特命にて

角田『よ!ヒマか?って…今日は一人か』

右京『ええ』

角田『すると亀ちゃんは遅刻かい?』

右京『昨夜から自宅に戻ってないと美和子さんから今朝連絡がありましたのでただの遅刻ではないようです』

角田『それじゃ立派な失踪事件ってことか?…』

右京『そこまで大げさなものかどうかわかりませんがね~僕も先日SNSを通じて襲われたことがありましたから今調べているところです』

角田『その割にはのんびり紅茶なんか飲んでんじゃないの』

右京『紅茶には精神を落ち着かせる効果がありますからね~この様な時には向いていますよ』

  そこに米沢が登場

米沢『杉下警部、カキコミの多いSNSサイトを調べてみましたが収穫はありませんな』

右京『そうですか』

米沢『そういえば以前もこんなことがありましたな』

角田『ああ、確かミサエとかいう女に監禁されたやつね』

右京『あいにく最近特命係を取り上げたような記事はありませんからね~』

  そのころ捜査一課にて

伊丹『亀山が行方不明だと??』

芹沢『ええ、さっき米沢さんに聞いたんすけど昨夜から携帯の電源も切れてて連絡付かないみたいっすよ』

三浦『まさかなんか事件に巻き込まれたんじゃないだろうな』

伊丹『毎度毎度世話掛けさせやがって』

  刑事部長室にて

内村『亀山が消えただと?』

中園『はい、なんでも忽然と姿を消したそうです』

大河内『それで、最近彼がやった事件関連の可能性はあるんですか』

内村『もともと特命係が担当の事件などない!』

大河内『ですが、彼が自ら失踪するタイプではないのはあなたが一番ご存じのはずです』

中園『しかし何故亀山なんだ、捜査への妨害ならどちらかというと杉下を狙うだろ』

大河内『杉下さんは迂闊に近づく人ではありませんよ、しかし残念ながら亀山さんなら…』

  そこに右京が現れる

右京『お呼びでしょうか』

大河内『亀山さんの件はどうお考えですか』

右京『さきほど大河内監察官がおっしゃったように何らかの事件に巻き込まれたと考えるのが妥当ですね~』

内村『で、お前たちは何を調べていたんだ、詐欺か?横領か?』

右京『ここ一カ月は特に何も、まして亀山君が狙われるような覚えはありませんよ』

大河内『では、彼個人が捜査していた事件ならどうです』

右京『一つ心当たりがあります』

  警視庁近くの公園にて

美和子『右京さん、何かわかりましたか?』

右京『今のところはまだ』

たまきさん『私も近所の人に聞いたんだけど誰も見てないって』

右京『昨夜は亀山君が花の里を先に出ましたよね、そのとき何か言っていましたか?』

たまきさん『右京さんあの時居眠りしてましたものね、確か…やることがあるからといって先に出て行きましたよ』

右京『居眠りなどしていませんよ…しかしあの時、彼はお酒をあまり口にしませんでしたね』

たまきさん『そういえば途中からお茶ばかりでしたね』

右京『どこへ行ったのでしょうかね~』

  特命にて

右京『あの後…彼は何かを調べに行った…僕に相談せずに一人で…そして連絡がつかなくなった…』

  そう独り言をつぶやいていると伊丹が現れる

伊丹『亀山はどうしたんです?』

右京『わかりません、もっか捜査中です。心配しなくても彼はそんなにやわじゃありませんよ』

伊丹『心配なんかしてませんよ!芹沢が気になるってうるさいから聞きに来ただけですよ、失礼しました!』

  そこに米沢さんが現れる

米沢『亀山さんの携帯電話の最後の電波が確認されたエリアがわかりました』

右京『新宿駅周辺ですか』

米沢『それで携帯電話の通話も調べてみましたが、残念ながら店を出たという昨夜の9時すぎからは通話は一切ありませんでした』

右京『ということは、新宿であらかじめ待ち合わせた人物に会ったか、会う前に何かが起こった…』

米沢『しかし、何ゆえ誰にも言わず新宿に?』

右京『とにかく行ってみましょうか』

  新宿駅にて

米沢『しかし、聞き込みは私の専門分野ではありませんが…』

右京『かたい事はおっしゃらずに人が多ければそれだけ何かを得られるチャンスも広がりますから』

米沢『はあ、あの~ちょっとすいません』

