角田『3ヵ月前って言ったらあれか、拳銃を使った宝石強盗か?』

亀山『そういえばまだ犯人捕まっていませんでしたね、これが片山の犯行だっていうんですか?』

右京『半年ほど前からの彼の行動が逃走用の訓練だとしたら辻褄が合います。現に我々も参加した検問でも逃走車両は発見できませんでした』

角田『そうか、検問にひっからないルートを通ったか、もし引っかかってもタクシーの乗客は調べても運転手はほとんど調べないからな』

亀山『確か2人組の犯行でしたよね、それに運転手役の片山を入れて3人。被害者が2人、今回の犯人が1人ってことですか』

右京『ええ、それならば一台のタクシーを舞台に二人の人間が命を落としたのも納得がいきます』

 その頃、捜査一課にて

芹沢『片山にはかなりの借金があったようです。複数の闇金から約一千万ですから普通の生活してたら返せませんよ』

伊丹『じゃあ闇金がらみかもな』

三浦『しかしそうなると二人目の被害者はどうなるんだ?』

伊丹『まあ、仲間割れとは考えにくいな…』

米沢『お待たせしました、車内にあった血液ですがやはり片山のものではありません、別の男性のものです。さらに助手席のシートが一番後ろまで下げられていましたので調べてみましたが、特に何も発見できませんでした』

 
 そこに特命の二人が現れる

亀山『これはこれは捜査一課のみなさーん』

伊丹『こら、ひっこんでろカメ!』

亀山『あらら、そんなこと言っちゃっていいのかね~有力な情報持ってきてやったのに』

芹沢『なんすか、先輩?』

伊丹『食いついてんじゃねーよ』(芹沢を叩く)

三浦『警部殿~知っている情報は教えてください、殺しは我々の分野なんですから』

右京『あくまで仮説ですが、3ヵ月前の宝石強盗事件と片山を調べてみれば面白いことが分かるかもしれませんね~』

三浦・伊丹・芹沢『宝石強盗?』

 次の日、新宿の強盗被害にあった宝石店、ジュエリー中嶋

オーナー中嶋佳代子『いらっしゃいませ』

右京『初めまして、警視庁特命係の杉下と申します』

亀山『同じく亀山です』

中嶋『また、強盗事件についてですか?さんざん別の刑事さんに話しましたよ』

右京『申し訳ありません、もう一度お願いできませんか?確か被害総額は約1億円でしたね』

中嶋『ええ、新作ばかり15点。せっかく仕入れたのにすべて無駄ですよ』

亀山『でも、保険が下りてこうして営業を続けていらっしゃるみたいですね』

中嶋『でも、もう辞めようと思ってるんです。この不景気ですからね…実家に帰ってゆっくりしようと思っていたんですよ』

右京『そうでしたか、ところで調書によると犯人の顔は見ていないということでしたが、何か特徴はありませんでしたか?』

中嶋『バイクスーツにフルフェイスのヘルメットでしたからね、よくわかりません』

 そこに伊丹ら登場

伊丹『特命係の亀山~ご苦労、あとは俺らがやるから帰っていいぞ』

亀山『てめーこそ帰っていいぞ』

伊丹・亀山『なんだとこら、おい』

右京『お邪魔しました、亀山君失礼しましょう』

 外に出る二人

亀山『今何考えてるか当てましょうか、オーナーの狂言強盗で保険金目当てだったとか?』

右京『なるほど、そういう考えもできますね』

亀山『え、違うんですか?』

右京『宝石というのは意外とお金に換えるのは難しいものです。素人ならともかくオーナーがそのようなことはしませんよ』

亀山『でも時効が成立してから換金するとかできないんすか』

右京『仮にできたとしても、人を殺しては元も子もないですよ。それよりも犯人の逃走ルートが気になります』

亀山『片山のタクシーで逃げたんじゃないんすか?』

右京『僕も最初はそう思いました。しかし、だとすると疑問がひとつ。皆で逃げて、皆で宝石を隠したか、3人分に分けたとしたら今度の事件は起こらないんですよ。片山さんが狙われたということは宝石のすべてを片山さんが持っていたということになりませんか?』

