平安、室町、戦国と読み継がれてきた『源氏』は、江戸時代になると出版ブームに乗り、ダイジェスト版や絵本みたいな本が次々に世に送り出されました。

 江戸庶民の識字率は50%以上だと推測されていますから、読める人は読めない人に読み聞かせを行い、源氏は恋物語の様相を呈した娯楽本となりました。

 そうやって庶民に広まった『源氏』ですが、パロディー本となったのが柳亭種彦の『偽紫田舎源氏』(にせむらさきいなかげんじ)、真面目な本としては『湖月抄』がスタンダードな源氏本として明治・大正まで続きます。

 

 吉原の高級遊女たちには、教養としての読書、恋のお手本として必携でした。

彼女らのビジネスネームには『源氏』の登場人物の女性の名がつけられました。

現在、バーやクラブ、キャバクラのホステスさんたちのビジネスネームを「源氏名」というのは吉原の高級遊女の流れからきています。(注・芸者さんは別)

 

 庶民の娯楽となった『源氏』は国学者・本居宣長によって研究が深められ、文芸としての価値が高められました。彼は「もののあわれ」が『源氏』の主題だと説き、また、光源氏の生い立ちから歿年までを整理して年表風に完成させました。

この年表は現代の『源氏』本の後ろに採用されています。