通行人1『何この人…キモい』

米沢『…うーんやはり私には難しいかと』

右京『ちょっとお尋ねします、この人を昨夜ここで見ませんでしたか?』

通行人2『さあ…』

  1時間後

米沢『あの~すいません、この人見ませんでしたか?』

通行人3『見ましたよ、昨夜』

米沢『そうですか…って、え~本当ですか??杉下警部!目撃者です!』

右京『お手柄です、彼はどんな状態でしたか?』

通行人3『どんなって、女の人と話してましたよ、そのうち女の人がいなくなって、その後大柄な男たちと車に乗り込んでましたよ』

右京『よく覚えていましたね~』

通行人3『その女の人がすっごくタイプでね、それでじっくり見ちゃいました』

米沢『その人の顔今でも分かります?』

通行人3『もちろん』

右京『米沢さん!彼に協力を願い似顔絵を描いてもらってください、僕はもう少し調べたいことがあります』

米沢『了解しました!』

続く~

  遊園地にて

亀山『本当に現れるんすかね~』

右京『彼の方から接触してきたのですから何もなければ来るはずです』

美和子『指定の場所についたわ、まだ来てないみたいよ』

亀山『絶対油断すんなよ』

美和子『わかってるわよ~それよりちゃんと見ててよね』

  しかし、指定の時間になっても中澤は現れない


美和子『もう少し待ってみます』

右京『どうやら僕ら以外にも見張っていたようです。10時の方向には伊丹刑事、2時の方向には別の捜査員、美和子さんのすぐそばの売店にはまた別の刑事がいます』

伊丹に近づく亀山『何やってんだ!てめーら!』

伊丹『おめーらこそ勝手に動いてんじゃねーよ』

美和子『なんでここにいるのがわかったの?』

伊丹『タレこみがあったんだよ、ここで中澤があんたと会うってな』

亀山『どういうことなんだよ』

美和子『私は誰にも喋ってないわよ』

右京『どうやら中澤さんに真実を語られるのを嫌った人物がいるようです』

伊丹『今度こんな真似したらただじゃおかねーからな』

亀山『てめーらこそ余計な真似すんじゃねー』

  その後、花の里にて

亀山『また振り出しっすね』

右京『危険を承知で中澤は何を伝えたかったのでしょうか』

美和子『真犯人に心当たりがあったとか』

亀山『だったら素直に警察に名乗り出れば済むだろ~』

美和子『彼は警察を信じてないのよ、そんなこともわからないの~?』

右京『そして、美和子さんとの約束の場所に来なかった、あるいは来れなかったのは何故でしょう』

亀山『まさか今回の真犯人に捕まったんじゃ』

右京『仮にそうだとしたら真犯人は中澤さんの行動をずっと監視していたことになります』

亀山『じゃあ警視や川口さんが狙われたのはどう説明するんです』

右京『彼の行動を制限するために彼から奪った拳銃でわざと発砲事件を起こした、そうすることで警察不信の彼はどうすることもできなくなります』

美和子『なのに私に連絡してきたから、真犯人は焦ったのね~』

右京『え~そう考えると辻褄が合います』

亀山『じゃあ、長谷部警視が撃たれそうになったのが狂言だとしたらどうです?協力者を使って襲われたフリをした』

右京『確かに可能性はありますね~』

たまきさん『その人、本当にかわいそうな人ですね~奥さんに死んだフリをされ、その犯人にされ、また今度も犯人にされそうになってるなんて』

右京『…』

  しばらくして

亀山『大変です!右京さん』

右京『どうしましたか』

亀山『田中雪乃が殺されました…』

右京『そうですか…(現場に)行きますよ』

  現場にて

伊丹『なんで彼女が死ぬんだ』

三浦『わからん』

米沢『どうやら別の場所で殺害され、ここまで運ばれたようです』

右京『死因はなんでしょうか』

米沢『胸部への被弾で即死です、銃創から見てかなりの至近距離で撃たれたようです』

亀山『なんで雪乃さんまで…』

右京『左腕にも傷がありますね』

米沢『おそらく抵抗した際に撃たれたものと思われます、こちらも至近距離から撃たれてました』

右京『とにかく殺害された場所の特定を急ぎましょう、そこに何かあるのかもしれません』

  川口が現れる

