特命にて

恩田『わかりました、トラックから指紋も検出されました』

右京『そうでしたか』

米沢『こちらも驚愕の事実が判明いたしました』

右京『やはりただの事件ではなかったようですね~』

 東都銀行台場支店にて

右京『原田さんの定期預金を担当していた有田さんですね?』

有田『ええ…私に何かご用ですか?』

右京『今回の3億6千万円の件について一つよろしいでしょうか』

有田『ああ、私も定期の解約には最後まで反対していたんですけどね…残念です』

恩田『ところであなた、原田さんの家には伺ったことあります?』

有田『ええ、玄関先だけでしたけどね』

右京『今度の事件をあなたはどう思いますか?』

有田『なんで私が…』

右京『参考までにぜひお聞きしたいのですが』

有田『僕が言うのもなんですけど、あの家族はバラバラでしたからね…娘さんたちを調べたらいいんじゃないですか』

右京『なるほど、しかし家の中に出入りできる人間がトラックで運び出したりしますかね~それこそ武蔵さんの外出中にでも掘り返せば済む話です』

有田『私は聞かれたから答えてるだけですよ』

右京『ええ、そうでした。僕には内部に出入りできない人間、それでいて内部情報を知っていた人間。そのように思えるのですが』

恩田『誰か心当たりありませんか?』

有田『…知りませんよ』

恩田『参考までに10月12日の深夜から5時ころまでどちらにいました?』

有田『私を疑っているんですか?』

右京『形式的な質問です、関係者皆さんにお伺いしています』

有田『もちろん自宅で寝ていましたよ、妻と別れて独り暮らしなので証明してくれる人はいませんよ』

右京『そうですか、では失礼します』

 外に出る二人

恩田『怪しいですね、でもこれで動き出しますか?』

右京『必ず何らかの動きはあるはずですよ』

 その日の夜

 有田の自宅を訪れた右京

有田『まだ何か?』

右京『今日は早退されたそうですが、どこか具合でも?』

有田『気分が悪いんですよ、だから帰ってください』

右京『1分だけよろしいですか?実は昼間重要なことを話し忘れていました。現金を運び出す際に使用されたトラックが特定されたんですよ』

有田『…』

右京『そのトラックはまだ修理されておらず原田邸の外壁の擦った跡と一致していますのでまず間違いありません。さらに運転席からはあなたの指紋も検出されたんですよ。これをどう理解っすればいいのかと悩んでいました。どうか明確なお答えをお聞かせもらえませんか?そうしないと僕は今夜眠れそうにありません』

有田『そんなの以前そのトラックを使ったことがあるからですよ』

右京『どこででしょう』

有田『ホームセンターですよ!大型の家具を買ったときに利用したんですよ!』

右京『なるほど、すっきりしました。しかしそうなると疑問がひとつ。なぜトラックがホームセンターのものだとあなたは知っているのでしょう』

有田『…新聞で読んだからですよ…』

右京『いいえ、その事実は最近まで判明していませんでした。ましてマスコミなどに公開などされていません』

有田『じゃ、刑事さんが言ったんでしょ…』

右京『それもありません、僕が言ったのはトラックが特定されたことと、指紋が検出されたことだけですよ』

有田『他に証拠はあるのか?それに現金はどこにあるっていうんだ?』

右京『あなたの靴をすべて調べれば必ず原田邸の庭の土が検出されるはずです。もっとも自宅の玄関先しか入っていないというあなたの言葉を信用すればの話ですが』

有田『庭に行ったことあったかもせませんね~』

右京『では、現金を見つけ出しましょうか。あなたが早退したということは現金をどうにかしようとしたからでしょう。しかし現金を隠せたとしても、重量も体積もある空の容器はそう簡単には隠せません。まだどこかにあるはずですよ』

