が言っているコメントも理解できるものになる。(前エントリ「ソニー(SCE)がGaikai Inc.を買収」)
House氏は「圧倒的なクラウドエンタテインメント体験をユーザーの皆様にご提供します。カジュアルなコンテンツや高い描写力、没入感のあるゲームを含む幅広いコンテンツを時間や場所を問わずストリーミングでインターネットに接続されたネットワーク対応機器上でお楽しみいただける最高のクラウドサービス」、だといっているが、この「高い描写力、没入感のあるゲーム」「圧倒的なクラウドエンタテインメント体験」という内容は、クラウドをチープなゲームをTVに配信することだと理解した場合には空虚な美辞麗句に過ぎないが、クラウドの「表面」が究極のゲームの提供だと考えれば、十分に意味のある納得がいくものになる。
3)SCEによるGaikai買収
ご存知の通り、ソニーのゲーム事業はいくつかの法人に分かれて運営されている。その中でオンライン(PSN)周りを運営しているのは本体だ。Gaikaiは文字通りオンラインとネットワークでゲームを提供する会社であるため、本来であればGaikaiを買収するのは本体であるはずだ。ましてやソニーの目的が「TV事業の梃子入れ」なのであれば、やはり本体が買収するのが自然だろう。
ところが実際には、Gaikaiを買収したのはSCEであって、本体ではなかった。これは結構奇妙な事実だが、クラウド=PS4だという位置付けだと考えれば、この点をうまく説明することができるかもしれない。
4)狭くなる窓
クラウドはいつ本格的に離陸するのだろうか?
MSからリークした56p文書によると、2010年当時、MSはクラウド元年は2015年であると予想していた。最近の発言では、Gaikaiは、2013年のE3で発表する内容を今年2012年のE3に前倒ししたと述べ、2013年~2014年をクラウド元年と想定している。また本ブログで度々ご紹介しているDigital Foundryは、クラウド元年は最速で2013年だと述べている。これらの発言を総合すると、クラウド元年はおそらくは2013年~2014年であり、さらにその予想は少しずつ前倒しになっているものと考えられる。
PS4は2013年のE3で発表され、ホリデーシーズンに発売されるものと一般に考えられている。だがもし上で予想するような「究極のゲーム」がクラウドで発売されたとすれば、PS4は一体どういう立ち位置になるのだろう?これはかなり微妙だと言わざるを得ないだろう。
クラウドは性能の怪物であり、PS4が性能面で差別化し続けることは難しい。もちろん任天堂のタブレットのように性能以外の差別化要因を持たせることはできるだろうが、それはソニーのアプローチではない。ゲームの開発リソースの点からしても、ノーティ等のエースをクラウドとPS4のどちらに投入するかといえば、せいぜい数百万台のPS4に対して、クラウドはTV+モバイル+タブレット+PC+PS3という巨大なインストールベースをカバーする。考えるまでもないだろう。
いずれにせよ、PS4がブッチ切りの性能を誇示できるのはそこまで長くはないかもしれない。莫大な開発予算を本当に投じるのだとすれば、回収期間が十分とれるかが懸念される。
5)PS4の開発資金
3.8億ドルというGaikaiの買収資金は、業績悪化に喘ぐソニー全社にとっても、またSCEにとってもそれなりに重い投資であったはずだ。一方でソニーがPS4への投資に耐えられるのかという漠然とした懸念は(おそらく)広く持たれているものだ。(前エントリ「Molyneux氏:Xboxチームはまるで取り憑かれたようにソニーに注目している」参照)
今回の投資はSCEが行ったものだが、これによって、ただでさえ苦しいPS4への投資余力が、さらに一層少なくなったと考えるべきだろう。だがクラウド=PS4だと考えれば、Gaikaiへの投資をある程度の説得力をもった形で説明できる。つまりPS4の投資をGaikaiに回したと考えるわけだ。
だがソニーによるGaikaiの買収の発表があったことから、コンソールから撤退する可能性はソニーも同様であって、むしろ予想の元となったGaikaiの発言が直接に指していたのはむしろソニーなのではないかと考えるようになった。この仮説の根拠を簡単に述べる。
仮説の根拠:
1) Gaikaiの発言
Nanea Reeves氏(Gaikai)は「現在のコンソールのメーカーが全て次世代のハードを出すわけではありません。これはE3での大ニュースになるでしょう。(Not all of the current console makers will have one more generation. That will be the big news at E3)と発言している。
範囲が"current console makers"と限定されていることから、撤退するのはMS、ソニー、任天堂のうちどれかだ。そしてソニー以外の二社がGaikaiと前向きに接触していた可能性は高いとは言えない。任天堂はこの手の話には後ろ向きで、MSはGaikaiを買う必要性自体に乏しい。"current console makers"に限定すれば、Gaikaiが接触していたのはソニー一社のみであった可能性が高い。だとすればGaikaiが言及したのはソニーであったことになる。
2)クラウドは何のために?