川口『雪乃君!なんでだ!なんでこんなことに!くそっ…』

亀山『川口さん…』

  田中雪乃の自宅にて

亀山『もう1課が調べた後っすから何も出ませんよ』

右京『そうかもしれません、しかしまだ何か出るかもしれませんよ』

亀山『そんなことより、中澤の行方を捜しましょうよ、奴に何があったか聞きださないと』

右京『おや?老人ホームのパンフレットですね、しかし雪乃さんには御両親がいないはずです』

亀山『そういえば早くに両親を亡くした後はずっと一人だったって言ってましたね』

右京『この老人ホームの案内は5年前のものですね』

亀山『まさか…』

  鑑識にて

米沢『こちらが盗まれた皮膚組織のサンプルです。もっとも写真をもとに復元したものですので証拠能力はありませんが』

右京『助かります。事件からまだ日が浅いので爪の形もさほど変わっていないはずです』

そこに入ってきた亀山『右京さんの言う通りですたよ、でもなんで…』

右京『答えは直接本人に聞きましょうか』

米沢『それと、田中刑事の衣服からオニヤブソテツと製紙工場でよく使われるヒ素が検出されました』

右京『なるほど、そこが殺害現場でしたか』

  捜査一課にて

伊丹『都内全域から関東全域のソテツの分布と製紙工場の場所を探していますがしならく時間がかかりそうです』

内村『そんな報告はいらん、さっさと調べろ』

伊丹『はい』

川口『俺にも手伝わせてください』

内村『部外者のお前に出来ることなんてない』

  外に出る川口

右京『川口さん、殺害現場が判明しました』

川口『どこですか』

亀山『川口さんと雪乃さんが刑事として最後に一緒に捜査した倉庫ですよ』

右京『過去を調べていたらそこにたどり着きました、これから向かいますのでよかったらご一緒にどうですか』

川口『ええ、中澤につながる証拠があるかもしれないな』

  千葉の木更津工場にて

川口『懐かしいな、確か犯人がここまで逃げてきて捕まえたのがここだったな』

亀山『本当にその時以来来てないんすか?』

川口『何言ってるんだ亀山』

右京『僕はてっきり昨夜ここにいたものだと思っていましたがね~』

川口『何をばかなことを』

亀山『川口さんの車からもここと同じ土の成分が検出されてるんですよ』

川口『…俺は何も知らない、第一なんで俺が』

右京『殺す必要があったのか。それは5年前の事件にすべてを解くカギがあったんですね』

川口『…』

亀山『5年前、川口さんは現場で指揮を執っていた。当然遠藤のことも調べていたはずですよね、そこで遠藤を脅してすべて聞いたんじゃないですか?』

川口『しらんよ』

右京『5年前、あなたのお母様がある老人ホームに入居していますね、ところがそこの施設は最高級のためあなたの刑事時代の収入や喫茶店での収入だけでは到底払える額ではないんですよ』

亀山『それで金の流れを調べたら遠藤から多額の金銭が川口さんに渡っていたんですよ、おそらく保険金の一部なんでしょ』

川口『…』

右京『当時、中澤雅夫という存在がいたため全く注目されませんでしたがあなたも犯人に協力して、うまく長谷部警視を誘導して早期送検にこぎつけたのですね』

亀山『おそらく中澤加奈子を殺したのは遠藤だろうな、でも遠藤を殺したのはあんただ、そして雪乃さんまで…手をかけた』

川口『証拠はあるのか』

右京『遠藤の口の中から見つかった皮膚組織は残念ながらあなたに奪われてしまいました。しかしここに写真から起こしたサンプルがありますので傷跡と一致すると思いますよ』

川口『俺の指のどこを怪我してるって言うんですか』

亀山『俺らもずっと手の指だと思ってたんだよ、でも足だったんだでしょ、今ここで足を見せてくれたらはっきりしますよ』

川口『そうか、もうわかっちまったのか、なんで俺にたどり着いた?』

右京『雪乃さんの傷口です。殺害時に撃たれた左腕の傷は至近距離から撃たれていました。そして調べたところ最初の右腕の傷も同じような形状をしていたました。つまり最初に中澤さんに撃たれたとされた時もかなり接近して撃たれていたことになります。そこであなたたちの証言は狂言だったのではないかと思いました』

