日本は計画経済の国だっけ? 政府が内部留保に課税することも検討と聞いて思うこと。 | 辛坊正記ブログ-金融、経済、そして旅と人-

日本は計画経済の国だっけ? 政府が内部留保に課税することも検討と聞いて思うこと。

企業が内部留保をため込むのはけしからん、と安倍総理や麻生大臣が怒っていらっしゃるとしばしば報道されますね。今日も毎日新聞に「内部留保 増え続け377兆円 賃上げ、投資 迫る政府」という見出しの記事がありました。今日は石原伸晃経済再生担当大臣です。政府内では「内部留保に課税し、企業が賃上げや投資に回さざるを得ない仕組みを作るべきだ」との強硬論もくすぶる由。

http://mainichi.jp/articles/20161106/k00/00e/020/165000c

 

記事が指摘する通り、内部留保は配当せず企業に残した税引き後の利益金。性格的には増資して得る資本金と同じです。内部留保分の現金を100%投資に回しても、内部留保は減りません。内部留保が減るのは赤字を出すか、利益以上に配当するか、自社の株式を買い戻して償却するときくらいです。
賃金を増やせば利益が減って内部留保の積み上がりペースは落ちますが、それでなくても日本企業のROEは低いと言われるなか、それを政府が強要するのが正しい道とは思えません。算盤に合わない投資をして減価償却費が投資リターンを上回れば内部留保は減りますが、それも正しい道ではないでしょう。自己株式を買ってROEを高める道はありますが、それこそ企業の投資余力を潰すだけ。
企業が借入を減らし、企業部門全体が資金余剰になるという世界でも稀有な状況にありますが、これは低金利・低成長が長期化して負債で資本コストを下げるメリットが享受できなくなっているからです。内部留保が借入に代わる資金調達手段になっているわけで、企業にとって極めて合理的な行為です。
「だが、政府は納得しておらず」・・・ 政府が企業会計の基本を理解していないのか、あるいは金融緩和と財政拡大が限界に来て企業に圧力を掛けるしかないと腹を括って理解できない振りをしているのか、どちらかだろうと勘ぐってしまいます。
企業に圧力を掛けて経営リスクを高めさせることにばかり注力せず、世界銀行に34位と言われるまでに落ちてしまったビジネス環境を改善するため、政府自身がリスクをとって構造改革を進めるべきであるように思います。こんな圧力を強めたら、ビジネス環境の国際競争力がますます落ちてしまいます。

ちなみに、世界銀行がつける日本のビジネス環境のランキングは

2007年版11位、 2012年版20位、 そして2017年版は34位に急落です。

そりゃそうなりますよね・・・・。