柳田國男の『妖怪談義』の妖怪名彙によると、備前御津郡円城村(現・岡山県賀茂郡吉備中央町)に幅五尺くらい(約1.5メートル)の「こそこそ岩」という怪石があり、夜分その側を通るとコソコソという物音がしたという。
こそこそ岩が古代の神々が魔王を封じた底なし穴を塞いでいるという。石像化した魔物に青い血を注ぐと復活するとされ、夜に一人で岩の傍を通る者に可愛らしい少女が「青い血が欲しい」と話しかけてくるという。青い血でない人間だと解ると脅し、逃げると追い掛けてくるという。岩の前を走って抜ければ何も起こらないとされ、話しかけられても知らないふりをしてゆっくり通りすぎれば何事も起こらないと伝わる。
水木しげるさん曰く、石の精や人の霊住んでいるのかもしれないという。また月夜の晩に、パタパタとたたみを叩く音をさせる「たたみたたき」が住んでいるともいう。この現象は「かくれ里のもちつき」ともいわれ、われわれの知らない世界からくるとされた。
このような物音をたてる岩石は、新潟県頚城郡の旧小滝村(現・糸魚川市)や奈良の松山(現・高市郡高市町)など日本全国にある。
柴田宵曲『妖異博物館』の「魚石」には、長崎の民家には水が滲みだす土台石があり、家の主人が石を割ったところ水と一緒に小魚が一匹出てきたという話が収録されている。
こそこそ岩が吉備中央町細田に現存するということだったので訪ねてみた。
そこは山また山の山の奥、岡山県の山奥で特に目印なども無いため初めて訪れる際には多少の苦難を伴う。
第一目標は細田集会所。
その北を東西に走る中国自動車道北房ICと国道53号を結ぶ奥吉備街道(吉備高原北部広域農道)を建部方面に170メートル。
丁字路を三谷方面へ左折。
道なりに500メートル足らず走った山側。
草茫々・・・・
夏は無理、冬枯れの時期に再凸。
冬も草茫々。
ここに入るのか・・・
人が分け入った跡らしきものは確認できる。
〽かき分けて、かき分けて
窪地になっている・・・
せせらぎはないがじめじめしている。
繁みの中にこそこそ岩が鎮座しているが・・・
これか?
それともこれなのか?
結論、わからん。
聞くところによると、この岩を持ち帰ろうとしたり傷つけたりしようとしたりすると激しく祟るらしい。
帰ろう。
振り返って・・・
あ、あれか?
こそこそ岩の近隣には妖怪伝承地が点在しているのであわせて巡るのがお勧め。
◆近隣の妖怪伝承地
・キウモウ狸(魔法様) 天津神社(久保田神社) 岡山県道372号経由2.3km・6分
・キウモウ狸(魔法様) 火雷神社 岡山県道372号経由3.5km・8分
・殺生石(九尾の狐) 玉藻霊石(土井神社) 岡山県道372号経由4.1km・8分
◆参考資料
『妖怪談義』 柳田國男 著 講談社 発行
『【図説】日本妖怪大全』 水木しげる 著 講談社 発行
『決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様』 水木しげる 著 講談社 発行
『日本妖怪大事典』 水木しげる 画 村上健司 編著 KADOKAWA 発行
『妖怪なんでも入門』 水木しげる 著 小学館 発行
『妖怪大図解』 水木しげる 著 小学館 発行
『決定版 ゲゲゲの鬼太郎9』 水木しげる 著 中央公論新社 発行
『完本 妖異博物館』 柴田宵曲 著 KADOKAWA 発行
町の田舎暮らし - okayama-yaso ページ!/吉備中央町の伝説/妖怪伝説/こそこそ岩/
◆概要
名称:こそこそ岩
鎮座地:岡山県加賀郡吉備中央町細田
●アクセス
自動車:岡山自動車道有漢ICより奥吉備街道経由15km20分|岡山自動車道賀陽ICより国道484号経由17km20分|細田集会所より650m2分