FANTIMMUNE!/THE NOSTRADAMNZ
1. No turning back
2. 終身刑
3. Touch
4. MurderTVshow
5. truth / world 2020
6. 世に憚る
現時点においては配信のみでのリリースとなっているTHE NOSTRADAMNZのミニアルバム。
「FANTIMMUNE!」というタイトルは、ディズニーの「Fanitillution!」と、免疫を意味する"IMMUNE"を掛け合わせたとのことです。
もともとはEPとしてのリリース予定はなかったようですが、レコーディングしてあった楽曲をセレクトして発表された作品。
Covid-19のメタファーである蝙蝠をジャケットデザインに用いるなど、現状に抗う意図を持っているのは明白ですね。
本編4曲+アンコール2曲という構成になっており、中止や延期とせざるを得ないライブの代替という意識もあったりするのかもしれません。
そのような意図や経緯で作成された一方で、サウンドとしては、今まで以上に作品然としているから面白いな、と。
ヴォーカルを掻き消すぐらいの主張の強さでガシガシぶつかり合っていた演奏が、パンキッシュな勢いはそのままに、アンサンブルとして整理された印象。
メッセージ性の強い歌詞を、はっきりと、しっかりと届けたい。
そういう想いが込められているのかどうかはわかりませんけれど、立てるべきところを立てるコンビネーションの部分に、彼らの進化や成長を伺い取れるでしょう。
英詞パートが多いこともあってか、洋楽テイストを感じるギターロック「No turning back」から、早くも度肝を抜かれます。
一見シンプルなバンドサウンドで突っ走りつつ、サビではキャッチーに疾走するTHE NOSTRADAMNZ節。
じっくり耳を澄ませて聴いてみると、特にギターが色々なことをやっていて、実はマニアックで奥深さがあるのですが、それをあっさりと聴かせてしまうところに、彼らのセンスが滲んでいました。
終盤は、声も含めて色々な音がカオティックに絡み合っていて、"ストレートな曲だな"なんて思い込んでいると、完全に喰われてしまいますよ。
続く「終身刑」も、スカパンク風にキャッチーさと荒々しさを共存させた、ほどよいテンポが気持ち良い。
得意分野で盛り上げつつ、本作でのリードトラックとなるのは「Touch」。
リモート会議風のMVが公開されて、偶然にも今と状況が重なる歌詞にグッとくるのですが、これ、Gt.燕瞳瑶壱楼さんの前身バンドでの楽曲を、Ba&Vo.ね基督瓶さんがリメイクしたものなのだとか。
とにかくメロディが素晴らしい。
これ、オリジナルをどこまで踏襲しているのだろう、と気になってきました。
本編ラストは、攻撃性で削り取る「MurderTVshow」。
ソリッドでスピーディー、硬質なドラムのサウンドもタイトで格好良し。
アーティストっぽく進化したなと思っても、最後の最後で、やはり彼らはパンクスターなのだよな。
なお、「truth / world 2020」は、初期の楽曲「世界と真実」の再構築。
攻めの姿勢が強まりましたが、ここまできても、良い意味で落ち着きが足りない、ある種の安定感がありますね。
最後の「世に憚る」は、THE NOSTRADAMNZ流のヒプノシスマイクといったイメージ。
サビもラップで攻め立てるので、ありそうでなかったミクスチャーの質感が再現されています。
相変わらず、Dr.上邑隼人さんのスネアのサウンドは、豪快で力強い。
だが、本作ではそれに負けじと、お互いのフレーズは活かした形でチャレンジをしていて、楽曲についても、アレンジについても、確実に引き出しを広げることができたと言えるのでは。
彼らが奏でるノスタルジックなパンクスは、音楽の魔法による免疫となり得るか。
そろそろ全世界に注目されても良いはずのEPです。
<過去のTHE NOSTRADAMNZに関するレビュー>