昨日の続きで、

くるみちゃんのひとり語りです。

ここを読む前に下矢印をご一読頂けると嬉しい。

 

  



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女の人のおうちには、

おりがなかった。

女の人はとてもやさしくて、

わたしをぶったりしなかった。

トイレはいつもきれいで、

おさらには、いつも

おいしいごはんがはいってた。

おいしいおやつもくれた。



おかあさんには

うるさいっていわれるから

こえをださないようにしてたけど、

女の人に

『くるみちゃん』

ってよばれると、うれしくて

おへんじしたくなった。

でも、こえをだすのがこわくて

たくさんスリスリした。



この女の人は、

わたしのほんとうの

ママなのかな·····?

そうおもうと、

『ママ』ってよんでみたくて

たまらなくなった。



ある日、女の人が、

わたしを"ベランダ“に

出してくれた。

そこは、わたしのしってる

外じゃなかったけど、

外のにおいがして、

チュンチュンを

みることもできた。

わたしはうれしくて、

ゴロンゴロンしたり、

歩き回ったりした。





女の人が
『くるみちゃんたのしい?』
ってきいた。
わたしはおもいきって、
『うん!とってもたのしいよ、ママ』
って、おへんじしてみた。


ママはおどろいたかおで、
『くるみちゃん、はじめて
おへんじしてくれたね。かわいいこえ!』
っていって、
やさしくナデナデしてくれた。
わたしはうれしくて、
また『ママ』ってよんだ。
ママは、
『なーに?くるみちゃん』
っていって、
スリスリするわたしを
たくさんナデナデしてくれた。


こえをだしても
ぶたれなかった·····
この人は、わたしのママなんだ·····
うれしくてたまらなかった。


おへやにもどると、
ママは、わたしに
『くるみちゃんはどれがすき?』
っていって、わたしのまえに
みたことのないものを
たくさんならべた。
なにかわからなくて、
ママのかおをみた。
ママは
『あれ?くるみちゃんはおもちゃきらい?』
って、こまったかおをした。
おもちゃ?おもちゃってなに?
どうしたらいいかわからなくて
ママにスリスリした。


ママは、じゃあこれは?って、
ふしぎなかたちのものを
わたしのまえにおいた。
『バリバリしていいんだよ』
ママにいわれるけど、
???
わたしはわからなくて、
またママにスリスリした。
『つめとぎもダメか〜』
ママがざんねんそうなかおをする。


『じゃあ、やっぱこれか』
ママが、みじかいぼうをだして
わたしにむけた。
むしみたいなのがうごいてる!
これはしってる。
おかあさんが、たまにこれで
あそんでくれた。
わたしは、うれしくて
とびついた。

おかあさんは、
すぐつかれたって
ちょっとしか
あそんでくれなかったけど、
ママは、わたしがつかれるまで
あそんでくれた。
せまいおりの中じゃないから、
いっぱいあそべた。


わたしはママが
だいすきになった。
でも、いっしょにねることは
できなかった。
おかあさんといっしょに
ねようとして、
なんどもぶたれたことがあるから·····
ママはぶたないっておもうけど
まだ、こわかった。
わたしは、ママのベットの下や
ママのとなりのおへやでねた。


しばらくすると、
ママがわたしのベットを
かってくれた。
しらないものはこわい。
でも、ママが
わたしのにおいのするぬのを
ベットにかけてくれて、
わたしはあんしんして
ねられるようになった。


わたしはママが
どんどんすきになった。
それなのに·····


ある日、ママがわたしを
だきあげた。
そして、ハコに入れようとする。
そのハコは、わたしが
ママのおうちにくるときに
いれられたハコににてた。

わたし、またどこかに
つれていかれるの?

もしかして、
おかあさんのところに
かえされるの?


こわくてたまらなかった。
ママのうでからとびだして、
わたしはにげた。
ママがわたしをよびながら
おいかけてくる。
だいすきなママが、
こわくてこわくて
わたしは、ひっしでにげた。


どのくらいにげたか
わからないけど、
わたしは、かみのはこが
たくさんつまれている
いちばんうえにかくれた。
みつかったら、
ぶたれるかもしれない·····


みつからないとおもったのに、
みつかった。
ママは、かなしいかおをしてた。
『くるみちゃん、ごめんね』
そういって、
わたしをナデナデした。
わたしはぶたれるとおもったから、
ちょっとおどろいた。
『くるみちゃん、ほんとにごめんね』
くりかえして、ママは
わたしのいるへやからでていった。


かくれているとき、
ママも、おかあさんみたいに
こわくなっちゃうとおもった。
すごくかなしくて、こわかった。


でも、ママは
とてもかなしそうで、
わたしをぶったりしなかった。
ナデナデしてくれた。
ごめんね、っていってた。


まだこわかったけど、
ママのところにもどった。
ママはわたしをみると、
『くるみちゃん、ごめんね。もうしないから。
こわいことしないから。こっちおいで』
って、わたしに手をのばした。


わたしはゆっくり
ママにちかづいた。
ママのゆびのにおいをかぐ。
うん。ママのにおい。
ママの手にスリスリした。
ママはまた、
『くるみちゃんごめんね。ごめんね』
ってなんどもいって、
いっぱいナデナデしてくれた。
いつもの、やさしいママだった。
わたしはあんしんした。



それからもいろいろあった。
わたしは、おもちゃも
つめとぎもおぼえた。
おもちゃは、チュンチュンの
はねみたいのが、きにいった。
いまは、ママがつくった
ヒモもすき。
つめとぎは、ママが3つも
かってくれた。


ママがわたしの
つめをきろうとしたとき、
わたしはおこった。
ママはまた、ごめんねっていった。


ママとくらすようになって、
ぜんぜんってくらい、
はかなくなった。
なんどかはいて、
ぶたれると思ったけど、
ママは
『あらら、ゲロリンしちゃったね』
っていって、かたづけてくれた。
『けだまはいたね、えらいえらい』
って、ナデナデまでしてくれた。


わたしは、ママのことが
どんどんすきになって、
おしゃべりになって、
ママになら、ワガママもいえた。


ママにはぶたれたことないし、
おおきなこえを
だされたこともない。
ママはやさしい。


ただ、きになってることはある。
“さくら"
ってなんだろう?
ママはときどき、
『さくら、さくら』って
いいながら、ないてる。
目からおみずがいっぱいでてる。
そんなママに、わたしは
ちかづけない。
むねがモヤモヤしてくるしくなる。


でも、いいんだ。
ママは、わたしにだいすきって
いってくれる。
たくさんたくさん
かわいがってくれる。
わたしがよぶと
おへんじしてくれる。
いっぱいいっぱい
あそんでくれる。


わたしはママとあえて、
しあわせになった。
まいにちたのしくなった。
ママはどうかな?
しあわせかな?たのしいかな?


じつはね。
きのうはじめて、
ママといっしょにねたんだ。
すごいでしょ?
ママの足のほうから
ふとんにもぐりこんだの。


さいしょママはきづかなくて、
わたしがモソモソうごいたら
きづいたの。
『くるみちゃん!?』
って、すごくおどろいてた。


わたしはあついのが
にがてだから、
あさまでいっしょには
ねなかったけど、
ママは、とってもよろこんでた。
わたしもうれしかった。


わたしとママはずっといっしょ。
ママがいくとこに
わたしもついていく。


おりのなかにいたころ、
あさがくるのがこわかった。
でも、いまはちがう。
あさは、わたしがママをおこす。
そこから、しあわせないちにちが
はじまるの。


(おわり)