「黄鶴樓送孟浩然之廣陵」 李白 -自作英訳初版- | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

啓蟄(今年は35日)を過ぎて以来、妙な陽気が続いている。昨日は気温が25℃まで上がり夏日となった。彼岸前の夏日など今まで聞いたことが無い。

 

加えて花粉、黄砂、PM2.5の飛来で視界は悪く、清々しい早春の雰囲気はない。なおPM2.5とは直径が2.5μm以下の超微粒子のことで英語ではparticulate matter 2.5という。

 

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本来この時期は、大学の合格発表や卒業など人生の節目を迎える人が多いはずだが、花粉症によるくしゃみや涙がそんな悲喜交々(こもごも)の情景に水を差してるように思う。

 

(けだ)し、そんな別れがあってこそ新しい始まりや出会いもある。3月から4月にかけて人の身体のみならず精神の働きも活発になる。

 

親元を離れて独りで進学・就職する若者も多いだろう。彼らに対する送別の意を込めて、あまりにも有名な以下の詩を贈る。

 

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「黄鶴樓送孟浩然之廣陵」  李白

 

「黄鶴樓にて孟浩然の広陵に()くを送る」

 

故人西辭黄鶴樓       故人西のかた黄鶴楼を辞し

 

煙花三月下揚州       煙花(えんか)三月揚州に下る

 

孤帆遠影碧空盡       孤帆(こはん)遠影(えんえい)碧空(へきくう)に尽き

 

惟見長江天際流       唯だ見る長江の天際(てんさい)に流るるを

 

(現代語訳)

旧友が、西方のここ黄鶴楼を後にして、春霞がたなびき春の花が咲き誇る三月、揚州へと旅立って行った。彼を乗せた舟の帆影は次第に遠ざかり、やがて碧空(あおぞら)の彼方へ消えていった。その跡には、ただ長江(揚子江)の流れが天の果てまで続いているのが見えるばかりである。

 

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(自作英訳初版)

At the Yellow Crane Tower, seeing off Meng Haoran going to Guangling

by Li Bai

 

An old friend of mine left the Yellow Crane Tower in the west, and went down to the Yang Province in March, being filled with flowers veiled in a spring haze.

The distant view of his solitary sail went away and disappeared far beyond the blue sky, leaving behind the Yangtze River flowing alone as far as the ends of the earth.

 

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「黄鶴楼」(“Yellow Crane Tower”)を詠んだ詩は以前にも紹介したが、私はこの李白の詩の方が好きである。