川口『そうか、じゃあ死んでもらうしかないな』

  川口は銃を取り出す

亀山『まだそんな真似続ける気かよ!』

川口『2人も殺しちまったんだ、逃げなきゃ死刑だからな』

右京『中澤さんはどうしましたか』

川口『ここの倉庫で気絶して倒れてるさ、あとで中澤の指に傷をつけて自殺に見せかけてここで殺そうと思ったのに、あんたらが気付いちまったからな』

亀山『あんた、それでも元警官か!』

川口『うるせー』

  川口は2発発砲

右京『川口さん、あなたが殺したのは2人ではありません、3人です』

川口『どういう意味だ』

亀山『雪乃さんのおなかには新しい命がいたんだ、あんたの子供だ』

川口『なに?』

右京『これは僕の推測ですが雪乃さんはあなたに自首を迫ったのではないですか?生まれてくる命のためにあなたにはこれ以上の罪を重ねさせたくなかった』

川口『そんなこと一言も…』

亀山『自分のことしか考えない今のあんたに言えるわけねーだろ』

川口『…終わりだな』

  川口は自分の頭に銃を向けた

亀山『あっ』

  しかし空砲、何度撃っても銃弾は出ない

右京『あなたはそんな簡単に死ねると思ったら大間違いです、これからとてつもない苦痛を味わうんですよ。それにすでに弾層は空のはずですからね~』

川口『なんでそんなことがわかるんだ』

右京『簡単な足し算ですよ。警視への発砲で5発、最初の雪乃さんへの発砲で1発、そして雪乃さん殺害時に2発、そしてここで2発、すでに盗まれた10発は使い切っています』

