意外なほど色々な「環境」があるからこそ(井の頭恩賜公園) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

 

ここのところ都心から離れてばかりだったので

原点回帰ではありませんが、今日は近場へ。

自然地というよりは都民の憩いの場として知られる

井の頭恩賜公園ですが、意外と鳥の数・種類も多く

バードウォッチングにも適したスポットとなっています。

 

ちなみに公園の中心となるのは「井の頭池」ですが

その同じ池の中でも日照条件は水草の有無など

環境が大分異なっていることがわかります。

こうして環境が異なると、それぞれに適応した生きものが

集まるようになり、同じ公園内でも各鳥の“居場所”が生まれます。

特に、ゴイサギのように泳げないけど水場に依存している鳥は

右のような足場の多い場所を好みます。

 

とは言え、野鳥のように移動能力が秀でた生きものになると

昆虫とは違って頻繁に居場所を変えるので

あくまで「傾向」ということになりますが……。

 

 

 

 

 

この日は池の南東側に多数のカモが確認できました。

写真にはキンクロハジロヒドリガモマガモ

写っていますが、この他にもオカヨシガモハシビロガモ

コガモ、そしてホシハジロを確認しています。

 

 

 

 

 

半分寝ているゴイサギ

ちなみに距離はせいぜい1.5メートル

もちろんこちらに気づいてはいるのでしょうが

眠気が勝るのか、ほとんど反応しません。

 

 

 

 

 

ハンノキを再生しているエリア。

2018年に台風でここいらの木が軒並み倒れたのを機に

かつてここにあったハンノキ林を再生させるべく

保全活動が行われているようです。

 

ハンノキといえばミドリシジミの食草として有名ですが

鳥であればマヒワがこの木の実を好むようです。

(実際、秋ヶ瀬公園で実例を見ています)

それ以外にも多くの生きものの拠り所となるらしく

決してミドリシジミのためだけの施策ではないようです。

 

 

 

 

 

池の畔に現れたカワセミ

この日、午前中から夕方頃まで

ずっとほぼ同じ場所に留まっていました。

余程お気に入りなんだろうか?

(何となく魚が集まりそうな場所ではあった)

 

 

 

 

 

カイツブリにも遭遇。井の頭池といえば

この鳥のイメージが強いかもしれません。

 

 

 

 

 

美しいカワウのご開帳。

こうして羽を開くシーン自体は珍しくないですが

「正面向き」というところがちょっと新鮮です。

 

 

 

 

 

公園内にアジア料理のレストランがあるので

ここで昼食を済ませます。ガパオライスが美味でした。

(厳密にいうと公園に隣接している扱いであり

公園のホームページなどを見ても情報がない)

 

 

 

 

 

フクジュソウが咲いていましたが

10:20の時点ではこんなふうに半開きでした。

 

 

 

 

 

しかし、12:30頃になるとご覧の通り。

陽が高くなると花弁が開くみたいです。

 

ここのフクジュソウは、ラフレシアみたいに

地面から花だけ出して咲いているのではなく

ある程度茎も伸びてきていましたので

そろそろ開花期が終わりなのか?とも思いましたが

この咲き方からするとむしろちょうどピークだった模様。

あくまで推測に過ぎませんが、周りが裸地ではなく

ちょっと背丈の高い下草に覆われているため

虫を呼ぶためにもやや茎が伸びてから咲くように

植物自体が環境に適応したのかもしれません。

 

 

 

 

 

12:30の俯瞰写真です。

もちろん保全されているものではありますが

これだけ多数観察できる場所は

東京でも稀有ではないかと思われます。

 

 

 

 

 

陽が傾いた15時頃の姿です。

わかりやすく花がしぼんでいます。

また朝になったら開くのでしょう。

 

ちなみにちょっとした仕事の繋がりで

完全に自生しているフクジュソウというものを

一度見せていただいたことがあるのですが

自生地も大抵こうして落ち葉や下草に覆われており

やはりある程度茎を伸ばして咲いていました。

(もちろん因果関係はなく偶然という可能性もありますが)

 

 

 

 

 

 

水場だけでなく、森の環境もバリエーション豊富で

やはりそれぞれ見られる鳥が異なります。

こちらの明るい森ではシメ(右)やシジュウカラ

カワラヒワなどと何度かエンカウントしています。

 

 

 

 

 

 

もうちょい樹木の密度が高く、鬱蒼としたエリアでは

シロハラ(右)の姿を何度か見かけました。

ツグミと同様に1月中旬辺りから見る機会が増えましたが

オープンな環境を好むツグミとは異なり

やたら身を隠すのでたまにストレスが溜まります(爆)

 

 

 

 

 

影が強かったのでイマイチ色がよくないですが

サンクチュアリで数羽のアトリも見かけました。

 

サンクチュアリは公園内でも最も樹木密度の高いエリア。

観察窓や金網越しなので撮影はやや困難ですが

公園を訪れるバードウォッチャーの大半は

ここでカメラを構え、鳥が来るのを待つようです。

 

 

 

 

 

サンクチュアリにはオオタカも現れました。

間に複数の木が入る中を縫って撮影したので

ポジショニングには大分苦労しました。

(それでも間に一本枝が入りましたが)

 

今冬は方々でオオタカに会っていますが

飛んでいるシーンだけでなく

このように枝に止まっている姿を

何度か撮影できています。ここまで来ますと

やはり数が増えているのは間違いないように感じます。

 

最後に、オオタカは都会に順応しつつあると言われますが

都会に出ようとも、必要な「食事」の量が変わるわけではありません。

つまりオオタカの獲物となる生きものが東京都心部にも

潤沢に存在するからこそ、個体数が回復していると考えられます。

その内訳には外来種のドバトがいたりと

手放しに喜べない事情はあるかもしれませんが

実際こうして都心近郊を歩いていると、

東京が殺風景なコンクリートジャングルというのは

多分に「偏見」を含んでいるなと感じることがありますし

森あり、水場あり、高台代わりのビルあり……など

猛禽類にとって都合のいい環境は整っているように思えます。

 

もう間もなく、オオタカなどのシーズンは終わりますが

来冬以降も引き続き様子を見ていきたいところです。

 

 

 

 

 

【2/6 井の頭恩賜公園で撮影した生きもの】

アトリ、オオタカ、オオバン、オカヨシガモ、オナガガモ、カイツブリ、カルガモ、カワウ、カワセミ、カワラヒワ、キジバト、キセキレイ、キンクロハジロ、ゴイサギ、コガモ、コゲラ、シメ、ジョウビタキ、シロハラ、ツグミ、ハクセキレイ、ハシビロガモ、バン、ヒドリガモ、ヒヨドリ、ホシハジロ、マガモ、メジロ、ワカケホンセイインコ

 

 

 

 

★次回、生きもの探索ツアー「首都圏生きものめぐり」は

 2022年3月20日(日)に開催いたします。

 行先は「泉の森&ふれあいの森(予定)」でございます。

 現在お申込を受付中です。ご興味のある方はこちらよりお申込ください。

 (講座の概要につきましてはこちらをご参照ください)

 

 

【小学校6年生までのお子さんのご参加につきまして】

小学校6年生までの方は、初回500円でご参加いただけます。

ただし、御父兄の同行をお願いいたします。