小さく、美しく、そして戦慄する捕食者(明治神宮御苑周辺) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

これは6月の講座開催(6/17開催済)に向けて

下見に出かけた時のお話になります。

代々木公園明治神宮御苑の森を回る予定で

まずは代々木の例の花壇へ。

例によってクマバチ♂が目の前に来てくれたので

また捕獲してみました。(結構激しく暴れています)

 

 

 

 

 

本番はまだこれからという印象でしたが

モデルガーデンも大分見栄えを増してきました。

6月後半現在は、コオニユリなども開花してきて

より一層美しくボリューミーになっています。

 

 

 

 

 

 

三尺バーベナに来たキマダラセセリ(左)と

モナルダで吸蜜するクマバチ(右)です。

キマダラryは何気にここで見たのは初めてかも?

 

 

 

 

 

 

オオスカシバも来ていましたので

色々な角度から接写を試みます。

 

後ろからの角度ですと(右写真)

微妙に背中の毛が剥げているように見えますが

何か理由でもあるんでしょうかね?(?_?)

 

 

 

 

 

やっぱりこの角度から撮るのが

一番美しく、かつ躍動感があります。

 

 

 

 

 

やけに黒ずんでいますが

どうやらニホンミツバチのオスみたいです。

代々木の花壇はセイヨウryの方が圧倒的に多く

ニホンryは訪問するたびにせいぜい1~2匹程度しか

会えません。明治神宮のあの森の規模を考えると

どこかにニホンryの巣がある確率は高いですが

東京はビルの屋上等で養蜂をしている方も

結構いらっしゃるそうですので

遭遇率はセイヨウとニホンで19:1くらいに

なっています。(あくまで私見ですが)

 

 

 

 

 

結果、こういうことになるケースも。

餌食になったのはどうやらニホンミツバチのようです。

 

なお、タイトルにある「捕食者」というのは

このシオヤアブのことではありません。

まあ美しくはないからすぐわかりますが

 

 

 

 

 

では明治神宮御苑へ。

自然度云々より、まず荘厳な森となっています。

 

この森が人工の森であることは有名な話ですが

森づくりが始まったのは100年以上昔のこと。

単純林ではなく色々な樹木で構成される森を

目指したことは間違いないようですが

現在のような「生物多様性」という概念は

まだ確立されていなかったと思われますので

今のように昆虫や鳥が多数集まる環境になったのは

あくまで結果的にそうなったに過ぎないようです。

 

ただ、日本は植生遷移が激しいですし

ナラ枯れ問題もまだ燻ぶっていますので

御苑の森をここまで良好な状態に保つには

結構なコストがかかっているようです。

 

 

 

 

 

 

有料エリア(入苑料500円)に入ります。

この日はツツジ(右)が見頃でしたが

徐々に花期も終わりに近づいており

菖蒲園の方が賑わってきていました。(左)

ちょうど講座の時が見頃だったのですが

そちらにつきましてはまた後日……。

 

 

 

 

 

食事中のササグモ

(さりげなく右上にも1匹います)

 

これはこれで魅力的ではありますが

やはり美しいかというと好みがry

もちろん、タイトルの捕食者というのは

これのことでもありません。

 

 

 

 

 

やや大きめの黒光りするハムシ

森の中で見つかりましたが

ちょっと正体はわかりませんでした。

 

以前、箱根で撮影したオオルリハムシ

サイズはほぼ同じだったような気がしますが

ちょっとこれだけではわかりません。

ハムシの識別は難しいですね……。

 

 

 

 

 

樹種の多い巨大な森だけに

モリチャバネゴキブリも生息しています。

このくらいの自然度の高い森であれば

決して珍しい存在ではありません。

 

そして、今回「捕食者」に狙われているのは

どうやらこのゴキブリのようで……↓

 

 

 

 

 

これは、有料エリア内のある場所で

シートを巻き付けた木の幹で撮影したもの。

中央のくぼみの手前に

メタリックブルーの小さなハチがいます。

 

 

 

 

 

一見するとルリジガバチに似ていますが

正体は全く別で、サトセナガアナバチといいます。

写真だとわかりにくいのですが、

体調は恐らく1cm程度しかなく

その上忙しなく飛んだり歩き回ったりするので

非常に撮影が難しく、苦労しました(汗)

これ以上鮮明な写真は撮れなかったのでご勘弁ください

 

遭遇率・・・2 (探せばいるんだろうか?)

