陽のガーデンと、静のガーデン(神代植物公園) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

 

毎年に紹介している神代植物公園ですが

よく考えるとバラの最盛期である晩春には

ほとんど行ったことがない……と思い、

お昼頃から足を運んでまいりました。

 

到着してまずは、やや早めでしたが

深大寺の商店街で名物のお蕎麦を堪能。

目の前に石組と池からなる和風の庭園があり

ヤマサナエ(右)が飛来していました。

(昼食にしては早めの時間だったので、池の前のいい席に座れました)

 

 

 

 

 

季節を問わず、ここは相変わらずの盛況ぶりです。

コロナ禍が最も深刻だった時期(2020年の春頃)は

神代植物公園が閉園していたので私も来ておらず、

正直なところ詳しい状況は知りませんが

この商店街も大変だったのではないかと思われます。

 

 

 

 

 

では神代植物公園へ。

やはり晩春~初夏の見所はバラです。

 

秋よりも花数が多く、またつるバラの系統は

基本この時期しか花が咲かないようにしているため

(理由は説明すると長くなるので割愛(爆))

ビジュアル的には最高のシーズンと言えます。

 

 

 

 

 

 

つるバラのドーム(左)なんかは特に人気。

また、右のクマバチが来ているバラは

日本原産のツクシイバラという品種です。

今でも九州の一部地域で自生していますが

盗掘や河川環境の変化などにより数を減らしており

現在は絶滅危惧種として保護されているそうです。

 

 

 

 

 

バラの美しいこの時期ではありますが

昆虫たちの蜜源としてはどうか?というと

中輪~大輪系のバラで吸蜜する虫はほとんどおらず

彼らは専らバラ園近くの花壇等を飛び回っております。

 

花弁が幾重にも重なっているバラは

蜜腺まで口吻が届きにくいため

一般的にイメージされる豪華絢爛なバラで

チョウなどが吸蜜しているシーンは

ほとんど見られません。

サイズの大きいアゲハチョウも然り。

もっと食事しやすい花を狙います。

(上のアオスジアゲハもバラ以外で吸蜜しています)

 

一方で上記のツクシイバラのように

一重咲きで蜜腺に届きやすい花であれば

チョウはもちろんハチなども飛来します。

その辺を知らずにバラ園で昆虫の飛来を待っていると

童謡「待ちぼうけ」みたいになってしまいます。(;^_^A

 

 

 

 

 

秋には菊の盆栽が展示される神代植物公園。

晩春は晩春らしく、ツツジの盆栽が並びます。

 

 

 

 

 

これは盆栽ではなく、地植えされたツツジ。

晩夏~秋が本番のオオスカシバ

1匹だけ現れ、吸蜜していました。

(頭を埋もれさせて妙に熱心なことで)

 

この時期はまだハギやオミナエシなどの

より昆虫を呼びやすい植物が開花していないため

花を訪れる彼らの姿を撮影するには

あまり適していないかもしれません。

 

 

 

 

 

ミツバチは結構な数が飛んでいました。

ほとんどがセイヨウミツバチです。

どうやら深大寺近くの養蜂園で育てているらしく

そちらで産出されたハチミツが

公園内でも販売されています。要チェック。

 

 

 

 

 

クロボシツツハムシ

キバネry撮影スポットで毎年よく見かける

小型のハムシの仲間です。

 

 

 

 

 

さて、上記のバラ園を

日当たりのよい「陽」の庭とするならば

ギボウシなどを主体としたこちらの木陰の庭は

対照的な「陰」の庭……といったところ。

とは言え「陰」というのは些かネガティブな表現なので

落ち着きのある「静」の庭と呼ぶのが妥当でしょうか。

 

公園のパンフなどでは特に案内されていないので

スルーされてしまいがちですが、華やかさにこそ欠けるものの

色合いの異なる葉を組み合わせることで

デザインとしてはこちらもなかなかのものになっています。

 

 

 

 

 

