12月5日(金)


今週、来週は花子ちゃんの学校のコンファレンス(個人面談)週間です。


それに先立ち、成績表が送られてきました。4段階の絶対評価で、体育、音楽、Artはずらりと4が並んでいて、花子ちゃんがこの3か月精一杯張り切っていたことがよくわかります。算数も4が並んでいて、Singapore Mathさまさまです。social studiesは資料を読み解く、という項目に2が付いてしまいましたが、あとは4、アメリカの時事と歴史に大変興味を持ち、しかも常に日本の歴史と比較していて、自分の考えをクラスでシェアしようと努力している、とのコメント付きでした。とほほ、はEnglishとscience、あひるさんと赤ちゃんのお耳、あひるさんの方が少し多いです。"Englishは仕方がないとしても、social studiesがこの英語力でここまでいけるのを考えるとscienceだってもう少し何とかなるんじゃないの、って感じです。でも、どの教科も最後の項目"Effort"には4が頂けて、花子ちゃんの努力はしっかり受けて止めて頂けていると感じました。


そして、この成績表をひっさげていよいよ個人面談です。花子ちゃんの担任の先生は、この学校でもう30年以上も教えているベテランで、古いコミュニティですから、親世代もこの先生に習ったというケースが幾つもあるようです。特にエッセー指導には定評があり著作もあるそうで、隣のお家のご子息はこの先生に教えて頂いて開眼し、ハーバードを出た後新聞記者になったのだそうです。一方で、有色人種に冷たい、自分のやり方を貫きとおす、という評判もあり、現に転入早々にあいさつにいったら、「ESL teacherと話せ。」と追い払われ、その後も様子が聞きたくて何度か放課後クラスに立ち寄りましたがそのたびに、「忙しいのよ。」と取り付く島もなくって、放課後毎日のように様子が聞けたカリフォルニアのローラ先生とは随分違うわ、と心配していました。そういうわけで、今日はパパも半休を取って一緒に参加しました。どっちが先に入るかもめながらそっとドアを開けると、驚くことに先生は満面の笑みを浮かべて立ち上がり迎え入れてくれました。どうも風向きが随分変わったようです。

先生曰く、こんな日本人の子供は見たことがない、きっと彼女はカリフォルニア時代のことをよく覚えているんだろう、クラスでの発言もいろいろな行事にも非常に積極的に参加してShe is amazing. 他の日本人にもいい影響を与えている、花子はもう十分アメリカの子供とやっていけるから、席順はいつもこれはと思う子の隣にしているんだけれど、彼女は気に入っているか。I am happy to have her in my class!なのだそうです。


G先生に毎週ぼろくそにやられているエッセーについても、英語力のせいで評価は低めだけど、She is a good writer.とお褒めを頂きました。何でも、このsessionでは、二つエッセーを書き、何度も推敲を重ねて完成させた後クラスで発表をしたのだけれど、花子ちゃんはinformational essayで太郎君のハンディについてその原因から詳しく説明し、最後は「私は太郎君の分まで頑張って人々に尊敬される立派な仕事をしたい!」と締めくくり、クラス中の感動をよんだのだそうです。「太郎君はどんなに頑張ってもできないことがあるけれど、花子ちゃんはやりたいこと、なりたいもの、がんばれば何でも手に入るのに、どうしてそのチャンスを生かさないのか。」とぐうたら娘を叱ったことはありますが「太郎君の分まで」なんてプレッシャーはかけた覚えがないので一瞬ぞっとしましたが、先生は、「ハナコは太郎君のハンディをバネにして、何かを成し遂げようと強い意志を持っている。It is a wonderful story!」とべた褒めです。いえいえ、そんなことはありません、言ってるだけですから、しかもこの題材は以前日本語で書いてG先生にしごいてもらったものなので花子ちゃんは自信を持って使っただけです、とも言えず、まあ、そう言って下さるならどうもどうもという感じで、お茶を濁しました。