有田『…日をあらためて令状を持ってきてくださいよ』

そこにやってきた恩田『家宅捜索令状です。まだ逃げるつもり?』

有田『…なんで…俺につながる証拠なんてなかったはずなのに』

右京『完全犯罪などこの世には存在しませんよ。人間がやる以上必ず痕跡は残るものですよ』

 原田邸にて

弥生『犯人が見つかったんですか』

葉子『じゃあ、遺産相続できるのね!』

弁護士の上田『ええ、犯人が逮捕されましたので遺言書を読みあげます』

長子『なんで刑事さんたちもいるんですか?』

右京『どうかお気になさらずに』

上田『次のものにすべての遺産を相続させる、名倉文子』

葉子『なによこれ!誰なのよこの女』

上田『原田武蔵氏のお子さんです。20年前に奥様が亡くなられたあと、しばらくして名倉さつきさんとの間に生まれたお嬢さんです』

弥生『父に愛人がいたのは知ってますけど…なんでその人だけなんです?』

上田『武蔵氏が体調を崩されてからはあなたがたは見舞いにも、看病にもこられなかった。現金が盗み出されるまでは文子さんがたった一人で世話をされていたんですよ。しかし盗まれたのがわかったので騒動に巻き込まれないように武蔵氏は彼女を母親のもとに帰したんです』

長子『そんなの認められないわ!』

葉子『そうよ!なんで全部持ってかれなきゃいけないのよ!』

右京『しかし、遺言というのは絶対的ですよ』

弥生『でも、待ってください、仮にその人に遺産の大半が言ったとしても遺留分があるはずですよね』

上田『ええ』

右京『おっしゃる通りです。少なく見積もっても1億は皆さんの手に渡るはずです』

長子『しょうがないわね』

弥生『…』

葉子『まあ少しでももらえるだけましか』

右京『ただし、あなたがたが武蔵氏の死に関与していない場合に限ります。そうですよね上田さん?』

上田『ええ、たとえ法定相続分でも当人への犯罪に関与していた場合は無効です』

弥生『私たちが何をやったというんです?』

右京『実は、武蔵さんが生前行きつけだった美容室から文子さんに連絡があったんです。武蔵さんはマフラーを忘れていたそうです。文子さんが預かったまま武蔵氏は亡くなってしまったため手元に残されました。このマフラーから武蔵さんの髪の毛が検出されました』

葉子『美容院なんだから当り前じゃない』

右京『ええ、ただの髪の毛ならば問題ないのですが、念のため調べてみました。米沢さんお願いします』

米沢『この髪の毛からはヒ素が検出されました。それも人為的に投与された可能性が極めて高い』

弥生『…』

右京『しかし死因は心不全でしたね。そこで検死を担当した武蔵氏のかかりつけの医師が白状しました。すべてあなたたちの指示だったと』

長子『そんなのでたらめよ!』

米沢『開業の資金欲しさに虚偽の死因を書いたと認めたんですよ。まあ調べなおせばそれはいずれわかることです』

弥生『…』

右京『どちらにしても、あなたがたに遺産を相続する権利などなかったのですよ』

米沢『まさに天網恢恢疎にして漏らさずですな』

 そこに捜査1課が登場
 
伊丹『3人とも署まで御同行願います』

三浦『そのマフラーと髪の毛もこちらで預かりますよ』


 特命にて

角田『結局現金は銀行の貸金庫から、容器は有田の車の中から見つかったのか』

右京『ええ、多すぎる現金は悲劇を生むようですね~』

角田『俺らはそんな心配なくてよかったな!』

右京『そのようですね~』

そこに現れた恩田『おかげ無事解決できました、ありがとうございます』

右京『なによりです』

 その後、そこに亀山登場

亀山『ただ今戻りました!課長!これおみやげ』

角田『おう、サンキュー』

亀山『右京さんにはこれ、最高級茶葉セット』

右京『おやおや』

亀山『は、買えなかったのでその香りを楽しむセットです』

右京『ありがたく頂戴します』

杉下右京は紅茶風の香りを楽しんだ。

終わり

 米沢と右京が合流

米沢『車が擦ったような跡ですな、位置から見て軽トラックのドアミラーだと思われます』

右京『やはりそうでしたか、この残された塗料から車両を割り出せますか?』

米沢『もちろんです、しかし私が言うのもなんですが事件と関係あるかどうかは何とも言えません』

右京『ええ、もちろんそうです。しかし調べてみる価値はあると思いますよ』

米沢『では、さっそく調べに警視庁に戻ります』

右京『よろしくお願いします』

 再び屋敷に戻った右京

弥生『何かわかりましたか?』

右京『いえ、これといって何もありません。ところで3億6千万もの大金を保管していたということは武蔵さんには相当の遺産があったということになりますが、相続はどのようになっているのでしょう』

