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毎週火曜日に連載中の『大人がバレエを習うということ』シリーズ。
22回目の今回は、『バレリーナの定年は40歳という現実 その④』です。
今回も前回に引き続き、おことわりしておきたいのが、私はお医者様でも体の治療や研究をしている専門家でもないので、体についての詳しいことや専門的なことは、必ず医師や専門家におたずね下さいね。
また、この記事は桜が2016年3月1日現在の知識や経験に基づいて書いているものなので、将来的には見解が変わる可能性がありますので、ご了承下さいね。
それでは、どうぞ。
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前回は、バレエを踊る上でキーポイントとなる年齢のうち、35歳までについて書きました。
今回は36歳以上の年齢について。
前回、人間の体力は20歳をピークに衰えはじめると書かせてもらいました。
そして、35歳を過ぎたころから、体力について「あれ?」と思うことが増えてくる、と。
この頃から、体力が落ちるスピードが速くなりはじめ、筋力がつくよりも、筋力が落ちるスピードの方が速くなってくる、と。
35歳以上の人は、おそらくバレエを習っていなくても、日常の生活の中で、やがて自分の体力の変化を感じるようになると思います。
つかれやすくなったり、腰や膝などを痛めやすくなったり、ケガからの回復がゆっくりだったり、徹夜などのムリがきかなくなったり…。
普段から運動している人は、運動していない人よりもゆるやかではありますが、それでも20歳の頃との体力の違いを感じることは増えてくると思いますし、バレエにおいても、筋力・瞬発力・持久力・バランス力・素早さ・体の柔軟性に影響があります。
バレエにおいては、子供の頃や若い頃は勢いで、フェイクで正しくない体の使い方で踊れていたものが、20歳を過ぎると、段々踊れなくなってきます。
力技で、体で踊ってきていた人達は、35歳過ぎると、驚くほど何も出来なくなります。
特にトゥシューズを履いて一歩も踊れなくなります。(ちょっと大げさですが、そのくらいのイメージです)
では、どうすれば良いのか。
結論から言うと、36歳以上の人で、本気でバレエが上手になりたかったり、トゥシューズを履いて踊りたいのであれば、鍛えて下さい。
35歳未満の体力をつけることです。
まずはそこがスタートです。
40代、50代の方でもトレーニングにより30代なみの体力を取り戻すことは可能です。
運動によって、体力が低下するスピードに歯止めをかけることが出来ます。
もちろん、バレエのレッスンでも体力が身につきます。
…けれど、もしそれが週1~2回、60分程度のバレエのレッスンだけで出来ると思っていたら、残念ながら違います。
(もしも、自分に厳しくレッスンが出来て、レッスンの次の日は毎回どこかが筋肉痛だというくらいまで自分を追い込めているのなら話は別ですが、グループレッスンのバレエではなかなかそこまで出来ないので。)
バレエに限らず、成人女性が筋肉をつけるというのは、簡単なことではではないのです。
さらに、前回も書きましたが、1時間同じ動きをしていても、20代と40代では、体につく筋肉の量が違います。
36歳以上の人が週1~2回バレエのレッスンを受けた場合、筋肉がつく・つかないの話ではなく、筋肉が衰えないようにキープするので精一杯だというのが現実だと思います。
では、どうするのかというと、うちのスタジオでは、バレエのレッスンにそんなに通えない人は(通える人もですが)ウォーキングや自転車、水泳などで基礎体力を上げることを進めています。
バレエを踊るために使って良い筋肉と、使ってはいけない筋肉がありますので、バレエで使ってはいけない筋肉を使わずに基礎体力をつけたり、体幹を鍛える方法などもアドバイスしています。
また、レッスン前のエクササイズでは自宅で出来る筋トレを紹介したり、1人1人にあわせたエクササイズや日常生活の中での体の使い方や歩き方、立ち方などまで相談に乗ったりもします。
それにプラスして、今の40代50代の人達というのは、ものすごく努力家で頑張り屋さんな世代であり、さらに個人個人の努力や、もともとの恵まれた身体能力や、健康的なライフスタイルなどにより、30代の体力を持っている40代、50代に人達が沢山います。
おかげさまで、サクラバレエでは40代からバレエをはじめて、今50代の人達が、かなり本気で、しかもポワントも履いて、ガッツリ踊っていますが、今のところサクラバレエのレッスン中にケガをしたという話は聞いたことがありません。
これはね、秘かにすごいことだと思うんですよ。
・・・あ、いけない。ついつい、自分の生徒達の自慢しちゃいました。えへ。
ただ、どんなダンスやスポーツでもそうですが、やはりケガをするギリギリ手前までやるからこそ上手になる、という部分もありますので、これからますます本気になったサクラバレエでは、ケガをする人が出てくるかもしれません。
そもそも、バレエは自分の限界に挑戦する芸術ですので、プロの35歳以下の人達が踊ってもケガはつきものです。
ただでさえ、ケガをするリスクは50代になると増えてきますので、50歳以上の人達は、それらのケガをするリスクについても頭に入れておくことが大切です。
また、35歳以上のバレエは精神的にも、成熟していることが必要です。
・・・これを言うと皆さんガッカリしてしまうかもしれませんが、『体力』ということだけで言ってしまうと、40代、50代の人が20代の人達と競争するということは、バイクに例えるなら、『自転車』で『ハーレー』に勝負を挑むようなものなのです。