亀山『確かに、独り占めを狙った片山が仲間に殺されたとしたらそうなりますね』

右京『米沢さんの報告にあった助手席を調べたあとはおそらく宝石を捜した痕跡だと思います。つまり二人の実行犯は宝石を奪い、バイクで逃走、ある地点で宝石を片山さんの乗るタクシーに移し、自分たちはバイクを乗り捨て服を着替えて徒歩か別の車で逃走、そして事件後、世間の注目もなくなった頃に落ち合って分け合う筈だったのではないでしょうか』

亀山『そこで、片山は現れずに激怒した実行犯の二人が片山を殺害、さらに仲間割れでもう一人も殺害ですか…』

右京『まず王子キャブで確認してみましょう』

亀山『はい』

続く~

 1月13日 午前8時、警視庁入り口にて

亀山『おはようございます、右京さん』

右京『おはようございます』

 そこに伊丹らが登場

伊丹『おまえ、刑事辞めて海外行ったんじゃなかったのかよ』

亀山『あ?朝から何寝ぼけてんだ?』

芹沢『そうっすよ、夢でも見たんじゃないですか?』

伊丹『いや去年の暮れにいなくなったろ!』

三浦『おまえインフルエンザにかかっておかしくなったんじゃないか?』

伊丹『???』

右京『とにかく、ここは冷えますので早いところ中に入りましょうか』

亀山『バカは放っておいて行きましょ』

伊丹『おっおい!』

 特命係にて

米沢『おはようございます、朝一でさっそく事件です』

亀山『どうせ、俺達が行っても捜査はさせてもらえまえせんよね』

右京『しかし、こうしてわざわざいらしているということは我々に何か関係がある事件でしょうか?』

米沢『おっしゃる通りです。今回の第一発見者は亀山美和子さんです』

亀山『美和子が?』

右京『さっそく向かいましょうか』

亀山『はい』

 渋谷区のある路地裏にて

伊丹『タクシー強盗か』

芹沢『ええ、被害者は王子キャブに勤める片山義彦(55)です。売上金の3万5千が無くなっているので最近都内などで連続しているタクシー強盗と同一犯かもしれませんね』

三浦『これで4件目だったな。ナイフでの犯行手口もすべて同じか』

芹沢『ええ、そして今回の第一発見者は亀山先輩の奥さんです』

伊丹『あんた、亀と一緒に海外行ったんじゃなかったのかよ?』

美和子『はい~?』

芹沢『今朝から変なんすよ、気にしないでください。で、遺体発見時の状況は?』

美和子『仕事で現場付近を歩いていて、タクシーが変な位置に停まってるなあって思ったら車内が血だらけで…少し離れたこの場所に遺体を見つけたんです』

伊丹『過去の3件とも一致か、同一犯とみて間違いないな』

右京『そうでしょうかね~』

伊丹『またですか、警部さん。邪魔は…』

亀山『お邪魔はしませんよ~俺は美和子を迎えに来ただけですから~でも右京さんは何か気付いちゃったみたいよ』

三浦『なんですか、警部殿』

右京『妙だと思いませんか、車内にこれだけの乾いていない血液がありながら、遺体発見現場には乾燥した血液しかありません。つまり普通に考えれば何者かが遺体を外に持ち出したことになります』

亀山『でも、それなら車内の血痕も乾いてないとおかしいですよね』

右京『君にしては上出来です。そうなんですよ、外の血痕と車の中の血痕には明らかにタイムラグがあることになります』

米沢『杉下警部の指摘通りです。車内の血痕は遺体とは別人のものと思われます』

三浦『どういうことだ?この事件とは別に遺体なき殺人事件があるってことか?』

米沢『この血液量では被害者が亡くなっているとは断定できませんが、確実にもう一人の被害者がいるようです』

右京『それも運転手の片山さんが殺害されてから、美和子さんが発見するまでの間に誰かが車内で被害にあったということですよ』

伊丹『運転手の死亡推定時刻は?』

米沢『詳しく調べてみないと分かりませんが硬直の具合から午前0時前後だと思われます』

亀山『美和子が発見したのが今朝の6時ごろだったな…その間にもう一つの事件があったということか』

芹沢『でも、夜中にそんな不審なタクシーに近付きますか?』

右京『確かに妙です。第二の被害者は車内で襲われていますからね~無人のタクシーに乗る人間はいません。しかし、片山さん殺害犯と第二の被害者が仲間だったとしたらどうでしょう』

