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毎週火曜日に連載中の『大人がバレエを習うということ』シリーズ
13回目のテーマは、
『バレエは普通の習い事じゃないⅢ
~上手になりたいなら掛け持ちはしない方が良い②~』です。
今回は前回の続きからです。どうぞ。
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バレエを習うというのは、バレエをとおして生き方や考え方、人間性を習うものだと考えてみて下さい。
お母さんが1人の人よりも、お母さんが2人いる人の方が、子供はより優れた大人になるでしょうか。
それぞれのお母さんの教育方針が全く違っていたら、その子は迷わないでしょうか?
また、お互いの方針の良さを打ち消しあってしまわないでしょうか?
とにかく良い大学に入れてあげたいからと、小学生のうちからお受験を選ぶお母さんと、
子供のうちは、のびのび育てて、色々な経験をさせてあげたい、というお母さんのどちらかが正しくて、どちらかが間違えているなんて言えませんよね。
けれど、「勉強を教えてくれるお母さんと、色々なところに遊びに連れて行ってくれるお母さんの両方がいいな。」と言って子供が両方のお母さんを毎週行ったり来たりしていたら、両方のお母さんが頑張れば頑張るほど、それぞれのお母さんが見せてあげたかったものとは違う未来にその子は行くことになるのではないでしょうか。
また、(どっちのお母さんにも申し訳ないな)という気持ちをどこかに持ちながら、育つことは、子供自信の心の負担になるかもしれません。
“お母さん”に優劣はありませんよね。
どんなお母さんでも、子供のために一生懸命愛情を持って育てますよね。
それだけで、どんなお母さんにも価値があります。
また、どんなお母さんでも、良いところもあれば、悪いところもあります。
大切なのは、どんなお母さんでも良いので、そのお母さんの生き方や考え方をベースに、自分の人生をどう歩いて行けるか、なのです。
本当に頭が良い子は、どんなお母さんが育てても、いずれ頭角を現しますし、
手先が器用な子は、どんなお母さんに育てられても、手先が器用です。
だから、大切なのは、どのお母さんが良いのか、ではなく、自分が大好きだと思えるお母さんを選ぶこと(直感が大切です)。
それから、お母さんと子供がきちんと向き合って成長していくことではないでしょうか。
子供の方からは、
「お母さん、もっときちんとお勉強教えて。」
「お母さん、勉強ばかりだとつかれるから、たまには海や山へ行きたいよ。」
などの気持ちがお母さんに伝えられること。
また、お母さんの方からは、どうしていま、これをやる必要があるのか、などの説明をすることなどです。
…バレエの世界は基本的に絶対君主制なので、普通のバレエ教室ではむずかしいかもしれませんが、これが出来る人は掛け持ちをせずに済むと思います。
◇
また、このお教室の掛け持ちということは、お母さんとの関係ではなく、恋人や配偶者との関係としても、例えられると思います。
一般的に、恋人や夫が1人の人よりも2人の人の方が、幸せでしょうか?
『一粒で二度美味しい』と思えるでしょうか?
短い時期なら、そう感じることもあるかもしれません。
けれど、2重生活、しかもどちらにも秘密にするか、ある種の後ろめたさを感じながら生活していかなくてはいけません。
「もうすぐA君の誕生日で、マフラー編んでるから、今月はあなたとはあまり会えないんだ。」なんて言えないので、ごまかすことや、嘘がどんどん増えて行きます。
また、あなたが相手にかけるエネルギーは2分の1ずつになると思いますが、それぞれの相手もあなたが100%で自分と付き合っていないのはわかりますので、相手も無意識にあなたにかけるエネルギーは2分の1くらいになりやすいです。
いずれにしろ、1対1のフェアな関係ではない。
バレエ教室の場合も、掛け持ちをするということは、「自分が相手を選ぶ」という関係性になります。
自分が先生を選ぶという選択肢を持っているという状態ですね。
それはつまり、自分の方が先生よりも上だという関係性になります。
人は自分と対等および下だと思っている人からは何もう受け取れませんから、結果的にどちらの先生からも何も受け取れなくなってしまいます。
また、この場合は「先生」よりも「自分」を優先させている、ということになります。
これは、気をつけないと、「先生に言われても、自分で納得しないとやらない。」という状態になりやすいです。
自立心や競争心が強い人、負けず嫌いの人が入りやすいパターンなのですが、
先生からの一つ一つのアドバイスを聞くかどうかを、自分で決めるわけです。
先生にも、勝ちたい訳です
そこまで自分が強いと、『自分』の枠を超えることが出来ません。
『自分』が強すぎて、他人の考え方ややり方を受け入れるスペースがないのです。
そうなってしまうと、ひとりよがりになってしまい、自己満足な踊りになってしまいがちです。
負けず嫌いは、目的を達成する時の原動力にはなりますが、先生からのサポートを得ることは難しくなってしまいます。
また、バレエは芸術ですから、踊りにその人となりが現れます。
皆で動きを揃える時に、1人だけ悪目立ちしてしまったり、
音楽とあっていなかったり、
他人と協力して一緒に何かをする、ということがむずかしくなってしまいます。
バレエはひとりよがりでは出来ません。
そういった意味でも、師匠について弟子になれる謙虚さがバレエには、特に大人からはじめるバレエには必要なのです。
かけもちをする理由は実にさまざまだと思いますが、自宅のすぐ近くのバレエ教室がレッスン数があまりないから、少し離れたお教室やフィットネスにも行っちゃおう、と気軽な気持ちでバレエを始める前に、このことを知っておくと、バレエから受け取れるものが全く違ってくると思います。
また、教える方としても、
「先生に一生ついていきますから、よろしくお願いします。」という弟子と、
「2人の先生から習いたいと思っていますが、先生のことも尊敬していますので、私にも全力で教えて下さい。よろしくお願いします。」という弟子のどちらの方が本気で教えてあげやすいかを考えてみると、なぜ掛け持ちはしない方が良いのかがわかりやすいと思います。
そうなると、バレエというのは、最初のお教室選びが大切になってきます。
うちのスタジオでは見学や体験に来た人に、他のバレエ教室も見学してから決めるように進めているのですが、
バレエというものは、掛け持ちをしない方が良い以上、生徒自身が、
「この先生に習いたい!」
「この教室でレッスンしたい!」
と思えるところでレッスンをスタートさせる、ということがとても大切なのです。
なにしろ、一人前になるまで10年の世界ですから。
バレエと言うのは、色々と奥が深いのです。
つづく
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