Leda Atomica/蘭図
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Leda Atomica
2,160円
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1. 満ちながらにして空の聖杯
2. Leda Atomica
3. マリーにさよなら
4. ドグラ・マグラ
ミニアルバム「Inferiority Complex & Narcissism」も記憶に新しい蘭図の1stシングル。
リリース直後にDr.和樹さんが脱退となり、初期編成としては最後の作品となりました。
音楽性としては、古き良き名古屋系を彷彿とさせるダークな音楽性を踏襲。
ただし、前作で激しい楽曲を書き下ろしていたGt.拓也さんが雰囲気モノのミディアムナンバー「ドグラ・マグラ」、退廃的な楽曲をコンポーズしていたBa.誠さんが攻撃性のある「Leda Atomica」および「マリーにさよなら」を作曲しているというのが興味深い。
個々の楽曲の特徴なのかと思いきや、有機的に役割を入れ替えられるのだとすると、今後飛び出してくるだろう楽曲の振れ幅には期待が高まるところです。
さて、本作はRPGの教会音楽のようなSE、「満ちながらにして空の聖杯」からのスタート。
もちろん、導入のためのショートチューンなのですが、ある意味、これがもっともジャケットのイラストとの関連性が高かったのでは。
そんなわけで、少し溜めたうえで飛び込んでくるリードトラックの「Leda Atomica」が、歌モノとしての1曲目。
シングル曲らしくキャッチーに攻めているのですが、疾走感のある突っ込み気味のドラムと、ギターの繊細なアルペジオが良い味を出しています。
どこか和風な印象も受けるギターのリフ。
現代的な美流沙女というと誤解を招きそうですが、ダークな王道曲に和ギターを取り入れたことで、その他の90年代リスペクトバンドと差異化が出来ていたとも言えるでしょう。
「マリーにさよなら」は、カオティックな構成が聴きどころ。
展開が多く、シャウトや語りなども飛び出します。
少し意識を曲の外に追いやると、まだ続いているのか、別の曲に切り替わったか混乱してしまうほど。
それなのに、サビはしっかりキャッチーに仕立てているのだから、どうしたって耳に残るのですよ。
マニアックに特化したと思わせつつ、ライト層も取り込めるかもしれない、絶妙な勝負曲。
最後は、夢野久作の小説をモチーフとした「ドグラ・マグラ」。
ぼそぼそとした歌い方と、淡々としたアルペジオで序盤は進行し、徐々にハードなリズムが噛み込んで盛り上がっていくスタイルです。
テンポは緩めであるが、だからこそ、ひとつひとつに感情を込めることができるというか。
いずれにしても、Vo.業さんの、中毒性、浮遊感のある歌声には良くハマっていましたね。
スルメ系のナンバーとも言えるかと。
期待どおり、期待以上の音楽を奏でてくれている点では、安心感あり。
さすが、クオリティを高いところまで持ってきてくれています。
あとは、いかに現代シーンのファンが欲しがるものを落とし込めるか、あるいはいかにオリジナリティを出していけるか。
"懐かしい"という感覚を、"新しい"にアップデートすることができれば、間違いなくステップアップできるはず。
温故知新、を地で行く1枚。
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