木陰の「静」のガーデンの主役となるのが

葉っぱの大きなギボウシ。この写真で見るだけでも

5種類以上は入れていることがわかります。

今頃はちょうど開花期を迎えているので

ますます美しさも増していることでしょう。

あとはグランドカバーとしてドクダミが入れば

バラ園とは違う、自然風で落ち着いたガーデンになります。

 

花は少ないですが、観賞期間の長い葉っぱで

長期間美しさを維持できるため

最近はこうした植栽を取り入れている庭も

結構多いようです。日本の住宅は敷地等の関係で

庭があまり広くなく、建物の陰になりやすいので

こういう植物の方がバラやヒマワリなどよりも

育てやすい……という側面もあると聞いています。

 

 

 

 

 

 

ただ、それでもやはり人は「花」に惹かれるもの。

そして目を惹く花は、やはり日なたを好む傾向があります。

バラはもちろん、水生植物園のハナショウブも然りです。

好みの差はありますが、この辺については

人の本能的なものかもしれませんし

あまり外野がどうこう言うのも難しいかな……と。

本音を言うなら自然派の「静」の庭に

もっと目を向けていただきたい気持ちはありますが

かくいう私も「花を訪れる虫」を求めて

「陽」の庭の方を重点的に歩き回っているので

あまりエラソーなことは言えなかったりします。

 

 

 

 

 

 

難しい話はさておき、人のみならず

昆虫も日なた環境の方が集まりやすいのは確かです。

(少なくとも神代植物公園においては)

左はショウジョウトンボ、右はオオシオカラトンボ

いずれも日照の多い日なたの水辺で撮影しております。

 

 

 

 

 

水生植物園の池で見かけた

異様にたくさんのメダカ

 

 

 

 

 

 

植物多様性センターのクリの木にて

ホソハリカメムシ(左)と

ヒメトラハナムグリ(右)です。

 

ハチミツ専門店でも「クリの蜜」なんかを

よく販売していますが、一見地味なものの

クリの花は優秀な蜜源植物となっています。

ミツバチ以外にも上記のような小昆虫が訪れ、

この時期であればゼフィルスの食事場にもなります。

 

 

 

 

 

カルガモの親子。全くの偶然ですが

ヒナの手前に飛んでいるギンヤンマが割り込んでいます。

 

 

 

 

 

最後に、今年高尾山で見損ねたセッコク

植え付けたものだとは思いますが

やはり初夏の林内ではよく目立ちます。

 

ちなみにセッコクは高尾山の記事などを見てもわかる通り

周りを木に囲まれた半日陰環境の樹上で育ちます。

つまり「静」の環境に適応した植物です。

最後になりましたが、日なたには日なた、

日陰には日陰でそれぞれの長所がありますので

どちらか一方だけを是として振り切るのではなく

両方の環境を充実させている神代植物公園のようなスポットは

植生を学ぶという面でも貴重と言えるでしょう。

 

忙しくなければ、真夏にもう一度訪問したいものです。

 

 

 

 

 

【5/29 神代植物公園で撮影した生きもの】

鳥類・・・カイツブリ、カルガモ、コサギ、ヒヨドリ、ムクドリ

昆虫類・・・アオスジアゲハ、アメンボ、イオウイロハシリグモ、イチモンジセセリ、ウスバキトンボ、オオシオカラトンボ、オオスカシバ、ギンヤンマ、クマバチ、クロイトトンボ、クロボシツツハムシ、コアオハナムグリ、コマルハナバチ、ササグモ、シオカラトンボ、シマアメンボ、ジャコウアゲハ、ショウジョウトンボ、セイヨウミツバチ、テングチョウ、ナミテントウ、ハサミムシ、ヒナバッタ、ヒメアシナガコガネ、ヒメトラハナムグリ、ホソハリカメムシ、ムシヒキアブ、モンシロチョウ、ヤマサナエ、ルリチュウレンジ

その他・・・ニホンカナヘビ、メダカ

 

 

 

 

★次回、生きもの探索ツアー「首都圏生きものめぐり」は

 2022年7月16日(土)&17日(日)に開催いたします。

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 (講座の概要につきましてはこちらをご参照ください)

 

 

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小学校6年生までの方は、初回500円でご参加いただけます。

ただし、御父兄の同行をお願いいたします。