こんなコンファレンスの後ですから、パパは手放しで大喜び、花子ちゃんをちやほやしてしまいました。パパがそういう態度に出るので、scamamは仕方なく「重し」にならざるを得ません。「今までは、発言するだけでamazing!って言われたかも知れないけれど、これからは内容が吟味されるわよ!」「いつまでもG先生のネタで勝負出来ないわよ!」って。成績表とコンファレンスの結果を送ったG先生からも早速「こういう先生は一度がっかりすると急激に冷めるから、調子に乗るな、甘えるな。」という、厳しいアドバイスが返ってきました。


12月4日(木)


木曜日は太郎君が学校を早引きして花子ちゃんの学校でSTとOTを受けます。その間、親は立ち入り禁止ですからscamamはスクール・オフィスの前のソファで時間を潰します。そうしていると色々な人が入れ替わり立ち替わり現れて面白いです。


オフィス前で太郎君をSTの先生に引き渡しているscamamを見ていて話しかけてきたエイジアン・ママがいました。もうすぐHKから引っ越してくることになっていて、ちょうど、夫婦で子供の転入手続きに来たのだそうです。太郎君についていろいろ聞いてくるので、ここの学校には行っていないけれど、街のスペシャル・プログラムを週に2回受けに来るのよ、と話すと、「うちには自閉症の子がいるのよ。いろいろ心配なこともあるのだけれど・・・」と、話しかけてくれた謎がとけました。ハンディのある子供を持つ親の悩みは万国共通、しかもハンディを持つ子の親は感覚が鋭くなっているのでたとえ人種が違っても直ぐにハンディに気が付きます。なので、こうやって始めての人から気軽に話しかけられることがよくあって、scamamは太郎君外交とこっそりよんで、気に入っています。この街のspecial educationの総責任者の名前を伝えて直ぐに連絡を取ると、物事が動き出すわよ、とちょっぴり先輩面してしまいました。


次にやってきたのは、何と昨日のミーティングの主催者だった算数カリキュラムの責任者です。オフィスに何か頼んで目の前で所在なさげに待っているので、何と大胆にも、「昨日のミーティングは興味深かったわ。」って話しかけてしまいました。そして、花子ちゃんが日本からやってきたばかりだということ、でも1,2年生はカリフォルニアで過ごしたこと、そこではTrailblazersと同じようなカリキュラムが採用されていて、1年生に計算よりも何よりも、ゼロの概念や奇数・偶数といった抽象的なことを教え始めて驚いたこと、またそんな算数になるのかな、と思ってやってきたら何とアジア式算数が導入されたばかりでまたまた驚いたことなどを、話しました。そして、Singapore Mathと日本の算数はとても似ているけれど、日本では計算重視、解き方重視の算数には賛否両論があるのだけれど、どうしてSingapore Mathがcreativeだと思うのか、尋ねてみました。


彼女いわく、確かにKUMONはアメリカでも大人気で自分も子供を行かせてみたけれどあれはcreativeとは言えない、でも、Singapore Mathの大御所〇△博士(すみません、忘れました)はとても素晴らしい先生で、アジアの算数もアメリカの算数もしっかり研究して良いところを合わせてカリキュラムを作っているし、テキストを使ってどんな風にcreativeな授業を行うか、指導もしている。この街にも導入前に何度かやって来て先生を集め講習を開いたのよ。アジアからはcreativeな数学者がたくさん出ているけれど、きっと日本でも同じテキストでも、いろいろな先生がいたるところでcreativeな授業を工夫しているに違いないと思っているのよ。ねえ、そうでしょう?


って、いきなりふられて、えっ、イ、イエス、サムタイムス。でも、普通は40人の子供に計算の仕方と問題の解き方を教えるだけで精一杯。毎日のように計算ドリルの宿題を出して、毎日のようにミニテストをする学校もあるわ。なんて言っちゃったものだから気まずい沈黙が。いかんいかん、と気を取り直し、「もしその博士のお話を聞いたらアジアの算数についての自分の考えも変わるかもしれないわ。その博士はparents向けの講演とかもやったの。」って話題転換。実際には、先生たちにSingapore Mathの説明をするだけで手一杯だったようです。今、その博士は全米で引っ張りだこで、この街には次は春先にやってくるのだとか。「parentsに講演してもらうって言うのはいい考えね。でも、ちょっと遅すぎるのよね、それじゃあ。」って彼女はちょっぴり寂しそうに笑いました。やっぱり昨日のミーティング、彼女にとっては厳しいものだったようです。大きな責任を任されて必死に頑張っている彼女の横顔にちょっとキュンとなって、そしてもう仕事もせずにお気楽毎日を送っている自分がちょっぴりさびしくなりました。いずれにしても、花子ちゃんは超がつく文系、算数がなければいいと思っている口なので、算数の天才になれるかどうかの心配は絶対にいりません。しかし、こうやって、アメリカやシンガポールが手を取り合って算数学力の向上を目指しているからには、日本の文部科学省も当然、他国の算数を気にして研究して、それでカリキュラム決めてくれてるんだよなぁ、大丈夫か、世界の流れに取り残されていないかと、心配になります。

