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トラウマ日曜洋画劇場

レンタルDVDもインターネットもなかったあの頃。インドア派の少年たちがオタクとかヒキコモリといった言葉で安易に総括されてしまうこともなかったあの時代。昭和キッズは夜な夜なテレビで放送される洋画番組をめちゃくちゃ楽しみにしていた……

『テラー・オン・テープ』……IMDbには、Terror on Tape (1983) : a compilation of scenes from various horror/exploitation films とありますが、『ホラー・ワールド』(1979)や『ザッツ・ショック』(1984)よりさらにカーストの低いチープな作品ばかり集めたB級ホラーコンピレーションです。タイムマシンに乗って30年前に戻り、12,800円もだしてこんなVHSテープを買っていたあの頃の自分に説教してやりたい……。
 

トラウマ日曜洋画劇場-テラー・オン・テープ(ホラー映画ベスト1983)

『デッドリー・スポーン』(1983)、『お色気吸血鬼』(1978)、『エーゲ海の伝説』(1983)、『甦る怨霊/魔界少女キャシー』(1977)、『フローズン・スクリーム』(1970)、『悪魔の性キャサリン』(1976)、『魔島』(1984)、『バージン・エクソシスト/甦える悪魔のエクスタシー』(1974)、『ナイトメア・シティ』(1980)、『人喰いエイリアン』(1984)、『スカルプス』(1983)、『ブラックジャガー』(1978)、『過去を呼ぶ予言者』(1979)……ラインナップはかなり悲惨です。

トラウマ日曜洋画劇場-The Eerie Midnight Horror Show


登場するクズ映画の中には、御大ハーシェル・ゴードン・ルイスの『血の祝祭日』(1963)、『カラー・ミー・ブラッド・レッド』(1965)、『2000人の狂人』(1964)なども混ざっていますが、やはりお勧めは、エロトラウマ殺人鬼ものの怪作『ナイトメア』(1981)でしょうか。一昔前の場末のピープショーのシーンなど、なんだか不気味な負のパワーを感じます。

トラウマ日曜洋画劇場-ナイトメア(映画1981)

間違っても日本版など出そうにない映画も数本取り上げています。マリアンヌ・フェイスフル主演の『MADHOUSE MANSION』(1974)、ドライブインシアターを舞台にした超常復讐劇『Ruby』(1977)……。

トラウマ日曜洋画劇場-ブラッド・ピーセス悪魔のチェーンソー1983

ウォーターベッドのぬるぬる殺人場面が好きだった傑作『ブラッド・ピーセス/悪魔のチェーンソー』(1983)も収録されてると思っていたけど、確かめたら記憶違いでした。あれはレンタルしたんだっけ……。

とりあえず、『ブラッド・ピーセス』や『ナイトメア』や『人喰いエイリアン』がレンタルビデオ屋さんのホラーコーナーに当たり前のように並んでいたあの頃が懐かしい……(遠い目)。

 

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ビジュアル・ホラー・マガジン VZONE(ヴイゾーン)
1986年1月創刊号 980円


トラウマ日曜洋画劇場-VZONEヴイゾーン-発行人・末井昭

表紙には「日本で初めてのホラー・マガジン創刊」とありますが、編集ノートのページで、発行人の末井昭さんが、「実は創刊号(写真右)は第2号だ」と説明しています。本当の創刊第1号は、アニメなどを扱った別種の雑誌だったんですね。

末井昭さんといえば、 『素敵なダイナマイトスキャンダル』、何度も読み返しました。実のおかあさんが隣の家の息子とダイナマイト心中しちゃった末井少年の半生記です。町工場へ集団就職し、キャバレーの看板描きやイラストレーターを経て、伝説のエロ本編集長となり……。白夜書房とかウィークエンドスーパーとか写真時代とかパチンコ必勝ガイドとか荒木経惟とか南伸坊とか赤瀬川原平とか……そういう名前を全然聞いたことがない人にもぜひ読んでほしいオモシロ本です。

さて、肝心の『VZONE』の内容ですが、細かい映画情報やビデオデータを並べて得意そうにする気などさらさらなく、『
死霊のしたたり』や『ゴアゴアガールズ』などが脚光を浴びた当時のホラーブームに乗っかり、「みんなで楽しもうぜ!」といったテキトーなノリが誌面にあふれています。

創刊号には、「思わず眼球に突き刺さるシーン・ワースト10」というふれこみで、「凄絶無比、超ド級大出血グロシーン・恐怖の袋とじ」なるものまで付いています。ワクワクして袋とじを破ると、中身はなんてことない『ジャンク』の猿の脳みそスプーン場面だったり、ハーシェル・ゴードン・ルイスの『カラー・ミー・ブラッド・レッド』のワンシーンだったりして、袋とじ企画の醍醐味である「なんだよもう」というガッカリ感を存分に味わえます。