長子『私たちも知らないんですよ』

葉子『あの親父、弁護士雇って遺言書を書いていたんだってさ』

右京『おやおや、家族にも秘密にしていたのですか』

弥生『ええ…わたちたちも父の葬儀の席で弁護士の先生に知らされました』

右京『いまだに配分を知らないということは、何か特別な文言でもあったのでしょうか?』

弥生『弁護士の上田さんがおっしゃるには[今度の事件が解決するまで遺産相続は行われない]と父が書き加えたそうです』

右京『なるほど…身内に犯人がいるかもしれないという状況ですからね~』

弥生『ええ…父は私たちを疑っていたんでしょうね…』

葉子『家と土地だけでも最低8億、今回の現金を含めたら12億近くなるって話よ、私たちで分けても一人4億円よ。なのにわざわざ盗んだりしないわよ』

 その時、右京の電話が鳴る

右京『杉下です。そうですか、僕も向かいます。どうやら不審でない車の目撃情報があったようです』

 目撃者の徳井和彦の家

恩田『10月13日に間違いありませんね?』

徳井『ええ、その日の早朝に軽トラックが原田さんのお宅の前に停まっているの見ました』

右京『よく正確な日時を覚えていましたね~』

徳井『ちょうど新聞を取りに行ったときで、その新聞に地震の一面記事があったんでよく覚えてるんです』

恩田『スマトラ地震が10月12日でしたから、どうやら間違いなさそうですね』

右京『なるほど、ところでそのような早朝に不審な点はありませんでしたか』

徳井『牛乳屋の車でしたから、別に怪しいとは思いませんでしたけど…』

恩田『車で配達する牛乳屋。名前は覚えていませんか?』

徳井『確か…明永乳業だったと思います』

 鑑識にて

米沢『現場周辺に配達する明永乳業の販売店は存在しませんでしたか』

右京『ええ、おそらく怪しまれないようにトラックに社名をプリントしたか、シールを張ったのでしょう』

米沢『ならば問題のトラックには痕跡が残されている可能性もありますな』

右京『それもそうですが、偽装表示のための材料をどこで手に入れたかも気になりますね~』

米沢『最近ではインターネットで何でも手に入るでしょうが…もしくは私の行きつけの店にもあるかもしれません』

 現場周辺のとあるホームセンターにて

恩田『きっとこれね、最近ではこんなものまで市販されてるのね』

右京『ええ、可能性はあります』

恩田『でも、仮にこれを使った人物がいたとしても誰だかまでは特定できないですよね』

右京『そもそも、こんな偽装をするからには軽トラックが身近にあったからと考えるのが自然です。さらにレンタカーでは目につきやすい、自分の車ではリスクが高い、ならば盗難車というのはどうでしょう』