12月3日(水)


scamam一家が住むこの街のすべての小学校で、この9月からSingapore Math を導入したことは以前にも書きましたが、アメリカの子供とその親たちにとって、この転換は相当の衝撃を持って迎えられているようです。特に、小学校最終学年である5年生にとっては、新カリキュラムをたった1年勉強しただけでmiddle schoolに上がらなくてはいけないので不安は更に増大しているようです。今週は、score report(成績表)が届けられ、conference(個人面談)が始まる週、5年生のparents対象に、Singapore Math Meetingが一斉召集されました。


meeting roomに入っていくと、既にタビーのママ、ゲイルが、プロジェクターの準備をしているこの街の小学校の算数カリキュラムの責任者に深刻な顔で詰め寄っています。ゲイルはタイ人で、ドイツ人と結婚し、イギリスで子育てをしてこの夏に渡米したばかり。アメリカの算数のレベルの低さを常々嘆いていて、機会があればレベル分けクラスにして欲しい、って頼むつもりよっ、て言ってましたから、ああやってるな、って思って見ていたら、目ざとく見つかって、隣に座れというので、よりによって、エイジアンママが二人、最前列に陣取ることになりました。「どうだった?」とこっそり聞くと、「レベル分けなんて全くその気なしよ。」ってがっかり顔でした。


さて、meetingには、小学校の算数カリキュラムの責任者の他に、校長先生、中学校の責任者そしてPTA会長までやってきました。そして、もう一度、Singapore Mathについて、その採用理由が説明されました。


その要旨は、この街が去年まで採用していたカリキュラムはTrailblazersというプログラムなのですが、このプログラムは大変抽象的で説明も問題も論述が多い(fuzzy mathと呼ばれる所以です)、しかもスパイラル方式なのである単元を完全に理解しないままとりあえず次に進んでしまって、忘れた頃にまた戻ってくる、それに比べて、Singapore Mathは説明がpictorialで具体的、問題解決志向が強く、creativeだというものです。

例として、「割合」(fraction)について新旧二つのカリキュラムの比較が具体的に示されました。singapore Mathのテキストには日本人のscamamにとっては本当に見慣れた図式が並んでいますが、Trailblazersのテキストは文章で埋め尽くされていて一瞬の画面から読み取ることはできませんでした。更に、Singapore Mathの「割合」の単元の最終目標は、「マイケルは持っている卵の3/8を売りました。売った卵は63個でした。全部でいくつ持っていましたか。」という問題が解けることです、と説明されると、会場がざわめきました。


エイジアンママが二人最前列で沈黙を守りつつ、失礼にならないようにブルブルと笑いを堪えているのを知っているのか知らぬのか、ここからは、それはもう活発な質疑応答が始まりました。思い出すままに書き連ねますが、この面白さは現場にいないとわかってもらえないかも・・・残念です。


親「今年の5年生は、最後の1年になって新カリキュラムに移行したから今までの蓄積も何もないのに、こんな難しい問題、一体何人の生徒ができるようになるのかしら。」

先生「3年生、4年生のテキストも随時使って補っていますよ。それに、middleの先生ともタイアップしていますから、ちゃんとmiddleに進んでからもフォローします。この年度に全てが完璧にならなくても心配する必要はありませんよ。」(注:最近、5年生が3年生、4年生のクラスに行って算数のテキストをごっそり借りていくことがあるそうです。)


