相場さんの近著を読みました。
ちなみに”轍”というキーワードが重なる「血の轍」↑とは関係ない物語でした
概要は出版元の小学館のWebより引用します。
鉄路の下に巨悪は眠る。警察キャリアの樫山順子は北海道警捜査二課長に突如着任することになった。歓楽街ススキノで起きた国交省技官の転落事故と道内の病院を舞台とした贈収賄事件を並行して捜査する中「独立王国」とも称される道警の慣習に戸惑う。両事件の背景に、この国の鉄道行政の闇が広がっていることも知り・・・
実直な警察キャリア樫山は北海道を舞台にした贈収賄と2件の殺人事件が直結することにたどり着きますが、最後は政治の力につぶされ・・・しかし!!というおもしろい終わり方をする読み甲斐のある作品に仕上がってました。
以下、印象的だった箇所です。
単行本14ページの冒頭。警視庁捜査一課管理官になった直後、継続捜査班のベテラン警部補とともに殺人事件に関わった。最終的に事件は他の省庁も巻き込む騒動に発展し、警察の威信を内外にアピールする結果となった。
相場作品の読者なら、この警部補は”あの”田川刑事”であることはすぐに分かるでしょう。
(この殺人事件は「アンダークラス」↓のことですね)
これは細かいけど気になったくだり。
金にまつわる犯罪を扱い、ときに金持ちを取り調べる機会が多いことから、警視庁本部二課の捜査員は相手に舐められぬようスーツに金をかけるのだと聞いたことがある。(きっとホントなんでしょうね~)
単行本461ページの長編の411ページに初めて本作のタイトルが登場します。
この国で一番悪い仕組みは、一度決めたら中断はおろか、後戻りすることが一切許されないことだ。今から50年も前に決めたことが、既定路線として今も生きている。田巻元首相(←田中角栄のこと)という戦後最強の覇王が作った轍は、既得権益、利益誘導、集票の道具として新幹線を延長させ続ける。
うーむ、そんな大きな負の遺産をテーマによくぞこんな複雑な物語に仕上げたと思います。
あっぱれ!相場英雄。
気持ち良い朝を迎えた静岡の自宅にて