亀山『この状況でよくそこまで考えられますね…』


  取り調べにて

川口『あの加奈子って女が遠藤に金をせびってきて、遠藤が殺したんだ』

伊丹『それでなんで遠藤を殺したんだ』

川口『あいつが酷くうろたえてたから、当時のこと話されたら俺も終わりだからな』

三浦『それで事故を装って殺害、証拠の皮膚組織のことを田中雪乃に聞いて研究所に盗みに入ったんだな』

川口『ああ…それでずっと中澤を監視するように雪乃には言ってあったんだ』

伊丹『それで中澤の拳銃を奪って利用したんだな』

川口『ああ…雪乃があんなこと言いださなければうまくいってたんだ、殺しだってしなかった…』

伊丹『ふざけんな!このやろ!』


  外で見ている特命の二人

右京『行きますよ、亀山君』

亀山『行くってどこへ?』


  警視庁のロビーにて

右京『中澤さん!』

中澤『ああ、僕のために捜査してくれたという刑事さんですか』

右京『警視庁特命係の杉下と申します。この度は大変申し訳ありませんでした。全警察官を代表してお詫び申し上げます』

亀山『俺達警察官が当時からちゃんと捜査していればあなたをこんな目にあわせることはなかったんです、本当にすいませんでした!』

中澤『いいですよ、もう…失われた5年はもう帰ってきませんから…でも救われました。警察にもあなたたちのような方がいるんですね』

右京『…』

中澤『美和子さんにも御礼言ってください、あの方も僕のことを信じてくれたんで』


  特命にて

亀山『美和子が今度のこと記事にして、長谷部警視は降格処分になったようですよ』

右京『そのようですね~』

角田『しかし、まともな警察官はいないのかね~』

亀山『せめて俺らだけは弱者の味方、正義のヒーローでいましょうよ』

角田『言うね~』

右京『それはいいですね~』

杉下右京は今日も紅茶を嗜んでいる。

終わり~
  
  捜査一課にて

長谷部警視『特命係が私に何の用だね』

右京『5年前の事件のいきさつをお伺いしたいと思いまして』

長谷部『私は間違ったとは思っとらんよ。奥さん自ら警察に電話で[夫に殺されそうになった]と言っていたんだ、あの時点では中澤雅夫がもっとも疑わしいかったんだからな』

亀山『でも、もう少し詳しく調べてからでもよかったんじゃないっすかね』

長谷部『それは結果的にそうなっただけだ』

右京『一人の人間が無実の罪で5年近く刑務所暮らしを余儀なくされたんです。このことは深く反省してしかるべきだと思いますがね~』

長谷部『私だけの責任じゃない!他の捜査員も、検察も、裁判所ですら彼を有罪にしたんだからな』

右京『確かに警察全体の問題だというのも事実です。ところで右手の薬指に包帯を巻かれていますがどうされましたか』

長谷部『机の引き出しに挟んだんだ、何だね君たちは!私が遠藤を殺したと思ってるのか?バカバカしい』

亀山『だったらその包帯を取ってくださいよ』

長谷部『無礼な奴らだ、断る!』

  外に出る特命係

亀山『相当怪しいですね』

右京『しかし警視の言う通りです。彼だけの責任とは言えない以上殺害に至る動機としては弱いかもしれませんね~』

亀山『例の皮膚組織が誰のものかはっきりすればわかりますね』

右京『ええ、すべてそれではっきりすると思います』

  しかし、その日の夜。研究室で組織のDNAを調べていると、何者かが侵入し研究員を殴り、皮膚組織は盗まれてしまった

  次の日、特命にて

亀山『やられましたね…』

右京『ええ、皮膚組織については警察内部でしか知りえない情報です。おのずと犯人も警察関係者となりますね』

亀山『まさか長谷部警視がそこまで…?』

右京『絶対的な証拠だからこそ可能性はありますが』

角田『おい、大変なことになったぞ!』

亀山『皮膚組織の盗難なら知ってますよ』

角田『そうじゃないって、昨日摘発した拳銃の密売人が中澤雅夫に拳銃を売ったと証言したんだ』

亀山『拳銃?なんだってそんなものを…』

右京『それはいつのことですか?』

角田『どうやら出所してすぐ手に入れたらしい』

右京『警察に絶望した彼は自ら復讐する気だったのかもしれませんね』

亀山『それで銃弾は何発なんです?』

角田『10発だとさ』

  捜査一課にて

長谷部『中澤雅夫が銃を手に入れたそうだ、ただちに全捜査員に拳銃携帯命令をだすんだ、やむを得ない場合は射殺も辞さない』

大河内『それは時期尚早ではないですか?いたずらに彼を刺激するだけです』

長谷部『部下の命がかかってるんだ、そんなことは言ってられない!それに遠藤を殺した可能性だってあるんだ、このまま黙っているわけにはいかないだろ』

大河内『…』

  特命にて

亀山『右京さん、遠藤殺しを中澤がやった可能性ってありませんか?』

右京『拳銃を持っていながら、遠藤殺害に使わない手はありませんよ』

角田『でも遠藤ってやつと中澤がもめてるのを見たって目撃証言も出たんだとよ』

右京『真相を突き止めるために脅していただけかもしれません』

亀山『まあ、そうっすけど』

  しばらくして

  長谷部警視が自宅から出たところ、何者かが拳銃を発砲、警視は無傷だった

長谷部『な…なんで俺が狙われるんだ…』

  さらに田中雪乃から右京に連絡が入る

雪乃『もしもし、杉下さん、川口さんが誰かにつけられてると言っていたので私も現場に来てみたんですが姿を見失ってしまって、何か連絡ありませんか?』

右京『いえありません、今どちらですか?』