恩田『身近にあって、盗難車?』

右京『このお店にもちょうどいい車があるじゃないですか』

恩田『ああ、配達用に貸し出される軽トラック!』

右京『調べてみる価値はありそうですよ』

 しばらくして鑑識にて

米沢『ホームセンタービーバの軽トラックの1台のドアミラーが壁にこすった後と一致しました』

右京『シールの痕跡もありましたので間違い無いでしょうね』

恩田『しかし問題はこの軽トラックが夜間はほぼ自由に乗れてしまうようです、鍵も日中は誰でも取れるような場所にあったようでコピーを取れば自由に乗れます』

右京『少々気になることがあります、恩田さん調べてもらえますか?』

恩田『はい』

右京『米沢さん、もう一つ調べてほしいことがあります』

米沢『なんなりと』

 続く~

             『消えた3億6千万円』

 特命にて

角田『よっヒマか?』

右京『課長、おはようございます』

角田『あれ?亀山は遅刻かなにかか』

右京『亀山君はエルドビアに住む友人が亡くなったのでしばらく休むと昨夜連絡がありました』

角田『葬式か、せっかく面白い事件をもってきてやったんだけどな~』

右京『事件というと』

角田『さっき所轄から聞いた事件で、自宅にあった3億6千万が忽然と消えたんだとさ』

右京『3億6千万円…これはまたすごい額ですね~』

 捜査1課にて

伊丹『どういうことなんだ?』

芹沢『昨年の10月13日、港区の原田武蔵さん(80)の自宅に埋めていた3億6千万が、ある朝掘り返されていて盗まれたようなんです』

伊丹『自宅に埋めるなんてバカなのか?』

芹沢『なんでも銀行の利子が低すぎると言って40年間貯めた定期預金を全額解約して自宅に埋めたんだそうです』

三浦『なんで盗まれた日が分かるんだよ?』

芹沢『毎朝埋めた場所をチェックしてたようです、その日に限って掘り返されたような跡があったので調べたそうです』

右京『ということは、少なくとも現実に存在していたのは間違いないのですね~』

伊丹『警部殿~また勝手に入ってこないでくださいよ~』

三浦『で、所轄では手に負えなくなって本庁に捜査依頼が来たのか』

芹沢『ええ、湾岸署の恩田刑事が担当だそうです』

右京『そうでしたか、さっそく参りましょか』

伊丹『亀がいないからってなんで俺達が…』

右京『被害者の原田さんは先日亡くなったようです。もしかしたら事件に巻き込まれたのかもしれませんね~』

伊丹『そうなのか?』

芹沢『ええ、相変わらず情報が早いっすね~』

伊丹『バカ!それを早く言え!』

芹沢『先に言われちゃったんすよ~』

 原田邸にて

伊丹『警視庁捜査1課の伊丹です、原田武蔵さんの亡くなった件についてお伺いしたいことがあります』

原田の三女(長子)『父は心不全で亡くなったんです』

伊丹『え?』

二女(葉子)『それより刑事さん、早くお金取り返してくださいよ!』

芹沢『それは別の担当です、確かに死亡診断書には心不全とありますね』

伊丹『ちっ…とんだ無駄足だったか…』

右京『武蔵さんには持病のようなものはおありだったのですか?』

長女(弥生)『いいえ、父は健康が取り柄でしたから…突然のことでした』

右京『そうしたか、ところで3億6千万もの大金をどのように埋めていたのでしょうか』

弥生『父は密閉できる容器に100万円の帯封がついた状態で保管して、その容器は10本だと生前言っていました』

葉子『私たちのお金なんだから、早く見つけてよね!』

右京『ということは、一度にそれを持ち出そうとすれば車が不可欠ですね~』

 そこに恩田刑事が登場
 
恩田『もちろん調べましたよ、杉下警部』

右京『お久しぶりです、恩田さん』

恩田『事件当時の不審な車の目撃情報はありませんでしたよ』

右京『不審でない車ならどうでしょう』

恩田『はい?』

右京『目撃した物がそこにあっても不自然なものでなかったのなら、目撃者は不審な車とは認識しないのではないでしょうかね~』

恩田『なるほど…すぐに調べます』

右京『ところでこの場所に埋めてあるという事実は誰がご存じだったのでしょう』

弥生『私たち(3人の娘)と私たちの旦那と子供くらいだと思います。父がだれに話したかまでは分かりませんが…』

右京『そうですか、少し家の周りを拝見させてもらってもよろしいですか?』

弥生『どうぞ』

 家の外を調べる右京、ふと壁にこすったような跡を見つける

右京『これは…』

 携帯で電話をする右京

右京『米沢さん、今よろしいでしょうか?』

米沢『今、渋谷の現場から帰るところですが、それでよろしければ』

右京『お願いします』

続く~


 しばらくして

伊丹『倉本が死体で見つかった?』

芹沢『ええ、身元を示すものは持っていませんでしたけど、倉本の写真の顔とそっくりでした』