伊丹『二人で犯行に及んで、3万5千円で仲間割れしたって言うんですか?そりゃ、めちゃくちゃでしょ』

右京『あくまで可能性を述べたまでですよ』

 その日の午後。特命にて

角田『よっヒマか?』

亀山『今朝はまだ会ってませんでしたね。おはようございます』

右京『おはようございます』

角田『しかしなんだね、亀山夫妻はなにかと事件に遭遇するね』

亀山『こっちだって見たかないですよ』

角田『今回はタクシー強盗じゃないみたいだね』

右京『いえ、タクシー強盗には間違いないと思いますよ、ただ売上金だけが目的ではなかったのでしょう』

亀山『どういうことです?』

右京『片山さん殺害後、犯人と被害者は再び現場を訪れて第二事件へと発展したわけと思われます。現場に再度来た理由としてまず考えられるのが証拠の隠滅、しかしそれでは第二の事件には発展するとは考えにくい、もう一つが金銭目的であった。それも仲間割れに発展するような大金が理由だったとしたらどうでしょう』

亀山『大金たって、なんでタクシー運転手がそんな大金を持っていたって言うんです』

右京『さきほど王子キャブに確認したところ半年前から片山さんは業務終了後も空車で猛スピードで走る姿が度々目撃されていたそうです。そこで3ヵ月前に起こったある事件を思い出しました』

亀山・角田『ある事件?』

右京『3か月前、我々も捜査に駆り出されたじゃありませんか』

 続く~
亀山『真犯人って、いったい誰が?』

右京『そろそろ米沢さんにお願いした物が届くと思いますよ』

 特命にて

米沢『お待たせいたしました。鑑定の結果が出ました。杉下警部のおっしゃる通り同じものです。さらに埼玉の事件についても警部の予想どおりでした、相変わらず鋭いですな~これをもとに県警も再捜査に乗り出すようです』

