DRESS/Kaya
1. リフレインが叫んでる
2. 異邦人
3. 背徳のシナリオ
4. やさしいキスをして
5. それでも明日はやってくる
6. 難破船
7. Cage
8. 罪と罰
9. カウントダウン
10. 鮫
11. 誕生
12. 愛の讃歌
ヴィジュアル系女方シンガー、Kayaによるカヴァーアルバム。
自身のコンセプトである"歌姫"にあやかって、リクエスト曲からセレクトされた歌姫たちの楽曲のカヴァーに挑戦しています。
本作は、制作費用をクラウドファンディングにて募ったことでも話題になりました。
当初はミニアルバムの想定でしたが、目標額を大幅に上回ったため、ストレッチゴールであるフルアルバムに。
参加者にプレゼントされたクラウドファンディング限定盤と、店舗購入が可能な通常盤でのリリースが実現しています。
それぞれ中森明菜さんからの楽曲が、「難破船」と「ミ・アモーレ(Meu amor e...)」で差し替えられる仕様。
クラウドファンディング限定盤はライブ会場でも購入できるとのことで、企画を知らなかったリスナーへの救済措置となるでしょうか。
シャンソン歌手としてもキャリアを積み、表現力に磨きがかかったKayaさん。
動と静を巧みに使い分け、ときに迫力のある力強さを、ときに繊細なか弱さを、感情豊かに歌い上げています。
届けられた作品に耳を通せば、その完成度が、錚々たる歌姫たちにも肩を並べるレベルに達していることがわかるはず。
自分のものにするべく、相当歌い込んだのだろうな、というほどですよ。
参加しているゲストも豪華で、すべてが聴きどころと言いたいところなのですが、強いて挙げたいところをV系リスナー的な目線で完結に。
まず、Winkの「背徳のシナリオ」を、MALICE MIZERのköziさんにアレンジさせる反則っぷり。
この楽曲は、MALICE MIZERがブレイクした当時、「月下の夜想曲」などと親和性が高いということで、耽美系ファンの中で再評価されていたナンバー。
köziさんとの相性はそりゃ完璧で、Kayaさんのヴォーカルスタイルも相まって、もうMALICE MIZERだぞ、と。
更には、「ILLUMINATI」のセルフオマージュも入っているのかな。
その筋のリスナーにはたまりません。
また、DREAMS COME TRUEの「やさしいキスをして」は、Raphael、riceの櫻井有紀さんにより、ゴスペル調に。
歌唱力をシンプルに活かした仕上がりとなっています。
有紀さんは、コーラスでも参加していて、実にハイレベルなコラボレーション。
抜群のハーモニーを披露していました。
そして、鬼束ちひろさん、椎名林檎さん、Coccoさん、天野月子さんという、リクエストしたKayaさんのファン層が透けて見えるラインナップ。
特に、天野月子さんがカヴァーされる機会というのは珍しい気がしますし、ツタツタした疾走ドラムが特徴の「鮫」という選曲は、ツボを心得すぎです。
演奏陣についても、「罪と罰」では、PENICILLINの千聖さんがギター、黒夢の人時さんがベース、La'cryma ChristiのLEVINさんがドラム、hide with Spread BeaverのDIEさんがキーボード、「カウントダウン」では、ギターがex-FANATIC◆CRISIS、THE MICRO HEAD 4N’SのSHUN.さんに交代してと、どこまでもリクエストした層を殺しに行く方針で抜かりなし。
「鮫」のGt.Ruiza(D)、Ba.seek(Psycho le Cému/MIMIZUQ)、Dr.&Syn.YAMATO(UCHUSENTAI:NOIZ)という布陣にしても、狙いどころが明確です。
メンタルが強そうなKayaさんなので、メンヘラ系ナンバーは少し似合わないのでは、と思わないでもないのですが、違った角度から楽曲と向き合う機会となるのもカヴァー作品の醍醐味なわけで。
独自の解釈は大いに入って結構。
ロックあり、ポップスあり、シャンソンありというアレンジの幅の広さ、オリジナルへのリスペクトの強さを踏まえれば、そのうえでの表現の選択に、文句のつけようはないでしょう。
ラストは、美輪明宏さんの訳詞による「愛の讃歌」で誰もが納得の大団円。