伊丹『じゃあ、第二の被害者はやっぱり倉本だったのか』

右京『そのようですね~』

伊丹『ちょっと警部殿、勝手に入ってこないでもらえません?』

亀山『もう入っちゃってるから』

芹沢『全部石川の犯行なんすかね』

伊丹『とにかく現場に行くぞ、おっと警部さんは来ないでくださいね~』

亀山『なんだとこら~』

右京『亀山君、ここは一課にお任せしましょう』

亀山『でも…』

 花の里にて

亀山『ったく、俺達がここまで調べてきたのに何で蚊帳の外なんすかね』

右京『我々は特命係ですからね~』

亀山『そんなことはわかっていますよ』

美和子『また仲間外れにされたのね~』

亀山『別にあいつらは仲間じゃねーよ』

たまきさん『でも、怖いわね~宝石強盗から殺人事件なんて』

亀山『でも、肝心なこと忘れてましたよね』

右京『ええ、別に忘れていたわけではありませんが、どちらの事件にしても証拠は一切ありません』

亀山『たとえ石川を見つけ出しても手も足も出ないんですよね…』

美和子『でも、指紋が出たんでしょ?』

右京『ファミリーレストランのトイレのタンクに指紋があっただけですからね~事件との関与を否定されれば我々には何もできませんよ』

 次の日 捜査一課にて

伊丹『身元の確認取れました、やはり倉本で間違いありませんでした』

米沢『タクシーの車内から見つかった血痕と血液型が一致しました、結果待ちですがDNAも一致すると思われます』

内村『つまり宝石強盗犯の二人が死んで、残る一人が今回の殺人事件の犯人とみていいんだな』

伊丹『特命係の情報ですが…杉下右京が絡んでいるのでその可能性が高いと』

内村『バカモノ!お前らは自分たちで調べられんのか!』

伊丹『申し訳ありません…』

 そこに芹沢が現れる

芹沢『部長、目撃者がいました』

内村『顔を見ていたのか?』

芹沢『いえ、暗かったので顔は見えなかったようですが、トランクを運ぶ男が目撃されてます』

米沢『現場にもトランクで運んだ形跡はありました。タイヤの跡からトランク内の重さは約60キロ、倉本の体重と一致しています』

 そこに右京が登場

右京『その目撃された男はどのような格好をしていたのですか』

内村『杉下!誰が入っていいと言った、お前の出る幕ではない!』

右京『すぐに済みます、どのような格好でしたか?そしてその目撃時刻は?』

芹沢『死亡推定時刻からして犯行後すぐですね、目撃者は黒い革ジャンに、ジーンズ姿だったと言っていますね』

右京『妙ですね~犯人は倉本殺害時には大量の返り血を浴びているはずです』

内村『それがどうした』

右京『犯人は着替えるか、血をふき取るかしなければ街を歩くこともできないはずです、にもかかわらず堂々と街を歩いていた』

伊丹『そうか、もし殺害が計画的でなかったのなら途中でタオルとか着替えを買ったかもしれないな』

右京『ええ、タクシーの停まっていた位置から遺体発見現場までの間です』

内村『すぐに調べろ』

 しばらくして

亀山『一課が調べてるみたいですけど、まだ出てこないみたいですね』

角田『着替えを用意していたんじゃないか?』

亀山『もしくは上着をどこかに捨てたとか?』

右京『なるほど…亀山君、すぐに現場周辺を調べてください。もしかしたら残っているかもしれません』

 その後

三浦『たった今所轄から連絡が入った、職質の際に逃げた男が石川だったそうだ』

伊丹『しかし、今捕まえても証拠がないぞ…』

三浦『とりあえず公務執行妨害でもうすぐ送られてくるそうだ』

内村『この機会にぜっていに自供を引き出せ!多少強引な手を使ってもかまわん』

 特命にて

電話に出る右京『どうでしたか?』

電話の向こうの亀山『運よく川岸に引っかかっているのを見つけましたよ』

右京『お手柄です、亀山君。すぐに戻ってください』

亀山『了解』

 取り調べ室にて

石川『なんだなんだ?おれが何したっていうんだ?』

伊丹『やましいことがあったから逃げたんだろ?』

石川『しらねーな、俺は警官が大嫌いだからとっさに逃げただけだ』

伊丹『とぼけてんじゃねーよ』

石川『さっさと帰せよ、人権侵害で訴えるぞ!』

伊丹『…くっそ…』

 そこに右京と亀山が来た

右京『石川さん、完全犯罪などできるはずがありませんよ』

石川『あ?』

伊丹『ちょっと警部さん!』

右京『証拠が見つかりました』

三浦『証拠?いったいどんな?』

亀山『あんたが犯行の際に着ていたレインコートが川から発見されました』

右京『近くの公園の水道からはルミノール反応が出ました。おそらくあなたは犯行後倉本さんの遺体をトランクに詰めて、レインコートを脱ぎ公園の水道で血を洗い流したんですね、そして橋の上からレインコートを捨て川に流した』

