「絶句二首」 杜甫 | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

ブログを更新しないまま、卒業のシーズンが終わり、桜が咲いて年度が替わり、桜が散って入学のシーズンも終わった。

 

先週は「寒の戻り」のような寒さになったが週末は一気に暖かくなった。いよいよ春も本番である。そしてまた今年の春も過ぎてゆく。

 

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杜甫の「絶句」は元々二連首構成である。「其の二」は有名だが、「其の一」はあまり知られていない。

 

麗らかではあるが憂鬱で気怠い春の日は、何故か人に悔恨の念を感じさせてしまうのである。

 

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「絶句」         杜甫

 

「絶句二首其一」

遅日江山麗      遅日(ちじつ) 江山(こうざん)麗し

春風花草香      春風 花草(かそう)香(かん)ばし

泥融飛燕子      泥融けて燕子飛び

沙暖睡鴛鴦      沙(すな)暖かにして鴛鴦(えんおう)睡(ねむ)る

 

「絶句二首其二」

江碧鳥逾白      江碧にして鳥逾(いよいよ)白く

山青花欲然      山青くして花燃えんと欲す

今春看又過      今春看(みすみす)又過ぐ

何日是帰年      何れの日か是れ帰年(きねん)ならん

 

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(現代語訳)

「其の一」

春の日は長く山河がいつまでも美しく見え、春風が吹けば草花の芳しい香りが漂ってくる。

泥が解ける頃には燕が飛び始め、砂も暖かくなるとその上で鴛鴦(おしどり)も眠るようになる。

 

「其の二」

碧(みどり)に流れる大河を背に鳥の白さが一層引き立ち、山の青さの中で花が燃えるように紅い。

そんな今年の春もあっという間に過ぎようとしている。果たして何時になったら故郷に帰れるのだろうか。


流離の翻訳者 果てしない旅路はどこまでも