毎週水曜日連載中の『教えて!サクラバレエ』シリーズ。
見学や体験レッスンに来てくれた方達が書いてくれたアンケートの質問への答えや、私発信でサクラバレエについてのお話しをしています。
16回目の今回は、~年齢について~最終話です。
ちなみに、前回の記事~年齢について3~は、こちら↓
https://ameblo.jp/sakuraballet/entry-12454979946.html
ちなみに、前々回の記事~年齢について2~は、こちら↓
https://ameblo.jp/sakuraballet/entry-12453209830.html
ちなみに、前々前回の記事~年齢について1~は、こちら↓
https://ameblo.jp/sakuraballet/entry-12451516091.html
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前回は、年齢的なハードルの一つとして、“身体”についてのお話しでした。
今回は、“意識”について。
大人からバレエを始めることの大きな特殊性は、実は“先生と歳が近い”または“先生が年下”だということです。
子供の頃にバレエを習い始めると、当たり前ですが先生は大人で年上です。
自分の親か、祖父母くらいの年齢だったりします。
子供の頃の“大人”が言うことって絶対でしたよね。
だから、子供の頃の方が何かを習ったり身につけたりすることに向いています。
なぜならバレエは教師と生徒の“信頼関係”が大切だからです。(バレエに限らず、ですが。)
信頼関係とは、ベタな解釈をすると、信じることと頼ること。
子供は大人を基本的に信じます。
子供は大人を頼ります。
なぜなら、そうしないと子供の時は生きていけないからです。
だから、先生を信頼する、ということは比較的簡単に出来るのです。少ないエネルギーで、ごく当たり前のように。そして大人よりは確実に。
ただ、大切なのは“信頼関係”というのは、自分が“信頼すること”だけではなく、相手から“信頼される”ことも大切です。
どちらか片方だけが、信じたリ頼ったりしても信頼は“関係”にはなりませんから。
だから、お互いに信じあって、頼りあう必要があります。
これが、子供の場合は“信頼されること”を身につければ良い。
自分が先生に信じてもらえるか、頼りにしてもらえるかという世界になります。
先生や周囲の人達から「この子は信用出来る。本番でもきっと、きちんと踊ってくれる。約束を守って本番の日は舞台に立ってくれる。バレエの世界をお客様に届けてあげてくれる。」そう思ってもらえるような人間性を身につけられるかどうか。
自分にも他人にも正直
嘘をつかない
約束を守る
ありがとう、ごめんなさいが言える
思いやりがある
とてもシンプルですが、大切なこと。
これの対局にあるのが、
自分にも他人にも嘘をつく
嘘をつくことが当たり前になっている
約束を守らない
ありがとう、ごめんなさいを言わない
自分のことしか考えていない
周囲をけなして、蹴落として、引きずりおろして勝とうとする、そんな大人、あなたの周辺にいませんか?
子供の頃にこういった大切なことを教えてもらえなかった人は、残念ながら“誰とも信頼関係を築けない大人”になります。
これらはつまり、ルールとマナーを守るということ。
マナーとはめんどくさい形式のことではなく、相手への思いやりや、優しさです。
そしてこれらは、バレエの基本中の基本、軸中の軸です。
ここが、子供達がバレエを習う時に口を酸っぱくして言われるポイントでもあり、人として成長出来る大切な部分でもあります。
多くのバレエの先生達は、バレエを通してテクニックを身につけさせてあげたり、美しい身体にしてあげるだけではなく、こういったことを教えたい、伝えたいと思って指導していることがとても多いんですね。
そしてバレエを習っている子供達が「育ちが良い」「お嬢様」だと言われ続けているゆえんはここにあります。
(”上品”“品がある”とは、そういうことです。家がお金持ちだとか、容姿だとか、何の職業についているなんて関係ありません。逆にこれらのことが身についていないこと、嘘をつく、約束を守らない、ありがとうもごめんなさいを言わない、相手に勝とうとして他人を引きずり下ろそうとする。そういたことを平気ですることを、この世界では“下品”“品がないこと”とみなされます。)
人は大人になると、だんだんと誰かを信じたリ、頼ったりすることが難しくなります。