右京『やはりそうでしたか、では参りましょうか、亀山君』

亀山『いつのまにいろいろ調べてたんすか』

右京『君には裏付けをお願いしますよ』

 警察病院にて

右京『退院なさる前に、少しよろしいでしょうか』

平尾『またあなたですか、今度は何です?』

右京『今回の一連の事件の真相が分かりましたのでご報告に』

平尾『ニュースで見ましたよ、細川って女がやったことなんでしょう』

右京『ええ、まだ報道されていない動機は15年前の事件でしたよ』

平尾『いいがかりだ、なんで被害者の私が狙われなければならないんだ』

右京『それにしても、あなたは終始西口が犯人だとおっしゃっていましたが、いまでもそうお思いですか?』

平尾『…はっきり顔を見たわけじゃないから間違えたかもな』

右京『そうでしょうかね~僕には意図的に細川さんをかばっていた、いえ正確には細川さんが逮捕されるのを嫌ってあのような証言をしたように思えるのですがね~』

平尾『何を言っているんだ』

右京『埼玉で岸さんが殺害されたときあなたも岸さんのお宅にいましたよね?』

平尾『何をばかなことを』

右京『僕がこの部屋に最初に入ったとき壁にかかっていたあなたのズボンに土が付いていました、しかしあなたのお宅にはそのような土がつくところはありませんね』

平尾『…』

右京『そして岸さんのお宅の植木鉢からは同じ土が検出されています』

平尾『そんなの偶然だ』

右京『いいえ、肥料の配分や水分量など全く同じ土など存在しませんよ、おそらく裏の窓から出ようとする際に付いたものでしょう』

平尾『…あっそういえば昔彼の家に行ったときに付いたのかもな』

亀山『それもありませんよ、問題の土は事件の日の朝に買われた肥料が使われていたんですよ、遅くなりました右京さん』

平尾『…確かに私は岸の家にいた、だからなんだというんだね、事件前に帰ったんだ』

右京『では、事件後になぜそれを言わなかったんでしょうか?』

平尾『面倒なことになるのはごめんだったからだ』

亀山『じゃあ、あんたが帰ったあとに不審な人物とか車とか見なかったんですか』

平尾『…あ~思い出しましたよ、ピザ店のバイクが私が帰ったすぐ後に通り過ぎましたよ、きっとあれが細川とかいう犯人だったんだ』

右京『今何とおっしゃいました?』

平尾『だからピザ店のバイクが犯人なんだろ?おれはそれを見たんだ、もういいだろ』

亀山『でも右京さん、確か犯人が変装したのって宅配便でしたよね』

右京『ええ、しかし平尾さんがそうおっしゃるならば違うようですね~』

平尾『あっ…』

右京『やはりあなたは勘違いしていましたか、今回の事件の第一発見者はピザ店の従業員です』

亀山『あんたは岸さんを襲ったのがピザの配達人に変装した犯人だと思っていたということは事件に時、家にいたってことになるよな』

平尾『…』

右京『おそらく、細川さんが岸さんを襲う直前こんなやり取りがあったのだと思いますよ』

  (再現シーン)

岸『腹減ったな、ピザでも頼むか』

平尾『そうだな』

 
 しばらくしてチャイムが鳴る
 
岸『ばかに早いな、もうついたのか』

 
 玄関に出る岸

岸『なにをする!ぐわ…』

平尾『おい、どうした!』

岸『突然刺された…っく』

右京『そこであなたはピザ店の配達人に化けた犯人にやられたと思い込んだわけですね』

亀山『しかもそれで終わりじゃなかった、西口が持ってきた凶器は刃渡りが8センチ、しかし実際の傷口は10センチだった。もちろん捜査一課は西口がほかの凶器も持っているとみていたようだがな』

右京『そこで岸さんの奥さんに確認してもらったところ台所からナイフが一本無くなっていました、それが今回の凶器だと思われます。つまり千載一遇のチャンスを得たあなたは、瀕死の重傷を負った岸さんにとどめを刺したのですね』

平尾『…証拠はあるのか?』

右京『問題のナイフはおそらくすでに処分なさったでしょうが、岸さんの血液があなたの服のどこかに付着していると思いますよ。事件の翌日に今度は自分がターゲットになるとは夢にも思わないでしょうからね~まだ退院していない今なら証拠を処分することは難しいですから』

平尾『…そうか、うまく通り魔の犯行に見せられたと思ったんどな』

亀山『そんな甘くねーんだよ、ばかやろ』

右京『今回の犯行の動機はやはり15年前の真相にあるのですね?』

平尾『…』

亀山『いまさらまだ逃げるつもりなのかよ、岸さんの部屋から写真のネガが発見されたんだ、そこに写ってたのがあんたと中島だ、15年前の事件の日だということも分かってるんだ』

右京『この写真、あなたの右手を拡大してみました。なにやらボタンのようなものをお持ちですね』

亀山『使われた爆弾もリモコン式、それも20メートルくらいの距離でしか反応しないのもわかってるんだよ』

平尾『あいつが悪いんだ、15年もたって急に全部話すなんて言い出すから』

右京『岸さんは時効が成立する前にすべてを話すつもりだったようですね~そのため身辺整理も済ませ、奥さまを実家に帰していました、そして細川さんに真相を書いた手紙を送ったのも岸さんだと思います』

