東京での生活にも慣れてきて、仕事でも徐々に成果を出せるようになっていった。

日々の読んでいた書物から、多くの事を学び吸収し、自分が以前と変わってきていることを感じていた。

こういことがしてみたい、もっとああしたい、こうしたい、こうなりたいってのがすごく強くなっていった。

鬱になっていた時には考えられないような、ポジティブな姿勢だった。

全てに対して前向きに、そして真剣に色んな事に取組むようになれた自分がいた。

目標があるってことが自分を奮い立たせて、そして前進させていたんだと思う。

そしてさらに上のレベルに自分を高めて行きたいと、そう思うようになっていった。


沖縄に後ろ髪を引かれ、離れられないと思っていた気持ちも、少しずつそこから立ち直り、自分ってものをもてるようになっていったように思える。


仕事で認められて役職がついた時、初めて自分に自信が持つことができた。

今までずっと自分を責め続けて、悲観的になっていたけど、前向きになる事でその結果がでたようで、すごく嬉しかったのを覚えている。

こんな自分でも一生懸命に取組めば、いい事が起こるものだと思えた。


そんな自分になれた頃。

私は、休暇を使って半年振りに沖縄に行くことにした。





東京での仕事を始めた私は、久しぶりの東京での社会復帰に正直不安な部分もあったけど、こうなりたいんだって思いを持っていたので、比較的スムーズに入り込むことが出来た。

勉強したり、往復の車内ではビジネス書を読んだりして自己啓発に励んでいた。

特に今までそんなに書物に触れてこなかったけど、このときからビジネス関連の書籍がとても好きになり、読書といえば、そんな本ばかり読むようになった。

それは今でも変わらないけど。


鬱になると仕事も出来ず社会復帰もなかなか出来なくなるけど、次のビジョンが見えていれば、そんなのも超えられると思えた。

もっと学びたい、もっと知りたいって欲求が強くなると、余計な事を考えている暇が無くなっていった気がする。

確かに体に出る時もあったけど、とにかく投薬は続けていくことで、そんなにおかしくなる事はなかった。

前を向くようになって、色んな事が良い方向に向かっていった気がする。

人との出会いだったり、仕事上の事だったり、全てが上手く回っていたように思う。

東京に戻ってから、今の自分の置かれた環境を素直に受け止めて、これからの自分の事を考えて、よりリアルに自分ってものが見えた気がする。

これからより高いレベルに自分を持っていきたいと、そう思うようになっていった。


今まで出会えなかった大切な仲間達にも出会うことができたし、多くの事を学んでいると思う。

それは全てにおいてプラスに働いていると感じる。

次の自分に、なりたい自分になる為に、今を生きてみるってのも悪くないと思うようなったのだ。

東京に戻ってから、また今までの自分とは違った自分になっていたように思う。

戻った当初は悲観的だったけど、今では戻ってみて新たな事が分かって、良かったと思っている。

まだまだ先は長いけど、次に向けてと思うようになれた。


私は、新たな職場で自分の位置を見つけ、自分の居場所が出来て、徐々に東京の生活に馴染んでいくのだった。







次のステップが決まった私は、残された時間を使って、あれほど戻りたいと思っていた沖縄へと向かうことにした。

いくらでも時間があったあの時とは違って、帰らなければならないという期限があったが、自由な最後の時間をもう一度沖縄で過ごしたいと思ったのだ。


二ヶ月ぶりに沖縄に戻った私は、いつもの沖縄の風景になんだか安心するのだった。

大好きなこの土地に、また来れた事が単純に嬉しかった。

就職活動をする中で、沖縄で何かを始めたいという思いに立ち返った私は、今回の沖縄滞在でゲストハウスやカフェを巡り、自分に合うものは一体何なのかを見つけたいと思っていた。

そして経営者の話を聞き、経営的視点から見た時の実情を知ろうと考えた。

客として、楽しい時間を過ごさせてもらったゲストハウスだが、経営する立場としてはどう見えるのか。

それが知りたかった。


読谷のライフ・イズ・ア・ジャーニー。

まだ暑さが残る昼下がり。

リビングでオーナーさんと話す時間が取れた。

初めて訪れた所だったが、オーナーさんは現実的な話をしてくれて、ゲストハウス経営とはどんなものかを知る事が出来た。

自分の時間が無いこと、小さな島だからこそご近所付き合いを上手くやらなければならないこと、地元の業者に仕事を依頼することによって経済を回していくこと等、色んな話を聞けて、これからの自分にとって、とても参考になるものだった。

今まで良い部分しか、そして表面的な部分でしか物を見ることが出来なかったから、その実態を知ることが出来て、よりリアルなイメージを抱けるようになり、今後の自分の展望と照らし合わせて考える良いきっかけになった。


すぐ近くにあった通り沿いのレストラン。

こじんまりしてて、にぎわってるって感じじゃなかったけど、なんかすごくあったかい感じがした。

アジアンテイストな店内も良い雰囲気をかもし出していて、ゆっくりと落ち着ける場所だった。

オーナーさんもきさくに話しかけてくれて、田舎ならではのゆったりとした時間が流れていた。

食後の一杯を飲みながら、こんな所を作ってみたい、こんな場所を提供してみたいという思いが頭をよぎった。


今回の沖縄旅行で、住んでいたときには行ったことが無かったカフェにも行けたし、多くの話を聞いていろんなイメージが膨らみ、とてもいい経験になった。

住んでいた時とは、また違った見方が出来たのだと思う。

新たな視点で物を見て、色んな事を吸収できたこの旅は、成功だった。

会いたかったみんなとも会うことが出来たし、思い出が詰まったあの場所にも訪れることができた。

名護を走っている時は、まだ自分が沖縄に住んでいるかのような感覚がしたが、戻る家が無いことに気付くと少し寂しい気がしたのも事実だが。


就職前に沖縄に行けた事。

自分にとって次のステップに向けてテンションを上げる為に、とても良い事だった。

それからの自分が変わっていったような気がする。

沖縄を離れる時は、やはり少し寂しい気もしたが、次を考えることで、その思いを払拭するのだった。

私は、長い助走をとって、次の飛行を始める事になった。