雪乃『品川のヨツバ電機の倉庫です、あっ川口さんがいました。けどなんか様子がおかしいみたいです』

右京『亀山君、すぐに向かってください』

亀山『了解!』

  現場に到着した二人

亀山『川口さん!無事だったんですか』

川口『ああ、俺はな。でも雪乃君が撃たれてしまった…』

右京『右腕ですか』

雪乃『ええ、川口さんが狙われていたんでとっさに拳銃を取り出したんですけど…逆に撃たれてしまいました』

亀山『でも、大した怪我じゃなくてよかったすね』

川口『しかし犯人のやつ…絶対許せねー』

右京『長谷部警視、川口さんが狙われたとなると5年前の捜査関係者を狙った犯行のようです。至急当時担当した検察官や弁護士の身辺警護をお願いします』

芹沢『は・はい!』

  その後

亀山『夕刊にも載ってますよ、[無実の受刑者、一転復讐の発砲]ですって』

右京『仮に中澤さんが犯人だとして、何故このタイミングで警視や川口さんを撃ったのでしょう…証拠を盗み出せたのですから大人しくしているのが普通です』

亀山『やはり、よほど恨んでたんじゃないですか』

右京『ならば今更自らの犯行の証拠を持ち出す必要はないと思いますよ』

亀山『まあ…確かにそう言われてみると矛盾してますね』

  その時美和子から連絡が入る

美和子『さっき中澤雅夫が接触してきたわ、俺は犯人じゃないって言ってきたの。警察抜きで会う約束取り付けたから』

亀山『おい、やつは拳銃持ってんだぞ』

美和子『私には彼が犯人とは思えないのよ、でも心配なら薫ちゃんと右京さんだけこっそり見ててよ』

亀山『ダメだ、ダメだ、危険すぎる!』

美和子『じゃあ私一人で行くわよ』

亀山『だーーわかったよ、で場所は?』

美和子『○○遊園地よ、今から一時間後に会う約束よ』

右京『彼の方から接触してくるとは思いませんでしたが、彼に話を聞く願ってもないチャンスです。君は美和子さんを全力で守ってください』

亀山『もちろん、わかってます』

  二人は遊園地に車を走らせた。

  続く~
  元刑事の川口の経営する喫茶店にて


右京『特命係の杉下と申します』

亀山『お久しぶりです川口さん』

川口『おお、亀山か~例の事件を調べてるんだってな』

亀山『ええ、5年前に生きていた死体が今回殺されたんですよ』

右京『正確には死んだと思われていた中澤加奈子さんは最近まで生きていました』

川口『俺はあの時送検には反対だったんだ…確実な証拠もなかったからな』

亀山『じゃあどうして』

川口『長谷部だよ、あいつが出世のために注目の事件を解決するのを焦ったんだよ。俺はそんなゴタゴタがほとほと嫌になって刑事を辞めたんだ』

右京『では、噂は本当だったのですね~長谷部警視の暴走だったというのは』

川口『ええ、まさかこんなことになるとは思いませんでしたよ』

  そこに川口の元同僚で所轄署の女性が現れる


川口『紹介します、俺の元同僚の田中雪乃です、近々一緒になろうと思ってるんです』

雪乃『はじめまして、私も独自にこの事件を調べていたんです』

右京『そうでしたか、あなたの印象ではどうですか?今回の犯行は中澤雅夫の犯行だと思いますか?』

雪乃『わかりません、でもかなりの恨みを持っていたんだと思います』

右京『しかし、そうなると疑問がひとつ。中澤さんは出所後すぐにどうやって元奥さんの居場所を突き止めたのでしょう』

亀山『確かに警察や世間を騙していた女性をあっさり見つけ出すのは偶然にしては出来すぎですね…』

  その後、法医学教室の許可を得て美和子が中澤雅夫と共に加奈子の眠る大学病院にやってきた。


美和子『顔は違いますけど、間違いなく加奈子さんだそうです』

中澤『なんで…妻はなんでこんな目に』

美和子『どうやら血液保存に詳しい人物が関わっていたようです』

中澤『まさか…』

美和子『どうしたんです?』

中澤『いえ…私は用があるんで先に失礼します』

  その夜


亀山『中澤と会った?』

美和子『そうよ』

亀山『そうよじゃねーよ、なんで俺らに言わないの~今回の事件に関しても重要参考人なんだぞ』

美和子『それよ、そうやってすぐ人を疑う!5年前にも彼は無実の罪で逮捕されてんのよ?彼が警察を信用するわけないじゃない。だから彼が警察抜きでなら記事にしてもいいというから一緒に行ったのよ』

亀山『それで、その後どうしたんだよ』

美和子『それが5年前の手口のこと言ったら突然出て行ったわ』

亀山『それも喋ったのかよ!』

美和子『当然でしょ~?彼が一番の被害者だったのよ。当然の知る権利でしょうが!』

亀山『まあ、そうは言っても…』

  
  次の日、特命係にて

右京『中澤雅夫は事件について何か心当たりがあったのですかね~』

亀山『すんません、美和子が余計なこと喋ってしまって』

右京『いえ、美和子さんのおっしゃることはもっともです。彼が知らないというのはあまりにも不憫ですからね~』

角田『でも、それが記事になったらまた不祥事で警視庁はひっくり返るな』

右京『それだけのことをしてしまったのですから仕方ありません』

亀山『それで、どうします?』

右京『殺された加奈子さんには医療関係の知り合いがいたのでしょうか』

亀山『さあ、捜査資料が残されてませんからね…』

  そこに大河内が現れる

大河内『中澤加奈子には同級生の医者に、遠藤昭二(50)という男がいます。5年前にも一応事情聴取されましたがすぐに中澤雅夫の逮捕ということで詳しい聴取は行われていません』