トラウマ日曜洋画劇場-にっかつガイラ美女のはらわた

日野日出志さんの『ギニーピッグ2 血肉の華』の製作現場レポートなどもあり、基本的に、当時うじゃうじゃ発売されたスプラッタービデオの宣伝記事が多いです。オレンジビデオハウスとかそのてのやつ。ガイラ(小水一男)監督のにっかつ作品『処女のはらわた』『GUZOO』『美女のはらわた』なども登場しています。

『悪魔のしたたり/ブラッドサッキング・フリークス』ファンにはたまらない「ロイド・カフマンが語るトロマ史」や、喰始の「ファンタスティックムービー対談」といった記事の間に、島本慶なめだるま親方が活躍する「手作り死体写真ギャラリー」や「東京キモダメシ・ルポ」などが混ざっているサービス精神もなんだかすごい。

個人的には、創刊号の「日本のナツホラ特集」が気になりました。70年代に東宝が製作した特撮怪奇映画『呪いの館 血を吸う眼』、『血を吸う薔薇』などを取り上げているページです。山本迪夫監督の推薦で吸血鬼役をやることになった岸田森さんのスナップ写真は、いま見ても迫力じゅうぶん。新東宝の中川信夫監督作品『東海道四谷怪談』や『地獄』なども熱く紹介しています。

 

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ハリウッドの優等生ロバート・ゼメキスの新作は、主演がブラピで、脚本が『イースタン・プロミス』のスティーヴン・ナイト。なんとなくちぐはぐな組み合わせゆえ、映画好きならかえって気になる作品かもしれません。


物語は第二次大戦中の1942年、モロッコ・カサブランカから始まります。カナダ出身の諜報部員マックス(ブラッド・ピット)とフランス人のレジスタンス活動家マリアンヌ(マリオン・コティヤール)は夫婦を装い、ナチスドイツ大使暗殺ミッションを遂行します。惹かれあったふたりは、その後ロンドンで結婚し一児をもうけます。


幸せな生活が続いていたある日、マックスは自らの所属する諜報機関の上司に、マリアンヌが極秘情報を横流ししている二重スパイの疑いがあると告げられ、愕然とします。そして、彼女が情報を漏らすように罠を仕掛けて証拠をつかみ、自らの手で処刑せよと命じられ・・・。


この映画、アメリカの映画ファンの評価も割れている感じで、肯定派は「ロマンス、アクション、サスペンスなど詰まった上質の娯楽作品。ヒロインのマリオン・コティヤールの演技が素晴らしい」、否定派は「平凡な仕上がり。スパイものとしては退屈だし、ストーリーも安っぽく現実感に乏しい」といった意見が多いです。
 

で、実際に見てみた感想は、肯定派の意見も否定派の意見もまったくそのとおりかなと。正統派ロマンチックスリラーと言われれば確かにそうですし、特に驚くようなひねりもない、役者と監督の名前で観客動員を狙う凡作と言われれば、そんな風にも思えます。要するに、見る人次第というか、『第三の男』や『カサブランカ』などのクラシックを見るノリで、まったり楽しむ映画って感じ。

 

ちなみに、昔のカサブランカの街並みはいかにもスタジオセットっぽいけど、サハラ砂漠のシーンはなかなかでした。私も訪れたことがありますが、本当にモロッコのメルズーガあたりでロケしたような仕上がりです(実際の撮影はスペイン・カナリア諸島の砂丘で行われたとのこと。CG処理してスケール感をだしているのでしょう)。

 

妻の潔白を信じるマックスは、彼女の正体を知る人間に次々コンタクトし、真実を探り出そうとしますが、肝心の証人たちは戦場で失明していたり、留置場に入っていたり、なかなか思うように確認できません。このへんの展開についても、もどかしくてハラハラする人と、なんだか幼稚な引っ張り方だなあと興ざめする人とに分かれそう。結局、ピアノで「ラ・マルセイエーズ」を弾けず、マリアンヌの嘘が露呈するオチもなんだかちょっと物足りません。
 

砂漠の砂嵐、ロンドン空襲、大使暗殺と銃撃戦・・・観客を退屈させないためのゼメキスらしい見せ場もいくつかありますが(ゼメキス映画にしては暴力描写ややきつめ)、とにかく結末がメロドラマそのものって感じで弱いのが残念。

 

こういう話って、最終的には白か黒かの二択になるわけで、白にしたら「安易なハッピーエンド」と言われちゃうから、シナリオ的には黒にせざるをえないですよね。問題は、黒とわかった後の決着ですが、母は強し、愛は自己犠牲なり、みたいなありがちな落とし前のつけ方では、映画を見た人すべてを満足させるのは難しいかもしれません。
 


Allied(2016)
Director: Robert Zemeckis

Writer: Steven Knight
Stars: Brad Pitt, Marion Cotillard, Jared Harris
Release Dates: USA (23 November 2016)
邦題『マリアンヌ』日本公開予定日 2017年2月10日

