COOL / BY-SEXUAL | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

COOL/BY-SEXUAL

 

1. NO

2. PARADOX

3. YELLOW

4. COOL HEART

5. MASK

6. D.L.L.

7. TO HEAVEN

 

1994年にリリースされたBY-SEXUALの7thアルバム。

 

6thアルバム「94 Love」から、わずか半年という期間でのリリースとなった本作。

制作中にVo.SHOの脱退が決定的となっており、事実上のラストアルバムとなりました。

7曲というコンパクトさではありますが、グルーヴ感は彼らの作品の中でも際立っていて、彼らの音楽的な成長がうかがえる1枚と言えるでしょう。

 

10代でデビューし、派手なヴィジュアルとパンキッシュなサウンドにより、瞬く間に第一線へ。

一方で、技術が環境に追いついておらず、諸々の危うさがあったのですが、知名度と技術のギャップは、なんだかんだで埋まりつつあったのだな、というのが本作を聴けば理解できるのではないかと。

当初の勢い任せのパンクスタイルは鳴りを潜め、ハードロックやグラム、ビートロックといった近接していたヴィジュアルロックとの親和性を高めており、アレンジワークにおいて選択肢が増えた印象。

Gt.RYOさんが叫ぶ「NO」や、Ba.DENさんがメインヴォーカルとなった「YELLOW」など、異質な楽曲を前半にまとめたことも効いていて、一部は怪我の功名的な要因もなくはないと思うものの、変化を意識させる構成になっています。

 

中でも、終盤の2曲が肝かもしれません。

派手さを抑えて、スリリングで神経質なロックを渋くこなした「D.L.L.」と、スケールの大きいメロディを清涼感たっぷりに歌い上げるミディアムナンバー「TO HEAVEN」。

ともに、彼らのウィークポイントという認識だったのに、なかなかどうして、格好良く締めくくっているのですよ。

スネアの大袈裟なエフェクトに時代を感じはするものの、随分と洗練されていて、このキャッチアップの速さも若さ故なのですかね。

 

もっとも、ヤンチャを売りにしていた彼らの個性という点で、普遍化されて薄まってしまったという見方も出来はする。

求めるものによっては、戸惑いを与えるほどのスピード感だったというのも理解できます。

とはいえ、スキル面での成長と、内面の不安定が交錯する、成長途上だった彼らの刹那的な瞬間がパッケージされているうえ、振り返って聴く分には温故知新の面白さもあったりして、無視できない作品だというのは間違いないのでは。

 

<過去のBY-SEXUALに関するレビュー>

Culture Shock