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ジャズダンスに新たな活路を見出した私は、バレエのレッスンの良さも、また改めて感じることが出来、踊ることが楽しくて仕方のない日々でした。
この頃の私は、バレエのレッスンでは順番が憶えられないので、バーレッスンでは自分よりベテランの方の後ろをガッチリとマークし、センターレッスンではいつも最後列で隠れるようにコソコソと踊っていました。
グループにわかれて踊る時は、いつも最終グループに必死に紛れ込み、1人ずつのパドブレやピケターンなどは、出来るだけ後ろの方に、しかし、一番最後は目立つのが嫌で、最後から2人目のポジションを取るため、必死でした。
この時の私の瞬発力や、今で言うなら、陸上のボルト選手ばりだったと思います。
けれど、この頃から、自分よりも前に入っていた人達が、何人かお休みしたり辞めたり、曜日を変わったりして、また、自分よりも後から入って来た人が少しずつ増え、ふと気がつくと、センターレッスンで前から2番目の列で踊ったり、グループで踊る時も第2グループあたりに入ることが多くなってきました。
最初の頃は、自分より後に入ってきた人が、バーやセンターで自分の後ろに来ると、何だか落ち着きませんでした。
心の中で自分の後ろに来た人に
(・・・いや、私をあてにしても、ムダよ?よく間違えるからね。だから、その場所は危険よ?ふふん。)などと思っていました。
案の定、レッスンが始まって、間違える私につられて間違えて、後ろでワタワタしている人に、心の中で
(ほ~らね、ダメでしょ?だから、次は他の人の後ろへお行きなさ~い)などと思っているしまつで。
・・・今、考えると、間違えてはいけないというプレッシャーが重荷だったんでしょうね。
それに、バーでは右が終わって左になると、新人さんが自分の後ろにいると、その人はもちろん間違える訳で、すると、自分もつられて間違えるので、あてに出来ない訳です。
そうなるともう、何がなんでも自力でおぼえないといけない。
これは、プレッシャーでした。
当時の私はプレッシャーに弱かったので、このシチュエーションは出来るだけ避けたかった。
いつまでも、ぬくぬくと甘えられる環境にいたかったんです。
就職して社会人になって、世の中の厳しさも知って。
でも、バレエスタジオは違っていました。
ここは、間違えても良い場所。
出来なくても良い場所。
自分の弱さをさらけ出せる場所。
他人に頼っても良い場所。
他人に助けてもらっても良い場所。
だって、私は新人なんですもの。
だって、私は下手なんですもの。
でも、ある時、センターレッスンになって、ふと気がつくと、最前列に来ていました。
慌てて後ろの列に戻ろうとした時、スタジオにいる生徒全員と目があって、気が付きました。
(・・・全員、私より後に入った人だ・・・。)
愕然としました。
皆、子犬のようなつぶらな瞳で、私を見ています。
(・・・あなたが最前列で踊ってくれないと、私たちは困るんです)
(・・・私たち、あなたよりもっと振りがわからないんです)
彼女たちの目は、そう言っているような気がしました。
私は覚悟を決めて、くるりと前を向き、最前列の中央で踊りました。
ええ、踊りましたとも!