親「私たちはSingapore Mathで育っていないのよ。子供は毎日家で宿題にstruggleしているけどどうやって教えたらいいのかわからないわ。」

先生「テキストブックには容易な言葉と図式でわかりやすく説明されている。その言葉をそのまま使って説明してあげてください。」

親「そんなこと言ったって、先生は家にテキストを持ち帰ってはいけません、って言うのよ。何のmaterialもsourceもなくて何が教えられるの?」(注:アメリカの学校の教科書は貸与されるものであり、原則持ち帰り禁止です)

親「インターネットで買えるわよ!」

親「どうして学校の教科書に親がお金を払わなくちゃいけないの!」

校長「学校としては算数の教科書を持って行かせないように、とは言っていません。是非、個人面談で担任の先生にプッシュしてください。」


親「どうして能力別グループにしないのですか。クラス全員に同じようにわからせようとして午前中ずっと算数をやっていることもある。うちは、算数にそんなに時間をかけてもらいたくないわ!」

校長「クラスの運営はすべて担任の判断です。それも是非個人面談で話して下さい。」


親「この学区はこの街では一番所得が低くて親が勉強見てる家庭が多いけれど、お金持ちの住む学区じゃ最近では家庭教師をつけてガンガンSingapore Mathを勉強させているのよ。middleになれば街中の子供が一つの学校に集まることになるから、このままだとこの学区の子供だけmiddleで落ちこぼれちゃうわ。」

親「放課後の特別授業なんかしてもらえないかしら。あるいはPTA主催で勉強会を開くとか。」

校長「そうしていただければ学校側も本当にありがたい。そのようなボランティアはいつでも大歓迎です。もちろん我々もできることは全てやっていきたいと思います。」


こんな風に振り返ってみると、ずいぶん校長先生が引き気味だな、って思いますが、こちらの学校では担任の先生の権限がとても強くて、校長先生が口を挟める範囲が限られているのも事実です。皆が思いっきり意見を述べ合って紛糾したまま特に具体的な解決策が出るわけでもなく、しかしこれからもしっかりこの問題を考えていきましょう、と、締めくくられて、会は1時間半で終了しました。日本人の参加者はscamamの他にもう一人だけ。「どうだった?」と感想を聞くと、こちらで有名な日系受験塾にお子さんを通わせているそのママは、「〇〇(塾の名前)のテキストをパーンと見せてやって、こんな問題でガチャガチャやってるんじゃないわよ。日本人はこんなのやってるんだからね!って言ってやりたかったわよ。」ってかなり過激な答えが返ってきました。学校とアメリカ人の親、そして傍観者たるアジア人、三者三様の思惑入り乱れ、この問題がこれからどうなっていくのか、乞うご期待。ちなみに、翌週明けには5年生全員が、分数に関わる4年生と5年生の教科書のコピーを配賦されて持ち帰りました。


さらにご関心ある向きには、fuzzy mathと酷評されて今回ボツになったTrailblazersと、新しく採用されたSingapore Mathの5年生の教科書の最後の問題を比較しているwebを見つけましたので、抜粋します。この動き、今全米で起こっていてちょっとした話題になっているようです。


from the last page of Primary Mathematics 5B (U.S. Edition):(注singapore Mathのことです)

18. A fish tank is 2/5 full after Sara poured 14 gal of water into it. What is the full capacity of the tank in gallons?

from the last page of Math Trailblazers Grade 5:

4. Write a paragraph comparing two pieces of work in your portfolio that are alike in some way. For example, you can compare two labs or your solutions to two problems you solved. One piece should be new and one should be from the beginning of the year. Use these questions to help you write your paragraph:
Which two pieces did you choose to compare?
How are they alike? How are they different?
Do you see any improvement in the newest piece of work as compared to the older work? Explain.
If you could redo the older piece of work, how would you improve it?
How could you improve the newer piece of work?


個人的には、Trailblazersは算数の天才向き、Singapore Mathは日本の算数と同じく解き方だけ詰め込んでいるようにも思えるのですが、算数カリキュラムの責任者は「Singapore Mathはcreative」と何度も強調していたので、一体どういうことなのか、疑問が残りました。