ひととなり/ひととなり
1. B.C.
2. 奇妙な花
3. 方(ハコ)
4. くらげになった少女
5. 立ち枯れ
6. コレクター
7. 愁いの人形
8. 煌き
9. 自由密造
10. マネキン
11. 無花果の森
12. 夢の続き
13. 地獄で待っている
Vo.幸福86號名、Gt.クマ、Ba.進藤 渉、Dr.DARIという個性的なメンバーが揃って結成されたひととなりの1stアルバム。
H∧Lさんと、クマさん。
それぞれ、所属していたマイナス人生オーケストラやリムキャットではメインコンポーザーとして君臨していたふたりが、タッグを組んだ。
双方、デジタルサウンドを活かしたマイナー調の楽曲に強みを持っており、親和性の高さは聴かずしてわかっていただけに、そこからどのようなプラスアルファがもたらされたのか、満を持してのアルバムに期待していたリスナーは少なくないでしょう。
ふたりの作曲の割合は、ほぼ半々。
どちらかが主導権を握るわけではなく、刺激を与えあっているといったところですが、それでいて、まとまりもあるから驚かされます。
カオティックな構成で、複雑性を持たせながらキャッチーに聴かせる「B.C.」や「方(ハコ)」は、いかにもクマさんの楽曲っぽい。
それに対して、「奇妙な花」、「くらげになった少女」は、メロディアス性を高めて切なく聴かせるH∧Lさん節を奏でており、序盤は、あえてツインコンポーザーの個性をぶつけてきた印象です。
そこから、ひととなりとして集約していくのが、「立ち枯れ」からと言えるでしょう。
ふたりの楽曲の良さを足して割らない全部盛りといったナンバーで、クマさんの作曲ではありますが、H∧Lさんの歌声に照準を定めたカスタマイズが整ったことを示しているのですよ。
H∧Lさん作曲の「愁いの人形」も、物憂げなメロディの中に複雑性も垣間見えて、間違いなく化学反応が起こっているなと。
その繋ぎとして、進藤さんが作曲した「コレクター」、DARIさんによる「煌き」が挿入され、更にバラエティ性が高められているのもポイントで、最初のアルバムで、こうも理想的なアルバム構成を実現できるものか、と感心せずにはいられません。
メルヘンチックな世界観と、哀愁のあるセツナポップをV系の文脈で表現した「自由密造」、ハードなサウンドを前に出したダークチューン「マネキン」、先行シングルにてアコースティックヴァージョンが発表されていた「無花果の森」も遂に全貌を表して、感情を激しさをあらゆるアプローチで見せていくと、ハイトーンでの切ないメロディラインと、疾走感のあるリズムでクライマックス感を生み出す「夢の続き」で完全にノックアウト。
この1曲だけでも名盤確定、といったキラーチューンですが、そこまでのお膳立てが完璧なのですもの。
ラストは、タイトルの禍々しさとは裏腹にやさしく切ないサウンドで展開される歌モノ、「地獄で待っている」でクロージング。
皮肉交じりのストーリーテリングや、デジタルの中にズドンと響くバンドサウンドも健在。
聴きたかった音楽の続きが、ちゃんとここにあった。
ジャケットを見るに、まだ生まれかけ。
ここから更なる成長を遂げてくれるのかと思うと、もう楽しみしかありませんね。
<過去のひととなりに関するレビュー>