インパクト・・・1 (繊細で非常に目立ちにくい)

美しさ・・・5 (拡大してみると)

俊敏性・・・4 (上記の通り……)

知名度・・・2 (下記の特徴により一部では有名(?)らしい)

 

 

このハチこそが、タイトルにある捕食者です。

繊細ながらもえげつない方法で「狩り」を行うハチで

獲物はゴキブリの仲間。しかも毒針によって神経を冒し

ゾンビ化することで有名です。

ゾンビ化と言われてもイメージがつきにくいですが

流れを整理すると大体こんな感じらしい……。↓

 

1.ゴキブリの神経部分に毒針を刺す。

2.に冒されたゴキブリは動きが緩慢になる。

3.ゴキブリの感覚器である触角を切断する。

4.触角を失いに冒されたゴキブリを、ハチの巣へ誘導する。

 (サイズ的に自力で運べないため、ゴキブリ自身に歩いて巣に移動させる)

5.ゴキブリの前脚の付け根に卵を産み付け、巣に閉じ込める。

6.孵化した幼虫は、ゴキブリを食べて成長する

7.内臓を食い尽くされた辺りでようやくゴキブリは死ぬ

 

特に4の状態のゴキブリが「ゾンビ化」と言われており

感覚器(触角)を破壊されてしまっているので

この時点でほぼ詰んでいると言っても過言ではありません。

なお、ゴキブリをゾンビ化させるハチとしては

本種の近似種であるエメラルドゴキブリバチが有名ですが

そちらは残念ながら(?)日本にはいない様子。

いや、そもそもサトセナガアナバチというのも

元々は日本に存在しなかった外来種のハチと言われており

外国産のゴキブリが船舶等から日本に紛れ込んだ際に

一緒についてきたのではないかと考えられています。

(ただしモリチャバネゴキブリは在来種)

 

一連の流れを字面だけで追いかけると

とんでもなくえげつない狩りの手法に思えて

人によっては残酷に感じるかもしれませんが、

サイズが大きく栄養価の高い獲物を

スムーズに自らの巣に運び込んで

子供のエサにする……という点では

非常に理にかなった手法と言えそうです。

まあ、そもそも「残酷」という概念自体

人間特有のものかもしれませんしね。

 

なお、エメラルドゴキブリバチを導入して

ゴキブリの駆除を試みた事例がアメリカにあるらしいですが

案の定といいますか大した成果は見込めなかったようです。

 

 

 

 

 

【5/29 代々木公園~明治神宮御苑で撮影した生きもの】

鳥類・・・カイツブリ、キジバト、シジュウカラ、ヤマガラ

昆虫類・・・アオスジアゲハ、アシブトハナアブ、アメンボ、オオスカシバ、カラスアゲハ、キマダラセセリ、クサギカメムシ、クマバチ、コアオハナムグリ、ササグモ、サトセナガアナバチ、シオカラトンボ、シオヤアブ、セイヨウミツバチ、ツマグロヒョウモン、ニホンミツバチ、モンシロチョウ、モリチャバネゴキブリ

その他・・・アカミミガメ

 

 

 

 

★次回、生きもの探索ツアー「首都圏生きものめぐり」は

 2024年7月21日(日)に開催いたします。

 行先は「舎人公園」でございます。

 現在お申込を受付中です。ご興味のある方はこちらよりお申込ください。

 (講座の概要につきましてはこちらをご参照ください)

 

 

【小学校6年生までのお子さんのご参加につきまして】

小学校6年生までの方は、初回500円でご参加いただけます。

ただし、御父兄の同行をお願いいたします。