残念ながら、勝ち目がありません。
それくらい、体力に違いがあります。
体力が違うと、その上にのる技の出来栄えが違ってきます。
同じ動きをしていても、体が違えばテクニックの完成度が全く違ってきます。
・・・では、どうすれば良いのか。
それは、『自転車』を楽しむことです。
自分の体に愛情を持って、日々しっかりケアしてあげて。
タイヤにも空気をベストに入れてあげて、ピカピカに磨いて。
世界に一つだけの、オリジナルな『自転車』をつくりあげていくのです。
時にはモーターをくっつけたり、ライトをめちゃくちゃ明るいのに変えたりして、電動自転車へとバージョンアップしていくのも良いでしょう。
気がついたら、いつのまにか『バイク』と呼ばれることもあるかもしれません。
けれども、『自転車』には『自転車』の良さがあります。
夜な夜な空ぶかししながら走る、お手入れの行き届かないハーレーよりも、
ピカピカでニコニコの自転車の方がずっと魅力的で美しかったりします。
さらに『他の自転車』や『バイク』と協力したり、励ましあったりして、目的地まで、ツーリング先までの景色を楽しんだりも出来るのです。
それは、上を目指すな、ということではありません。
他人と自分を比べない方がバレエは上達するし、長続きするよ、ということなのです。
比べるのなら、“他人”とではなく、“昨日の自分”と比べて下さい。
かならず、どこか成長していますから。それは、『体』だけではなく、『心』や『生き方』なども含めて、です。
バレエは『体』だけで踊るものではありません。
以前書きましたが、大人バレエの『体』が、そもそもバレエに向いていない『体』なのだとしたら、『心』や『技』にも向き不向きがあるのです。
そしてもっと言ってしまえば、大人の体がバレエに向いていないからと言って、あきらめる必要はありません。なぜなら、バレエにおいて、私達はもう“日本人”“アジア人”だというだけで、残念ながら、もうすでにバレエに向いていないのです。バレエは、それでも踊りたいと願った人だけが、踊ることが出来ものなのです。
このことについては、また機会があれば書いて行きたいと思いますが、いずれにしろ、大人バレエが長続きするためには、精神性的に成長していくことも大切です。
また、ここでさらにガッカリさせてしまうかもしれませんが、この際もう本当のことを書いておこうと思います。
年齢が上がってくると、筋肉はその『質』が変わってきます。
パジャマのズボンなどに使われるゴムも新しいうちはよく伸び縮みしますが、年数がたつと、伸びてなかなか戻らなくなったり、逆にゴワゴワして伸びなくなったりしてきますが、それに似ています。
もう一つ例えるなら、陶芸の土が程よく練られて良いコンディションの土なのか、硬くて中に塊のようなものがゴツゴツ入っている土なのかによって、器の形作りやすさや完成度が変わってきますよね?そんな感じです。
体のコンディションというのは、踊りの仕上がりに大きく関わってくるのです。
また、60歳を過ぎると、体力が落ちるスピードが加速度的に速くなります。
こうなるともう、追いかけっこのようなものです。そこから先は、本人がバレエのためにどれくらい頑張れるのかや、どのくらいバレエのための体力づくりに時間をとれるのか、また若い頃の体力貯金(ためておいた体力のこと)やバレエ貯金(バレエで鍛えた体力のこと)があるかどうか。
それら年齢的な特徴やケガをするリスクもぜんぶひっくるめた上で、それでも、自分はバレエに挑戦したいのかどうかです。
もし、これからバレエをはじめてみようかなと思っている36歳以上の方がいらっしゃいましたら、バレエをはじめる前に、ぜひ一度自分と向き合ってみて頂きたいと思います。
その上で、“それ、やっぱり人生で一度はバレエを習っておきたい!”“今の自分がどこまでいけるのか見てみたい!”“今挑戦しないと一生後悔する気がする!”と思うのなら、ぜひバレエをはじめて下さい。
そこまでわかったうえで、覚悟して取り組むバレエは、きっとあなたに輝きと成長をもたらしてくれるでしょう。
逆に、36歳以上の人で(まぁ35歳以下でも同じですが)“アンチエイジングに”“スタイルがよくなるから”“姿勢がよくなるから”“体力をつけたくて”という理由でバレエを習おうと思っている人達には、声を大にして
「あの・・・バレエって、バレエのレッスンをするための体力づくりが必要なんでえすけど、大丈夫ですか?そこまでする覚悟、ありますか?」
と伝えてあげたいです。
バレエはそんなに甘くない。
けれども、バレエを習っていても、習っていなくても、すべての人は年をとります。
だから、もしあなたがバレエを好きならが、とてもラッキーだと思います。
なぜなら、すべての人がやがて必要になる基礎体力づくりを、大好きなバレエを踊るためならと、プラスのモチベーションで取り組めるからです。
例えば、人は健康診断で医師に“年齢的に筋力が落ちてきたから、運動しなさい”と言われたり、腰や膝が痛くなってから、イヤイヤ、ウォーキングをはじめるのはツライですが、人は大好きなバレエが上手になるためなら、憧れのトゥシューズを履くためならと、地味な毎日のストレッチも筋トレも、基礎体力づくりで車を封印して歩いたり自転車に乗ることも出来るからです。
そこが、“バレエ”のすごさであり、“好き”というパワーのすごさだと思います。
いずれにしても、大切なのは本人の気持ちですので、これらをふまえた上で、自分がどう思うのか、自分がどうしたいのか、自分と向き合う機会にして頂ければと思います。
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