亀山『大河内さん、なんで俺らにそんなことを?』

右京『どうやら上層部は我々の行動をこれまで以上に疎ましく思っているようですね~』

大河内『ええ、あなたたちが調べれば調べるほど警察の権威は失われていきますよ』

亀山『じゃあなんで捜査情報を教えたり』

大河内『僕も杉下警部と同様権威よりも信頼のほうが大事だと思っていますから、間違いなら正さなければならないでしょ、亀山さん』

亀山『いいんすか?どんな結果になっても』

大河内『そのときはまた対応を考えますよ』

  
  翌日 、ホテルの一室のバスルームで遠藤昭二が死んでいるのが発見された

伊丹『どうやら石鹸に足を滑らせて、蛇口に頭を打ったようだな』

芹沢『事故ですね』

三浦『そろそろ来るころだな』

伊丹『何が。って亀山かよ』

亀山『また来ちゃいました』

右京『遠藤昭二に間違いありませんか』

芹沢『免許証があったんで間違いありませんよ』

捜査員『カバンの中から凶器とみられるナイフがありました!』

伊丹『なんだと?』

右京『中澤加奈子さん殺害に使われた凶器とみて間違いなさそうです』

三浦『警部殿~なんでそんなこと知ってるんです』

亀山『とにかくこいつが中澤加奈子の死に関係してるんだよ、さっさと調べろよ』

伊丹『なんだと?こら』

亀山・伊丹が繰り返す、『あ?なんだよ』

米沢『今回のも事故とはいえないかもしれません』

右京『ええ、致命傷と思われるのが頭頂部の外傷ですね、倒れただけならこんな場所に傷を負う筈がありませんね』

米沢『仰る通りです。誤って転倒したのなら後頭部に傷を負うのが一般的です、ここに傷がつくにはほ倒立をした状態から一気に頭から落ちないといけません』

伊丹『じゃあ、どうやって殺したんだよ』

右京『事故を装うならば確実に一度で仕留められないといけません、傷口を蛇口と同じにするには方法はただ一つ』

米沢『同じ型の蛇口で後頭部を強打するしかないですな、しかしこの軽さではとても致命傷とまでは…』

右京『ならば内部におもりを入れるとしたらどうでしょう。例えば溶かした鉛』

ほかの鑑識員『確かに排水溝内部から鉛のようなものが見つかりました』

右京『おそらく殴打した際に水に溶けたのでしょう』

亀山『つまり、こいつも誰かに殺された…』

右京『ええ、おや?遺体の口になにかありませんか?』

米沢『ええ、皮膚組織ですな、微量に爪のようなものもあります』

伊丹『じゃあ、こいつを調べれば犯人の重要な痕跡になるな』

  そこに現れた田中雪乃『こいつが加奈子さん殺害にかかわっていたんですね』

右京『まず間違いありません、5年前にも彼は聴取されたようですね』

雪乃『ええ、遠藤は加奈子に保険金を掛けていたんですよ』

亀山『保険金?』

雪乃『1億円の保険金をお互いに掛けていたんです。その半年後に事件が起きた、当然遠藤も調べようとしたんですが…』

右京『長谷部警視の半ば強引ともいえる中澤雅夫の送検で有耶無耶になってしまいましたか』

亀山『なんてことだ…そんなことで真犯人を逃がしたのか』

右京『この場合狂言ですから犯人は加奈子と遠藤の二人ですよ』

伊丹『よし、遠藤を徹底的に調べろ、金の行方も一緒に調べるんだ』

三浦『中沢雅夫にも任意で事情聴取だ』

芹沢『はい』

亀山『俺らはどうします』

右京『長谷部警視にお話を伺わなければなりませんね~』

亀山『ですね』

  続く~

  とある住宅街

中園『状況は?』

伊丹『ダイナマイトを巻きつけた男が女性一名を人質にして立て篭もっています』

中園『それで要求は何だ』

三浦『それが別れた奥さんと子供に会わせろと繰り返しています』

芹沢『今身元が分かりました、名前は中村俊夫(47)、住所不定の無職です。奥さんと離婚して裁判で子供に会うのを禁じられていたそうです』

中園『それでこんなマネを…』

電話の向こうの内村『すぐに治めるんだ、必要なら犯人に危害を加えてもかまわん』

中園『はあ、しかし…』

内村『SATを出動させた、とにかくマスコミがいるんだから早々に片付けろ』

中園『はい』

  周辺住民を避難させる所轄署員と特命係

亀山『ゆっくりあわてずに避難して!』

右京『こちらに非難してください』

  ある家で右京が立ち止まる

亀山『どうしたんです?』

右京『この家、先ほどは留守で誰もいませんでした。しかし閉まっていたはずの門が開いています』

亀山『でも、こんな事態で居留守を使う人なんていませんよ』

右京『庭に回ってみましょう』

亀山『誰もいませんよ、俺達も早く非難しましょう』

右京『このブルーシート…何故地面に広がっているのでしょう』

シートをめくる亀山『さあ…う・うわー右京さん!女性が死んでます…』

右京『…支給本部に連絡をして下さい』

