先日、一人の学生から相談を受けました。
コロナ対策で日本語・日本学関係の授業は去年からすべてオンラインになっています。
なので、1&2年生の学生は今まで一度も私と直接会ったことも、直接誰かと会って日本語の会話練習をしたこともない人たちがほとんどです。
学期の初めのほうでもっと会話する機会が欲しいと相談を受けていたので アーエデュケーションさん が主催している言語交流会(オンライン)を教えてあげた学生でした。 聞いたら、自分はほかの人に比べて下手なので気おくれしているということでした。
その学生さんが「ネイティブのように話せるようになりたいけど、どうしたらいいか」と再度相談に来たのでした。
うちは交換留学提携校が多いみたいで、結構日本の学校に留学する学生、留学して戻ってくる学生も多いです。逆に、ソウルではないので、町に住んでいる日本人(在韓日本人)はあまり多くないため、韓国に住みながら個人的に日本人の友達を作るというのは苦労する環境です。
そのためか、留学帰り組と留学していない組で日本語でのコミュニケーション能力の差を感じます。
しかし、現在はコロナ禍。
日本は外国人留学生を一切(と言っていいと思います)受け入れていません。この状態が一年以上続いています。
そのため、今年のクラス、留学帰り組がいないんです。去年の春から行く予定だった人を含めてすべて白紙にされましたから…。
この状況の中でどうやったらネイティブのように話せるようになるのでしょうか。それは不可能なのでしょうか。
そもそも ネイティブのように話すってどういうこと?
当の学生に聞いてみました。 まず、ここがぼやっとしている人が多いんです。
「だってね。ネイティブといっても
① アナウンサーのように正確な発音で話す人もいるし、日本も多様な方言あるの知っているでしょ?
② 方言で話す人もいるよね?
③ 発音一つ一つは正確かどうかわからないけど、言葉のリズムがすごく自然なので違和感ないって話し方をする人もいるよ。
④ 正直発音はネイティブとはいかないけど、ネイティブたちが話す会話にどんどん加わって同じように話すから「あなたと話していると外国人が混ざっているっていうことをすっかり忘れてしまう」といわれる人もいます。
⑤ 表現力がとても豊かな人もいますよね。
あなたがなりたい「ネイティブのような」というのはどの部分がどれくらいできている人?」
そうするとね。ぼやっとイメージしている人(まあこの質問をしたら99%くらいの人)は 全部 って言います。
もうね。一言。
ローマは一日にして成らず
フル装備したいんだったら、ひたすら努力あるのみです。半端ない時間と労力を投資してください。その先に、あなたの目標が達成される日がくるかもしれません。 あ、あくまでも「かも」ですよ。だって、やっていったらわかりますよ。
「あ。。。私、言語について〇〇の部分、ほかに比べて才能ないや…」
って自覚する日が
留学したら
いい先生に習ったら
ぱぱっと、あっという間に、ぐんぐん上達するなんて、そんなお手軽でうまい話なんかないですよね。
全ジャンル云々以前にね、中には母語の能力のほうで学習言語が頭打ちになっちゃうだろうなという人も見えたりします。
去年も受講してくれて二回目の受講になっているある学生。
専攻は日本語とか日本関係ではないのですが、熱心に勉強しています。今回(前回もでしたが)この人が受けている授業は、基本的にグループ活動で、個別に私が指導するのはグループから相談要請があった時くらいです。それ以外は、全体にポイントを教える、各グループの課題が提出されて採点(点数つけますが学生には非公開です)の後で全体で見て注意したほうがいい点などがあった時くらいです。
この学生のグループは日本在住経験ある人がいなかったり、日本語専攻の学生がまだ学年が低くて専門的な日本語関係の教育を受けていなかったりということもあって、ほかのグループに比べて日本語のミスが多いほうです。グループを仕切っているのはこの専攻違いの学生です。
でもね、毎回提出される課題を見ていて、ほかのグループより質が高いなと思うんです。漢字変換のミスとか、動詞の活用のミスとかありますけど、出される文の説得力とか、視点の鋭さとか、読む人を引き付ける話の運び方とか。
過去に小学生のころは日本に住んでいたというバイリンガル環境で育った学生もいましたが、発音や話し方はネイティブでしたが、文の説得力や話の運び方などはおそらく上記の学生のほうがずっとレベルが高いです。提出された課題などはどれも、自然と言えば自然だけど水で薄めた飲み物を飲んでいるみたいでした。
「ネイティブのように話したい」
この一言を実現させる要素って多岐にわたるし、確かに中には現地に住んで現地の社会の中で活動することによって知るしかないところもあります。
そういう意味で「留学」を含む現地体験って重要だと思います。けど、早口で流ちょうに話しているようにみえても、10倍希釈したうすーーーーーいカルピスみたいなアウトプットしかできないままに終わるのか、濃いも薄いも自由自在に調整できる能力で現地体験を料理する話者になるのか。
それって、留学に簡単に行けない今だからこそ、むしろ磨けるところなのではないかな?と思ったりもします。
現地で五感であらゆるものを感じながら学ぶことの大きさってわかるし、対面式の授業とオンラインの授業の大きな違いの一つもやはり五感で感じられるかみたいなところがあると思います。
でも、「今は〇〇だから〇〇できない」とできない口実にして委縮したままで時間だけが無為に過ぎていくというのはもったいないので、できない部分の劣化版ではなくて、せっかく今という時間的な猶予?があるうちにできることをやっていきたいなと日々の授業の中でも思うのであります。