大人がバレエを習うということ⑭ ~バレエは普通の習い事じゃないⅢ かけもち編③~ | サクラバレエ 

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毎週火曜日に連載中の『大人がバレエを習うということ』シリーズ

 

14回目のテーマは、『バレエは普通の習い事じゃないⅢ

                ~ 上手になりたいなら掛け持ちはしない方が良い③~』です。

 

 

バレエの掛け持ちについてのテーマだけでもう3回目です。

 

バレエの世界では、『掛け持ちをしない』ということは、ごく当たり前のことなのですが、そのことを知らなかったり、なぜ掛け持ちがダメなのかの理由を知らない人が沢山います。

 

本当は直接きちんと説明してあげた方が良いのだと思うのですが、このブログを読んでくれている人はお気づきだと思いますが、その理由が、あまりにも多いので、1人1人に説明する時間がなかなかとれないのです。

 

今回は、良い機会なので、そのさらなる理由のうち『スパイだと思われる可能性があるから』について書いていきたいと思います。

 

この『スパイだと思われる可能性があるから』というのは、バレエが芸術であり、師弟関係にあることが大きいのですが、

 

そもそも、バレエ教室というものが、基本的にライバル関係にある、ということからです。

 

同じ先生についたお弟子さんが開いている、同じ系列のバレエ教室なら話は別ですが、そうじゃなければ、基本的に先生同士がライバルでもあり、コンクールなどに行けば生徒同士も賞を競い合うライバルです。

 

言わば、有名フレンチのお店同士だと思って下さい。

 

バレエの場合は立地的に離れていることも多く、特にお客さんを取り合う、というような関係性ではありませんが、それでも、バレエ教室を掛け持ちするということは、『有名フレンチA』のお店と、『有名フレンチB』のお店の両方に修行に行っていると思って下さい。

(このシチェーションだけでも、掛け持ちするということが普通じゃない状況だということはおわかり頂けると思います)

 

月曜日と水曜日は『有名フレンチA』、火曜日と土曜日は『有名フレンチB』で働いて修行しているとしましょう。

 

そこでは、それぞれの師匠が弟子の腕を上げようと、日々奮闘しています。弟子は、師匠がこれまでに苦労して学んできた技や哲学、レシピから、お店の回し方、弟子の育て方などを教えてもらったり、盗むことが出来ます。

 

そして、そうこうするうちに、たとえば『有名フレンチA』のお店で働いている兄弟弟子に『A師匠のやり方は古いよね。Bのお店では、今、包丁はこうやって砥いでるよ?』な~んて、ついポロッと言ってしまったりする訳です。

そうやって、本来は自分の弟子にだけ教える秘密の情報が外部、しかもライバル店へ漏れてしまったりする訳です。

 

・・・これはまずいな、というのは、普通の感覚を持っている人ならピンとくると思います。

 

バレエの世界も一緒です。

苦労せずに、先生になった人は1人もいません。

自分の先生や師匠が苦労して学んだことを、愛情込めて教えて、時には叱りながらでも育ててくれて、教師になっています。

そのありがたみを知って感謝しているからこそ、自分もまた弟子を育てようと思うのです。

自分が教えてもらった大切なレシピに、自分が勉強して苦労して努力して改良を加えたものを、弟子に渡そうとしているのです。

 

それを、「私は2人の師匠に教えてもらいます。だって、どうしても上手になりたいし、先生が私をちゃんと上手にしてくれるのかどうか、わからないし♪」という人に喜んで渡したい先生はいないと思いますし、また、自分の師匠に教えてもらったことを、みすみす他のお店の人達に公開したいとは思わないと思います。そこを守ることが、師匠を大切にすること、そしてバレエを大切にすることにつながりますから。

 

ですから、2つの教室を掛け持ちしている、ということは、その人が意図していようがいまいが、大切な情報を外に漏らされる可能性がありますので、普通は敬遠されがちになります。

 

一番大切なところは見せてもらえなかったり、教えてもらえなかったり。

 

ホールで接客はさせてもらえるけれど、厨房には入れない、厨房には入れても師匠の近くには寄らせてもらえない状態ですね。

 

また、本人としても、スパイなどをするつもりが全くなくても(ほとんどの人がそうだと思うのですが)痛くもない腹を探られ、周囲の人に警戒されるとまではいかなくても、快く思われずにレッスンをするのは、不本意だと思います。

