NO VISUAL,NO LIFE〜CARPE DIEM〜[DISC-1] / V.A. | 安眠妨害水族館

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NO VISUAL,NO LIFE〜CARPE DIEM〜/V.A.

 

ヴィジュアル系を愛する者達による、何処よりも"ヴィジュアル系"らしいオムニバスアルバム「NO VISUAL, NO LIFE」シリーズの第三弾。

今回も、咲花-サカナ。-として[DISC-2] に参加させていただいております。

いつかDISC-1に進出できる日は来るのでしょうか。

 

過去最高のボリュームとなった全28曲。

2,000円という価格設定はそのままですので、1曲あたり71円ほどの換算。

デジタルシングルの相場の半額以下ですよ。

豪華な別冊ブックレットも付属していて、アーティストによっては特典まで付属するのだから、お得感が半端じゃないCDとなっています。

そろそろ恒例になっていると信じて、レビュー形式でプロモーションを行うことで広報担当の責務を果たしましょう。

まずは前編として、DISC-1から。

 

 

 

1. Hypocritical Story/CHRONOLYZE LAB

 

三連続の参加となるCHRONOLYZE LABが、まずは口火を切ります。

本作に収録された「Hypocritical Story」は、懐かしさすら感じさせるビートロック路線の疾走チューン。

毎回音楽性が異なり、今回も新たな引き出しを開いて見せたHEELOさんですが、そのどれもが高いクオリティでのアウトプットになっているから恐れ入りますね。

この歯切れが良くてキャッチーなサビのフック!

トップバッターにふさわしいインパクトと勢いをもたらしていました。

 

 

2. CHAOS/TRANCE

 

1998年に結成し、札幌を拠点に活動していたTRANCE。

2023年に再結成するにあたって、復活第一弾となる完全新緑の楽曲が「CHAOS」となります。

参加メンバーはVo.USKさん、Ba.TATSUYAさん、Dr.MASAさんがクレジットされており、Gt.YU-KIさんは不参加となりますが、当時音源化した際は脱退済だったUSKさんの歌唱で代表曲が蘇るというのは、何とも熱い展開です。

ベース&ドラムのビートで引っ張りながら、カッチリしたキメや退廃的なアルペジオで世界観を構築。

リアル90年代を駆け抜けた楽曲だけに、純度の高いダークで耽美なヴィジュアル系成分は、きっと他では味わえません。

 

 

3. Metamorphosis/UDFmisa

 

"J-Goth, NOSTALGIC ROCK BAND"として活動中のUDFmisa。

ゴスとノスタルジックという単語がなかなか結びつかなかったのですが、なるほど、そういうことかと。

感情を押し殺したように暗く蠢くゴスの音楽を踏襲しつつ、ギターや歌唱に叙情性を持たせることを拒まない。

その結果、不協和音のマニアックさやメロディの平坦さといったゴシックの様式美に、本来は排除されているべき感情を揺り動かす要素が顔を出してくるから、こんなにもグッとくるのでしょう。

「NO VISUAL, NO LIFE」シリーズとしては初かもしれない、カラオケで歌えるというのも聴き込みたいポイントです。

 

 

4. 「古~いにしえ~」/リヴァイ部

 

REVIVEのYouTubeでの姿、リヴァイ部。

やりたいことをやる部活動のイメージということで、もうバンドとYouTuberの垣根も薄れてきているのですね。

事実上、現役のヴィジュアル系バンドの顔も持っている彼ら。

楽曲のクオリティが高いのは当然といったところですが、そのうえで、最初のギターリフだけで的確にリスナーのツボを突いてくるのだからたまりません。

「古~いにしえ~」というタイトルではあるけれど、サウンドはまったく古臭くないのでご安心を。

 

 

5. 臨死遺言/詩泉

 

バーチャル・ネオヴィジュアルロック・シンガーソングライターを標榜するVTuber。

20年以上ぶりに復活するバンドがあれば、新進気鋭のクリエーターも参加しているから面白いなと。

激しく叩きつけるヘヴィネスと、不穏なメロディ。

攻撃的なシャウトも突き刺し、アルバムとして不足していたハードに振り切った楽曲になっています。

ネオ世代に影響を受けつつ、サビでキャッチーに展開せずにアングラを貫くところに矜持を見た。

 

 

6. トワイライト/Yuzu

 

全員が年齢を公開しているわけではないですが、10代での参加は最年少なのでは。

しっとりしていると思いきや、内なる激しさを表現するかのようにヒステリックさも持ち合わせていて、サウンドが独特ですね。

同じフレーズが違った音色で鳴っていたり、重なる音が加わっていたりと情報量が増えていき、暗いけれど力のある楽曲に仕上がっていました。

陰鬱だけど、どこかロマンティック。

メロディラインも繊細さとアングラ要素が混在していて、二面性が常に見え隠れする1曲だな、と。

 

 

7. 幼虫/Under Cat's

 

密室系重低音歌謡ロックバンド・カフカ-KafKa-のDr.征夢さんによるソロプロジェクト。

じわじわと迫り寄ってくる和製ホラーのテイストと、ヘヴィーなロックサウンドのハイブリッドと言えそうですね。

おどろおどろしく、不気味な世界観は、スピードがなくても激しさを示すことが可能。

エフェクトヴォイスで叫んだり、語りを挿入したりと、ギミックも効果的に使って、ハードさを演出しています。

構成の上手さに、カフカ-KafKa-にしても、Under Cat'sにしても、他の楽曲をもっと聴いてみたいと思わせてくれる1曲でしょう。

 

