素晴ラシキ残酷Ⅱ / Marvelous Cruelty | 安眠妨害水族館

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素晴ラシキ残酷Ⅱ/Marvelous Cruelty

 

1. 讃美曲

2. crisis for moon

3. 陰鬱ト影

4. ロザリオ

5. 黒イ雪

6. 舞葬

7. 破錠

8. 密室

9. 罪ト罰

10. 下弦

11. 硝子ノ記憶

12. 狂想曲

13. 寂寞ニ揺レテ

44.

 

Marvelous Crueltyによる完売音源集の第二弾。

 

無期限の活動休止となった彼らにとって、ベストアルバム的な位置づけとなるフルアルバム。

第一弾は完売したEPをまとめてパッケージしていたのに対し、第二弾は単発でリリースされていたシングルのメイントラックをまとめた印象。

その意味では、「DEMO ARCHIVE」シリーズとの住み分けが気になるところですが、節目として象徴的なタイトルにする意図もあってでしょう。

 

6年間の活動の中で、音楽性が大きく変わることがなかったMarvelous Cruelty。

初期の楽曲であっても、リレコーディングのうえ再リリースという方法論が成立したぐらいには、サウンドが徹底されていたバンドだったと言えるのでは。

一方で、第二弾の収録曲は、彼らの活動の中でも後半に制作された楽曲の比率が高まっており、それに伴って、そうはいってもマンネリ打破のために取り組んできた音楽というのも可視化されています。

直接的なオマージュを用いたツタツタ発狂系のナンバーはやり尽くしたのか、メロディアスチューンが主体にシフト。

もちろん、90年代コテコテバンドを踏襲したスタイルの範囲内ではありますが、結果的に元ネタを知らなかったとしても聴きやすさが生まれて、更に一皮剥けそうな予感もありました。

 

もっとも、そこも含めて、相応にキャリアを積んだ懐古主義的コテコテバンドが通る道。

それ自体にオリジナリティを求めることはできないものの、二番煎じ、三番煎じだからこそ、試行錯誤を省エネ化してベストエフォートに辿り着くことができるとも言えるわけで、やることが尽きて活動が止まる直前の音楽が、実は一番魅力的、なんてこともあるのですよ。

「黒イ雪」、「舞葬」などは、特に初期では出すことがなかったであろう曲調。

スキル面でも成長は見られるため、結果的にバランスが良い作品なのだよな、と。

 

また、まぶされることで、本来の強みが際立つ部分もあって、いかにも彼ららしいダーク「罪ト罰」であったり、 「オペラ座の悲劇」 の明確なオマージュであろう「硝子ノ記憶」であったりのベタベタ感が強調される。

「オペラ座の悲劇」については、「ツルワルデ奏ト君」でも近いことやっていなかったっけ......というツッコミもあるけれど、Marvelous Crueltyの音楽性において、それを今更言うのも野暮というもの。

新曲として収録された「讃美曲」がツタツタ発狂路線での最終進化系、「寂寞ニ揺レテ」がメロディアス路線での現在地を示しているのが、本作で表現していることを端的に物語っているのです。

 

なお、44トラック目に、シークレットトラックとして「倒錯ノ部屋」が収録。

歌とギターのみのアコースティック風の編成と、クロージングのパターンを増やしているのもわかっていますね。

アルバム未収録のデモシングルだけで、もう1枚はアルバムが作れそうな彼ら。

どこかのタイミングで、「素晴ラシキ残酷Ⅲ」を出してくれはしないだろうか。

願わくば、それを引っ提げて復活、となってくれれば最高なのですけれど。

 

<過去のMarvelous Crueltyに関するレビュー>

「DEMO ARCHIVE」「DEMO ARCHIVE+」

ニードル

素晴ラシキ残酷 -完売音源集-

夜葬曲

破錠

素晴ラシキ残酷

吊サレタ奇形ノ罠