19Days:「みんなで力を合わせて~しめったいわば#11~」の巻 | 天然100%!今日もがんばるオレンジブログ!

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基本的にはポケモンの二次小説で、時折色んなお話を!楽しく作りたいですね!

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 ひとまず最深部まではたどり着いたけど、まさかこんなところでまたアイツらが現れるとは思わなかったよ。なんだかまとまりがないけど、ココロの言うようにぼくがしっかりしないと。頑張ろう。もう少しで初仕事が終わるんだから。


 「ココロちゃん、危ない!!」
 「!!?」


 どこかで気絶から立ち直ったのだろう。ソラの声が岩場の中に響いた。ぼくとココロの話し合っているうちに、ドガースとズバットのコンビがココロの手荷物を奪おうと回り込み、そのまま一気に急降下してきた為だった!………そう、昨日ソラが同じように荷物を荒らされたように。


 「そうはさせません!!」


 しかしそこはバトルがほとんど未経験だったソラとは違う。彼女は迫り来る気配を感じたのだろう。咄嗟の判断で後ろを振り向き、飛道具である骨をブーメランのように投げ飛ばしたのである!


 「うわっ!ち、気付かれたか!」
 「当たり前でしょう!!なんだってそこまで他人の荷物を狙ってくるんですか!?」
 「なんで?そんなの当たり前のことだろ。お宝が無いか探ってるんだよ。なぁ、スバット?」
 「へへっ、そう言うことだ。そこにいるピカチュウやヒトカゲは俺たちのことを知っているけどよ、お前は知らないだろう?俺たちも探検隊なんだぜ?探検隊がお宝を探して何が悪い」


 ドガースとズバットのコンビはボクたちのイライラする感情を煽るように、グヘヘと言うような薄汚い笑顔を浮かべている。当然のことながら誰も彼らの考え方に納得はしていなかった。特にここまで未熟なボクとチカへのアドバイザー的な役割を担っていた、ココロのイラつきは一際激しいものだった。


 「ふざけないでください!あなたたちのやっていることは相手の心や思い出を傷つける窃盗団と変わりありません!そんなことをして傷つけられた人たちの気持ち、理解してるんですか!?」
 「相手の気持ちぃ?」
 「そんなこと知るかよ。盗られる方が悪い。第一そんな弱っちぃヤツらが、高そうなお宝を持ってる方がおかしいだろう?」
 「お宝ってのは、その価値をわかっているヤツが持っていることに意味があるんだよ。違うか?」
 「ぐぅ…………」


 ココロは彼らの言葉に反論することが出来なかった。やっていることは間違いだが、納得せざるをえないような考え方を持っていたからだろう。


 「それとも何だ?悪役キャラに向かって、安っぽい自分の考え方を強引にでも飲み込ませる…………そんな主人公にでもなったつもりか?そこにいるヒトカゲやピカチュウも含めて!」
 「だとしたら滑稽だぜ。数は確かにお前らの方が多いんだろうけど、実力じゃ俺たちには到底かなわないだろうに。そんなんでよく偉そうに能書き垂れることが出来るよな?羨ましい限りだな、ケッケッケ」
 「何ですって…………あなた方に何がわかるって言うのよ!!」
 

 そんな感情に向かってさらに傷をつけるかのごとく、彼らは容赦なく好き勝手にココロを罵倒する。こうなってくると、さすがにぼくとソラの“ブレーキ役”として守ってくれた彼女と言えども我慢の限界だ。“いかり”を発動させ「うおおおおお!!」と、大地を揺さぶるような唸り声を出して、その手に持つ骨をブンブンと力任せに振り回し始めたのである!カラカラの種族が持つ闘争本能が全面的に現れてきたのか、冷静にやり過ごしていく今までの姿とは明らかに異なるものだった。


 「おやおや?そこまで感情を荒ぶらせるってことは、自分にも何か身に覚えがあるような出来事があるってことなのかな?」
 「だろうな。ケッケッケ。実は俺たちと変わらない“探検隊”の名を語って悪事を働いてる存在とか、あるいは自分の大事な物を昨日のピカチュウみたく誰かに奪われた経験があるか…………」
 「うるさい!それ以上私のことを探るなああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 「ココロ!?」
 「ココロちゃん!?」




 …………憎たらしい!…………あいつらの存在を消してしまいたい………!なんで自分がこんな目に遭わないといけないの!?あたしは………本当はごくごく平和に日常を送っていた一人の人間だったのに…………!!


