QUEEN / Kaya | 安眠妨害水族館

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QUEEN/Kaya
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1. Arachne
2. Nouvelle Mariee
3. Awilda
4. Ophelia
5. Sorciere
6. Sugar Rose
7. Rose Kingdom
8. Medusiana
9. Last Snow -piano ver.-
10. Addict
11. Transmigration

耽美系歌手としてソロ活動中のKaya。
オリジナルアルバムとしては2枚目、メジャー進出後としては1stにあたるフルアルバム。

本作は、「女王」をテーマに、様々なヒロインの生き様を描いたコンセプチュアルな一枚。
基本線としては、マリー・アントワネットをイメージしての歌詞とのことですが、女海賊アヴィルダや、ハムレットの登場人物であるオフィ―リアをモチーフにした楽曲など、様々な女王性を表現しています。
アートワークも、その気高いイメージを尊重してか、白が基調となっているようですね。
神秘的で幻想的な「Arachne」からスタートするのも、実に象徴的。

Kayaさんが強みとしている耽美な音楽と、歌詞世界に紡ぎだされる高貴さ、気高さは、本当にマッチする。
サウンド的なアプローチとしては、デジタルなテクノ・トランスがベースなのですが、その耽美的な表現が加わることで、とてもずっしりとした重みのある聴き応え。
クラシカルな歌メロや、表情豊かなボーカルも、欠かせないピースとなって、ヒロインたちの人生ドラマを、高いクオリティで再現していきます。

驚かされたのは、「Sugar Rose」や「 Last Snow」で見せる、女声のような歌唱スタイル。
シャンソンのカバーCDなどで、この手の歌い方もお手の物であるということは証明されていたのですが、Kayaというボーカリストの真骨頂は、オペラティックで芯の通った歌声だったはず。
メインの音楽に、言わば「邪道」を取り入れてくるというのは、正直なところ、あまり想定していなかったのですが、他の楽曲とも馴染んでいるし、世界観を深める意味でも、有効なツールになっています。
そういう意味では、シャンソン歌手としての活動など、メインとは別に取り組んできた経験が、ここに来て血になり、肉となっていると考えられるかもしれません。

本作のメインディッシュは、「Transmigration」。
コンセプトの軸となるマリー・アントワネットの心境を歌詞にしたポップチューン。
悲劇のヒロインとして語られることが多い彼女をテーマにしつつ、ここまで明るく光が差すナンバーに仕上がったのは意外。
だけど、妙に説得力があるのですよね。
何も考えずに表面だけを聴いたときの印象と、彼女の人生や、処刑前という背景設定を知ったうえで聴きかえしたときの印象が、まったく違う。
「少しだけオールヴォアール」という歌詞で締めるあたりに、何とも言えない深みがあるのです。

補足としては、作曲陣も豪華。
ex-VELVET EDENのKALMさんや、ex-Schwarz SteinのHoraさんといったお馴染みのコンポーザーから、ex-RENTRER EN SOIの匠-TAKUMI-さんや、ex-メトロノームのRIUさんなど、親和性もあるけれど、意外性もあったという面々まで。
匠-TAKUMI-さん作曲の「Nouvelle Mariee」は、トランス系のサウンドの中にも、歌謡曲的なメロディアス性を持っており、RIUさんが担当した「Sorciere」では、ピコピコミュージックの中に、ザクザク切れ込む攻撃性を兼ね備えている。
コンポーザーの個性というのも、よく出ていて、Kayaさんの表現のバリエーションを引き立てる下地として効いていました。

バンドサウンドではないところに、V系リスナーとして好き嫌いを分ける要素はあるかもしれませんが、アートワークも含めた、世界観を徹底的に表現しようとするアイディアの数々は、ヴィジュアル系アーティストの本質。
そのうえで、歌唱力が安定しており、楽曲もメロディアスで聴きやすいときたら、聴いておかない理由があろうか。
デジタル好きや、耽美系ファンには、理想のクオリティを誇る作品です。

<過去のKayaに関するレビュー>
かや名曲シリーズ1 ボン・ジュール・シャンソン