平尾『余計なことを…でも15年前の事件なら今日で時効だ、いまさら証拠を集められないだろうな』

亀山『ふざけんなよこのやろーあんた一回海外に出張してるだろ』

平尾『それも計算に入れたから間違いない』

右京『いいえ、調べたところ残念ながらその出張の際の飛行機は悪天候のために大幅に遅れて到着したのが午前0時を回っていました』

亀山『つまり、明日まで時間があるんだ、犯人され目星がついていれば、一日あれば当時のあんたの周辺や、爆弾の入手経路などすぐに判明するだろうな、警察なめんなよ!』

平尾『…そんな…せっかく15年も今日のことを待っていたのに…』


 特命にて

亀山『迷宮入りの事件と話題の連続殺傷事件、どちらも解決できましたね』

右京『ええ』

小野田『さすがだな、杉下』

亀山『しかし、なんで岸は15年前の犯行を話す気になったんですかね』

右京『もしかしたら15年間悩み続けた末での結論だったのかもしれませんね~』


 杉下右京は今日も紅茶に手を伸ばした。

終わり~

 平尾の入院する警察病院にて

亀山『この度は大変な目にあわれましたね』

平尾『まったくです…ところでもう刑事さんにはお話ししましたがまだ何か?』

右京『問題の荷物の送り主は渡辺久宏という名前だったのですが、その名前に心当たりはありませんか?』

平尾『いえ、先ほども別の刑事さんに話しましたけど知りません。しかも犯人は西口って男なんですよね?』

亀山『すいませんね~この人細かいことが気になるもんでね』

右京『15年前の事件でもあなたは被害にあわれていますよね~しかしその犯人の名前が渡辺だとご存じないのですか?』

平尾『…あ~あの渡辺ですか…じゃあ今度の事件も渡辺となんか関係があるっていうんですか?』

右京『僕はそう考えています』

平尾『考えすぎですよ。どうしていまさら…第一あの事件のことで私たちが狙われる理由がないじゃないですか』

亀山『でも、調べてみると15年前被害にあったのはあなたと、埼玉で殺害された岸さん、そして15年前に爆発で亡くなった中島さんですよね』

右京『つまり15年前の事件の真相を知るもので唯一残っているのはあなただけということになりますね』

平尾『何なんだ君たちは、まるで私が犯人扱いじゃないか』

右京『おやおや、そんな風に聞こえてしまいましたか、申し訳ございません』

亀山『すいませんね~つい考えすぎちゃいましてね』

平尾『とにかく犯人は西口という男に間違いない!』

右京『失礼しました。亀山君、そろそろ帰りましょうか』

亀山『はい』

平尾『…』


 警視庁にて

小野田『で、どうなったのかな』

右京『まだ捜査中です』

小野田『僕のほうでも15年前の事件調べてみたんだよ。亡くなった中島という男は大きな秘密を抱えていたみたいよ』

右京『秘密ですか』

小野田『中島も岸もそのために消されたのかもしれないね』

右京『確か、当時厚生省内でカラ出張が問題となっていましたね。国会で証人喚問をするという話にもなりましたが例の事件でそんな話はなくなりました』

亀山『じゃあ、中島の秘密ってのがそれだったなら爆発を起こしなのはそれをバラされたくない連中ですかね』

右京『ええ、その可能性はあります』

小野田『あっそうそう、正式な捜査はもう終わりにしたから、埼玉県警との合同捜査本部も解散することになったから』

右京『あとは好きなようにやらせてもらいますよ。いつものように』


 合同捜査本部にて

内村『え~思いのほか早期解決できて何よりだ、ただいまをもって合同捜査本部を…』

伊丹『刑事部長、ちょっとよろしいでしょうか』

内村『何事だ』

伊丹『解散する前にお知らせしたいことが』

内村『もったいぶらずに言え』

伊丹『ある筋からの情報で細川京子という人物を調べていましたが、この女が事件の1週間前からたびたび埼玉と中野のどちらの現場付近でも目撃されていました』

内村『どういうことだ』

伊丹『西口の証言も肝心なところは覚えていないの一点張りです。もう一度調べてみてはいかかでしょうか』

中園『じゃあ平尾氏の証言はどうなる』

三浦『しかし、捜査を打ち切った後に真犯人が逮捕されるなんて事態は避けたほうが得策かと』

内村『…よし、2日やる。徹底的に調べろ。それにしてもある筋ってのはどこなんだ?』

伊丹『それは…』

