杏太ソロ3周年記念 初単独公演「空花乱堕」@アプロ赤坂(2021.11.23) | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

8月1日で、ソロ活動開始から3周年。

ギタリスト・杏太さんにとって、ソロとしては初となる単独公演に行ってきました。

 

会場は、慎一郎&杏太のホームとなっているアプロ赤坂。

勝手知ったる、といった場所ではあったでしょうし、ホタルやジュリィーでの活動で場数は十分の杏太さんですが、ワンマンをひとりで回すとなれば、また違った苦労もあるようで。

特に、コロナ禍の影響で、当初の予定であった8月から、再延期を経ての開催。

モチベーションの維持であったり、季節感の変化だったり、難局を乗り越えてといったところでの感慨深さもあるのでしょう。

込み上げるものと緊張が入り交ざって、序盤は硬い入りだった気はするものの、それもまた、初単独公演だからこそのスペシャルですよね。

普段、飄々としている杏太さんだからこそ、初々しい緊張感が新鮮でした。

 

この日は、ミニアルバム「ねぇ、雨が上がったよ。」 のレコ発ライブの意味合いもあったのですが、再延期の過程で先にCDが届く形になったことを踏まえて、現在の杏太さんの集大成を出すライブと切り替えていた印象。

ミニアルバムから披露されたのは、「歪んだ世界」と「クライフォーザムーン」だけとなります。

ライブのタイトルになった「空花乱堕」ぐらいはセットリストに入るだろうと踏んでいたので、意外だったというのも本音ですが、既に20曲ほどあるというソロでの楽曲。

フラットに、今届けたい楽曲を演奏していたという点で、リスナーを突き放したというより、むしろリスナーに寄り添っていたと認識できる、等身大のライブだったな、と。

CDに収録されなかった楽曲は未知の世界だったので、多くの曲に触れることができたのは、それはそれで収穫なのですよ。

 

慎一郎&杏太で見せるゆるいMCの代わりに、自分の言葉で楽曲の背景を語って、淡々と曲を演奏する、というスタイル。

緊張によりそうなったのか、ある程度は意図的なのかはわかりませんが、普段のオンオフのメリハリの効いたライブとは打って変わって、ずっと"オン"のスイッチが入りっぱなしと言えば良いのか。

曲の合間にドリンクを飲むのも忘れてしまうほど、食い入るように見てしまいました。

その曲に込めたメッセージや、チャレンジした部分についても丁寧に話してくれるので、見どころ、聴きどころもわかりやすい。

何より、少し枯れ感のあるまっすぐな歌声は、この3年間でのヴォーカリストとしての成長をはっきりと示していて、個人的にははじめて聴く楽曲が大半だったにも関わらず、あれこれ噛み砕く必要なく、心にすっと入ってくるのです。

 

ソロではじめてステージに立ったときに演奏した「願い星」を1曲目に、「月下美人」、「歪んだ世界」と、アコースティックギターの弾き語りで、グランジ風の渋みを出していくと、徐々にペースを掴んだ様子。

亡き友に宛てたメッセージ性の強い「椛」や、ポエトリーリーディング的なフレーズが続く「幸の空」など、感情も徐々に高まっていきます。

同期を取り入れてバンドサウンドに近づけて演奏された「暗い脆い」は、チャレンジ枠となるのかもしれませんが、その総括として、ガツンと重たく響くものになっていたのでは。

ちなみに、"トロイメライ"を文字ったのかと思いましたが、"ニライカナイ"と掛けたとのこと。

 

「青空」は、THE BLUE HEARTSのカヴァー。

ルーツになっている1曲とのことで、これ以上のBメロはないと崇拝しているのだとか。

「金色花火」は、ホタルでのアレンジを控えている楽曲とのことで、歌謡色の強い哀愁ナンバー。

「夜半の月」もホタル用に作った楽曲とのことでしたが、不採用となった「夜半の月」に対して、やはり「金色花火」のほうがホタルを感じられるのですよね。

切なく淡い、ノスタルジックなメロディ。

慎一郎さんの歌声で容易に想像できるのですが、ひたむきさのある杏太さんの歌声も、楽曲の雰囲気にはハマっていました。

 

ラストは、ソロで言いたいことのすべてが詰まっているという「クライフォーザムーン」。

はじまってみればあっという間の10曲で、もっと聴きたかったというのが率直な感想。

こういう社会情勢でなければ、持ち曲が多いのだし、もっと曲を増やせたのだろうな、と思うと悔しい気持ちもないわけではないのですが、最初はこのぐらい衝動性に振り切っていたほうが印象にも残りやすい、と捉えておくことにします。

 

未音源化曲が渋滞しているので、ミニアルバムが出たばかりというのに、早くも次の作品にも期待してしまう。

来年はソロでの活動機会を増やしていく展望もあるようなので、楽しみに待っていましょうか。

 

1. 願い星

2. 月下美人

3. 歪んだ世界

4. 夜半の月

5. 椛

6. 幸の空

7. 暗い脆い

8. 青空

9. 金色花火

10. クライフォーザムーン