生徒の間でも、大人同士ですから、表面では普通につきあってはいますが、内心では、

「本当は掛け持ちしちゃいけないのに、この人はズルしてる。」

「この人、私達の先生のこと裏切ってる。」という風に、内心快く思ってもらえない、ということがおこりやすいです。

 

(じゃあ、内緒で掛け持ちしちゃえばいいよね♪)

 

と思う人もいるかもしれませんが、それこそ、スパイ気分ですよね。

どこかで、両方の先生に嘘をついて騙しているような後ろめたさ。

気にしていないつもりでも、

 

(ああ、自分のことしか考えていない私って最低だ・・・)

 

(先生が一生懸命育てようとして下さっているけど、ごめんなさい。本当はもう1人の先生にも良い顔して育ててもらってるんです・・・)

 

(私って卑怯者・・・)

 

(一緒にレッスンしている人達は、何の疑いも持っていないけれど、実は私は皆さんを騙しているんですよ・・・)

 

心のどこかで、そんな風に思いながら、自分を責めながらレッスンしていては、上手になるどころか、レッスンに集中しきれないと思います。

 

また、隠していても、教師は一瞬で見抜きます。

 

踊り方はもちろんですが、脚の出し方、目線の送り方などはもちろん、立ち方からでもわかります。

 

メソッドが同じでも、それぞれの教室、先生でコンビネーションの組み方が違いますから、自分が教えていない動きを一瞬でも目にすると、(ああ)と、わかります。

 

もし、仮に先生が気がついていないのだとしたら、その人にあまり興味関心がないのだと思います。

 

夫婦や恋人同士でも、相手のことを好きで興味関心があれば、ならいつも良く見ていますから、(最近帰りが遅いな)とか、(急にオシャレなシャツ着るようになったな。)とか気がつきますよね?

 

それと同じだと思います。

 

もしかしたら、先生にあまり興味関心を持たれていないので、掛け持ちをしよう、と思うのかもしれませんが、それなら、なぜ自分は先生にレッスン中に興味関心を持たれないのか。

先生が大人を指導することに興味がないのかもしれません。

それなら、掛け持ちではなく、教室を変わった方が良いと思います。

 

ただ、やる気があって、レッスンをお休みせずに通っていて、きちんとバレエの礼儀やマナーを守れていて、先生の注意を聞きもらなさないよう集中してレッスンを受け、注意してもらったことは次のレッスンまでに出来るだけなおして、自宅でもストレッチやエクササイズを頑張っている。

 

そこまでして頑張っている生徒に興味関心を示さない教師は、まずいないと思います。

そこまで頑張っているのなら、何とかして上手にしてあげたいと思うのが人情です。

 

ですから、掛け持ちをする前に、まず自分自身がそういったことに取り組むことによって、先生にしっかりと指導して頂けるようになって、掛け持ちをする必要がないことがベストだと思います。

 

そう考えると、やはり掛け持ちとういうのは、自分自身が落ち着いて、地に足をつけてレッスンするということが難しくなりますから、バレエが本当に上手になりたい場合は逆効果だと言えると思います。

 

自分が「この先生!」と思った先生とであれば、大抵の事は乗り越えられるのではないでしょうか。

 

レッスン数が少なくて掛け持ちした場合や、自分が通える曜日や時間にクラスがない場合は、そのことを伝えてみれば、先生も、すぐにではなくても、クラスを増やしたり、レッスン内容を工夫するなど、何か考えて下さるかもしれません。

 

また、自分があまりきちんと教えて頂けていないな、今のレッスン内容では物足りないな、と思う場合は、勇気をだしてそれをそのまま伝えてみると、なぜきちんと教えて頂けないのか、なぜこのレッスン内容なのかをきちんと教えてもらえると思います。

誠意ある教師なら、本当のことを教えてくれると思います。

 

そうやって、お互いに本当のことが言えれば、掛け持ちをして後ろめたい思いをしなくてすみますよね。

 

せっかく大人同士なので、本音で話すということが大切かなと思います。

 

逆に言うと、本音で話し合えない関係では、バレエの上達は難しいのかもしれません。

 

本音が言えることが、信頼関係の第一歩ですから。

と言う訳で、今回はバレエが上手になりたいのであれば、そして、正々堂々とバレエの道を歩いて行きたいのであれば、出来れば掛け持ちはしない方が良い、というお話でした。
 

 

次回もまだ、掛け持ち編は続きます。

 

次回は「メソッドの違い」についてです。

 

お楽しみに音譜

 

 

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