英語遊歩道(その51)-ニュースブリッジ北九州『桜の思い出』-劉希夷「代悲白頭翁」 | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

雨になり桜の季節が足早に過ぎようとしている。妻が「毎年違う桜が見たい」というので志井川(小倉南区)へと足を伸ばした。和服を着たアイドル系の娘をカメラマンが撮影していた。彼女の黒っぽい和服が桜一色の風景にアクセントを添えていた。

 

昨今、桜の花を見るたび思うのは、来年の春もまた桜の花が見れるだろうかという漠然とした不安である。私の同級生の間でもポツポツと訃報を聞くようになった。そんな訃報も来年はもっと増えるだろう。まあ仕方がないことではあるが。

 

 

翻訳会社に勤務した頃、「翻訳ひとくちメモ」と題するメールマガジン(メルマガ)を配信した時期があった。配信先は登録翻訳者・通訳者および翻訳依頼先の顧客だった。配信期間は3年3か月にわたり配信先も300を超え、結局第77号まで配信した。

 

メルマガでは注意すべき文法事項などを取り上げて解説した。また冒頭部では、折に触れて英語に直接関係の無い話題を盛り込んだ。毎月、メルマガの原稿を真剣に考えていた頃を今も懐かしく思い出す。それなりに充実した時期だった。

 

 

そんなメルマガの第49号(2019.4.11発行)の冒頭部では、今は放映されているかどうかわからないが、NHKのローカル番組「ニュースブリッジ北九州」の『桜の思い出』を取り上げた。劉希夷の漢詩「代悲白頭翁」の一節引用している。以下に拙文を掲載する。

 

 

桜が咲き舞い散る中、新学期、新入学の季節が過ぎています。天孫降臨神話には木花開耶姫(このはなさくやひめ)という邇邇芸命(ににぎのみこと)が一目惚れした美しい姫君が居るそうで、桜の女神とされており、また美と儚さの象徴とも言われています。

 

NHKのローカル番組「ニュースブリッジ北九州」では、毎年この時期に『桜の思い出』と題する視聴者からの桜に纏わる思い出やエピソードを紹介していますが、桜の見頃が短いが故により一層思い出やエピソードも鮮明に記憶に残るのかも知れません。

 

 

古人無復洛城東                      古人復た洛城の東に無く

今人還對落花風                      今人還た落花の風に対す

年年歳歳花相似                      年年歳歳花相似たり

歳歳年年人不同                      歳歳年年人同じからず

 

(拙・現代語訳)

昔洛陽城の東で桜の花を楽しんだ人々は既に亡くなり、今を生きる人々がその花を散らす風に吹かれている。桜の花は毎年同じように咲くが、その花を楽しむ人は毎年同じではない。

(劉希夷「代悲白頭翁」の一節から引用)

 

 

なお、劉希夷「代悲白頭翁」は私が大好きな漢詩の一つで、以前のブログで以下のような英訳を試みている。

 

「代悲白頭翁」 劉希夷 -自作英訳第二版- | 流離の翻訳者 果てしなき旅路