[ガン予防]「ピロリ菌」に感染すると「胃がん」になりやすい?

 

 

■ [ガン予防]「ピロリ菌」に感染すると「胃がん」になりやすい?

 

●胃がんの早期発見に重要な「不思議な検査」

 

毎年1回は受けることが義務付けられている職場健診。健診結果の異常を示す「*」がついた数値には、実は気にしなくて良いものもあれば、今すぐに再検査を受けなければならないものもあります。果たしてあなたは診断結果の本当の意味を理解しているでしょうか?

 

BMI・血圧・尿糖・眼底など項目別にその検査結果の正しい見方を解説した『健診結果の読み方』(永田宏著)より一部抜粋してお届けします。

 

 

●ピロリ菌感染とABC検査

 

胃がん検診は、胃がんの早期発見に役立ちますが、その前にピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の有無を調べておいたほうがいいでしょう。というのも、胃がんの最大の原因は、ピロリ菌だからです。

 

ピロリ菌に感染していたら、まずはピロリ菌除去を行うべきですし、感染していなかったら、胃がんのリスクは低いですから、不愉快なバリウム検査や内視鏡検査を受けなくてもいいかもしれません。

 

ピロリ菌は、菌を含んでいる不潔な水を飲むことで感染します。感染者の唾液から感染するという説も有力です。そのため親が感染していると、子供にうつってしまうこともあり得ます。感染が起こるのは、ほとんど乳幼児期に限られます。小学校の高学年ぐらいになると、免疫の働きにより、体内に入っても、大抵は排除されてしまうと言われています。

 

免疫をかいくぐって侵入したピロリ菌は、胃壁のひだに取り付いて、一生棲み続けます。ほとんどの細菌は、口から入っても強力な胃酸によって溶けてしまいますが、ピロリ菌は胃酸を中和する能力を持っているため、胃のなかで元気に生きることができるのです。

 

 

●ピロリ菌検査をしよう

 

ピロリ菌に感染すると、ほとんどの人が慢性胃炎になります。辛い痛みがある人から、ほとんど痛みを感じない人まで症状はさまざまですが、なかには胃潰瘍に進んでしまう人がいます。また慢性胃炎が長期にわたって続くと、胃粘膜が変性して、やがて胃がんになると考えられています。

 

ただし、感染したら全員が胃がんになる、というわけではありません。ピロリ菌の感染者数は、日本全体で約3500万人と推定されています。それに対して胃がんの新規患者は、年間で約12万4000人(2019年)です。その9割がピロリ菌によるものだとしても、全感染者の0.3パーセントに過ぎません。

 

だからあまり怖がらなくていいのですが、もっと安心するためには、ピロリ菌に感染しているかどうか、感染しているとしたら胃がんになるリスクはどのくらいかを調べる必要があります。

 

ピロリ菌検査は、希望すれば会社の健診に追加できるはずです。あるいは人間ドックでも受けることができます。

 

まず、採血した血液中にピロリ菌に対する抗体があるかどうかを調べます。抗体が一定濃度以上あれば「陽性」と判定されます。

 

 

●ABC検査とは…

 

次に、血液中のペプシノゲンいうタンパク質の濃度を測ります。ペプシノゲン濃度は、胃粘膜の劣化の状態を反映しています。濃度に応じて「陽性」かどうかが決まります。


そして分類表に従って、胃がんのリスクをAからDの4段階に分けるのです(表30を参照)。これをABC検査と呼んでいます。なぜか「D」だけ入れてもらえないという、ちょっと不思議なネーミングになっています。

 

 

A群の人は健康な胃の持ち主で、胃がんの心配はほとんどありません。ここに入っている人は、あえて胃がん健診を受けなくても大丈夫でしょう。

 

B群の人は、胃粘膜が少し弱っています。1年間の胃がん発生率は、1000人に1人程度とされています。まずピロリ菌を除菌し、加えて数年に1回の割合で、内視鏡検査を受けたほうが良さそうです。

 

C群の人は、胃粘膜が弱っています。1年間の胃がん発生率は、500人に1人程度です。やはりピロリ菌を除菌して、1~2年に1回は内視鏡検査を受けるべきです。

 

D群の人は、ピロリ菌は陰性ですが、ひょっとしたら抗体検査にひっかからなかっただけで、本当は感染しているかもしれません。抗体検査以外のピロリ菌検査を受け、もし感染が確認されたら、すぐに除菌しましょう。胃粘膜はかなり弱っていて、1年間の胃がん発生率は、100人に1人以上とされており、胃がんリスクが最も高いグループとされています。ここに入ってしまった人は、内視鏡検査を毎年受けたほうが良さそうです。

 

胃がん検診を受けるかどうか迷っているひとは、まずはABC検査を受けてみてはいかがでしょうか。採血だけで簡単に胃がんのリスクが分かるので、やって損はないと思います。

 

 

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