  しばらくして

伊丹『ダイナマイト男を捕まえたと思ったら…今度は殺人かよ』

芹沢『まったく危ない町ですね』

三浦『まあ、俺達の本来の仕事じゃないか、しかし例によって警部殿~またですか』

右京『お邪魔はしませんよ』

亀山『で、どうなんです?米沢さん』

米沢『胸部を刺されて即死ですね、死亡推定時刻は3時間から5時間前のようです』

右京『ということはダイナマイト騒ぎとほぼ同じ時刻ということになりますね』

亀山『じゃあ、遺体を始末しようとしたところで、騒ぎに気付いて慌てて逃げ出したってことですかね』

右京『おそらくそうでしょう。それより遺体の手、すべて指紋がありません』

米沢『確かに、作為的に消したようですね』

伊丹『俺達を完全に無視してやがる…』

芹沢『確かに、僕らいなくてもよさそうですね』

頭を叩く伊丹『バカ、プライドを持て』

  鑑識にて

米沢『遺体は指紋を消していただけでなく、整形していました』

右京『整形ですか』

亀山『あの家の住民でもないようですよ。偽名で契約したそうです』

米沢『なにやらミステリアスな遺体ですな、すべてが偽物の女。気になりますな』

右京『ええ、ところで元の顔はわかりませんか?』

米沢『いま骨格から元の顔を割り出しているところです、間もなく結果が出ます』

右京『この顔は…』

亀山『もう、何かわかったんですか?』

右京『米沢さん、DNAの照合の準備をお願いします』

  しばらくして

大河内『杉下警部、5年前の事件の被害者のDNAを何に使うつもりですか』

右京『僕の記憶が正しければこの事件で遺体は見つかっていません』

大河内『この被害者がまだ生きているとでも?』

右京『正確には最近まで生きていたということになります』

  鑑識にて

米沢『これが5年前のDNA、そして今回の遺体のDNAがこれです。照合します。ビンゴです。一致しました!』

亀山『このDNAは一体誰のものなんです?』

右京『5年前、中澤加奈子さんは大量の血痕を自宅に残したまま行方が分からなくなっていました』

亀山『ああ、俺も覚えてますよ。4Lの血液が残されていたから死亡しているのは間違いないってことになって、夫が遺体なき殺人事件として逮捕起訴されて実刑判決食らったんですよね』

右京『ええ、そして今回謎に包まれたこの遺体の復元された顔が加奈子さんにそっくりだったので調べてみました』

亀山『5年前の遺体を冷凍保存していたとかですか?』

米沢『それはありません。現在の技術では細胞を維持したまま冷凍保存するのは不可能です』

右京『指紋を消して、偽名を使い、整形までしていたとなると死んだことにしたかったと考えるのが自然です』

米沢『まさか、死んだフリをされるとは…夫が気の毒ですね。まだ逃げられるほうがマシですね』

右京『それだけではありません、加奈子さん殺害容疑で逮捕されたのは夫の中澤雅夫です』

亀山『じゃあ…無実の罪で刑務所暮らしですか…』

大河内『中澤は3ヵ月ほど前に仮出所していますよ、まさか今回の犯行は中澤の復讐とでも…』

右京『まずは当時の事件を担当した人に会ってみましょう』

大河内『それなら長谷部警視ですよ、5年前はその事件の指揮を執っていたんです。そして川口もその事件の担当でした』

亀山『川口さんが?』

右京『知り合いですか?』

亀山『ええ、俺の新人時代に世話になって、時々酒を飲む程度なんすけど。5年前に突然辞めてしまったんすよ』

  しばらくして  喫茶店で美和子と待ち合わせをした特命の二人

美和子『お待たせ~当時の記事持ってきたわ』

亀山『悪いな、忙しいのに』

右京『無理を言って申し訳ありません』

美和子『いいんですよ、私もこの事件ならちょっと詳しいから』

亀山『どういうことだよ』

美和子『夫の中澤雅夫が本当に犯人だったのかかなり疑問だったのよ』

右京『遺体なき殺人事件、通常ならば遺体が発見されない限り送検されることはありませんからね~何か特別な力が働いたと考えるのが妥当です』

美和子『担当だった長谷部警部、今は警視ですけど。彼が出世のために送検を焦ったんじゃないかって噂もあったんです』

亀山『でも、ちょっと待ってください?送検の根拠になったのって4Lの血液ですよね?あれはどう説明できるんですか?』

右京『おそらく長期間にわたり何度も採血をして保存していたのでしょう。血液を凝固させない物質を混ぜれば可能です。もっとも当時きちんと調べていたらすぐにわかるような簡単なトリックですが、そのような異常な状況では見過ごされても不思議ではありませんよ』

亀山『まず川口さんに話聞いてみましょう』

右京『ええ、もちろん』

続く~


土曜ワイド劇場、法医学教室の事件ファイルのストーリーを相棒風に。