昔から登山をしている方の意見として「GPSに頼るなんてダメ、地図とコンパスは必須」という話をよく聞く。
自分も山に入る時は地図とコンパスを携行するようにしているが、地図はともかくコンパスを使うことはまずない。
GPSがあればホワイトアウトでも現在地は分かるしトラックログも方角もわかるのでわざわざコンパスを出す必要性を感じないからだ。
それでもあえてコンパスを携行している理由はGPSが壊れたりバッテリーが無くなった際のバックアップにすぎない。
それでもベテラン登山者がなぜ地図とコンパスにこだわるのか。
- 新しい技術についていけないから?
- コンパスで事足りているから?
いや、むしろこれまで自分が培ってきた技術、ノウハウが否定されたり不要とされるのが怖いから。
…これが一番大きいのではないだろうか。
同じような話は他にもありそうだ。
例えば先日のブログで紹介させてもらった「GoogleLens」。
だれでも手軽に花や虫の名前を同定できてしまうので超便利なのだが、これまで時間をかけて1つ1つ図鑑で調べたり人から教わったりして知識を蓄積してきたベテラン登山者からするとこれまでの努力が無意味になったように感じられるかもしれない。嫉妬に近い感情かも。
パソコンとかにも当てはまる。
自分が学生の頃、初めてパソコンを購入した時はOSを起動してソフトウェアやプリンタなどのデバイスを使えるようにするだけでもかなり苦労した。
config.sysやautoexec.batといった設定ファイルを自分で手書きしたり、レジストリというデータベースを設定したり…時間をかけてこれらのノウハウを蓄積しないとパソコンを使うことすら許されなかった。
だがそのうちWindowsなどのOSはプリインストールされ、plug&playという技術でデバイスも即認識されるようになった。
wifiなどのネットワークもほぼ自動的に構成してくれるのでipアドレスとかルーティングなどのネットワークの知識もほぼ不要となった。
もっと言うとクラウドやスマホの登場でパソコンすら不要になってスマホとタブレットだけでやりたいことがほぼできる世の中になりつつある。
こうなると今までIT技術者が費やしてきた時間と労力はなんだったのか、とぼやきたくなる。
だがこれこそが世の中の流れというもの。
ユーザーのニーズは「パソコンの設定をしたい」わけではないし「パソコンを使いたい」わけでもない。
「パソコンで実現できていた機能を簡単に、素早く、便利に使いたい」ということに尽きるのだ。
話を戻してコンパスやGPSでやりたいことは何なのか?
「自分の位置や進むべき道を簡単かつ正確に把握したい」
ということに尽きるだろう。
このニーズを満たす手段としてコンパスが良いのかGPSが良いのかはそれぞれの登山者が考えて決めるべきことだが少なくとも相当な熟練者でない限りGPSの方が便利であることは間違いない。
「あの頃は良かった…」と古き良き時代に浸るのも良いが、日々進化する世の中にしっかりついて行けるようにしていきたい。
暗闇やホワイトアウトの山行ではGPSが必須だ。