石川『…』

右京『レインコートから片山さんと倉本さんの血液が検出されました』

石川『それだけでなんで俺が犯人になるんだ!』

亀山『レインコートの裏からごく微量だが汗の成分も検出されてんだよ』

右京『疑いを晴らすためにもあなたのDNAとこの汗のDNAを照合してみてはいかがでしょう』

石川『…くっ』

右京『あなたは3ヵ月前の宝石強盗の主犯でもあったのですね~しかし片山さんに宝石を持ち逃げされて、隠されてしまった』

亀山『そんで、事件の日に客としてのりこんだ車内で片山を脅し隠し場所を聞き出したんだな、そこで24時間営業のファミレスのトイレから宝石を発見した』

右京『ところが、ここであなたは欲を出してしまった。もう一人の共犯者倉本がいなくなれば全部自分のものになると』

石川『ああ…』

亀山『そしてあんたはタンクにはなくタクシーの車内に宝石が隠してあるはずと嘘をついて現場に戻り、片山殺害のために用意していたレインコートを身につけて倉本を殺害したんだな』

石川『完璧なはずだったんだ…』

右京『もしも、片山さんがあの場で亡くなっていただけならばあなたに結びつくことは難しかったかもしれません。強欲は身を滅ぼすようですね~』

石川『…』

伊丹『一連の事件の犯行を認めるんだな?』

石川『ああ…宝石は俺の家に隠してある、でも片山のヤロー一番高いダイヤだけ別に隠しやがった』

右京『ダイヤですか』

石川『ああ、約4000万くらいだと倉本が言っていたダイヤだ』

 外に出る右京と亀山

右京『どうやらダイヤの行方も探さなければならないようです』

亀山『でも探すったってどこを…まさか!』

右京『ええ、順子さんでしょう。彼女は実家に帰ると言っていましたがゴミ箱には家電製品のアダプタ変換器のパッケージが捨ててあったので妙だと思っていました』

亀山『じゃあ、海外に逃亡?!』

右京『亀山君、急いでください!』

 片山の家の前、妻の順子が家を出るところだった

右京『海外にお出かけですか?』

順子『…実家に帰るんです』

亀山『でも、14時発ニューヨーク行の便にあなたの名前がありましたよ。まあフライトはキャンセルしてもらいますけどね』

順子『…なんで…やっと借金生活から脱出できると思ったのに…』

右京『人から奪ったもので、幸せになどなれるわけありませんよ、結果的にこの宝石をめぐって二人の人間が亡くなり、あなたを含め二人の人間が逮捕されます。かつて僕が担当した事件で[物に執着してはいけない]と言っていた方がいました。今回の事件はまさにその通りですね~』

 特命にて

亀山『今回はほとんど仮説からスタートしましたけど、よく解決できましたね』

右京『GPSの記録にしても、目撃証言にしても、レインコートにしても今回は我々にツキがありましたからね~本来ならばこのようなスピード解決は難しかったかもしれません』

