ID ATTACK / PIERROT | 安眠妨害水族館

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ID ATTACK/PIERROT

 
1.  a pill
2. PSYCHEDELIC LOVER
3. DAYBREAK
4. Upper flower
5. ネオグロテスク
6. 革命の黒い翼
7. ACID RAIN
8. HILL -幻覚の雪-
9. GOD BLESS ×me××××
10. MORNING JUNKY
11. 薔薇色の世界 (album mix)
12. ANSWER
 
2003年にリリースされた、PIERROTのメジャー4thアルバム。
 
インディーズ時代から継続してきたコンセプトが、「HEAVEN -THE CUSTOMIZED LANDSCAPE-」までの三部作をもってひと段落。
改めて自らのアイデンティティを問いかける作品を、というフラットな姿勢で制作されたのが、この「ID ATTACK」でした。
セルフプロデュース作となりますが、楽曲単位では亀田誠治さんや佐久間正英さんが編曲に参加。
外部クリエーターの色が混ざった結果、サイバー気質が強まったポップなナンバーと、ヘヴィネスを重視したラウドパンク風の楽曲が増えてきた印象で、"変化"を意識した実験作としての意味合いもあったのでしょう。
 
意表を突くダンスロック「a pill」、彼ら流のポップネスをパンキッシュなサウンドに乗せてキャッチーに展開する「PSYCHEDELIC LOVER」と、序盤から裏の裏を狙ってきたようなスタートダッシュ。
不協和音を奏でながら絡み合うツインギターのアレンジは残しつつも、サウンドとしてはだいぶシンプルに仕上げており、これまでのPIERROTとは違うぞ、と主張します。
ただし、この辺りはブラフも含まれており、ダークな雰囲気を纏い、Vo.キリトさんががなり立てるような歌い方に挑戦しているラウドチューン「DAYBREAK」を皮切りに、どちらかと言えば激しいナンバーを多く集めているのかな。
守りに入ってポップに変貌するのではなく、まだまだ攻撃的に攻めていくのだ、という意思を音楽で表明していました。
 
もっとも、良くも悪くも"変化"があったことは間違いなく、従来の彼らに見られた濃厚な世界観と、複雑なアレンジによるマニアックなサウンドワークは、「ACID RAIN」から「HILL -幻覚の雪-」の流れに幾分か感じる程度に留まっていたのかと。
伏線を張っては回収していくキリトさんの深みのある歌詞も、本作では表面的なアグレッションを高めるアプローチにシフトしていて、立体的な世界観が生まれにくかったのも、ファンからの評価が伸び悩んだひとつの要因でしょうか。
実は、裏テーマとして"ドラッグ"というモチーフが設定されていて、それを踏まえて耳にすると、ハッピー感すらあるポップチューンこそ、背筋が凍るブラックな意味合いが生まれてくる、という仕掛けが施されれているのですが、伝えきるにはコンテクストが高すぎましたかね。
 
改めて聴くことで、リアルタイムでは気付くことができなかったPIERROTらしさを認識できる部分もあって、再評価の余地はあり。
デジパック仕様の特殊パッケージにもこだわりが見られ、アートワークを切り取っても格好良いのでは。
案外、初期と後期の音楽性を繋ぐ入門書としても機能しそうな1枚です。
 

<過去のPIERROT(Pierrot)に関するレビュー>
DICTATORS CIRCUS FINAL
HELLO
DICTATORS CIRCUS-奇術的旋律-

HEAVEN -THE CUSTOMIZED LANDSCAPE-
神経がワレル暑い夜
FINALE

ラストレター

Screen
CELLULOID
パンドラの匣
気狂いピエロ