先日、予告したとおり、今日から新シリーズ『大人がバレエを習うということ』、スタートです。
このシリーズのベースには、『バレエが上手になるためにはどうしたら良いのか、という部分があります。
これは、基本的に大人も子供も同じです。
バレエが上手になるのに、大人も子供もありませんから。
ただ、違うのは『意識』だと思います。
子供の時にバレエを習う人は、バレエが好きになったり、上手になったりすると(プロのバレリーナになる)という夢や目標が出てきます。
現実に、日本人がプロのバレリーナになれる確率は置いておくとしても(また、機会があったらこのことにも触れます。)
教える方も習う方も、やはりそこに目標を置いてレッスンするようになります。
子供はコンクールにも出られますから、そこで良い成績を残せば、その子が所属するバレエ教室の名前も、教師の名前も有名になりますし、それを見て、また新しい人が入ってきますから、教師はますます指導に熱が入ります。
コンクールに出なかったとしても、発表会があれば同じようなことになります。
そうして、生徒達はますます頑張る、という図式が出来上がります。
(その子が海外に行って、現実を知るまでは・・・のお話ですが。)
ところが、大人はバレエが好きになったり、上手になったりしても目標がないのです。
どこを目指したら良いのかが、とてもわかりにくいのです。
教える方としても、ほとんどの先生が子供の頃からバレエを習っていますから、大人がたとえやる気に満ち溢れていたとしても、その人達を一体どこに連れて行ってあげたら良いのかわからずに、困りながら教えている、または割り切って教えているというのが現状です。
発表会の主役や主要な役は、子供の時からバレエを習っている人達がつとめますし(これだって競争ですから、いくら大人が本気でどんなに練習しても、大人の出る幕はありません)
それに、大人の世界では競争がありませんから、やはりどうしても甘さが出てしまいます。
うちのスタジオではイントロクラスで『上手な人達がこっそりやっていること』として、小さい頃にバレエを習っていた上手な人達の話を聞く機会がありますが、するとどの人も
「レッスンで注意されたことは、次のレッスンまでになおしてきます」
「わからないことがあれば、その日のうちに先生に聞きに行きます」
「振付けは1回で憶えます」
「他の人への注意も自分のことだと思って聞きます」
「ストレッチやエクササイズは毎日します」などと、当たり前のように言っていたと思います。
また、
「レッスンはお休みしません」
「発表会の合同練習やリハーサルは、お休みしません」
「発表会に一度出ると言ったら、何があっても絶対に出ます」
などいったことは、あまりにも当たり前なので、誰も言いませんでしたが、子供の頃からバレエを習っている人達はこういったことはバレエを踊る以前に先生から叩き込まれています。
なぜなら、それらは、バレエが上手になるためには絶対に必要なことだからです。
けれど、大人はこういったことを学ぶチャンスがないのです。
誰も教えてはくれないのです。
一般的に、バレエの先生にとって、子供達は“弟子”ですが、大人は“お客さま”です。子供達のクラスや発表会の費用を捻出するために、お金を落としてもらうための“お客様”です。
ですから、お客様をキープするために、大人にも本気で教えているフリをしたり、子供達と同じように厳しくしてあげたりもしますが、最初から本気で教えるつもりはありません。
大人を弟子として育てるつもりは、はじめからありません。
なぜなら、まずほとんどのバレエの先生は、自分が子供の時からバレエを習っているので、バレエを教えたい対象は子供です。自分が果たせなかった、またはかつての自分がそうだったように、子供達にバレエを踊る楽しさを教えて上手にしてあげて、発表会やコンクールで輝かせてあげたいのです。また、出来ればプロにしてあげたいのです。だから、生徒を弟子として厳しく教えていきます。
弟子、ということは本気で向き合わなければいけません。本気ということは間違えたことをしていたら、そこをきちんとダメだよ、と叱らなくてはいけません。
子供に対してでも叱るのは大変ですが、(皆さん、自分のことに置き換えて考えてみてもらえばわかると思いますが)すでに成人している大人に対して、きちんと向き合ったり、叱ったりするというのは本当に大変なことなのです。
ものすごくエネルギーを使いますし、子供と違って大人は身体も心も出来上がっていますから、素直に受け取れる人は多くはありません。時には逆恨みをされることもあるでしょう。また、意識を変えて、自分を変えて成長して行くのは、大人の場合は特に、教える方も習う方も大変です。どちらにも、相当の覚悟が必要なのです。
ですから、世の中のほとんどのバレエの先生は大人を本気では教えません。
つまり、バレエの世界の本当のことを大人は教えてもらえないのです。
私自身も、先生が子供達にそういった指導をされているのを目の当たりにしたり、自分自身が子供達に指導する立場になってはじめて知りました。
そして、(そりゃ、大人は上手にならない訳だよねぇ・・・)と、呆然としつつも、それまで謎だった、子供と大人の上達度の違いについて、ストンと納得したのを憶えています。
(そりゃ、もともとの意識がこれだけ違ったら、そりゃ差が出るわねぇ・・・)と、謎がスッキリととれました。
ですからこういったことを指導されていない大人達は、本人達がどんなに本気でレッスンしているつもりでも、先生にどこまでもついていこうと思っていたとしても、もう最初から、“子供の時からバレエを習っている人”(それはつまり、“バレエの先生”も含みます)と意識がまるっきり違うのです。
ですから、発表会などでも、本人は本気のつもりでも、子供達とは真剣さが違います。
また、大人にはコンクールもありませんし、(本気で順位を競わないのはあるようですが)、発表会で、良い役を頂こうと思っても、むずかしいですから、せっかくバレエをはじめても道に迷ってしまう人があまりにも多いのです。
かつて、道に迷って、グルグル回っていた私としては、せっかくバレエが好きでバレエを習いたいのなら、きちんと目標を持って、そこに向かってサポートしてもらいながら、レッスンしないと、もったいない、と思うのです。
大人で「バレエを本気で習ってます」という人は実は多いと思いますが、
大人で「バレエを本気で教えてもらている」人は実はほとんどいないと思います。
けれど、かつての私のように、
『やるからには、本気で習いたい』
『自分がどこまで上手になれるのか試してみたい』
そう思っている人達のために、サクラバレエはありますし、
これからバレエをきちんと習いたい、と思っている大人のために、
このブログでも、
『バレエの先生が大人には教えてくれないこと。』
『バレエを習っている大人だけが知らないこと。』
『けれど、それを知らないと上手にはなれない、とても大切なこと。』
そのようなことを、これから少しずつお知らせ出来れば、思います。
毎週火曜日、連載予定です。
お楽しみに♪
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