映画『マリアンヌ』感想(ネタバレ少々)―ブラッド・ピット最新作 "ALLIED" | トラウマ日曜洋画劇場

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レンタルDVDもインターネットもなかったあの頃。インドア派の少年たちがオタクとかヒキコモリといった言葉で安易に総括されてしまうこともなかったあの時代。昭和キッズは夜な夜なテレビで放送される洋画番組をめちゃくちゃ楽しみにしていた……

ハリウッドの優等生ロバート・ゼメキスの新作は、主演がブラピで、脚本が『イースタン・プロミス』のスティーヴン・ナイト。なんとなくちぐはぐな組み合わせゆえ、映画好きならかえって気になる作品かもしれません。


物語は第二次大戦中の1942年、モロッコ・カサブランカから始まります。カナダ出身の諜報部員マックス(ブラッド・ピット)とフランス人のレジスタンス活動家マリアンヌ(マリオン・コティヤール)は夫婦を装い、ナチスドイツ大使暗殺ミッションを遂行します。惹かれあったふたりは、その後ロンドンで結婚し一児をもうけます。


幸せな生活が続いていたある日、マックスは自らの所属する諜報機関の上司に、マリアンヌが極秘情報を横流ししている二重スパイの疑いがあると告げられ、愕然とします。そして、彼女が情報を漏らすように罠を仕掛けて証拠をつかみ、自らの手で処刑せよと命じられ・・・。


この映画、アメリカの映画ファンの評価も割れている感じで、肯定派は「ロマンス、アクション、サスペンスなど詰まった上質の娯楽作品。ヒロインのマリオン・コティヤールの演技が素晴らしい」、否定派は「平凡な仕上がり。スパイものとしては退屈だし、ストーリーも安っぽく現実感に乏しい」といった意見が多いです。
 

で、実際に見てみた感想は、肯定派の意見も否定派の意見もまったくそのとおりかなと。正統派ロマンチックスリラーと言われれば確かにそうですし、特に驚くようなひねりもない、役者と監督の名前で観客動員を狙う凡作と言われれば、そんな風にも思えます。要するに、見る人次第というか、『第三の男』や『カサブランカ』などのクラシックを見るノリで、まったり楽しむ映画って感じ。

 

ちなみに、昔のカサブランカの街並みはいかにもスタジオセットっぽいけど、サハラ砂漠のシーンはなかなかでした。私も訪れたことがありますが、本当にモロッコのメルズーガあたりでロケしたような仕上がりです(実際の撮影はスペイン・カナリア諸島の砂丘で行われたとのこと。CG処理してスケール感をだしているのでしょう)。

 

妻の潔白を信じるマックスは、彼女の正体を知る人間に次々コンタクトし、真実を探り出そうとしますが、肝心の証人たちは戦場で失明していたり、留置場に入っていたり、なかなか思うように確認できません。このへんの展開についても、もどかしくてハラハラする人と、なんだか幼稚な引っ張り方だなあと興ざめする人とに分かれそう。結局、ピアノで「ラ・マルセイエーズ」を弾けず、マリアンヌの嘘が露呈するオチもなんだかちょっと物足りません。
 

砂漠の砂嵐、ロンドン空襲、大使暗殺と銃撃戦・・・観客を退屈させないためのゼメキスらしい見せ場もいくつかありますが(ゼメキス映画にしては暴力描写ややきつめ)、とにかく結末がメロドラマそのものって感じで弱いのが残念。

 

こういう話って、最終的には白か黒かの二択になるわけで、白にしたら「安易なハッピーエンド」と言われちゃうから、シナリオ的には黒にせざるをえないですよね。問題は、黒とわかった後の決着ですが、母は強し、愛は自己犠牲なり、みたいなありがちな落とし前のつけ方では、映画を見た人すべてを満足させるのは難しいかもしれません。
 


Allied(2016)
Director: Robert Zemeckis

Writer: Steven Knight
Stars: Brad Pitt, Marion Cotillard, Jared Harris
Release Dates: USA (23 November 2016)
邦題『マリアンヌ』日本公開予定日 2017年2月10日

 

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