生きていれば、裏切られたと感じたリ、傷ついたりすることがあります(実際は違っていたとしても)し、思春期の頃なんて、感受性のアンテナがビシバシ立っていますから、毎日、毎時間、毎分傷ついていきます。
そして周囲から、
「しっかりしなさい!」
「甘えるんじゃないの!」
「もっと頑張りなさい!」と叱咤激励を受けたり、誰にも助けてもらえなかったりして、「誰のことも頼れないんだ」といったマインドがうまれてくることがよくあります。
少なくとも子供の頃のように、「この人の言うことは絶対だ」と思うようなことはなくなります。
(これは大人になるために必要な自立のプロセスの一つですが、その後に、誰かを信じること、頼ることを再インストールして、自立と依存のバランスの良い大人へと成長するのが理想ですが、あまりにも自立が早かったり、そのチャンスがないと、他人を信じられない、頼れない大人になります。)
大人になると、子供の頃ほど誰かを信じたリ頼ったりすることが出来にくくなってきます。
だから、大人はまず先生を“信じて”“頼る”こと、それ自体が難しい。
または、逆に“信じすぎて”しまったり、“頼りすぎて”しまって、なかなかうまくいかない。
その上、大人からバレエを習う場合は、先生との年齢が確実に近くなります。
相手が自分と同じくらいの年齢だったり、自分より年下だったりすると、さらに信じたリ頼ったりすることが難しくなってきます。
また逆に、相手に甘えすぎて、(友達になりたい)(かまってほしい)と、本来の目的を見失ってしまいます。
教師は生徒とお友達になりたいわけでも、甘えさせたりかまってあげたい訳でもありません。バレエを教えたいだけなので、そういった場合も先生との綺麗な関係を築くことは残念ながら出来ないでしょう。
そして上手くいっている最初の頃は良いのですが、やがて自分の思い通りにいかないことや先生への不満がたまってくると、あからさまに不信感を顔や態度に出してしまったり、相手を軽んじる態度をとってしまったり、表では先生の言うことを聞くフリをしていても、心の中では「このひよっこが~!」などと思って舌を出してしまったりします。
そしてそれは態度や言葉の端々に100%現れ、相手に100%伝わります。
「このひよっこが~!と見下されて嬉しい人はいませんし、教師はまったく気にしない、相手にしていなくても、これは他の生徒達が傷つくんですね。
アイドルのコンサートに行っていて、みんながキャーキャー盛り上がっているのに、
「下手くそ~!」とか「オイオイ、ちゃんと練習しましたか~?」みたなことを言っている人がいれば、まわりのファンは嫌な気持ちになります。時に傷つくでしょう。それと一緒です。
ですから、バレエ教室では教師を下に見たり、無礼なことをすると、即刻つまみ出されます。
うちは即刻ではありませんが、イエローカードとレッドカードを出して、理由と共にこれ以上は面倒をみられない旨を、はっきりと伝えます。
なぜ、バレエの伝統である、“即刻つまみ出す”ことをしないのかというと、やはりそこは愛情から、なんですね。どんな生徒にも、もう一度やり直すチャンスを。
会社で年下の上司や社長に「このひよっこが~!」というような態度をとれば、あっという間にクビですよね?
ここでそれを許してしまうと、その人のためになりません。
それを続ける限り、その人は社会で生きていけないか、誰からも相手にされない嫌われ者として生きていくしかありません。
社会で許されないことは、ここでも許されません。
また、他のバレエ教室に移っても、いずれつまみ出されるかやめさせられて終わりです。
自分が変わるか、バレエをあきらめるか、二つに一つです。
そして何よりも、年下の教師に「この、ひよっこが~!」と思って、一番損をするのは自分です。
「この人は天才じゃないかしら」と思っている人に勉強を習うのと、
「この人はバカじゃないかしら」と思っている人に勉強を習うのでは、結果が違います。
自分よりも下に見ている人からは人は何も受け取れないし、何も学べないからです。
そのバレエ教師が教えても、誰一人上手になっていないのなら、教室を変わった方が良いでしょう。
けれど、同じ教師に習っていて、メキメキ上手になっている人がいたのだとしたら、それは自分の中の問題かもしれません。
メキメキ上手になっている人は先生のことをバレエ教師として、人として信頼しているのだと思います。
誰を、そして相手のをどの部分を信頼するのかは、自分次第です。
『あの先生は最高だ』という人もいれば、『あの人は最低の教師だ』と言う人もいます。
同じ絵や景色を見ても『素晴らしい』と思う人と『下らない』と思う人がいるのと一緒です。
あなたは、何に価値を見いだしますか?