中園『まさか特命係だなんて言わないだろうな』

三浦『いえ、そんなことはありません…』

内村『まあいい、細川京子を調べろ、西口との関係もな』

伊丹・三浦『はい』

 特命にて

亀山『捜一は細川京子を任意で引っ張ったみたいですね』

右京『そのようですね~』

米沢『失礼します、例の水銀の出所が判明しました。中野の現場から2キロ離れたとこにある工場です。どうやら管理ができておらず漏れ出した一部のようです』

右京『ということは凶器をいったんそこに隠し、また出頭するときに持参した』

米沢『そういうことになりますな。ちなみにその工場から宅配員の衣装は発見できませんでした』

亀山『どういうことなんすかね』

右京『現場からはなにかありましたか?』

米沢『それが見事に痕跡がありません、足跡痕も、もちろん指紋も、荷物の宛名の筆跡もどれも西口のものはありません』

右京『では、考えられるのは一つですね』

亀山『誰かをかばっているってことですか。細川京子と西口の関係はあったんすか?』

米沢『捜査一課も調べているようですが、何も出てこないようですな』

右京『あるいは西口が一方的にかばっているとは考えられませんかね~』


 取り調べ室にて

三浦『細川さん、ご協力願いませんか』

細川『…』

伊丹『あんたが事件前に現場付近にいたことはわかってんだよ』

細川『…』

芹沢『なんとか言ったらどうですか』

細川『15年前と同じですね。強引な取り調べで自供を引き出すつもりですか』

三浦『…別にそんなつもりはないですよ』

伊丹『ん?なんか特命のにおいがするな』
 
 右京がノックもせずに入ってきた

右京『失礼、10秒だけ』

芹沢『匂いがわかるなんてすごいっすね~先輩』

右京『あなたが事件を起こしたのですね?それも時効が迫った15年前の事件の再捜査のため。だからわざわざ渡辺さんの名前を現場に残した。違いますか?』

細川『やっとわかったのね。西口って男が犯人だなんて随分と頓珍漢な捜査をしたもんですね』

伊丹『なんだと?』

細川『関係ない人を犯人にするなんて15年前から何も変わってないじゃない』

右京『それは違います。今回は出頭して、被害者の証言もありましたからね。15年前の杜撰な捜査は僕からもお詫び申し上げます』

細川『…で、あの西口って男はなんなの?警察がでっち上げたんでしょ?』

亀山『あんたな、西口が誰なのかわからないのかよ』

細川『?』

右京『先ほど西口さんからお聞きしました。あなたが一度だけ西口さんが公園で倒れているのを助けたのを覚えていませんか?』

細川『そういえばそんなこともあったような気もするけど…それが何の関係があるんですか』

亀山『中野での事件の日は偶然あんたを見かけて、様子がおかしいからあとを尾行したんだ、で事の一部始終を見てしまった。それも凶器の隠し場所までね』

細川『だからってなんで犯人として出頭したり』

右京『彼なりの恩返しだったのだと思いますよ。もちろん褒められたことではありませんが』

細川『私は15年前の事件以来誰も信じられませんでした…なのにいつの間にか助けられてたなんて』

右京『あなたを2件の殺人未遂で逮捕します』

伊丹『警部さん、埼玉の事件では死人が出てるんですよ?』

右京『ええ、ですが細川さんは殺人未遂ですよ。真犯人は別にいますから』

芹沢『なんかドラマみたいっすね』

伊丹『ばか、感心してる場合か。で、誰だっていうんですか』

右京『では、今回の事件の主役に会いに行きましょうか』

続く~

 刑事部長室にて

中園『被疑者の西口文雄の証言通り、凶器からは埼玉で殺害された岸武信氏と今回被害にあった平尾孝明氏のDNAが検出されました』

内村『そうか、動機はなんなんだ?』

中園『どうやらエリートを狙い撃ちにした犯行なようです。被害者への一方的な逆恨みによるものだと思われます』

内村『早期解決でよかったじゃないか、しかし何故出頭したんだ』

中園『そこのところはまだわかっておりません』

 特命にて

右京『今回の一連の事件は本当に彼の犯行なのでしょうかね~』

亀山『でも、出頭してきて、凶器も持ってるんなら決まりじゃないっすか?』

右京『西口は3年前に自ら経営していた会社が倒産し、その後はホームレス生活でしたね』

亀山『ええ、それで不満が爆発したってとこですかね』