 ドガースやズバットの言葉の数々。あたし自身の心の中に眠る「ポケモンたちへの憎しみ」の感情へと突き刺さるものでした。今はポケモンとして生きているけど、本来的にはポケモンという存在を心の底からは愛していない自分がいるから。


 もちろんちゃんと確かめた訳ではない。だから、この考え方が果たして自分の本当の気持ちかどうかはわからない。でも、あたしの中にはどうしても気がかりなことがあった。


 (夢の中だったり、事あるごとにあたしの頭の中で響く悲痛の叫び。“ポケモンが憎い…………ポケモンがいなければあたしはこの世界に来ることはなかったんだ。返してよ!自分の人生!自分の夢!”ってあの声は間違いなく自分の声だった。………だとしたら?)


 確証は全くない。だからあくまでも自分に起きた出来事で判断するしか無いのだが、恐らく自分はこの世界にいることを望んではいない。むしろ一刻も早く脱出して人間に戻りたいと思っている。その理由はわからない。でも、何となくだけどドガースやズバットの言葉にここまで感情的になるってことは、きっと彼らの言うように何か隠したい“事実”があるのかもしれない。いや……………


 「そんなことあってたまるかあぁぁぁ!!」
 「ココロ!!」
 「ココロちゃん!!?」


 …………彼女は一旦頭を抱えながら再び苦しみのような叫び声をあげた!そこから何かを振り払うかのように首を左右にブルンブルンさせて、ドガースとズバットのコンビの方へと向かっていく!


 その表情は何と例えて良いのかわからない。いや、例えるのが怖かった。出逢ってからの姿を知るがゆえに、一瞬にして変貌してしまったその姿をぼくもソラも受け入れ難いものがあるのだろう。


 だってそうではないか。もはやお世辞でも温厚とか優しいとは言えない。目の前にいる敵を八裂きにしないと気が済まない…………まるでダンジョン内でここまで何度か目にした種族の首領格を務めてる個体のようだ。野性的で血に飢える………そんな獣的な姿の。


 (…………止めなくちゃ。このままじゃいけない!!“ふゆう”のあるドガース、ひこうタイプのあるズバット相手にココロひとりで挑ませる訳には行かない!!)


 ぼくはバクバクする心臓の鼓動と、緊張で強ばった体に命令する。動け…………と!!


 「ススム!!」


 地面を強く蹴り、ココロちゃんの後を追うススムの姿に、私も黙ってなんかいられませんでした。もちろん相手が昨日負けてしまったドガースとズバットだから、最初は体を動かすのが怖くてたまらなかったけれど…………でも苦しむココロちゃんや、手助けしようとがんばるススムの支えになりたかったから。


 (ススム、言っていたもんね?ココロちゃんも私と同じようにひとりで頑張っているからって。少しでも寂しい気持ちが和らぐようにしたいって。やっぱり………優しいよ。私、がんばる。仲間と一緒に…………!ススムの気持ちをもっと理解出来るように!)


 …………だってあなたは私のこと、好きだって言ってくれたから!あなたの力になれるように………尽くせるように強くなりたいから!!



 
 「ち、ギャーギャーうるさい女だ」
 「狂ってるんじゃねぇのか?アイツ、自分のタイプを理解してないだろう。返り討ちにしてやるか」
 「黙れえぇぇぇぇぇ!!」


 ココロは地面を思い切り蹴り、岩場の天井にいるドガースやズバットに向けて大きく跳び跳ねた!!そこからまるで剣を鞘から取り出すときみたく、懐から骨を大きく取り出して振り下ろしたのである!!


