相場英雄「血の轍」 | 八ヶ岳南麓の里小屋から -for comfort life-

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静岡県と山梨県、2拠点居住のおじさんです。思ったこと、美味しかったこと、楽しかったこと、等々を気ままに綴っていきたいと思います。

相場さんの「血の轍」を読みました。

読み始める前から、警察内の

「刑事部vs公安部」を描く作品

であること分かっていましたが

ここまでえげつないのか~!

と驚きの連続でした。
 

そして(ちょっとネタバレになりますが)読者にとって

最後の3行ですべてが救われる

読了演出は素晴らしかったです。

うーむ、警察小説はた~くさん読んできましたが、

僕の中ではベスト5

に入るかもの傑作だと思いました。

聞かれてないけど僕の中の警察小説ベスト1は

横山秀夫さんの「ロクヨン」です。

印象的だった個所です。
公安捜査網について…警視庁警備局を頂点にした公安捜査の網は、全国の所轄署に切れ間なく広がっている。

 

戦前に旧内務省特別高等警察が築いた全国組織がそのまま現在も活かされている。戦前と同じく、上意下達の組織運営も健在だ。


相場さんがこう説明してくれることで、一見老いぼれ警察官に見える安部巡査部長の意味合いが読者に理解できます。相場さん、大したもんです。

かつて同じ所轄署で兎沢に捜査のイロハを志水。この2人は刑事部と公安部という敵同士になります。そんな2人が遭遇したシーン・・・

 

「お仲間を連れていけ。けったくそ悪いんだよ」兎沢の言葉に反応した志水が動きを止め、言った。「轍が違うんだ」「なんだと?」「公安と刑事の轍が交わることはない」(なるほどね~)

 

よく言われることですが、刑事警察は市民を守り、公安警察は国を護る。そういう関係の轍なんですね~。

これは個人的に「むむ?」と感じたエピソード。
刑事部SITの坂上は公安部に”やり返す”ために公安部・志水のスマホに攻撃をかけ、進入したときの下り・・・

 

「スマートフォンのOSがアンドロイドだったのが不幸中の幸いだったわけ」は「アップルのiOSだったら(セキュリティが厳しくて)進入できなかった」と相場さんは読者に伝えています。


ここで坂上が行ったのは、この志水のスマホに侵入し、そのスマホから聞こえてくるキーボードの音を吸い上げるソフトを使い、現在公安部がやろうとしていることを察知するというものでした。

(相場さん何でそーゆーこと考えられるのかなぁ~)

終盤、兎沢は過去の細微な行動により監察部に引っ張られ、そこの警部からこう言われます。「君が信じる正義と、組織が守りたい正義は性質が違うのです」ここにも相容れない刑事部と公安部の関係を言い表しています。

最終場面、ネタバレになりますが、引用させてください。兎沢が亡くなった娘のお墓参りをするシーン・・・

 

おとしゃん、ちょっとだけ疲れたよ。咲和子の耳元で、自然と言葉が零れ落ちた。「お参りさせてもらえるか」突然、兎沢の背後から男の声が響く。

 

以前、毎日聞いていた声だ。大学脇の食堂で、ビールをさかんに勧めてくれた優しい声音だった。振り返るより早く、兎沢の真横で優しげなまなざしの男が跪(ひざまず)いた。


あ~、こうして文字にしても

涙がこみ上げる素敵なエンディングでした。

相場さん、しばらくやめられそうにないです。
 

冷えた朝を迎えた静岡の自宅にて

 

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