米沢『しかし、そこまでたどり着くのは杉下警部くらいだと思いますな』

亀山『確かに』

杉下『そうですかね~』

 杉下右京は今日も紅茶を高い位置から注いでいた。

終わり~

 片山の勤めていた王子キャブに来る特命の二人

右京『10月12日です。その日の片山さんの運転記録はありませんか?』

支店長の尾崎『10月12日…え~タコグラフはこちらですね、あっGPSの記録は3ヵ月で消去することになってるんです!青木君!データは消さないで!』

情報処理係の青木『?』

亀山『ちょっと!手を止めてください!重要な証拠になるものだから!』

青木『あぶなかったです…あと一歩遅かったら消してました…』

右京『おやおや危機一髪ですね~』

亀山『で、肝心なデータは役に立つんすかね?』

右京『それはわかりません。しかし彼が強盗犯ならば必ずここに痕跡があるはずです』

青木『片山さんは新宿、渋谷方面を運転してますね』

右京『しかし、記録によると午前9時以降は3時間にわたって誰も乗車していませんね』

尾崎『確かに誰も乗せずに結構スピード出してますね』

亀山『それで、事件の起こった10時頃何処にいたんです?』

青木『ちょうど新宿の駅近くですね』

亀山『ジュエリー中嶋のすぐ近くですよ、右京さん』

右京『ええ、その後の行動はわかりますか?』

青木『品川方面に向かっていて、11時頃に目黒駅前で停車してます』

右京『なるほど、亀山君行ってみましょう』

亀山『はい!』

目黒駅前

 亀山『問題はここで宝石を隠したか、もしくは誰かに渡したかですね』

右京『隠したと考えるのが妥当でしょうね~10分の停車後タクシーは通常営業に戻っていますから』

亀山『駅前ならやはりコインロッカーとかですかね』

右京『いえ、そのカギを持っていれば隠し場所を仲間に知られてしまいますよ、隠すからには自分だけが分かる場所、かつ誰の目にも留まらない場所です』

亀山『たった10分でそんな場所見つけられますか?』

右京『必ず何かヒントがあるはずです』

携帯で米沢に電話する右京『米沢さん、片山さんの所持品で何か目についたものありませんか?』

(米沢)『そうですね~これなんか杉下警部好みかと。ファミレスの紙ナプキンです。調べたところ全国チェーンのジョンソンのものでした』

右京『それです!』

亀山『ファミレスのどこに隠すんですか』

右京『トイレのタンクならまず誰の目にも留まりません』

 トイレを捜索する二人

亀山『個室は二つ、でもどちらにもありませんね…』

右京『考えられるのは二つ、片山さんが自ら移動した、もしくは今回の犯人によって持ち去られた、どちらにしてもここから何か検出されるはずです』

 その後、刑事部長室にて

伊丹『ジュエリー中嶋に半年前まで勤めていた倉本という男の所在が事件の日からわからなくなっています』

内村『その男が今回の犯人だというのか』

中園『もしくは第二の被害者ってことか?』

三浦『それはまだ何とも…』

内村『だったらさっさと探しだせ!』

中園『とにかく、こんな事件は早いとこケリをつけるんだ!』

 特命にて

米沢『杉下警部、ビンゴです!トイレのタンクから採取した指紋が前科者リストからヒットしました』

右京『やはりそうでしたか』

亀山『で、誰なんです?』

米沢『名前は石川良治(34)城代金融の幹部でした、強盗で1度逮捕されてます』

右京『石川と片山さんの関係はどうでしょう?』

米沢『捜査一課も二人の関係を調べているようですがいまのところ何のつながりもないそうです』

亀山『そいつが主犯だとしたら、第二の被害者である強盗の共犯者がもう一人いたってことですよね』

右京『ええ、おそらく先ほど角田課長がおっしゃっていた倉本という男でしょうね』

亀山『これでだいぶ事件の概要が見えてきましたね』

右京『そのようですね~もっとも彼らを捜し出さないことには始まりません』

 特命の二人は片山の妻、順子を訪ねた

亀山『大変ですね、旦那さんが亡くなって…』

順子『ええ…でもなんとか生きていかなきゃなりませんから…』

右京『荷物をまとめていらしたようですがどこかにお出かけですか?』

順子『ええ、この家にいるといろいろ思い出してしまうので、しばらく実家に帰ろうと思っているんです』

右京『そうでしたか~実はこの男を探していまして、(石川の写真を見せる)ご覧になったことありませんか?』

順子『さあ…主人の友人にこんな人はいないと思いますが』

右京『そうですか、お忙しいところ失礼しました。あっ最後に一つだけよろしいですか?』

順子『はい?』

右京『半年前からご主人に何か変わった様子はありませんでしたか?』

順子『何か事件と関係あるんですか?確かに借金で苦しんでいましたけど…』

亀山『たとえば宝石をあげるとか言われませんでした?』

順子『聞いたことありませんよ、なんなんですか…』

右京『亀山君、そろそろ失礼しましょう』

続く~