右京『では、宅配員に変装した衣装や今回警視庁に乗り付けた車はどこから手に入れたのでしょうね~』

亀山『まあ盗んだんでしょうね』

右京『仮にそうだとして、今その衣装はどこでしょう?』

亀山『どっかに捨てたか…いやそんなら凶器も一緒に捨ててそうですね』

右京『ええ、凶器だけ持ち帰り、その他は処分した…どうも妙な話です』

そこにやってきた米沢『確かに妙です。今回発見された凶器ですが…』

亀山『まさか凶器ではなかったとか?』

米沢『いえ、それはありません。しかし凶器を入れていたビニール袋から水銀が検出されました』

亀山『水銀?』

米沢『ええ、西口の暮らしていた公園では検出されませんでしたから、どこかで付いたものだと思いますが』

右京『なるほど。だとするならば凶器が西口のものだとは言えませんね』

亀山『どういうことです?』

右京『西口がどこかで凶器を拾い、それを持って出頭した可能性もあるということですよ』

亀山『なんだってそんなことを?』

右京『さあ、それはまだわかりません。しかし15年前の渡辺の自殺と何か関係があるのかもしれませんね~』

 そこに伊丹らが現れる

伊丹『特命係の亀山~てめ~何こそこそ調べてやがる』

亀山『おめーらには関係ねーよ、こっちは官房長直々の命で動いてんだからな』

右京『亀山君、おしゃべりが過ぎますよ』

亀山『すんません、そういうことだ、とっとと帰れよ』

三浦『せめて何を調べてるか教えていただけませんか?』

右京『ただ一つ言えることは、まだ事件は終わっていないということだけですよ』

 二人は外に出ていく

芹沢『?』

伊丹『何言ってんだ?』

三浦『まさか真犯人がいるなんて言い出さないだろうな…』

伊丹『うーん…まさかな…』

 所轄の北沢署にて

中村刑事『本庁の方が何のご用ですか?』

右京『あなたは15年前の厚生省爆破事件の捜査に当たられていましたね』

中村『ええ、まだ新人の頃でしたけど』

亀山『渡辺は犯人に間違いなかったんですよね?』

中村『どういうことです?』

右京『今捜査している事件にもしかしたら関係しているかもしれませんのでお聞きしています』

中村『あの事件は忘れません。証拠は渡辺の大学院の研究室にあった爆弾製造の道具と、事件当日のアリバイがなかったことだけでした』

亀山『それだけで起訴ですか』

中村『本庁からは事件解決を急がされましたからね。自白もあったことで起訴に至りました』

右京『そうでしたか、やはり確たる証拠はありませんでしたか。その自白というのも身柄拘束から10日もたってのものですから信憑性があるとは到底思えませんが』

中村『ええ…強引だったのは間違いありません…でも奴は自殺した。だからやっぱりあいつが犯人だったと思うことにしたんです』

亀山『そんな…』

右京『最後に一つだけ、渡辺の両親は事件当時すでに亡くなっていたようですが、他に関係者はいなかったのでしょうか?』

中村『奴は一人っ子で、親戚も当時調べましたが事件後は縁を切った状態だと思います、そういえば…』

右京『はい~?』

中村『あの当時何度も警察に来ては無実を訴えていた女性がいました』

亀山『名前は?』

中村『確か…細川…京子という名前だったと思います』

右京『亀山君、捜査一課にも協力してもらって探してください』

亀山『了解!』


 しばらくして、刑事部長室にて

内村『杉下、お前等はまだ例の事件を調べているそうだな』

右京『ええ、少々気になることがありまして調べています』

中園『今すぐ捜査をやめろ』

亀山『しかし官房長からの命令なんですよ』

内村『だからどうした、先ほど被害者の平尾が意識を取り戻して事件の証言を得た。そこで西口を犯人だと証言したんだ』

中園『つまり、これはもう終わった事件だ、これ以上は無駄だ』

右京『お言葉ですが、それだけとは思えませんが』

内村『考えすぎだ、さっさと部屋に戻って大人しくコーヒーでも飲んでろ』

右京『僕はもっぱら紅茶です、では失礼します』

亀山『失礼します』

 廊下に出る二人

亀山『どうなってるんです?』

右京『さあ、しかし平尾さんにお話が聞きたいですね~』

亀山『でも、たった今捜査中止命令が出たんすよ?』

右京『ではお見舞いに行きましょう』

亀山『そうっすね』

 続く~