空を飛ばない円盤/蒼井春
1. 素敵な壷
2. 自分コントロォラァ
3. 無関心空間
4. boy
5. 愛の実験
ひととなりやI hate your rules.等のプロジェクトで活動中のVo.ハルさんが、2010年にソロ名義で発表したミニアルバム。
現在は、あをいはる名義で活動することも多いハルさんですが、当時は蒼井春と漢字表記を用いていました。
会場限定で販売されていた本作は、デモ音源という位置づけにはなるのでしょう。
インスト4曲、歌モノ1曲という構成で、特にインストはアイディアを膨らませる過程といった印象。
ただし、ハルさんらしいピコピコ感のあるチップチューンや、負の感情をキャッチーに表現するセンスは、断片的なインスト曲からもしっかりと受け取れます。
ハルさんの代名詞でもあるストーリー性を持ったシニカルな歌詞は、構成上控えめになってしまうものの、入手困難となった今となっては、貴重な作品であることは間違いありません。
やはり触れておきたいのは、唯一の歌モノとなる「boy」なのですが、どこかスペーシーなアレンジが特徴的なミディアムチューン。
強いメッセージがあるようでもあり、零れ落ちる言葉を淡々と紡いでいるだけのようでもあり。
テンションの起伏が少なく、ひたすらローテンションで進行するという意味ではダウナーとも言えるのだけれど、暗くふさぎ込むようなイメージは薄く、むしろ心地良さに支配されていく感覚。
実験的ではあるけれど、大きな可能性を秘めた楽曲でもありますね。
賑やかで、ナイーブで、面白くて、激しい。
喜怒哀楽のすべてが詰まったようなインストチューンと、感情が表に出てこない歌モノという組み合わせは、狙っているのか、天然なのか。
久しぶりに引っ張り出したものの、改めて聴いてみると、その深さに衝撃を覚える1枚。
<過去の蒼井春に関するレビュー>