・・・不思議と、間違えませんでした。
責任感と緊張感から、ものすごく集中していたのだと、思います。
本当はやれば出来るのに、本気を出していなかったんだと思います。
レッスンが終わったあと、信じられないような気持ちと、爽快感と、そして少しの自信が自分の中に残りました。
それと同時に、ああ、もう、先生やベテランさん達に甘えて、ぬくぬくと過ごせた日々とは別れを告げる時が来たんだな、と少し寂しくなりました。
けれど、それは、まぎれもない自分自身の成長の証でした。
小さい時に、それまで自分が一番下で、両親に甘えたい放題だったのが・・・
妹や弟が出来て、しっかりしなさい、と言われる時。
さみしけど、それはきっと、その子にその時期が来たのだということ。
いつまでも親に甘えてばかりいては、その子のためになりません。
その子はこれから小学校に行って、中学校に行って、高校に行って、1人で生きていける立派な大人になるのですから。
◇
この頃から、私は困っている新人さんがいたら、場所を変わってあげたり、センターで前に立ってあげたりするようになります。
それは、自分が本当に新人だった頃に、うっかりバーの端についてしまって、お手本にする人が誰もいなくて困りはてた経験からだったのですが・・・
それはただ単に、自分が他人に何かを頼むのが苦手だっただけの話。
そうやって優しくするのは親切ではあるけれど、別の見方をすれば、
「あなた、きっと出来ないわよね?だから変わってあげるわ」と相手に対して少し下に見ていることにもなる。
当時の私は、それでも困っている人を放っておけなくて、すぐに手を差し伸べていましたが・・・
実際、新人のときから、必死に順番を憶えたり、何度間違えても、めげずに頑張る、根性のある人や・・・
鏡越しに他の人の動きを見ながら動く、要領の良い人などもいる訳で、失礼なことだったなと今となっては思います。
ですから、新人さんで先頭になると困る人は、もしそうなってしまったら、自分から先生や他の人にお願いするか、早めにスタジオに着いて、早めにバーを出して、早めに場所をとることをおすすめします。
ちなみに、教師となった今、しみじみと思うことは、順番をおぼえることが、バレエにとってどれだけ大切かということ。
たとえば、英語を話せるようになりたいのなら、英単語を憶えることは必須なように・・・
バレエを踊れるようになりたいのなら、バレエの順番をおぼえることは必須です。
英単語を覚えられない人は、何十時間英会話のレッスンを受けても、英語が話せるようにはなりません。
中学生の頃、初めて英語を習った時、皆、単語帳に英単語を書いて、暇さえあれば、めくって、ノートに何回も書いて必死に憶えましたよね?
順番が憶えられないと、悩んでいる人・・・
バレエの順番、それくらい真剣に憶えてますか?
学生時代、授業についていけているうちは、真剣に先生の話を聞いていますが、途中でわからなくなって、授業についていけなくなると、ただ、ボーッと聞くしかなくなってきますよね。
バレエのレッスン、そうなっている人、いませんか?
よくわからないけど、どりあえず、レッスンに出て、ボーッとうけて、ああ、今日もよくわからなかった、今日も出来なかった、でもまぁ、もういつものことだからとあきらめている人、いませんか?
1年以上クラスを受けているのに、順番が憶えられないのなら、そのクラスはあなたのレベルにあっていないのかもしれません。
または、色んな先生のクラスを受けすぎて、頭の中がゴチャゴチャになってしまっているのかもしれません。
このまま、その授業を受け続けても、あなたの英語力もバレエ力も上がりません。
レベルのあっていないクラスを何十時間受けても、踊れるようにはなりません。
先生からの、大切な注意は、全てBGMとなって、右の耳から左の耳へと流れ去って行きます。
そうやって、先生からの注意を流すクセがつきます。
注意を流す人には、やがて先生も何も言わなくなります。
・・・その人が、いつか自分で気がつくことを願いながら・・・。
だから、バレエでは1回注意したら、同じことは2度と言わない、という先生もいらっしゃいます。
それは、それだけ教師の一言一言を真剣に受け止めて欲しいからです。
ダイエット目的でバレエを習っているのだとしても、他人にあわせて身体を動かしているだけでは、筋肉がきちんと使えずに、カロリーも大して消費していません。
自分の意思で自分の身体を動かす、つまり、踊るためには、順番を憶えることは避けて通れません。
他人の動きをマネて、動きをなぞっても、反射神経は磨かれるかもしれませんが、踊れるようにはなりません。
これはもう本当に、自分の経験からのアドバイスです。
どうしても順番を憶えられない人は、今よりもう1つか2つ、簡単なクラスを選んで、英単語を、いえ、順番をきちんと覚えることから、もう一度、始めてみることを、おすすめします。
いつの間にか、あきらめることに、わからないことに、自分が出来ないことに、慣れてしまってはいませんか?