 「食らええぇぇぇぇぇ!」
 「そんな物理攻撃で俺たちを倒せるかよ!」
 「ケケッ、そういうこと!」


 ココロが叫ぶ!…………しかし彼らに動揺する気配は見られない。さっきも理由を述べたのでここでは省略するが、確かにこのままの状態であれば彼らの方が優位だった。


 「それはどうかな!?お前たちの相手はココロ一人だけでは無いんだぞ!」
 「そうだよ!私たちは三人でチーム“トゥモロー”!仲間がピンチのときにはみんなで力を合わせる!!それが私たちのモットーなんだ!」
 「チッ…………うるさいヤツらだ」


 ドガースが呆れた様子で一言吐く。まあ仕方ないか。一度倒したポケモンが自分に向かって放ってくる言葉の数々には今更感が強いのだから。ぼくも正直なところ彼らからは卑下されても仕方ないだろうなって思った。だからといってそれでココロを放置して良いとも思ってないが。


 「とにかくココロの言うように、バネブーの落とし物を返すんだ!!“ひのこ”!!」
 「“でんきショック”!!」
 「そんな都合よく話が進むかよ!“ヘドロばくだん”!!」
 


 ぼくとソラはそれぞれ技を繰り出した。しかし、ドガースの繰り出した技に比べたらパワーは到底及ばない。返り討ちって形になってしまい、二人は地面へと叩き付けられてしまった!


 「うわっ!!」
 「きゃっ!!…………いやっ!?」
 「ソ………ソラ!!」
 「イヒヒヒ…………昨日はそっちのヒトカゲの血を味わせてもらったからな!きょうは可愛らしいピカチュウ。お前の血を味わせてもらうぜ!」
 「いやあ!!来ないでぇ!!」
 「ギャハハハ!そんな闇雲に放った電撃なんて命中しねぇよ~だ!」


 痛みが収まらないところに、ソラの悲鳴が耳に飛び込んできた!これはまずいと察したぼくは無意識に慌ててグッと体を持ち上げてしまったため、さらに「!?うがぁ………!」と呻いて痛みで苦悶することになってしまった。それでも自分には守るべき“パートナー”や“仲間”が存在する!ぼくが頑張らないでどうするんだ!?


 「やめろおおおぉぉぉ!!」
 「ウザいんだよ!“ヘドロばくだん”!!!」
 「うわああああ!!」
 「ソラさん!?ユウキさん!?」


 二人が援護しにきてくれたのでしょう。ドガースとズバットのことを自分の意識から背けてくれたおかげで、あたしは一旦冷静さを取り戻すことが出来ました。そのおかげで逆に二人が襲撃の犠牲になっている。その状況を目にしたあたしは手にしている骨を天井に向けて、この技を繰り出したのです。


 「“ふぶき”!!」
 『え!?』
 「なっ!?」
 「まさか!?」


 敵味方関係無く、その場にいた全員が驚きを隠せないでいた。無理もないだろう。まさかじめんタイプのカラカラがこおりタイプの大技である“ふぶき”を繰り出すなんて予想外にも程があったのだから。しかも彼女が得意としている物理攻撃やぼくの“ひのこ”、あるいはソラの“でんきショック”のように狙いを一点に絞ってダメージを与える技とは異なり、“ふぶき”は部屋全体へと広がる技。当然ながら、空中から立体的な動きでぼくたちを散々苦しめてきた彼らにも逃げ場所がどこにもないことを意味していた。


 「あたしの専門外とはいえ、これならいくらあなたたちでも耐えきれないでしょう!!覚悟を決めなさい!!」


 ……………ココロが高く掲げた骨からまるで魔法使いの杖のごとく発動した凍てつくような風や雪は次々に二匹へと容赦なく襲いかかかる。その結果彼らは思わず苦痛の声をあげることになったのである。さすがは探検の経験が豊富なだけあって、いくら専門外の技だと言っても、繰り出した“ふぶき”には力強さを感じた。