 

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『水野晴郎・選 決定版チラシBESTセレクション1000』
いまはなき映画雑誌『ロードショー』の1979年5月号の特別付録


トラウマ日曜洋画劇場-水野晴郎・選 決定版チラシBESTセレクション1000

76ページもあって、映画のチラシがぎっしり並んだ小冊子です。水野さんのミニコラムも載っていて、こんな記述が……。

チラシはいまやほとんどがB5という週刊誌と同じサイズですが、昔は大きさや形にもっとバラエティがありました。特に多かったのはレコードのシングル盤ジャケットと同じサイズのもの。『いちご白書』『いつも心に太陽を』などがそうでした。

映画のチラシは戦前からありましたが、昭和30年代から紙質や印刷がよくなりカラフルになりました。チラシをおおよそ今の形に方向づけたのは昭和30年代の後半、私がユナイト映画の宣伝にいた頃。その頃までは各社がさまざまな変型のチラシをつくっていました。フォックス時代には『ワーロック』なんかで拳銃型のチラシをつくりました。『豚小屋』『フォロー・ミー』『マニトウ』『ブリンクス』など、異色作と呼ばれるような作品に変型版のチラシがよく使われるような気がします。

『殺しのカルテ』や『等身大の恋人』など、チラシまでつくられたのに、かんじんの映画はおくら(未公開)になってしまったものもあります。

チラシを50音順に並べてみると、映画のタイトルによく使われる単語があることに気づきます。「愛」「狼」「さらば」「女」「男」など。地名では圧倒的に「パリ」が多いようです。

トラウマ日曜洋画劇場-水野晴郎さんの映画チラシコレクション

右の方にある『かもめのジョナサン』が目立ってますね。そういえば、リチャード・バックの原作本の訳者解説では、五木寛之さんが『イージー・ライダー』や『グライド・イン・ブルー』や『ファイブ・イージー・ピーセス』あたりの、いわゆるアメリカン・ニューシネマとヒッピー文化について語っていたような気がします。

トラウマ日曜洋画劇場-水野晴郎チラシBESTセレクション

カチンコ

昭和のあの頃、映画好きのよい子たちは『ロードショー』を買うか『スクリーン』を買うか、毎月21日になると真剣に悩んだものだ。

お小遣いは限られているから両方は買えない。本屋でそれぞれちょっと立ち読みしてどちらにするか決めたいところだが、「チラシBESTセレクション」「人気スター特選ポートレート集」「映画ファンカレンダー」などの別冊付録がこぼれないよう、どちらの映画雑誌もナイロンのひもで縛られていることが多かった。仕方ないので、ページの角のあたりをめくりあげ必死で中の様子をうかがっていると、いつの間にか神経質そうな店員が背後に立ってにらんでいる……。

どっちにするか決められないと、男子はみんな、『スクリーン』の方を買ってしまう習性があった。なぜか? 『スクリーン』には、『ロードショー』にない実用的なページがあったからだ。

それは、いつも雑誌の中ほどから後半にかけての2色刷りページにさりげなく混ざり込んでいた。堂々と紹介される大作封切り映画の陰に隠れるように、一応こういう作品も公開されるのでちょっと載っけてみましたみたいな感じで、昭和のチューボーが使うには十分すぎるほど刺激の強い写真がついたエログロ映画の新作情報ページがあったのだ。

シャロン・ケリーにマリリン・チェンバーズにマリー・メンダム、猟奇コレクターとかビリティスとか獣人とかイマージュとか影なき淫獣とかマダムクロードとかバルスーズとかインモラル物語とかミス・ジョーンズとかグリーンドアとか……。

ふ、女優や映画の名前の断片だけで、一つ一つどういう写真が載っていたか今でも思い出せるぜ。

 

DVシェルターの女
友人女性がPTSDと闘いながら2年がかりで書き上げたトラウマ体験告白本です。ふだん表に出てくることがないDVシェルター内部の裏事情が、なまなましく語られています。バイオレンスな映画ばかり見ていると神経がマヒしがち。現実に起こっている暴力の実態を知っておくことも大切かも。


『DVシェルターの女たち』 春日野晴子(著) 

彩図社文庫 (発売日2016/8/17)  ¥669

<Amazon内容紹介>
DVシェルターとは、配偶者や恋人などによる暴力(ドメスティック・バイオレンス=DV)を受けた女性が身を寄せる、現代の駆け込み寺のような場所だ。DVが世間で認知されるようになり、シェルターの存在も知られるようになってきたが、その内部がどのようになっているのかは、ほとんど明かされていない。本書は憧れの結婚生活から一転、夫による激しい暴力に苦しめられたひとりの女性が、夫から逃れ、DVシェルターに入所し、DV被害から再生をする過程を描いたノンフィクションである。