先生を年齢やその他のことで、自分よりも下に見る、価値がないと感じるか、尊敬できるところ、学びたいところを見いだせるかは、自分次第です。
教師を下にみてしまうのは、実は相手の、先生の問題ではなく、相手を自分よりも上に置くことが出来るのかどうかの自分の問題です。
相手に価値をみるためには、自分にも価値がある、と思える必要があります。
自己評価が低いと、まわりのヒトを評価出来ません。相手に価値をみたり、相手を自分の上に置くことが出来ません。いつも誰かの悪口を言って自尊心を保とうとしてしまいます。
それは実は自分のことを正しく評価出来ていないのです。
自分の価値をわかっていないのです。
まずは、自分を正しく評価すること。
自分を愛すること、信じることが大切です。
ですから自分にとって相手が“年下”だということが、相手を下に見る理由になり得る人(もし“年下の上司”と聞いてとっさに(嫌だな)と思う人は、その価値観を持っている可能性が高いです)は、年下の教師を選ぶことにリスクが高いと言えましょう。
年齢に関係なくお互いに信じたり頼ったり、尊敬しあうことが出来、ルールやマナーを守り、本音で相手と付き合え、他人と横で繋がれる、高いメンタリティの持ち主(うちのスタジオにも何人かいます。)でなければ、自分と歳が近かったり、年下の教師に習うことは難易度が高いということを知っておいて下さい。
信じて、頼る。時に助けてもらう。
信じてもらえる自分になって、頼ってもらう。時に助けてあげる。
これが、大人バレエにとって、とても大切なこと。
だから年齢に関係なく、“自分が尊敬できる人”に習った方が、習い事は上手くいくと思います。
年齢が高くなると上がるハードルは、実はこれをクリアすることが一番むずかしいのかもしれません。
多くの子供中心のバレエ教室の大人たちが「自分達は先生に大切にしてもらえない」と嘆いていることと思いますが、もしかしたらそれは心の中で「このひよっこが~!」と思っていることや、生徒同士やブログなどで文句や悪口を言っていること、自分の方が上だと思っていることが、相手に伝わっている可能性があります。
自分の言動や雰囲気で(こういうのを感じとるのがバレエ教師は本当に得意です。言葉を使わないコミニケーションのプロですから。)または風の噂で、誰かの忠告により伝わっていて、相手にされていない、ということも残念ながらよくあります。
いくら大人でも、やる気があって、コツコツ努力して上達していれば、教師も人の子、なんとか華をもたせてあげたいと思うものです。
それが冷遇されるということは、もしかしたら、自分の中にひよっこマインドを飼ってしまっているのかもしれません。
子供達のように、純粋に先生を信じてついていこうと思う気持ちがないことが、伝わってしまっているのかもしれません。
これは教師の側にも言えることです。
自分が信じなければ、相手からも信じてもらえません。
また、相手の前では謙虚なフリをしていても、心の中でめちゃくちゃ抑圧してしまっていたりすると、どこかで出て来てしまいますからね。
だから正直で素直であることが大切なのです。
このように、年齢が上がれば上がるほど、バレエを習うには覚悟がいります。
リスクを知って、そこに挑む難しさを理解して、それでもやっぱり自分の人生にはバレエが必要だ!
これをやらないと、きっと後悔する!
もしそう思ったのなら、腹を括って、飛び込んでみて下さい。
楽しいことばかりではないでしょうが、きっと、新しい世界が待っています。
そして、私がこれだけ「年齢が上がれば上がるほど、バレエを習う上ではエネルギーが沢山必要になりますよ」と言い続けているということは、“若い”ということは、もうそれだけでバレエに向いているということです。
20代、30代は若い。
大人からはじめる人の中では身体を変えやすく、ケガをしにくく、バレエに向いています。
もしもバレエに興味があるのなら、夢中になれるものを探しているのなら、自分を表現する手段を探しているのなら、少しの覚悟を持って、バレエを習ってみて下さい。
そして、そう決心したのなら、今日より若い日はありません。
一日でも早く始めた方がいい。
ちょうど、サクラバレエは今がはじめやすい時期です。←宣伝です
ぜひ一度、スタジオにお越し下さい。
令和と共に、バレエをはじめてみませんか?
スタジオであなたに会える日を楽しみに待っています。
桜