 「ぐああああああ!!」
 「うわあああああああ!」
 「さあ、ソラさん!ススムさん!決めるなら今のうちです!あたしの技の効果が切れる前に渾身の一撃を与えてください!」
 「え!?あ………うん!ススム!」
 「わかったよ!ココロ!!」


 ココロのアドバイスでぼくとソラはお互いに技のエネルギーをチャージし始める。確かに彼女の言う通りだ。彼らは“ふぶき”のダメージを受けているだけではなく、技によって寒気が流れ込んだことで著しく体温が奪われて身動きが鈍くなっている。つまり技を命中させるには絶好のチャンスということなのだ。


 「昨日のお返しだ!!“ひのこ”!!」
 「“でんきショック”!!」


 ぼくは大きく口を開けて、ソラは両頬の赤い電気袋に意識を集中させて。それぞれ似たようなタイミングで技を繰り出したのである!!


 『うわああああああああ!!』


 昨日の悔しさも巻き込んだぼくとソラの技は彼らに命中、そのまま撃墜させる事に成功した。苦しみからの叫び声を聞いて一瞬清々した気分になったのは確かである。でも、それはあくまでも今日の目的ではない。





 「ほら!早く出すんだ!お前たちが奪った“バネブーのしんじゅ”とソラの宝物を!」
 「…………!!」
 「ほら、早くしろ!」


 そのときの自分の表情はどんなものだったのだろうか。恐らくきっと情など全く無いような…………そんな冷酷な怒りを感じさせるようなものだったかもしれない。それを示すかのように、隣では一瞬だったけれど、ソラが怯えるような表情をしていた。確かに彼らは「探検隊」の名が泣いてしまうような悪事を働いていたことは事実だが、それだけで威圧的な態度を取ってしまって良いものだろうか。そんなような疑問を、冷静な自分が心の中では投げ掛けていた。


 「く、くそう。こんなヤツらに負けるとはな………」
 「ちぇ。仕方ない。コイツらは返してやるよ!」
 「“いせきのかけら”だ!」
 「“バネブーのしんじゅ”も!これで依頼主に届けることが出来ますね!」


 ドガースとズバットは反撃をしてくるのかと思いきや、意外と素直にぼくの要求に従った。もちろん大切な宝物を大事に扱うわけでもなく、雑に投げ捨てるように返してきたので、そのことに関してはイラっとはしたが。それでもソラやココロの笑顔を見ると、そんな気持ちもなんだか和らぐような気がした。


 「ケ、まぐれで勝ったからっていい気になるなよな!」
 「覚えてろ!」


 一方のドガースとズバット。彼らは漫画などで悪役が立ち去るときにお馴染みな捨て台詞を残して、その場から立ち去っていった。なんか腑には落ちなかったけれど、まあそれでも解決したんだからあんまり深く考えない方が得策なのかもしれない。


 「良かったあ………私、本当に取り返すことが出来たんだね。まだ信じられないよ。諦めていたから………!これもススムのおかげだよ!ありがとう♪」


 ソラはハート型のしっぽを揺らし、満面の笑顔で喜んでいた。首を少しだけ傾げて自分の方をみたもんだから、ぼくがドキッとしたことは言うまでもない。なんて素直で可愛いんだろうか………。でも、ここまで辿り着けたのはぼくの力だけではなかった。


 「お礼を言うならココロにも伝えてよ。彼女がアドバイスしてくれたから行動できたんだし…………ね♪」
 「ス…………ススムさん!」


 ソラと同じような仕草と笑顔でココロの方を振り返るぼく。その瞬間、彼女がビックリした様子で目を見開いていたことは言うまでもない。その次に顔をほんのり赤くして両手をその顔に沿え、「そんな~。それほどでも無いですよ~♪」って嬉しそうにしていたことには、ぼくは気づかなかったけど。


 「そうだよね。ありがとう、ココロちゃん♪」
 「どういたしまして♪さ、二人とも。プクリンのギルドに行きましょう!」
 「うん!」
 「そうだね!」


 ぼくたち3匹は高まった気持ちを抑えきれないまま、急いでその場から離れていった。


          ……………20Daysへ続く。