静廉鳴る共奏、静脈に宛がう。 / Soanプロジェクトwith手鞠 | 安眠妨害水族館

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静廉鳴る共奏、静脈に宛がう。/Soanプロジェクトwith手鞠

 

1. 落下の挙動、加速、暗転、反射 そして調和する僕と君と

2. 春色の音色、記憶回廊

3. 黄昏色に融解する視界と屈折した類推(アナロジー)

4. 醜悪なる獣穿つ矢、致死を以て野卑を屠る

5. 吐情、舌上、熱帯夜

6. 紫陽花がまた咲く頃に

 

Soanプロジェクトwith手鞠の3rdアルバム。

三部作×2のラストを飾る作品となります。

 

"動"を担う芥さんと、"静"を担う手鞠さん。

ふたりのボーカリストを擁して、それぞれ連続してミニアルバムをリリースするという試みも、遂に完結。

こちらは"静"ということで、歌モノが中心というスタンスは変わらないのだけれど、ここにきて、だいぶ攻めてきたなというのが、率直な感想でした。

 

そもそも、アンサンブルを奏でる楽器隊の編成から、V系バンドとしては異色中の異色。

Sachiさんによるバイオリン&ビオラが入る時点で、既に独自性は高いと言えるのですが、ここに加わるのが、アコースティックギターと二胡。

Soanさんも本職であるドラムに加えて、ピアノも弾いており、繊細で流麗なサウンドを実現しているのですよ。

 

もっとも、編成だけであれば三作目ということで、今更、驚く話ではないのかもしれません。

"攻め"を感じずにはいられないのは、完結編にして新しい可能性を模索しているスタンスの部分。

これまで、ハマると証明してきたゆったりとした歌モノだけでなく、「醜悪なる獣穿つ矢、致死を以て野卑を屠る」のようなダークさを纏った楽曲や、「吐情、舌上、熱帯夜」といった官能的なフェイクも織り交ぜたラテンナンバーまで飛び出すのだから、リスナーの予想を軽々と飛び越えられてしまった形。

特に「吐情、舌上、熱帯夜」は、本編の締めくくりの位置づけなのですが、セオリーであるど真ん中の王道チューンや壮大なバラードではなく、完全に新機軸を狙ったチャレンジ精神あふれる1曲なのだもの。

まさかシュビドゥバで三部作を終わらせるとは思わなかったから圧倒されつつ、これはこれでしっくりくるから悔しいぐらいです。

 

もちろん、クロージングを意識したパートも見られ、例えば「落下の挙動、加速、暗転、反射 そして調和する僕と君と」では、amber grisやMoranをはじめ、Kra、DuelJewel、yazzmad、黒色すみれと、このプロジェクトに参加したメンバーの在籍していたバンドを連想させる言葉が散りばめられているため、気が付けばニヤリとしてしまうこと請け合い。

最後の「紫陽花がまた咲く頃に」にしても、Soanプロジェクトwith芥の三部作完結編「動猛成る狂想、動脈に射つ。」にも収録された、芥さんと歌詞を合作したツインボーカル編成のナンバーで、カーテンコールのような位置づけになっていました。

ちゃんと綺麗なエンディングも用意しているあたりが、なんともズルいですよね。

 

いつもに増して表現力が際立っている手鞠さんの歌唱も、当然ですが聴きどころ。

Soanさんのコンポーザーとしてのセンスにも感心しながら、これで完結なんて言わずに、うまいこと継続しないものかな、と想いを馳せています。

聴けば聴くほど発見があり、何度でも聴くことができてしまう1枚。

 

<過去のSoanプロジェクトwith手鞠に関するレビュー>

旋律、静かな願いと

静謐を制し征する音