 

8. 籠の中の遊女/魔王

 

更に和要素を強めて、深くに潜っていくのが「籠の中の遊女」。

童謡「かごめかごめ」をモチーフにして、メタルサウンドと雅楽を混ぜ込んだ禍々しい世界観を創出していきます。

琴や尺八の音色が、重低音に響くギターに勝るほど主張。

怪談のような不気味さを演出しきってから、改めて高揚感のあるギターソロで空気を切り替える展開が巧みすぎますよ

魔王というアーティスト名は、和というより西洋的だなと思ったのですが、クラシックにも造詣があるとのこと。

まだまだ音楽性の引き出しは多いはず。

 

 

9. 鎮恋歌~レコイエム~(New Version)/俺はゴミじゃない

 

大川興業の紹介文によると、ヴィジュアル系と相撲と格闘技に精通したヴィジュアル系芸人。

自ら作詞・作曲をした「鎮恋歌~レコイエム~」の新緑ヴァージョンを引っ提げて、満を持しての参加となりました。

他の楽曲と比較して音質が粗く、ザラザラした質感になっているものの、オムニバスにライブ音源が入っているような、そんな空気感を生んでいます。

歌唱にも臨場感があって、音源制作として歌っているのではなく、ライブとして1曲歌い切ったようなテンションの推移。

ローファイな仕上がりも含めて、そういうを狙ってやっているならとんでもないのだけれど、どうなのだろう。

 

 

10. Silent Night 2023/MSGEX

 

作曲とプログラミングを担当するGAKUさんと、作詞とデザインを担当するSHI-DOUさんによるポップ・ロック・メタル同人サークル、MSGEX。

ゲストヴォーカリストにめらみぽっぷさんを迎え、前作と同じ編成で参加しています。

継続性も出てくるのか、古式ゆかしい展開の多いメタルサウンドを、ファンタジー色が強めで加工するアプローチはもはや洗練された職人芸。

アニソンへの親和性を高め、とにかく聴きやすい。

この速さを求めているのだ、というスピード感も相まって、癖の強いゾーンに清涼感をもたらすアクセントになっていました。

 

 

11. Заброшенная Больница/Призрак

 

前作に初参加し、大きな衝撃を放ったПризрак。

そのスタンスはまったく変わっておらず、収録された「Заброшенная Больница」は更に尖りまくったブラックメタル。

ただでさえ聴きにくいとされるブラックメタルから、更に叙情性や表面的な激しさを排除。

呪術的な要素だけを拾ってきたようなどす黒さを充満させています。

ヴィジュアル系はブラックメタルを包含する部分も確かにあるのですが、ここまでくると、まだ咀嚼していない境地に辿り着いてしまいましたよね。

 

 

12. Sin/Area jacta est

 

comaさんのソロプロジェクト、Area jacta est。

1stアルバムの表題曲にもなっていた「Sin」は、ここで初のCD化といったところでしょうか。

艶やかにも力強くも振れることができる中性的な歌声が、大きな武器になっていますね。

アレンジは、無駄を削いだかのようにシンプルなのだけれど、声色や歌い方の強弱だけでドラマ性を表現しきってしまう力業。

物足りなさを感じさせず、歌詞にも目を向かなければ、と思わせる表現力と説得力に撃ち抜かれます。

 

 

13. Absurd Sky/panta rhei

 

Clef DollのShionさんが、BLUE ROSEのTaishiさんに声をかけ結成されたユニット、panta rhei。

第二段から引き続きの参加となりますが、大枠として暗く、変拍子を繰り返すなどマニアック性が高いのは変わらないものの、だいぶ聴きやすくなったな、と。

"そこにある死を綴る"というコンセプトが変わらない中で、サウンド的なアプローチが異なっていくのが興味深いです。

ただそこに佇むだけの死に対して、絶望感しかなかった前作に対して、哲学的な解釈を放り込む余地を設けて、相応なアッパー感をもたらしているのが本作の特徴。

死の見え方は1通りじゃない、というのを音楽で示していくのだとすると、壮大なプロジェクトになりそうですね。

 

 

14. テクトゥ衛パク/ラリレロ

 

狂想ドッペルのVo.ハルタコウヘイさんと、Ba.リョヲスケさんによるユニット。

"ビジュのビジュたる所以を熟考しました"というコピー文からもわかるとおり、ゼロ年代のヴィジュアル系の再構築。

二番煎じの煽りやシャッフルリズムの大安売りに走るのではなく、あの頃のマキシシングルの3曲目に入っていそうな切ない疾走チューンに目を向けているのがたまらないですね。

あえてストレートに仕上げた王道系の楽曲に、少しメルヘン色を付け加えた日常系の歌詞。

ゼロ年代の高田馬場AREAが好きだった世代をピンポイントで狙い撃ちする1曲です。

 

 

まずはDISC-1を紹介しました。

若手から復活組まで、幅の広さを網羅した感のあるディスクになっているのではないかと。

まだ購入していない人は、OZ OWRKS ONLINE SHOPでも販売中。

咲花-サカナ。-の2曲入り特殊恋文仕様8cmCDが特典になっているので、ぜひぜひお立ち寄りを。

 

 

<過去のNO VISUAL,NO LIFEに関するレビュー>

NO VISUAL,NO LIFE〜IDIOSYNCRASY〜[DISC-1][DISC-2]

NO VISUAL, NO LIFE~GIANT KILLING~ [DISC-1] [DISC-2]