孵化/ひととなり
1. B.C
2. マネキン
3. 夢の続き
死 と 言葉 と 人形 と AI が 人間に憧れ、人間のふりをして、人間を目指す物語。
本作は、始動に向けたクラウドファンディングのリターンとして制作されたシングルです。
ex-マイナス人生オーケストラのVo.栗山"H∧L"ヰヱスが、幸福86號名義にて結成したひととなり。
リムキャットのGt.クマ、ex-LIPHLICHのBa.進藤 渉、被り物ドラマー枠のDr.DARIという個性的なメンバーを揃え、2019年11月、遂に卵から孵化しました。
支援のリターンについては、タオルやらDVDやら一緒にカラオケに行くプランやらと工夫を凝らしていましたが、このシングルがもっともスタンダードな特典となるでしょうか。
収録されたのは、既にライブにて披露されている3曲。
孵化後の1曲目を飾ったのは、クマさんが作曲を担当した「B.C」でした。
デジタルサウンドに重ねられるのがクワイア風のコーラスだったり、リズムが変則的だったりと全体的にカオティックな構成になっており、実にクマさんの色が出ているなと。
たった2分の楽曲ながら、とにかく多くの情報が詰め込まれているので、あっという間に彼らの世界観に没入させられてしまいます。
複雑な楽曲が投げ込まれても、このメンバーだったらこのぐらいやるだろう、という安定感が早くも出ていて、尺に対して得るものが大きい、コストパフォーマンスが良い1曲。
続く「マネキン」も、作詞が幸福86號、作曲がクマというひととなりの黄金コンビ。
1曲目と同様にショートチューンと呼べるレベルの尺ではありますが、幾分かストレートさも見せており、シングル的な聴きやすさもあるのかな。
ピコピコ感とダークな気質を強めており、激しい掛け合いからメロディアスなサビに移行するなどのギミックも十分。
このサビのメロディは、ハルさんとクマさんのハイブリッド感がありますね。
メンバーが発表された時点で相性の良さは想像できていたけれど、実際に耳にすると、やはりたまらないものがありました。
そして、幸福86號が作成・作曲を手掛けた「夢の続き」。
何と言いますか、音楽性にしても歌詞にしてもマイナス人生オーケストラの延長線上といったところで、これを待っていたというリスナーも多かったのでは。
全編的に切なくメロディアスで、特にサビの爆発力が物凄い。
このメロディだけでひととなりを結成した意味があったと言えるのではないかと思えるほどのキラーフレーズで、グッと心を掴まれました。
後ろ向きに前向きな栗山節。
進藤さん、DARIさんのフィーリングも期待値が高く、これはとんでもないバンドに育っていきそうな予感がしますよ。
名詞代わりの1枚で、早速爪痕を残した彼ら。
クラウドファンディングの参加者だけが手にしているというプレミア感も手伝って、思い入れも強くなりそう。
ライブができない昨今の情勢下、もしかしたら、ライブの入場者に配布されていた音源の役割を、クラウドファンディングのリターンが担う時代がきたのかもしれません。
とはいえ、おススメするにしても、正式音源がない状況では難しい部分はありますので、流通盤のリリースが待たれます。