開花前夜/ひととなり
1. SE -kuma Remix-
2. 奇妙な花
3. 立ち枯れ -Type β-
4. ヒガン
5. 前夜
6. 無花果の森 -Acoustic Ver.-
ひととなりが2020年にリリースした会場・通販限定シングル。
満を持して一般流通販売が開始されたフルアルバム「ひととなり」の先行シングル的な位置づけになるのでしょうか。
リードトラックである「奇妙な花」に加え、「立ち枯れ」と「無花果の森」が、アルバムとは別ヴァージョンで収録されています。
SEを含むとはいえ、6トラックというボリュームは、シングル扱いにはなりますが、ミニアルバムと捉えても差し支えないでしょう。
Gt.クマさんがリミックスを手掛けたデジタルなインストを導入に、そこにアナログ感を足してバンドの魅力を発揮する「奇妙な花」へ。
気怠い歌メロとアグレッシブなサウンドのギャップをカオティックに表現すると、サビでは、一気に開けて盛り上げる展開が絶妙。
ワンコーラス目と、ツーコーラス目でまったく異なるサビメロを持ってくるという構成にも驚かされました。
「立ち枯れ」については、イントロの運び方から違いがうかがえ、シンプルにメロディや歌詞の良さを押し出したと言ったところ。
どことなくアンニュイな表情に、彼ららしさを感じずにはいられません。
「ヒガン」は、現時点では本作でしか聴けないデジタルチューン。
物憂げな雰囲気を醸成するべく打ち込み色を強めており、サビで開けるお約束を守りつつも、声を張らずにフワフワと浮遊感を出すヴォーカリゼーションが特徴ですね。
ラストに繋げるブリッジ的な「前夜」は、ポエトリーリーディングのようなアプローチ。
朗読とラップの中間のようなリズムを意識したメロディが、紡がれるメッセージ性の強さも相まって、妙に印象に残るのです。
そこからの「無花果の森」が、アコースティックアレンジで収録されたこともあって、余計に歌詞に想いを馳せることができる。
Vo.幸福86號によるストーリーテリングの真骨頂であり、バンドアレンジが収録されるアルバムへの期待を高める意味でも機能していました。
アルバムがリリースされると役目を終えるのが先行シングルの宿命でもあるのですが、本作は、それが当てはまらない。
しっかりアレンジを変えていることもあって、アルバムを聴き込むほどに、相互作用として存在感が強まっていく不思議な作品。
併せて聴くことで、彼らの世界観への解釈が深まる、コストパフォーマンスの高い1枚です。
<過去のひととなりに関するレビュー>