ソニーのGaikai買収の目的が、PS過去資産の活用とそれによるTV事業の梃子入れであることは明白だ。だが、それはクラウドの「裏面」に過ぎないのではないかと本ブログは考える。クラウドの「表面」とはおそらく、ハードの制約から解放された究極のゲームの提供なのではないだろうか。
コンソールはどこまで進化しようが、結局はコンソールとしての制約から逃れることはできない。だがクラウドであれば、サーバ側にはハード上の制約は何もない。どんなゲームでも、技術の頂点、究極のゲームを開発することだってできる(採算が合う限りで)。Cell B.E.とか、ノーティのTLoUとか、ソニーはある意味でその辺突き抜けてクレイジーな企業だ。MSでも任天堂でも真面目には考えないかもしれないが、ソニーならば、そんなクレイジーな野望を大真面目に追求してしまう可能性は否定できない気がする。
ちなみにGaikai自身が、これに近いコメントを漏らしていることは興味深い事実だ。(前エントリ「Samsungがゲーム市場に参入。Gaikaiと提携しクラウド技術を通じて」)彼らもやはり、チープなゲームをTVに配信したりすることを内心では軽視するような、ソニーと通じるようなクレイジーな連中だったりするのかもしれない。
またこう考えることで、買収の際のプレスリリースでHouse氏(SCE)が言っているコメントも理解できるものになる。(前エントリ「ソニー(SCE)がGaikai Inc.を買収」)
House氏は「圧倒的なクラウドエンタテインメント体験をユーザーの皆様にご提供します。カジュアルなコンテンツや高い描写力、没入感のあるゲームを含む幅広いコンテンツを時間や場所を問わずストリーミングでインターネットに接続されたネットワーク対応機器上でお楽しみいただける最高のクラウドサービス」、だといっているが、この「高い描写力、没入感のあるゲーム」「圧倒的なクラウドエンタテインメント体験」という内容は、クラウドをチープなゲームをTVに配信することだと理解した場合には空虚な美辞麗句に過ぎないが、クラウドの「表面」が究極のゲームの提供だと考えれば、十分に意味のある納得がいくものになる。
3)SCEによるGaikai買収
ご存知の通り、ソニーのゲーム事業はいくつかの法人に分かれて運営されている。その中でオンライン(PSN)周りを運営しているのは本体だ。Gaikaiは文字通りオンラインとネットワークでゲームを提供する会社であるため、本来であればGaikaiを買収するのは本体であるはずだ。ましてやソニーの目的が「TV事業の梃子入れ」なのであれば、やはり本体が買収するのが自然だろう。
ところが実際には、Gaikaiを買収したのはSCEであって、本体ではなかった。これは結構奇妙な事実だが、クラウド=PS4だという位置付けだと考えれば、この点をうまく説明することができるかもしれない。
4)狭くなる窓
クラウドはいつ本格的に離陸するのだろうか?
MSからリークした56p文書によると、2010年当時、MSはクラウド元年は2015年であると予想していた。最近の発言では、Gaikaiは、2013年のE3で発表する内容を今年2012年のE3に前倒ししたと述べ、2013年~2014年をクラウド元年と想定している。また本ブログで度々ご紹介しているDigital Foundryは、クラウド元年は最速で2013年だと述べている。これらの発言を総合すると、クラウド元年はおそらくは2013年~2014年であり、さらにその予想は少しずつ前倒しになっているものと考えられる。
PS4は2013年のE3で発表され、ホリデーシーズンに発売されるものと一般に考えられている。だがもし上で予想するような「究極のゲーム」がクラウドで発売されたとすれば、PS4は一体どういう立ち位置になるのだろう?これはかなり微妙だと言わざるを得ないだろう。
クラウドは性能の怪物であり、PS4が性能面で差別化し続けることは難しい。もちろん任天堂のタブレットのように性能以外の差別化要因を持たせることはできるだろうが、それはソニーのアプローチではない。ゲームの開発リソースの点からしても、ノーティ等のエースをクラウドとPS4のどちらに投入するかといえば、せいぜい数百万台のPS4に対して、クラウドはTV+モバイル+タブレット+PC+PS3という巨大なインストールベースをカバーする。考えるまでもないだろう。
いずれにせよ、PS4がブッチ切りの性能を誇示できるのはそこまで長くはないかもしれない。莫大な開発予算を本当に投じるのだとすれば、回収期間が十分とれるかが懸念される。
5)PS4の開発資金
3.8億ドルというGaikaiの買収資金は、業績悪化に喘ぐソニー全社にとっても、またSCEにとってもそれなりに重い投資であったはずだ。一方でソニーがPS4への投資に耐えられるのかという漠然とした懸念は(おそらく)広く持たれているものだ。(前エントリ「Molyneux氏:Xboxチームはまるで取り憑かれたようにソニーに注目している」参照)
今回の投資はSCEが行ったものだが、これによって、ただでさえ苦しいPS4への投資余力が、さらに一層少なくなったと考えるべきだろう。だがクラウド=PS4だと考えれば、Gaikaiへの投資をある程度の説得力をもった形で説明できる。つまりPS4の投資をGaikaiに回したと考えるわけだ。
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