人生には色々なことがあります。
仕事が大変で疲れていたり、プライベートで心配な事を抱えていたりして、でも、それでも、頑張ってレッスンに来ている、なんてこともあるでしょう。
どんなに頑張っても、集中出来なかったり、身体が疲れていたり、立っているだけで精一杯なくらい気持ちがツライ時だってあるでしょう。
私にも、沢山経験があります。
だから、いつもいつも100%で、とは言いません。
出来ない時だってあっても良いし、そんな自分は責めずに、よく頑張っていると褒めてあげて欲しいと思います。
レッスンの出来がボロボロで、先生に沢山注意されたって、自分だけは自分が頑張ったこと、知っています。
でも、日常がツラかったり、大変な時こそ、集中して欲しいんです。
バレエは非日常の世界だから、集中することで気分転換になります。
結果はどちらでも良いんです。
教師は生徒の顔を見れば、今日は疲れているのかな、何か良いことがあったのかな、悪いことがあったのかな、くらいはすぐわかります。
でも、それもどちらでも良いんです。
良い時も悪い時も、教師はいつも生徒ひとりひとりを見守っていますから。
・・・バレエを始めた頃の、あの真剣な気持ち。
先生の言葉を一言も聞き漏らすまいと集中していた、あの頃の気持ち。
わからなかったことが、わかるようになった時の、あのワクワクした気持ち。
出来なかったことが、出来るようになった時の、あの喜び。
そんな気持ちを、取り戻したいのなら、新たな気持ちでぜひもう一度チャレンジしてみて下さい。
話がそれましたので、戻しましょう。
◇
人はよく、自信がないと言いますが・・・。
自信って、最初からあるものじゃなくて、自分で経験して育てていくもの。
「無理!私には絶対無理!」って思うことを、一か八かやって、そのためにはもう、自分を信じるしかなくて、そして、それが出来た時に、初めて身につくものじゃないのかなって思います。
それが「自分を信じる」つまり『自信』ということなんじゃないのかなと思います。
自信がつくのを待っていたって、自信なんて一生つかないような気がします。
大切に守られていたり、自分が出来ることしかやってきていない人が、自信がないのは当たり前で。
「無理!」って思うことをやらずに、自信のない人生を生きるか・・・
「無理!」って思うことをやって、少しずつ自分に自信をもてる人生を生きるか・・・
私は、バレエと出会えたおかげで、沢山の、本当に沢山の「無理!」と出会い・・・
様々な経験をしてきたことで、以前の私よりは、少しずつ自分に自信を持て、少しずつ自分のことを好きになることが出来たように思います。
落ち込んだり、自信をなくしてぺしゃんこにへこむこともあるけれど、でも自分の歩いてきた道を振り返ると、そこには確かに頑張ってきた自分かいる。
これは、自分にとっては何物にも変えがたい宝物だなと思っています。
「無理!」って思うことをやるのは勇気がいります。
自分でそう思うくらいだから、やっぱり出来なかったってこともあります。
でも出来なくても、(ああ、今の自分にはやっぱり無理なんだな)ということがわかるだけで、別に命をとられるわけじゃない。
それで自分の価値が下がる訳じゃない。
むしろ、前に進む力や、行動力、決断力、チャレンジ精神、度胸と根性は確実に身につく。
だから、今よりはもう少し自分を信じてもいいんじゃないか。
自分が思っているよりも自分は出来るのではないか。
無理かどうかなんて、決めているのは自分で、もしかしたら、自分のことは自分が一番よくわかっていないのかもしれない。
いつも自分を見てくれている家族や友人、バレエの先生の方が、よくわかっているのかもしれません。
私もそうですが、バレエの教師って、レッスン中に、『その人とっては無理なこと』が出来ていない時には何も言わない。
その人には出来るはずなのに、出来ていない時、やっていない人、出来ることがわかっていない人に対して注意が飛びます。
先生によく注意されたり怒られたりする人は、もしかしたら、自分で自分の可能性に気がついていないのかもしれません。
おっと、また話がそれました。
今日はよく話がそれますね。
・・ともかく、この頃の私は、バレエでもジャズダンスでも、目に見えて成長していた頃でした。
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