溺想 / DIE-QUÄR | 安眠妨害水族館

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溺想/DIE-QUÄR

 

1. 「爛人(ジキル)」と「神(ハイド)」 × ZIN(CODED/LiQuid Butter Fly)

2. Mother(MaMa) 2022ver.

3. 扉 × Legi(ex GILLE'LOVES/PSYCHO LIZARD)

4. 狂いかけた白夜 × MUNIMUNI・桜井青・aie

5. モーゼの十戒 feat.朋(emmuree/MUNIMUNI)

6. 逢魔が刻 × Gilles de Rais

7. Fin 2022ver.

8. Incubus × Mercuro with 雪乃

9. dilemma × emmuree

 

DIE-QUÄRのVo.Wataruが企画・監修を手掛けた、リアレンジアルバム。

バンド名については、ジャケットロゴはDIE-QUÄRという表記で統一されていますが、クレジット等でDIE:QUÄRという表記も使われています。

 

90年代前半に活動し、1994年に解散していた彼ら。

約30年ぶりに当時の打ち込みデータが発見されたことをきっかけに、2022年のアルバムリリースが実現しました。

当時の音源で足りない部分は、豪華なゲスト陣によるリアレンジによりブラッシュアップ。

音源化されていなかった「モーゼの十戒」も現代に蘇り、オリジナルアルバムと言っても過言ではない進化を遂げていますね。

 

メロディを重視せず、ゴシックなサウンドに、ドロドロとした怨念をぶちまけるようなダークネス。

狂気的、猟奇的な側面もあるのだけれど、表面的な激しさではなく、内から込み上げる憎悪として淡々とした演奏に重ねていくアプローチは、まさに漆黒と言ったところで、ヴォーカルを押し込めて、禍々しいサウンドを押し出す本作のミックスバランスは、楽曲の持つもうひとつの表情というよりも、30年弱熟成させて生み出された完成形なのかもしれません。

 

Gilles de Rais、桜井青、aie、emmuree、MUNIMUNI、Mercuro・・・

兎にも角にも、90年代のV系シーンを良く知るゲスト陣の安心感たるや。

DIE-QUÄRの魅力をしっかりと理解したうえで、独自の色を加えて現代に昇華。

Mercuroについては、初期メンバーのVo.霞さんが参加しているのもポイントでしょう。

「dilemma」では、演奏だけでなく、メインヴォーカルも含めてemmureeのメンバーが担当しており、Wataruさんはコーラスでの参加。

ある種、完全にemmuree色で塗り替えたことで、いかにDIE-QUÄRが紡いだ暗黒サウンドが、後の世代にも受け継がれているかを証明した形にもなっています。

 

また、「爛人(ジキル)」と「神(ハイド)」のリアレンジを手掛けたZINさんは、Gt.鈴音さんとLiQuid Butter Flyに在籍している盟友。

「扉」にてゲスト参加したLegiさんは、黎明期のシーンにゴスの要素を強く根付かせたGILLE'LOVESのメンバー。

歴史を知ることで深まる味わいもあり、とにかく人選が絶妙なのだよな、と。

長くシーンを離れていた中で、これだけの賛同者を集められるというところからも、DIE-QUÄRの放っていた特異性が感じ取れるのでは。

 

なお、白ジャケット仕様の初回プレス盤は、予約段階で完売。

ただし、音質の劣化が見られたということで、急遽、黒ジャケット仕様のリマスター盤が制作されています。

事実上の2nd Pressとしてリリースされていますが、初回プレス盤購入者には、無償でリマスター盤も配布。

通販分の発送が遅れることにはなったものの、別ジャケットのアルバムが2枚届くギミックが、マニア心をくすぐるスパイスになっていました。

 

「ゆりかご」の全曲再現とはなりませんでしたが、既に廃盤になっていることを踏まえれば、彼らの音楽に触れるには良い機会。

ヴィジュアル系に"暗黒"性を求めるリスナーであれば、新作として楽しむことも十分に可能な1枚です。

 

<過去のDIE-QUÄRに関するレビュー>

ゆりかご